2008年 03月 08日

退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法

「株価が少しでも上昇してくれれば…」住生活グループの伊奈啓一郎取締役は3月末を控えたこの時期、日経平均株価の動きにやきもきする日々を過ごしている。株式相場の低迷によりグループの年金基金の運用利回りが悪化、2008年3月期に多額の年金費用の計上を迫られる可能性が高まっている。
昨年4月から今年1月までの運用成績はマイナス7%前後。今年度は最大マイナス10%の悪化を見込む。同社は「数理計算上の差異」と呼ばれる年金運用の利差損益を発生年度に一括償却している。マイナス10%の場合、この「差異」は約80億円発生し、今期の予想連結営業利益(500億円)を大きく押し下げる。
大和ハウス工業、住友林業も「差異」の発生年度に一括償却。東京ガス、三菱レイヨン、日清食品は翌年度に一括償却している。運用収益が期待収益を上回った場合は増益要因となるが、現在のような相場環境では強烈な逆風だ。「投資家から本業が原因だと誤解されては困るのだが」と伊奈取締役は心配する。

(日本経済新聞2008年3月8日 17面 揺れる)


【CFOならこう読む】

「数理計算上の差異」の費用処理方法は次の組み合わせがあります。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

つまりa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りあるのです。

年金資産の数理計算上の差異はいわゆる含み損なので処理を先送りせず、一括処理することが望ましいと考える経営者も少なからずいます。2005年3月期の調査では8%~10%の企業一括処理を選択しているとの報告があります(退職給付会計の実務 泉本小夜子 日経文庫)。

 今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。

【リンク】
退職給付会計の知識 (日経文庫)
泉本 小夜子

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by yasukiyoshi | 2008-03-08 10:24 | 会計


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