2008年 03月 24日

株主名簿の閲覧を拒否できる場合

対立型総会増加 株主提案に新たな壁 -法務インサイド
6月の株主総会シーズンを前に、株主提案に絡む新たな課題が浮上している。株主名簿を閲覧できず、事業会社を攻める株主にとって大きな足かせとなるケースが増加。
(中略)
「御社の事業領域は当社と競争関係にあり、株主名簿は見せられません」
ADSL大手のイー・アクセスは、アッカ・ネットワークスから届いた一通の文書で、株主への手紙送付断念に追い込まれた。イー・アクセスは今年1月、筆頭株主としてアッカ経営陣刷新を要求。手紙はこの株主提案への支持を訴えるのが目的だった。
アッカ株主の約3割は個人が占め、その動向は株主提案の勝敗を左右しかねない。「アッカ株主が当社の提案を検討できないのは株主利益に反する」(イー・アクセスの千本倖生会長)。同社はインターネット上で支持を呼びかけるしかなく、結局、株主提案を取り下げた。

(2008年3月24日 日本経済新聞 19面)
【CFOならこう読む】
会社法125条3項は、株主及び債権者による株主名簿の閲覧の請求があった場合には、次のいずれにかに該当する場合を除き、これを拒むことができないとしています。
1 当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という)がその権利又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
2 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
3 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
4 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
5 請求者が、過去2年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
この点、江頭憲治郎氏は著書株式会社法の中で次のように説明しています。
「株主・債権者による株主名簿の閲覧・謄写請求が権利の確保・行使に関する調査以外の不当な意図・目的に基づく濫用的なもの(いやがらせとか、ダイレクトメール等への利用を目的とした名簿収集等)であることを立証した場合には、会社は、その請求を拒むことができる。」
そうすると、アッカ・イーアクセスのケースは明らかに共益権の行使を目的としており、”権利の確保・行使に関する調査以外の不当な意図・目的に基づく濫用的なもの”でないにも拘らず、上記会社法125条3項3号の規定により株主名簿の閲覧の請求を拒否されたもので、この規定の存在そのものに疑問があると言わざるを得ません。
新聞記事によると法務省で会社法制定に当たった葉玉弁護士は、「取引先や親密先が株主の場合があり、(拒否するのは)非合理的と言えない」と話しているそうですが、そういった弊害を斟酌する必要があるのは未上場企業で、上場企業の場合には「名閲覧拒否がネックになり、競争的な企業買収の企業買収の妨げになる」(大杉謙一教授)ことの方が問題です。こんな風に考えていくと、やはり上村教授の主張する公開会社法の必要性を一層強く感じるのです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-03-24 08:30 | M&A


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