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2007年 12月 08日

ベンチャー企業の資金調達-そーせいのケース

そーせい、新株予約権で最大50億円調達
創薬ベンチャーのそーせいグループは7日、野村証券を引受先とする新株予約権を発行すると発表した。調達額は最大で50億円だが、株価動向などで下回る可能性がある。調達した資金はがん性突出痛治療薬などの開発に充てる。第三者割当増資などで一度に調達をするより、株価や研究開発の進ちょくを勘案し機動的に調達できる利点がある。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20071208AT2E0700U07122007.html

【CFOならこう読む】
行使価額修正条項付の新株予約権による資金調達です。当初の行使価額を現在の株価(7日終値)の5割増しとディープ・アウト・オブ・ザ・マネーの水準に設定し、行使価額の修正開始を決定したなら(決定するのは会社です)直前1週間の平均株価の90%に行使価額が変更されるというタイプの新株予約権です。

ただし希薄化に一定の歯止めがかかるよう以下の措置が講じられています。

(ⅰ)行使価額の修正開始決定後、5 連続取引日の株価終値が「リセット価額(※)」を下回った場合、その翌取引日以降、行使価額は当初の行使価額に自動的に戻ることとします。
※リセット価額とは、「行使価額の修正開始日時点の株価の80%」か「下限行使価額92,000 円(=発行決議日の株価終値の50%)」のいずれか高い方を指します。

(ⅱ)下限行使価額が発行決議日の株価終値の50%である92,000 円に設定されています。

(ⅲ)本新株予約権の行使により発行される株式数の累計が30,600 株(発行決議日時点における発行済株式数の26%)を超えるような行使を行わないことが、割当予定先に義務づけられます。

つまるところ「行使価額を株価の90%とする」(=有利発行にならない)ための商品設計であるという意味ではMSCBと本質的には変わりません。

アーリーステージのベンチャーが資金調達をする場合、相当の甘味剤が必要なことは理解できます。しかしそもそも株式というものがリスクを分散するために存在するのですから、株主割当により必要資金を集めるのが自然だと私は思います。さて私がよくわからないのはこのオプションのプライシングです。

この新株予約権は行使価額ベースで5億円×10回=50億円相当分発行されます。1回分の新株予約権(行使価額ベースで5億円分)のプレミアムはわずか1,200,000円の設定です。そーせい株式の90日ボラティリティは58.9%です。いくら5割増に行使価額を設定したとしてもこのボラティリティを使ってブラック・ショールズ・モデルで計算すると全く違う金額がはじき出されます。

しかもこのオプションは行使価額の修正条項が付いているのですから、さらにもっと価値があるはずです。発行要項には、新株予約権の価格の根拠として次のような説明があります。
「一般的な価格算定モデルであるブラック・ショールズ・モデルによる算定結果を基礎としつつも、当社の資本調達目的実現の達成可能性と本新株予約権者の当社に対する投資リスクを勘案して、本新株予約権の発行により企図される目的が達成される限度で、当社株主にとって有利な払込金額であると判断した、240,000 円を本新株予約権1 個あたり払込金額とした。」
せめてボラティリティは何を使ったかくらいの説明がないと、開示としては全く不十分でこれでは有利発行であるかどうかの判断もできません。

【リンク】
平成19年12月7日「第三者割当による第15 回乃至第24 回新株予約権発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付新株予約権の発行)」そーせいグループ株式会社
http://www.sosei.com/jp/press/pdf/071207-j_press.pdf


by yasukiyoshi | 2007-12-08 19:41 | 資金調達


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