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2008年 02月 19日

一六堂の社長 社員に自社株贈与

居酒屋チェーンの一六堂は18日、柚原洋一社長は保有する同社株の一部を社員に無償贈与すると発表した。新株発行を伴うストックオプションと違って、一株利益が薄まったり、費用負担が生じることがない。既存株主の利益や会社業績に悪影響を与えずに、社員の勤労意欲を高める。
(日本経済新聞2008年2月19日16面)
【CFOならこう読む】
プレスリリースによると本件の概要は以下の通りです。
1.贈与の内容
 贈与日(平成20年2月21日)時点で在籍する従業員のうち、昨年度からの組織変更に伴い主要役職に従事する者15名を対象に、過年度までに実施したインセンティブ等の状況を加味し、普通株式を贈与
2.贈与する株式数
 240株
3.贈与日(予定)
 平成20年2月21日
4.贈与の目的
 近年入社の従業員を含めた主要役職者へ付与し、既存従業員とのインセンティブの平衡を図り、全従業員一丸となり、当社の株式保有を通じた業績向上及び株主価値の最大化への意欲を一層高めるために実施するもの
18日終値で計算した譲渡総額は1372万円になります。一人当たりの譲渡株数が公表されていませんが、一人当たりの平均譲受株式は240株÷15=16株、91万5千円相当と計算されます。

税法上の取扱いが気になるところですが、個人間売買により株式を譲渡した場合、時価よりも譲渡代金が低くても、課税対象となるのは実際の譲渡代金であり、時価で課税されることはありません。一方譲受人には贈与税が課税されます(「M&A実務ハンドブック第3版」 鈴木義行編著 中央経済社)。

無償譲渡を受けた者が、その対価と株式の時価に相当する金額を、譲渡人から贈与によって取得したものとみなされ、納税の義務を負うことになります(「租税法第11版」 金子宏著 弘文堂 488ページより)。
ただし贈与税には基礎控除が110万円あるので(平成19年4月1日現在法令等)、譲渡された株式の時価がこれ以下であるなら贈与税は課税されません。

したがって一六堂の場合、18日終値ベースで計算する限り、12株の無償譲渡を受けた社員に対する贈与税の課税は生じないものと思われます。

【リンク】
平成20年2月18日「当社代表取締役社長保有株式の従業員に対する贈与に関するお知らせ」株式会社一六堂
http://ir.eol.co.jp/EIR/3366?task=download&download_category=tanshin&id=531558&a=b.pdf

平成19年4月1日現在法令等「 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」国税庁
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm
【関連過去記事】
2007年12月20日「テクノアルファのケース」
http://cfonews.exblog.jp/6969550/


by yasukiyoshi | 2008-02-19 08:52 | 税制


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