2007年 10月 11日

点検自社株買い 高まる機動性

自社株買いが活発だ。株主への利益配分手段として定着し、実施額は今年も過去最高を更新するとみられる。夏の相場急落時には株価のテコ入れ策としても注目を集めた。解禁から10年余り。企業は自社株買いをうまく使いこなせるようになったのか。点検する。
(2007年10月11日 日経新聞17面)

【CFOならこう読む】
理論的には自社株買いは株主価値に中立です。しかしイオンの豊島専務が言うように「低迷する株価に刺激を与えたい」という動機で自社株買いを行う会社は少なくありません。株価に影響を与えるとしたらそれはどのよう理由によるのでしょうか?

第一に、経営者が、株価が企業のファンダメンタルズ価値を下回っていることを確信していて、それを市場にアピールすることにより株価に影響を与えることがあります。これはシグナリング効果と呼ばれます。

第二に、企業にキャッシュフローが潤沢で、当面資本コストを上回るような投資案件もないことから、株価にこれが織り込まれていないときに、これを自社株買いまたは増配により株主に還元することにより株価に反映させることができる場合があります。

第三に、社債等負債により資金調達し、同時に自己株買いを実行し、負債比率を上昇させることにより資本コストを引き下げることができるなら、株主価値は上昇します。

記事によると、「米住宅ローン問題で相場が急落した夏場に自社株買いは一気に増加。8、9月の買い入れ額は1兆3,500億円に達した。4-9月累計は約2兆6千億円と半期で過去最高。一方、4-8月に公募増資・売り出しと新規公開の合計額は約4,800億円にとどまった。」とのことで、サブプライム問題の影響から長期金利が大きく

低下すると同時に、上場会社の株価がいっせいに大きく下げた場面で上の第一と第三の効果を狙って自社株買いが行われたのでしょう。

また、敵対的買収の脅威を感じているキャッシュリッチな会社が大きく株主還元策を打ち出す必要から、自社株買いに踏み切っている会社も相当数あるものと思います。いずれにしてもバブル以後、余剰設備の削減と資産効率の向上に力を注ぐと共に、負債の削減を徹底して行うことによりバランスシートの圧縮を図ってきた日本企業の資本政策が大きな転換点を迎えていることは間違いないと思います。

財務省が公表している法人企業統計によると自己資本比率は1995年度には19%であったのが、2006年は34%と大きく改善されています。自社株買いの増加は、バランスシート調整が完了したことを示しています。

余談ですが、記事にあるように「消却せず金庫株で持つ企業が多いことに不満がくすぶる」「いつ市場に出てくるか不透明。まず消却すべき」との意見がありますが、会社法上もファイナンス理論上も自社株買いと公募増資は全く同じ取扱いになっており、このような意見は、誤謬に基づくものであるので、CFOとしては聞き流して構わないでしょう。

【リンク】
法人企業統計調査(財務総合政策研究所)
http://www.mof.go.jp/1c002.htm


by yasukiyoshi | 2007-10-11 08:22 | 自社株取得


<< ソニーフィナンシャル、初値42...      東芝系の「駅探」、経営陣が買収... >>