2007年 11月 16日

自社株買いによるEVAの改善―花王のケース

花王、投下資本圧縮を加速 自社株買い最大300億円 EVA低下に歯止め
花王が資本効率の向上に再び動き出した。化粧品分野への先行投資や原材料高で収益が圧縮されるなか、自社株買いによって余剰資金を減らし、経営指標とするEVA(経済付加価値)の低下に歯止めを掛ける。EVAは2008年3月期には前期より悪化するが、2009年3月期から上昇トレンドへの回復を目指す。
(日経金融新聞2007年11月15日7面)

【CFOならこう読む】
EVAとは税引後営業利益から投下資本コスト(有利子負債と株主資本コストの合計)を差し引いて算出される金額で、これがプラスなら、投資家の期待リターンを上回る付加価値を生み出したことになります。EVAを増やすには、
① 税引後営業利益を増やす
② EVAがプラスとなる新規投資を行う
③ EVAがマイナスとなっている既存投資案件から撤退する
④ 資本コスト率を引き下げる

の4つの方法があります。

新聞記事によると300億円の自社株買いにより投下資本が圧縮され、EVAが20億円程度改善するとのことですが、この考え方は間違っていると私は思います。

20億円は、300億円に花王の加重平均資本コスト7%を掛けて計算されたものと思われますが、自社株買いをしても投下資本総額は減少しません。投下資本=ネットデット(有利子負債-余剰資金)+株主資本なので、自社株買いの原資が余剰資金でも借入でもネットデットは300億円増加するのです。

投下資本の圧縮によるEVAの改善は上で説明した③のルートを通じて行われます。これには運転資本の圧縮も含まれます。単に自社株買いをしても③の改善効果が生まれないのは当然といえます。

それでは自社株買いによるEVAの改善効果は全くないのかというとそんなことはありません。上の④の資本コストに影響してくるのです。簡単に言うと投下資本の総額が変わらなくても、その構成が資本コストの高い株主資本が減り資本コストの低い有利子負債が増加するというように変化すれば加重平均資本コストが低下するのです。

ただし花王の株式時価総額は1兆7000億円もあるので300億円程度の自社株買いでは加重平均資本コスト率の低減効果は限定的であると思います。

【花王】
「中間連結財務諸表」花王株式会社 平成20年3月中間決算短信
http://www.kao.co.jp/corp/ir/i03/pdfs/2007s/200709_06fs.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-16 09:07 | 最適資本構成


<< TOBとインサイダー取引規制―...      株式交換比率の決め方―シティ・... >>