2007年 12月 03日

成長率と株価―ユビキタスのケース

ジャスダック証券取引所がベンチャー企業向けに新設した新市場「NEO」。
上場第1号となったユビキタスの株価が乱高下している。話題性に目を向けて短期売買する投資家が多いことが要因だが、背景にあるのが中期的なネオの独自ルール「マイルストーン開示」だという指摘が出ている。

(日経金融新聞2007年12月3日4面)

【CFOならこう読む】
ユビキタスの株価が底堅い展開になっているのは「マイルストーン開示」の影響であるという記事です。マイルストーン開示とは(http://cfonews.exblog.jp/6767571/)、中期的な会社の成長見通しを業績を含めて公表する制度です。研究開発の進捗状況も4半期ごとに明らかにされます。ユビキタスのマイルストーンでは2010年3月期に前期比2.5倍の税引後利益を見込んでいます。

来期予想のEPS(1株当り当期純利益)をベースにPER(株価/EPS)を計算すると120倍程度ですが、2010年予想EPSをベースにPERを計算すると50倍程度なので現在の株価はそれほど割高感はないという投資家の判断があるとの指摘を記事は紹介しています。

ファイナンスの最も基本的な株価評価モデルである一定配当成長モデルによると、株価=来期の配当/(資本コスト-配当成長率)です。これをEPSで割ったものがPERです。

PER=株価/EPS=(来期の配当/EPS)/(資本コスト-配当成長率)=配当性向/(資本コスト-配当成長率)

ここで配当成長率とは持続可能な内部成長率を使うのが普通です。持続可能な内部成長率とは何でしょう。それは増資や借入といった新規の資金調達を行わず、内部留保だけで達成できる売上の成長率(利益の成長率)のことです。

売上が伸びるには在庫や売上債権や固定資産といった総資産も増加させる必要がありますが、言うまでもなく資産を買うにはお金が必要です。大きく売上を増やそうと思ったら大きな資金がいるのです。この資金を内部留保だけで賄える水準の成長率を内部成長率と言うのです。これはすなわち株主資本の成長率に他なりません。

内部成長率=株主資本の変化額/期首株主資本=税引後利益×(1-配当性向)/期首株主資本
(株主資本は、利益のうち内部留保した分だけ増加します)

税引後利益/期首株主資本=ROEと定義なので、内部成長率=ROE×(1-配当性向)となります。したがって成長率はROEに規定されるのです。マイルストーンはこの観点から実現可能かどうかが検証されなければなりません。またこれはすべての経営者(CFOも含めて)が理解していなければなりません。

特にベンチャー企業の経営者は次の言葉を肝に銘じる必要があるでしょう。

急激な成長を遂げている企業にとって、過剰な成長という問題は、持続可能な成長に関する最も重要な問題である。なぜなら、経営の効率化ができないこともあるし、財務方針の変更が必ずしも常に得策とは限らないので、企業の健全性を阻害するような急激すぎる生長もありうるからである。このことは、適切な財務計画を作成できていない中小企業には、特に当てはまる。そのような企業は、売上高の成長を最大化すべきものと見ており、その財務面への影響についてはあまりにも関心が薄い。すなわち急成長には自転車操業の危険がつきまとうということを、理解していないのである。
<中略>
持続可能な成長率を上回る成長は予期して解決すべき財務的な問題を引き起こすものであることを経営陣が理解するならば、このような事態を未然に防止することができる。」
(「ファイナンシャル・マネジメント」ロバート・ヒギンズ著 ダイヤモンド社)
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by yasukiyoshi | 2007-12-03 10:08 | 資金調達


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