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2007年 10月 25日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4

キリンホールディングス傘下入りを決めた協和発酵。キリンHDによるTOB価格は1,500円だが、株価はTOB価格にさや寄せするどころか、発表後に3日連続で下落した。TOB後の新株発行による一株利益の希薄化が強く、市場の評価は芳しくない。なぜ今回の決断を下したのか、展望を含めて山上一彦専務執行役員に聞いた。
(日経金融新聞2007年10月25日7面)

【CFOならこう読む】
まだまだしつこくやります。

23日のコラムで株式交換割当株数に基づくキリンファーマの株主価値を次のように計算しました。
株式交換キリンに伴い発行される株式177,240,000株×TOB価格1500円=2,658億円

この計算は極めて常識的なもので誰にでもわかりやすいと思いますが、実際に会社が行った計算はこのようなものではなかったのかもしれません。

株式を対価としたM&A(合併、株式交換、会社分割等)の場合、売り手の株主価値だけでなく、買い手の株主価値も計算されます。これらの計算は、DCF法、類似会社比較法、市場株価法といった各種の方法により行われ総合的な判断に基づき最終的に比率の決定が行われます。

現金で買収する場合、売り手の株主価値がいくらであるかが明示されるのに対し、比率計算の場合には、両社の株主価値の相対的評価が問題になるので、それぞれの株主価値が明示されないケースも多いのです。100:200でも150:300でも、ともに1:2だから100か150かについては白黒つける必要がないのです。

今回の株式交換比率の決定が、上のように行われたとしたら、比率計算上用いられた協和発酵の株式価値はTOB価格の1500円とは乖離していた可能性が十分にあります。例えば、10月18日の終値1208円を使って割当株数の株主価値を計算すると、177,240,000株×TOB価格1,208円=2,141億円となり、私が20日のコラムで計算したキリンファーマの株主価値2,080億円と極めて近いものになります。

株式交換だけでM&Aが完了するスキームであれば、これはこれでありなのですが、今回のようにTOBと組み合わせて過半数の株式を取得するスキームで、TOB価格が1500円(プレミアムあり)なのに株式交換比率の計算上1208円(プレミアムなし)に基づき比率が計算されていたとするなら、TOBにより株式を売却できない株主は大きな不利益を被ることになります。

キリン及び協和発酵両社はキリンファーマの株主価値をいくらと算定したのか市場に説明する必要があると思います。その上で株式交換比率の計算上、協和発酵株主にプレミアムをどの程度与えているかも合わせて説明してもらいたいと思います。

次の点は重要なので強調したいと思います。

“この件で問題なのはEPSの希薄化ではありません。株価の希薄化が問題なのです。“

【リンク】
協和発酵工業株式会社に対する公開買い付け開始に関するお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_04.pdf

協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の株式交換契約締結のお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_05.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-25 08:44 | M&A


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