吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 12月 07日

委任状争奪戦-モリテックスのケース

モリテックス役員選任決議、東京地裁が取り消し
画像処理機器メーカー、モリテックスの株主総会での委任状争奪戦を巡る手続きが違法だったとして、筆頭株主で制御機器メーカーのIDECがモリテックスの取締役・監査役選任の決議取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は6日、IDEC側の主張を認める判決を下した。判決は日本でも急増する委任状争奪戦の透明性を巡る議論に大きな影響を与えそうだ。モリテックスは控訴する方針だが、経営の混乱を避けるためにIDECに歩み寄るとの見方もある。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D06095%2006122007&g=S1&d=20071206

【CFOならこう読む】
裁判所が上場企業の役員選任決議を取り消した初めてのケースだそうです。ちなみに裁判長は鹿子木康、あのスティール・ブルドックの裁判を担当した人です。ポイントは2つ。

①モリテックスが株主の議決権行使を促す目的で総額約450万円分のクオカードを配布していた。
議決権行使比率低下に悩む会社が商品券などを配布するケースは少なからずあります。モリテックスの場合、株主に配った葉書に「会社提案にご賛同のうえ、議決権を行使してほしい」と書かれていたことを裁判所は問題視し、「会社法で禁じる利益供与に当たる」と認定しました。会社提案に賛成した株主にのみ500円のクオカードを配布するとの誤解を株主に与えた、ということです。

②モリテックスが「IDECの委任状には(モリテックスの)会社提案の賛否論がない」との理由で集計対象から除外していた。
モリテックスは同社側の提案が出席株主の過半数の賛成を得たとしていたが、その際IDEC側の委任状を集計の母数に含めていませんでした。これは「IDEC側の委任状は証券取引法が定める会社提案の賛否論がない」ことをその根拠としたものですが、地裁では、株主のIDECは総会の招集通知を受け取るまでモリテックスの株主提案を知ることができないので、物理的に委任状に会社提案の賛否欄を設けることができないという面を考慮し、「会社側の賛否欄がなくても有効」と判断しました。

常識的に考えて会社とIDECが委任状争奪戦を行っている場面で、IDEC側の委任状はIDEC提案賛成、会社提案反対に決まっているわけで、会社の理屈は相当無理があると思います。

地裁の判断は妥当であると思いますが、IDEC側にも委任状争奪戦に向けて株主に十分な情報開示を行ったかどうかについては疑問があり、その点IDEC側にも少なからず問題があったと私は思います。

何故モリテックスでこんなゴタゴタが起きているかというと、モリテックスの個人株主比率が67%と非常に高いからです。今回の件をきっかけにまたぞろ安定株主工作(株式持ち合いも含む)に走る上場企業が増えることが危惧されます。

【リンク】
2007年6月19日「株式会社モリテックスが発送されました2007 年6 月14 日付「『議決権行使書』ご返送のお願い」と題する文書等について」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj070619.pdf

2007年5月18日「(追加)株式会社モリテックスからの必要情報リストによる質問事項に対する
当社の回答について」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj070518.pdf

平成19年6月1日「当社中期経営計画『GLOBAL10』とIDEC社株主提案との比較について」株式会社モリテックス
http://www.moritex.co.jp/home/ir/070601_3.pdf

2007年12月6日「株式会社モリテックスに対する株主総会決議取消請求訴訟の判決に関するお知らせ」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj071206.pdf



by yasukiyoshi | 2007-12-07 08:58 | M&A


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