2008年 03月 20日

HOYA・ペンタックスの買収-続報

HOYAは、昨年夏にTOB(株式公開買い付け)で子会社化したペンタックスを本年三月末に吸収合併する。当初はペンタックスを完全子会社化する計画でしたが、合併により経営統合を加速する。ペンタックスの社名は消えるが、ブランドとしては残す。 HOYAは昨年九月末時点でペンタックス株の九〇・八%(議決権ベース)を保有。残りの株主に「合併対価」としてTOB価格と同じ一株七百七十円を払う。
(2007年10月30日 日本経済新聞を加筆・修正)
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本件、昨年10月18日(http://cfonews.exblog.jp/6644277/)に取り上げてから、フォローの機会を逸していました。今日は休日で、いつもは休載するのですが、いつかやりますといつまでも先延ばしするのも気分が悪いので、今日取り上げることにします。

まずは子会社化したことによるのれんの取扱いについてですが、決算発表の際江間CFOは次のように説明しています。
「ペンタックス㈱との経営統合に絡み、9 月末のペンタックスのバランスシートを時価ベースで連結しています。今後ののれんの償却対象資産および償却期間をご説明しますと、ペンタックス㈱の純資産簿価451 億円、時価純資産の増加額は79 億円で、合計すると530 億円で、このうちHOYAの持分は481 億円(90.62%※)です。差額の49 億円が少数株主持分です。HOYA はTOB でペンタックス株式の90%超を948 億円で購入しましたので、これからHOYA の持分481 億円を引きますと、のれんが467 億円となります。償却対象資産は、のれん467 億円、特許権等を時価評価した135 億円、すでにペンタックス㈱で持っているのれん67 億円があり、合計すると669 億円となります(日本基準)。償却期間は、特許権等の時価評価の分が8 年、その他が10 年です。10 月1日以降、定額償却していきます。(※注:ペンタックス自己株式保有分を含む)」
当初20年で償却と発表していましたが、10年に変更になっています。最近の会計実務(監査法人の指導による部分が大きい)では、10年を超える償却は少なく、そういった傾向に合わせたものと思われます。会計上ののれんの償却費はEPSを悪化させるので、会社としてはできるだけ長い期間で償却したいというのが本音でしょうが、なかなかそれも通らないというのが現実です。私はのれんを償却すること自体が間違いだと考えていますので、のれんの償却期間は10年と20年のどちらが妥当かという議論には正直あまり興味がありません。

10月18日にも書きましたが、連結財務諸表上計上されるのれんは会計固有のもので、税務上認識されません。3月末に予定されている合併によりこののれんが税務上も認識されることになります。

まずこの合併は現金交付型の合併なので、税務上非適格合併となります。非適格合併の場合、HOYAはペンタックスの資産・負債を時価で受け入れることになるので、のれん相当額が資産調整勘定としてHOYAの税務上の資産に計上されます。

一方被合併法人であるペンタックス側ではのれん相当額の譲渡益が計上されるので、時間価値を考慮しなければこの部分で損得はないことになります。但し非適格合併の場合、抱き合わせ株式(つまりHOYA保有のペンタックス株式)に対して時価で合併新株の割当てを受けたものとして計算し、その後自己株式の償却を行ったものとして計算されることに注意が必要です(法人税法施行例①21(3))。

その結果、みなし配当と株式譲渡損益が発生することになるのです。親会社が保有する子会社株式の帳簿価額が子会社の資本金等の額に保有比率を乗じた金額を上回るときは株式譲渡損が発生します。みなし配当は全額益金不算入となるので、株式譲渡損の分だけタックス・メリットが生じることになるのです。適格合併の場合、みなし配当と株式譲渡損の両建て計上はされず、株式譲渡損のタックス。メリットを享受できません。HOYAが現金交付型の吸収合併を選択したのはこれが理由であると思われます。

なお会計上は合併後も連結上ののれん未償却残高相当額が個別財務諸表上に計上されることになります(企業会計基準適用指針第10号 207項(1))。但し償却期間は税務上5年間の均等償却(法人税法62の8④⑤)であるのに対し、会計上は20年内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する(企業結合会計基準三2.(4))点が異なります。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-03-20 11:49 | M&A


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