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2008年 01月 05日

オートバックスセブンの新株予約権付社債発行差止事件の地裁判断

昨年話題にした事例の中でその顛末をお話ししたかったけれど、その機会を逸してしまったものがいくつかあります。オートバックスセブンの事例もそのひとつです。
オートバックスセブンの新株予約権付社債に関する私の記事は次の通りです。

買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その2
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その3
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その4

記事の中で東京地裁の判断は理解できない旨書きましたが、具体的に裁判所の判断の具体的な内容については不明でした。この件商事法務No.1816の52ページに簡単な記事が掲載されていましたので、今朝はこれを取り上げます。

記事は不公正発行であるかどうかの裁判所の判断について書いていません。有利発行であるか否かが本件における主な争点であったとして、地裁の有利発行でないとした理由を次のように記載しています。ちなみに裁判長はまたまたあの鹿子木康氏です。

「本件における主な争点は、本件新株予約権付社債が有利発行に当たるか否かについてであり、オートバックスセブンの委託を受けたブルータス社の算定では、モンテカルロ・シミュレーションを用いて、本件新株予約権の公正な価値を198万円としていた。これに対し債権者は新株予約権の公正な価値は第1回が2498万円、第2回は876万円であり、本件新株予約権付社債は特に有利な条件で発行されるものであると主張した。
 鹿子木裁判長は、本件社債と普通社債との利率の差を、オートバックスセブンとR&Iの格付け同じ他社の普通社債発行事例のスプレッド等と比較するなどした上で、オートバックスセブンが5年満期の普通社債総額650億円を発行する場合に想定される利率を1.787%としたブルータス社の算定に不合理はないと判示した。そして、額面金額1億円の本件新株予約権の対価は、393万5000円(1.787%-1%)×1億円×5年間)で、これを1.787%の割引率で割り戻すと、発行時点の現在価値は373万円となることが一応認められるとして、(中略)有利発行に該当するということはできないとして、債権者の申し立てを却下したものである」

【CFOならこう読む】
行使価格が現在の株価と同じ価格であるならこのような計算は合理性があるのかもしれませんが、付与株式数が既存株式数の44%と大きな希薄化が伴う本件のような新株予約権を評価する場合には、希薄化を予期して既存株式の株価が大幅に下落する恐れがあり、オプション評価モデルによって算定される理論価格は希薄化を考慮して修正することが必要であると考えられますが、上の評価にはこれが勘案されておらず、ナンセンスと言わざるを得ません(この点例えばブリーリー=マイヤーズ コーポレートファイナンス(第6版)下巻70ページを参照のこと)。

実際に株価は10月25日終値2890円から11月9日終値2395円に大きく下げた事実を裁判所はどう考えるのでしょうか。さらに言うなら373万円を裁判所が公正価値と判断するなら、何故会社の198万円という評価が有利発行に相当しないと言えるのか理解に苦しみます。

ライブドア事件で東京地裁は、「特に有利なる条件」による新株予約権の発行とは、公正な発行価額よりも特に低い価額による発行をいうところ、新株予約権の公正な発行価額とは、現在の株価、権利行使価格、権利行使期間、金利、株価変動率等の要素をもとにオプション評価理論に基づき算出された新株予約権の発行時点における価格をいう」の判断を示しています。この判断と本件の判断は明らかに矛盾しています。

【リンク】
2007年10月26日「第三者割当により発行される無担保転換社債型新株予約権付社債の
募集に関するお知らせ」株式会社オートバックスセブン
http://www.autobacs.co.jp/seven/release/news.php?id=939&PHPSESSID=f4a51cbad8
df6bdce98f6de2d10a561c


2007年11月7日「当社に対する新株予約権付社債発行差止仮処分の申立てに関するお
知らせ」株式会社オートバックスセブン
http://www.autobacs.co.jp/seven/release/news.php?id=944


by yasukiyoshi | 2008-01-05 10:51 | M&A


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