吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2009年 02月 21日

ブログ移転のおしらせ

読者のみなさま。

毎日ブログをご覧になっていただきありがとうございます。

たくさんの読者の方にご覧になっていただけるようになりましたが、読者の方より会社のパソコンからexciteブログを見ることができない、とのお知らせをいただいておりました。

今回株式会社デジカルにて、新たに専用のブログを用意してもらい、こちらでブログを継続することにいたしました。

引き続き、CFOとCFO予備軍の方々へ毎日の経済ニュースを読みほぐしてお伝えしていきたいと思いますので、新しいブログもよろしくお願いします。

http://www.cfonews.jp/

# by yasukiyoshi | 2009-02-21 12:01
2009年 02月 20日

ポイント引当金の会計処理

家電量販店 ポイント引当金 異なる会計処理
家電量販各社が販促用に発行するポイントの戦略が割れている。ヤマダ電機が顧客の囲い込みのため大量発行しポイント引当金が急増する一方、エディオンなどは引当金がほぼ横ばいで推移している。ポイント引当金の計上方法は企業ごとにばらつきがあり、業績への影響が見極めにくい。透明性を高めるべきだとの指摘もある。
(日本経済新聞2009年2月20日12面)
【CFOならこう読む】
「ポイント引当金ポイントは販促の一環として商品の購入額などの一定割合を利用者に還元する仕組み。引当金はポイントが使われるのを想定し積み立てる。貸借対照表の負債の項目に計上する。日本では会計処理の基準がなく、企業は企業会計原則に基づき処理する。企業間でポイントを融通できるサービスが拡大。項目を設けて計上する企業が増えている。」
(前掲紙)
各社の引当金の計上基準を以下に列挙します。
ヤマダ電機
当社及び当社と同様の事業を営む連結子会社は、将来の「ヤマダポイントカード」の使用による費用発生に備えるため、使用実績率に基づき翌連結会計年度以降に利用されると見込まれるポイントに対し見積額を計上しております。

エディオン
ポイントカード制度において、顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、連結会計年度末における将来見込み利用額を計上することとしております。

コジマ
顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、当連結会計年度末における利用実績率に基づき将来利用されると見込まれる額を計上しております。

ベスト電器
顧客に付与されたポイントの使用による費用発生に備えるため、当連結会計年度末において将来使用されると見込まれる額を計上しております。
引当金の計上は、ポイントの使用見込み額を計上する方法と見込み額に原価率を掛けた額を引き当てる方法の2つがありますが、上記の各社の開示を見てもいずれを採用しているのか不明です。

金融庁の「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」(平成20年6月18日)の例示は後者を示しているのに対し、税務上は一定の要件のもと前者の処理を容認しており(法人税基本通達9-7-3)、どちらがスタンダードな方法であるか一概に言えません。

IFRSは、引当金を計上せず、ポイント相当分については、将来使用が見込まれる部分について、売上から控除するとともに繰延収益として負債に計上し、実際に利用した際に売上として認識する方法を採用しています(IFRIC13 「カスタマー・ロイヤリティ・プログラム」)。
「日本基準を国際基準と共通化すれば、一時的に売上高が急減し投資家が混乱する可能性もある」(前掲紙)
後者の方法を採用している会社は売上高だけでなく利益に与える影響も少なからずあると思われます。

【リンク】
「第31期 有価証券報告書」株式会社 ヤマダ電機[PDF]
「第7期 有価証券報告書」株式会社エディオン[PDF]
「有価証券報告書」株式会社コジマ
「IR情報」株式会社ベスト電器
平成20年6月18日「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」金融庁


# by yasukiyoshi | 2009-02-20 10:39 | 会計
2009年 02月 19日

スティール、サッポロ株買い増し断念 その2

サッポロHD株が大幅安 スティールの買収提案撤回で
サッポロホールディングスの株価が18日、一時前日比8.9%安と急落した。米投資ファンドのスティール・パートナーズが株式の買い増し提案を断念すると発表したのを受け、株式の追加取得期待がはげ落ちたためとみられる。3月の定時株主総会に向け株価は引き続き波乱含みだ。
(日本経済新聞2009年2月19日13面)
【CFOならこう読む】
終値は31円(8.1%)安の350円だった。市場では買収提案を撤回され、「経営者に対する投資家からのチェックが弱まる」(大手投資顧問)という見方が出ていた。
(前掲紙)
スティールによる経営へのプレッシャーがサッポロの価値創造に資すると考える人が、価値破壊に繋がると考える人より多かったということでしょう。

特別委及び取締役会の言うように、スティールの「買収案は企業価値棄損の恐れ大」であると多くの株主が思っているのなら、スティールの買い増し断念を受け株価は上昇すると考えられます。

定時株主総会では多数の株主が現経営陣の再任に反対票を投ずることを期待します。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2009-02-19 09:19 | M&A
2009年 02月 18日

