吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 09月 03日

ソニー、金融子会社10月上場・3000億円調達、今年最大に

ソニーの全額出資の金融子会社ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)の上場日程が固まった。東京証券取引所第一部に10月に上場し、公募・売り出しを合わせた株式の公開規模は3000億円前後で今年最大の上場案件になる。ソニーは売却で得た資金を主力のエレクトロニクス(電機)部門の強化に充て、選択と集中を加速する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070902AT2D0100201092007.html

【CFOならこう読む】
EVAの伝道師として有名なベネット・スチュワートが、自著『EVA創造の経営』の中で、子会社の部分公開は親会社の株主にとってデメリットが大きいと結論づけています。

その理由として次のものを挙げています。
①公開を維持するためのコストが重複
②親子会社間の取引の公平性の確保が難しい
③子会社独自の取締役会が必要になり少数株主の権利の尊重が必要
④親会社が直接ファイナンスする場合よりもコスト高になる場合が多い
⑤連結納税対象から外れる

米国では子会社の部分公開は少数の利用に止まり、優良大企業の間では子会社は100%所有するというのが大原則です。
実際ソニーは米国にならって、1999年に4つの公開子会社を完全子会社化したのではなかったのでしょうか。

今回の金融子会社公開は、親会社の資金調達を目的としたものと思われますが、金融子会社で高PERがつくのは金融子会社の高成長性が評価されたもので、一般投資家は自己の資金がこの高成長事業に投入されることを期待して投資するのであって、親会社にキャッシュを横流しにするだけの子会社公開は、一般投資家との間で利益相反が生じます。

ソニーはこのことを良くわかっているはずです。にも関わらず子会社公開に踏み切るのは、それだけ状況が切羽詰っていることの証左なのかもしれません。

【リンク】
EVA(経済付加価値)創造の経営
G.ベネツト,3 スチュワート G.Bennett,3 Stewart 河田 剛
4492520899


by yasukiyoshi | 2007-09-03 08:57


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