2008年 02月 27日

リキャップCBーヤマダ電機のケース

CB1500億円 自社株買い700億円 ヤマダ電、同時に実施
ヤマダ電機は26日、ユーロ市場で新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で1500億円発行する一方、700億円の自社株買いをすると発表した。CB発行で得た資金を自社株買いに充て一株利益を高めつつ資本効率の改善につなげる狙い。CB発行と自社株買いを同時に行う手法は米の有力企業の間で急速に普及しつつある。日本ではヤマダ電機が初めて。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
CBによって調達する1500億円の資金使途を会社は次のように説明しています。
【調達資金の使途】
本資金調達による発行手取金(グリーンシューオプション分を含む。)の資金使途は以下を予定しています。

① 設備投資資金として調達した短期借入金の返済に約800 億円を充当する予定です。
② 自己株式取得資金に約700 億円を充当する予定です。本新株予約権付社債の払込日以前に自己株式を取得した場合、かかる取得資金として調達したブリッジローンの返済に充当する可能性があります。
ヤマダ電機の平成20年3月期第3四半期時点の自己資本比率は42.3%でした。これが700億円の自己株取得により33.7%まで下がることになります。D/E比率で見ると1.36から1.97へ上昇します。最近出版された「日本企業のコーポレートファイナンス」(砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳著 日本経済新聞出版社)によると、格付けは1ノッチ以上ダウンすることになります。節税効果がこの格下げによる資本コスト上昇の影響を上回れば、負債による自己株取得は合理的と言えます。

ただし本件は上の説明のような教科書的な財務戦略を志向したものではない可能性もあります。家電業界は今後M&Aによる再編が予想され、ヤマダ電機はその中心的なプレイヤーと目されています。TOBをかけるにはキャッシュが必要です。そのキャッシュを今回CBで調達したというのが本当の所かもしれません。それをキャッシュのままで持っていると業界他者の警戒心を必要以上にあおり、今後のM&A戦略に影響をあたえることにもなりかねないので、その意図を隠すために一旦金庫株で持つというのは十分考えられるところだと思います。

それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。

そして次のように転換可能性の低い商品設計にすることでエクィティ系の性格を相当程度緩和しているのです。
「時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定することで、発行後の一株当たり利益の希薄化を極力抑制するとともに、転換制限条項(※)の付与により、株式への転換可能性を抑制することで、既存株主に配慮した負債性の高い商品性としております。

※転換制限条項について
株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、投資家が新株予約権を行使できない条項をいいます。本件においては原則として、前四半期の最終30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が転換価額の125%を超えた場合に限って、投資家は新株予約権を行使することができます。ただし、償還期限の6ヶ月前の日以降、いつでも新株予約権の行使が可能となります。」
(2008年2月26日プレスリリース)

【リンク】
平成20年1月31日「平成20年3月期 第3四半期財務・業績の概況」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/kessan/2008/080131.pdf

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf

日本企業のコーポレートファイナンス
砂川 伸幸
4532133459



by yasukiyoshi | 2008-02-27 12:57 | 最適資本構成


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