2008年 03月 21日

武田薬品、米合弁会社を完全子会社化へー続報

武田、米合弁の完全子会社化発表・4月中に会社分割
武田薬品工業は20日、米製薬会社アボット・ラボラトリーズとの合弁会社TAPファーマシューティカル・プロダクツ(イリノイ州)を完全子会社化すると正式発表した。4月中にTAPの会社分割を実施した上で、完全子会社化し、7月に米国の全額出資子会社と合併。4000人弱の営業体制を整備するなど米国の販売、開発機能を一本化し、競争力を強化する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080321AT1D2001620032008.html
【CFOならこう読む】
一昨日いかにタックスコストを最小化するかがポイントであるというお話しをしました(http://cfonews.exblog.jp/7549073/)。
昨日スキームの概略が発表されました。詳細がわからないので推測するしかないのですが、タックス・フリーのsplit-offの手法を利用するのではないかと思われます(あくまで私の推測です)。split-offとは次のような手法です。

すなわち、TAP社は前立腺癌・子宮内膜症治療剤「ルプロン・デポ」等に関する事業を分割しTAP社の100%子会社を設立します。次にこの子会社株式をアボット社に対して、アボット社の所有するすべてのTAP社株式との交換において分配するといった手法です。

武田とアボット社のTAP社に対する出資比率は50:50なので、split-offを実行するには分割事業の価値も50:50でなければなりません。プレスリリースではこの点、「なお、アボット社および当社にとって均等な価値での会社分割とするための調整については、本会社分割後、別途実施します」としています。

 米国で法人分割を非課税として認める理論の背後に次のような思想があります。
「法人資産が分割された法人のなかに留まる限り、(株主および法人の双方に対して)租税を課すべきないという考え方がある。つまりそれは、どのような組織で法人事業を行うべきかという経営上の選択に、税法が干渉すべきでないということである(課税の中立性)。もし法人分割をすることによって、株主および法人が課税されることになるなら、法人を分割することはそれだけ困難となり、事業に関する最適な資本構成への移行が阻害されることになるからである。」(「企業取引と租税回避」渡辺徹也著 中央経済社 133頁)。

「例えば、資産A、Bと株主a,bからなる法人が、資産A-aおよびB-bの法人に分割された場合、A-bおよびB-aの支配は切断されるという意見がありえるだろう。しかし、アメリカ法では、このような非按分型分割も、投資持分継続性と事業継続性を満たしていると考えられている。」(「企業組織再編成と課税」渡辺徹也著 弘文堂 285頁)
一方わが国ではこのような取引をタックス・フリーで行うことはできません。split-offどころかspin-offすらグループ内再編の要件を満足しないとできないのです(上場会社に50%超保有する支配株主が存在しないのが普通ですから、そうするとグループ内再編の要件を満たしません)。

またそもそも非按分型分割は、法人税法2条12号の11柱書き(分割承継法人の株式が按分的に分配されることを要求する規定)により非適格とされるのです。本件とは直接関係ありませんが、昨今、適格合併により1つになった会社が何らかの事情により2つに分かれたいというニーズが少なからずあるように思います。これを非課税で行うことができないことも大問題だと私は思います。

【リンク】
武田、米合弁の完全子会社化発表・4月中に会社分割
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080321AT1D2001620032008.html

企業取引と租税回避―租税回避行為への司法上および立法上の対応
渡辺 徹也
450279550X


企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)
渡辺 徹也
4335320574



by yasukiyoshi | 2008-03-21 13:39 | M&A


<< 子会社株式、持分法適用会社株式...      HOYA・ペンタックスの買収-続報 >>