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2007年 12月 06日

M&AとEVA-花王のケース

トップに聞く企業戦略 花王 尾崎元規社長 来季からEVAを改善
花王がカネボウ化粧品を買収して間もなく2年。2008年3月期は原材料の影響もあり経常減益になる見通しだが、2009年3月期から増益基調への回復を目指す。国内家庭用品で生み出した資金を化粧品やヘスルケアなど成長分野に積極投資する姿勢は不変だ。尾崎元規社長に今後の戦略を聞いた。
(日本経済新聞2007年12月6日15面)

【CFOならこう読む】
尾崎社長は、「カネボウ化粧品を買収した影響でEVAは前期、導入以来初めて低下した。」と言っています。

買収時点でのカネボウ化粧品の営業利益が約200億円、節税効果が年間約150億円(商標権償却50億円+繰越欠損金80億円)、投資額4200億円、法人税率40%、加重平均資本コスト7%を前提にカネボウ化粧品買収によるEVAへの影響額を計算すると、

200億円×(1-0.4)+130億円-4200億円×7%=▲44億円

となります。

つまり当初からEVAへのマイナスの影響は見込まれていたことになります。EVAで業績評価をしている会社がEVAにマイナスの影響がある投資を実行するのはなかなか勇気がいると思いますが、中長期的に投資の効果を測るしっかりとした評価軸を持っているのでしょう。

花王の評価軸がどのようなものかわかりませんが、EVAを導入している企業は、将来EVAの現在価値の総和がプラスであるかどうかで判断するのが普通です。一般的には、投資の意思決定は、DCF法により行われますが、将来EVAの現在価値とDCF法による正味現在価値は理論的には全く同じものを計算していることになります。

EVAのメリットとして、投資の評価から、単年度の業績評価まで一気通貫でEVAというひとつの評価手法のみでいける所は強調して良いと思います。

【リンク】

EVAについては、ビジネスゼミナール「経営財務入門」〔第3版〕
井手正介・高橋文朗著 日本経済新聞社等を参照してください。

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by yasukiyoshi | 2007-12-06 08:48 | 資本コスト


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