2008年 03月 26日

日本の株式市場は効率的か?-出光興産のケース

出光興産株、8日続落 石油製品、営業赤字に
出光興産の株価が急落している。25日の終値は前日比2%安の7420円で、8営業日連続で下落した。原油高騰による収益圧迫が懸念された。原油在庫の資産計上の方法の違いも響き、堅調な株価の同業他社とは対照的な値動きとなった。
出光興産は2008年3月期の連結経常利益を前期比50%減の540億円と見込む。原油高騰の中、競争激化で石油製品への価格転嫁が遅れており、石油製品部門は110億円の営業赤字に転落する見通しだ。
一方、同業他社の25日終値はコスモ石油が2%高、新日鉱ホールディングスが3%
高、新日本石油が前日と同じ。明暗が分かれた理由は「在庫の資産計上の方法の違いが響いた」(みずほ証券の塩田英俊シニアアナリスト)との見方が強い。
新日本石油など3社は総平均法を採用。原油価格が上昇すると、期初の割安な在庫も原価に含めるため会計上の原価が下がり、利益がかさ上げ(在庫評価益)が生じる。一方、出光興産が採用する後入先出法は在庫評価益が発生しない。
石油元売大手4社の今期業績は、在庫評価の影響を除くとそろって実質経常減益の見通し。原油高騰で、各社とも収益実態は厳しさを増している。

(2008年3月26日 日本経済新聞 17面)
【CFOならこう読む】
ファイナンスという学問では市場の効率性を3つのレベルで定義しています。

第1のレベルは現在の証券価格が過去の価格に含まれている情報を反映しているというもので、ウィークフォームでの効率性と言います。
第2のレベルの効率性は、現在の証券価格が過去の価格だけでなはなく、すべての公開情報を反映しているとするもので、これはセミストロングフォームの効率性と言います。
そしてすべての情報が証券価格に反映されているとするレベルをストロングフォームでの効率性と言います。

市場がセミストロングフォームのレベルで効率的であるなら、会計方針の選択が株価に影響を与えることはありません。この点、ブリーリーとマイヤーズはMBAのためのテキスト「コーポレートファイナンス」(日経BP社)の中で次のように説明しています。
「FIFO(先入先出法)によれば、先に在庫として積まれた商品の原価を費用控除する。LIFO(後入先出法)によれば、倉庫に最後に到着した商品の原価を費用控除する。インフレ率が高いときには最初に購入した商品のコストは、通常最後に購入した商品のコストよりも低い。したがって先入先出法によって計算された利益は、後入先出法によって計算された利益よりも大きくなるように見える。

さて、これが、プレゼンテーションの問題にすぎないのであれば、後入先出法から先入先出法に変更することは、何ら実害をもたらすものではないだろう。しかし、内国歳入庁、株主への報告に用いられるのと同じ方法を用いて企業の税金が計算されるべきだと主張している。したがって、後入先出法を用いることにより当面の税金支払いが軽減されている場合には、見かけ上の利益も低くなっていることになる。

 仮に市場が効率的であるならば、投資家は見かけ上の利益の減少をもたらすものであっても、後入先出法への会計の変更を歓迎するだろう。BiddleとLindahlはこの問題を研究し、このとおりのことが実際に起きており、後入先出法への変更は通常以上の株価の上昇をもたらすと結論付けた。株主は、計数の背後を読み、節約された税金の額に焦点を当てているようであった。」

つまり日本の株式市場がセミストロングフォームで効率的であるなら、出光興産の株価は上がり、コスモ石油の株価は下がらないといけないのです。しかしそうはならず、単純に利益の増減によって株価が上下するということなら、少なくともセミストロングフォームのレベルで日本の株式市場は効率的でないということになります。

このことは、日本企業の株価が全く実態を表していない可能性があることを意味しています。これは価値創造の担い手であるCFOにとっては由々しき問題です。しかしただ嘆いているだけでは何も変わりません。市場に理解してもらえるようなわかり易い言葉で、会計情報の持つ意味を伝えていく努力が求められるのだと思います。

【リンク】
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=965160

http://www.cosmo-oil.co.jp/ir/financial/valuable/2007/pdf/val2007_05-05.pdf


by yasukiyoshi | 2008-03-26 09:32 | 会計


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