2007年 12月 22日

製薬大手 株主配分、高水準続く

製薬大手の株主配分が2008年3月期も高水準を維持しそうだ。大手4社の2007年3月期の株主配分総額(配当金と自社株買いの合算)は4社合算純利益を上回ったが、今期も9月中間期で通期予想純利益の半分弱を株主に配分、通期では利益のほとんどを株主に返すペースが続いている。業績好調で潤沢な手元資金がさらに積み上がりかねない状況の中、自己資本利益率(ROE)など資本効率の悪化を防ぐのが狙いだ。
(2007年12月22日 日本経済新聞15面)

【CFOならこう読む】
同じ買収リスクにさらされている製鉄会社の最近の動きと比較すると面白いですね。M&Aが市場型資本主義において不可欠である理由は、経営資源がより効率的に経営されるような資源配分の効率化を促すからです。

希少な資源を効率的にマネジメントできない経営者の手から剥奪し、より効率的にマネジメントできる経営者に移動させることによって社会全体の富が増大すると考えられているのです。ですから買収されたくない経営者(ほぼ全ての経営者)は、他者よりもより効率的に経営する他ないのです。資本の観点から言うと”資本効率の悪化を防ぐ”ために余剰資金を株主に還元することが重要なのです。

ハーバード大学のとても著名な教授Michael C. JensenがM&Aについて、次のように言っています。M&Aの本質を極めて的確についていると思うので紹介します。
「経済的な分析と証拠は、テイクオーバー、LBO、そして企業再構築が、過去20年間において、主要な競争的変化に経済が適応するのを助ける、重要な役割を果たしてきたことを示している。代替的な経営チーム及び企業資産をコントロールするための組織構造の競争は、莫大な経営資源が、より素早く、最も有効活用される場所に移動することを可能にした。その過程において、株主だけでなく経済全体に対しても、かなりの利益が生み出された。1977年から88年の12年間における合併、買収、レバレッジド・バイアウト、及びその他の企業再構築による売手企業の株主の全体的な利益は、合計5000億ドル以上に達した。私は、同期間における買手企業の株主の利益が、少なくとも500億ドルになると推定する。これらの利益は、同時期に企業セクター全体で、投資家に対して支払われた現金配当合計額の53%に等しい。 合併と買収は、企業の方向性あるいは資源の利用について、戦略的な変化を求める新技術あるいは市場状況に対する、一つの反応である。既存の経営陣と比べて、新たなオーナーはしばしば、既存の組織構造の主要な変更をよりうまく実行できる。あるいは、レバレッジド・バイアウトは、経営陣に対する起業家的インセンティブを生み出すことと、大きな公開企業に内在する機動性を妨げる集権的官僚的障害を取り除くことにより、組織的変化をもたらす。
 経営陣が組織の実質的所有権を持つ場合、企業のフリー・キャッシュフローの支出に関する、株主と経営陣の間の利害衝突は軽減される。経営陣のインセンティブは、株主価値を無視して帝国を築くことよりも、企業価値を最大化することに焦点が絞られる。最後に必要となる負債の返済が、経営陣の配当支払に関する裁量と現金を過剰保有する傾向に置き換わる。こうした効率性の実質的な向上が生み出されるのである。」
(コーポレートファイナンスの原理 〔第6版〕 Stephen A. Ross他 1210ページ)

買収されないように入り口を閉じる会社と、買収されないようにさらなるROEの向上を目指す会社、どちらが資本主義経済における本質と合致しているか明らかだと私は思います。

【リンク】
「新日鉄・住金・神鋼、株式の相互追加取得を発表」日経ネット
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D190AZ%2019122007&g=S1&d=2
0071219


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by yasukiyoshi | 2007-12-22 11:24 | M&A


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