吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 06月 01日

HOYA・ペンタックス統合決着

HOYA・ペンタックス、6月上旬にTOB実施で合意
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3L31046%2031052007&g=S1&d=20070531

HOYA、ペンタックスへTOB決議
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1C31002%2031052007&g=S1&d=20070531

HOYA、ペンタックス買収資金1050億円を全額借入
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070601AT1D3109Q31052007.html

(CFOならこう読む)
当初は合併することで合意していましたが、
迷走2ヶ月の後、HOYAの子会社として買収することになりました。

しかし、なぜもともと統合スキームとして合併を選択したのでしょうか。

合併や株式交換は新株発行を伴うのでダイリューション(希薄化)が生じます
(自己株売却でも同じです)。
TOBなら現金で株式を取得するのでこれを回避できます。

それでも合併で行こうとしたのは、
ペンタックスがHOYAに買収された、という形にしたくなかったからでしょう。
買い手・売り手を明確にせず、対等合併を謳う、
というのが伝統的な日本の統合のやり方です。
ペンタックス側の混乱の結果、売り手・買い手が明確な「TOB=買収」
で決着したのはなんとも皮肉な感じがします。

HOYAは買収資金1,050億円を借入で賄うということですが、
HOYAは無借金&自己資本比率81.6%と強固な財務基盤を持つ会社なので、
これくらいの借入は何の問題もなく実行できますし、
格付けへの影響もないでしょう。

しかし、HOYAはなぜ無借金でなければならないのでしょうか。
借入により自己株取得を大量に行い、資本コストの引き下げを図り、
最適資本構成を達成するといった財務戦略をなぜとらないのでしょうか。

HOYAは業績評価手法としてEVAを使用しているので、
資本コスト引き下げの重要性は十分に理解しているはずです。
この辺りのところは江間CFOにぜひ直接伺ってみたいところです。
いずれにしても、資本コストという点から見ると、
合併ではなく、TOBで良かったと言えます。

その意味では、TOB後の少数株主のスクィーズ・アウトを株式交換ではなく、
キャッシュを支払う形で実行すべきでしょう。

by yasukiyoshi | 2007-06-01 08:55 | 資本コスト


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