吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 20日

キリンの協和発酵買収、月内合意めざす・友好的TOBで

キリンホールディングスが医薬品大手、協和発酵を買収する方向で同社と交渉に入ったことについて、キリンの加藤壹康社長は19日午前、記者団に対し「事業拡大のために(協和発酵に)接触しているのは事実」と述べ、協議していることを認めた。両社は早ければ月内の合意を目指し、詰めの交渉をしている。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F1900E%2019102007&g=S1&d=20071019

【CFOならこう読む】
TOBで3分の1程度の株式を取得し、その後キリンの医薬品事業子会社キリンファーマ(キリンホールディングスの100%子会社を協和発酵が吸収合併することによりキリンは協和発酵の50%超の株式を取得するというスキームです。

キリンの医薬品事業の営業利益は、2007年計画ベースで130億円。これに協和発酵のEBIT倍率16倍をかけると企業価値は2,080億円。キリンは有利子負債比率が小さいので、医薬品事業の株式価値は企業価値と等しい2,080億円とすると、協和発酵の株式時価総額は、18日終値ベース4,798億円+キリンファーマ2,080億円=6,878億円となります。

このうちキリンの持株比率は、(4796億円×1/3+2,080億円)/6,878億円×100=3,678億円/6,878億円=53.4%となります。したがってロイターが報じているような全額現金買収というスキームではありません。

協和発酵買収、キリン格付けにネガティブな影響も=S&P
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-28433720071019

それにしてもTOB価格決定前に報道機関にスクープされるというのはM&Aの成否を左右するような大失態ですね。特にキリンにとって見ると想定を大きく上回るような高い買い物になる可能性があるので、全く良いことはないと思います。協和発酵サイドからリークしたということはあり得るのかもしれませんが…。

【リンク】
キリンビール株式会社 平成18年12月期決算(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/settlement/explain/pdf/ir_0612_1.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-20 09:49 | M&A


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