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2008年 01月 10日

委任状争奪戦ーイオン・CFSのケースその4

ドラッグストア大手CFSコーポレーションが計画する調剤薬局大手アインファーマシーズとの経営統合を巡り、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)など議決権行使助言大手二社が統合案に賛成するよう機関投資家などに呼びかけたことが9日、明らかになった。CFSと、統合に反対する筆頭株主イオンは委任状争奪戦を展開しており、今回の助言が影響を与える可能性がある。
(日本経済新聞2008年1月10日 13面)

【CFOならこう読む】
ISSはCFSコーポレーションがアインファーマシーズと統合する臨時株主総会の議案に賛成する理由として次のように説明しています。
①イオンとの協業より、アインとの統合で調剤薬局併設店舗を増やした方が企業価値が高まる。
②株式移転比率もCFS株主に不利な水準とは言い切れない。
また米グラス・ルイスは株価低迷時の統合について「最適でない」としつつも「厳しい事業環境を考えると、統合でコスト削減や競争力強化を目指した方がCFSの株主利益を高める」と指摘したとのことです。

いずれも私には妥当な見解だと思えます。

何度もお話ししているように問題の根幹は、「資本提携」の持つ意味の曖昧さにあります。15%程度の持分の持つ意味は、”親子の盃”なのか”お近づきのしるし”なのか極めて曖昧です。財務的な観点から言うと、「資本提携」と言えども投資であることに変わりはありません。NPVがプラスでない投資は実行すべきではないのです。
そして15%程度の持分しか持たない投資の将来キャッシュフローは、配当を除き基本的にはゼロと見なすべきでしょう。イオンが委任状争奪戦で説明すべきは自社のグループ戦略です。

【リンク】
「2007年 12月 11日 委任状争奪戦ーイオン・CFSのケース」
http://cfonews.exblog.jp/6925859/

「2007年 12月 18日 委任状争奪戦ーイオン・CFSのケースその2」
http://cfonews.exblog.jp/6959604/

「2007年 12月 21日 委任状争奪戦ーイオン・CFSのケースその3」
http://cfonews.exblog.jp/6975070/


by yasukiyoshi | 2008-01-10 08:46 | M&A


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