2007年 11月 09日

買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その2

オートバクス CB発行巡り対立
オートバクスセブンが投資会社に割り当て予定の新株予約権付社債(転換社債=CB)を巡り会社と株主が対立している。大株主で英運用会社のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは「割当先の実態が不明で転換価格も低すぎる」と主張。6日付で東京地裁に発行差し止めの仮処分を申し立てた。
(日本経済新聞 2007年11月9日 17面)

【CFOならこう読む】
昨日はこの件、不公正発行という観点からお話ししました。今日は引き続きこの件を有利発行という観点から見てみたいと思います。

シルチェスターは、転換価格2890円(10月25日終値)について、「現在の株価は2005年以降で一番低い水準。実質支配分のプレミアムを付けた価格にすべきだ」と主張しています。転換社債の理論価格は、普通社債の理論価格+新株予約権の理論価格として計算されます。日本ではこれを区分せずに会計処理することが認められている(一括法といいます)ので、それぞれいくらであるかは示されないのが普通です。したがって発行価格から普通社債の理論価格を控除した価額を新株予約権の発行価格とみなしてこれが有利発行に相当するかどうか判断されることになります。

ライブドア事件で東京地裁は、「特に有利なる条件」による新株予約権の発行とは、公正な発行価額よりも特に低い価額による発行をいうところ、新株予約権の公正な発行価額とは、現在の株価、権利行使価格、権利行使期間、金利、株価変動率等の要素をもとにオプション評価理論に基づき算出された新株予約権の発行時点における価格をいう」の判断を示しています。

したがって権利行使価格(転換社債の転換価格)が現在の理論株価より低いとしてもそれ自体は問題にならず、正しく新株予約権の評価がされていれば有利発行とはならないのです。

私は本件で問題だと思うのは、発行される新株予約権が仮にすべて権利行使されると既存株式数の44%の新株となるという大量の新株予約権の発行であるため、希薄化を予期して既存株式の株価が大幅に下落する恐れがあり、オプション評価モデルによって算定される理論価格を希薄化を考慮して修正することが必要であると考えられるが、この修正を行った上で会社は新株予約権の評価を行っていないと思われる点です。(この点例えばブリーリー=マイヤーズ コーポレートファイナンス(第6版)下巻70ページを参照のこと)

希薄化を考慮すれば本件は有利発行に該当する可能性も十分にあると思います。実際株価は10月25日終値2890円から11月9日終値2395円と大きく下げています。この事実を会社は重く受け止める必要があると私は思います。

【リンク】
(株)オートバックスセブン:Yahoo!ファイナンス
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9832.o&d=c&k=c3&h=on&z=m


by yasukiyoshi | 2007-11-09 10:14 | M&A


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