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2007年 11月 03日

外国企業の買収―GCAのケース その2

GCA、新持ち株会社08年3月に上場・米投資銀と統合を発表
M&A(合併・買収)助言のGCAホールディングスは1日、米投資銀行のサヴィアン(カリフォルニア州)と経営統合すると正式発表した。東証マザーズに上場しているGCAは来年2月26日に上場廃止となり、新設する持ち株会社「GCAサヴィアングループ」が3月3日に同市場に上場する予定だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2E01002%2001112007&g=S1&d=20071101

【CFOならこう読む】
昨日の話しの続きです。

説明資料によると両社の直近に到来する事業年度の予想営業利益は次の通りです。


GCA 2008年 2月期 2,930百万円
サヴィアン 2007年12月期 2,601百万円

サヴィアンのデット・エクイティ比率が開示されていないのでよくわかりませんが、この数字だけ見るかぎり議決権比率55:45は妥当なのかもしれません。

しかし議決権比率が1対1に近いからといって統合比率が1:1になる保証は全くありません。発行済株式数が異なれば統合比率も異なるのです。本件の統合比率は1:1なのは、そうなるように日本法人サヴィアン(株)の発行済株式数を調整しているからです。そうまでして「対等合併」を強調する姿勢に私はえげつなさを感じます。

そもそもM&Aとは会社を売り買いすることですから、必ず両社のうちどちらかが売り手でどちらかが買い手になるはずです。それを曖昧にして「対等合併」を前面に出す日本的なやり方はもはや通用しないのです。だからこそ持分プーリングを容認する日本の会計が国際的に孤立しているのです。

何のために対等合併を強調するかといったら、持分プーリングを適用したいためでしょう。監査法人が持分プーリングを認めなければ経営統合そのものを中止することがあり得ると言っているのがその証拠です。

何故持分プーリングにこだわるのかといったらそれはもう“のれん”を計上しなくてすむからに決まっています。日本ではのれんを最長20年で償却しなくてはいけないことになっているので、これを負担することによってEPSが悪化するのを嫌っているのです。

私は8月4日のコラムでも書いたように、のれんを定額償却することには反対です。でも償却することに特段意味がないなら、償却しようがしまいが株価には中立のはずです。というよりあえて税制上非適格の組織再編を選択してタックスメリットをとるのが正しいのかもしれません。

そもそもオフバランスの人的資本がその価値のほとんどである投資銀行のM&Aでは、大きなのれんが発生するに決まっています。この償却費自体に企業価値や株主価値と関係する情報としての価値はないのです。だから堂々と償却して赤字決算でも何でも組めば良いと私は思うのです。

企業価値評価のプロフェッショナルであるGCAはそんことは百も承知のはずです。それにも関らず「持分プーリング」に拘るのは、他の投資銀行同様、M&AによるEPSの改善効果を営業トークにしているからでしょうか?

そんな所にも私はえげつなさを感じます。
【リンク】
「サヴァイアンとの経営統合」GCAホールディングス株式会社(PDF)
http://ir.eol.co.jp/EIR/2126?task=download&download_category=tanshin&id=500511&a=b.pdf

「共同株式移転による経営統合に関するお知らせ」GCAホールディングス株式会社(PDF)
http://ir.eol.co.jp/EIR/2126?task=download&download_category=tanshin&id=500508&a=b.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-03 19:29 | M&A


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