スティール、サッポロ株買い増し断念

米スティール:対サッポロHD株、買い増し提案撤回
米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンは17日、同社が筆頭株主のサッポロホールディングス(HD)に対する株式の買い増し提案を撤回すると発表した。交渉が難航していることに加え、株価下落で買い取り提案価格との価格差が広がっていることなどが理由。保有するサッポロ株は売却しない方針で、3月27日開催のサッポロの定時株主総会で取締役の再任に反対票を投じる意向も明らかにした。
毎日.jp 2009年2月17日
【CFOならこう読む】
これまでのサッポロとスティールの買収提案を巡る攻防の経緯は次の通りです。
2007年2月  スティールがサッポロに買収を提案
2007年3月  サッポロが定時株主総会で新・買収防衛策を可決
2007年11月  スティールが企業価値向上への「提言」を提出
2008年1月  サッポロがこの問題対応の特別委員会に買収提案評価を諮問
2008年2月  特別委が意見書、「買収案は企業価値棄損の恐れ大」
           サッポロ取締役会が反対表明
2008年3月  スティールが修正した提案を送付
           サッポロがスティールと協議入り
2009年2月  スティールが買い増しを断念
(日本経済新聞2009年2月18日13面)
スティールは、買い増し断念の理由を次のように説明しています。
「提案撤回の主な理由は、同社の業績が悪化の一途を辿っていることと、同社が買付提案の内容を株主に受け入れられるようなものにするための交渉を依然として拒否していることです。」
サッポロ株式の昨日終値は381円とTOB価格825円を50%以上下回っており、もはやこの条件で買収提案を継続できないとの判断もあったのではないかと推察されます。

いずれにしても行われるべき買収が行われないのは、経営者に対する規律という意味からも価値創造という意味からも望ましくありません。

このブログでも何度も取り上げているように、日本経済は大きな構造転換を必要とする時期に直面しています。そこで必要とされるヒト、モノ、カネは世界に広く求めるべきです。

しかし経営者が株主を選択できる今の仕組みのもとでは、既得権益の確保が最優先とされ、行われるべき経営権の移動が行われません。特に外資に対しては交渉の場すら与えられないケースが少なくありません。

私はいま日本は真に開国すべきときに来ていると思います。
そしてそれしか長期的に雇用を確保する手立てはないと思っています。

【リンク】
2009年2月17日「スティール・パートナーズ・ジャパン、サッポロの長引く業績悪化と交渉拒否のため、株式33.3%買付け提案を撤回」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー

# by yasukiyoshi | 2009-02-18 08:40 | M&A
2009年 02月 17日

東洋紡 ハイブリッド証券で220億円調達

東洋紡 220億円社債発行
東洋紡は16日、英領ケイマン諸島に設立した子会社に、第三者割当でユーロ円建て永久劣後社債220億円を発行すると発表した。この子会社がユーロ円建て永久優先出資証券を発行し、投資家から同額の資金を調達する。永久劣後社債と永久優先出資証券を組み合わせる資金調達は珍しい。同社は「普通株式への転換権がつかないため、1株当たりの利益が減少せず、既存株主の利益を損なわずにすむ」としている。
産経ニュース 2009年2月17日
【CFOならこう読む】
本件スキームは下図の通りです。
東洋紡 ハイブリッド証券で220億円調達_e0120653_1554813.jpg


海外特別目的子会社TCPC 社(100%出資の特別目的子会社TC Preferred Capital Limited)に対して本社債220 億円を発行し、TCPC 社は国内の投資家に対して優先出資証券220 億円を発行します。また、当優先出資証券に係る配当、残余財産の分配等の支払いを保証する旨の契約(劣後保証契約)をTCPC 社と締結します。

TCPC 社が発行する優先出資証券は、東洋紡の連結貸借対照表上においては少数株主持分として計上されます。当優先出資証券は資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、主要格付機関(株式会社格付投資情報センターおよび株式会社日本格付研究所)から70%以上の資本性が認められるとのことです。時価発行増資では、発行済み普通株式数の増加および一株当たり利益の減少等の普通株式の価値の希薄化を招きますが、本優先出資証券には当社普通株式への転換権が付されていないため、当社普通株式の希薄化は一切発生しません。

本ハイブリッドファイナンスに参画する投資家は以下のとおりです。
・ (株)みずほコーポレート銀行
・ 三菱UFJリース(株)
・ 三井住友フィナンシャルグループ
・ 住友信託銀行(株)
・ センチュリー・リーシング・システム(株)
・ 大同生命保険(株)
 他2社

【リンク】
平成21年2月16日「第三者割当によるユーロ円建永久劣後社債の発行および当社海外特別目的子会社によるユーロ円建永久優先出資証券発行に関するお知らせ(「ハイブリッドファイナンス」による資金調達に関するお知らせ)」東洋紡績株式会社


# by yasukiyoshi | 2009-02-17 10:00 | 資金調達