吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 04月 07日

適用期限が延長されなかった租税特別措置

期限切れの税制特例、混乱回避へ広報強化・政府
ガソリンなどの租税特別措置の期限切れを受けて、政府が広報体制を強化している。ホームページに専用サイトを開設したり、相談窓口を設けたりなど対応はさまざま。ガソリンや投資減税などの特例が4月からどうなったかを消費者や企業に情報提供し、混乱を最小限に抑える。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080406AT3S0402G05042008.html

【CFOならこう読む】
適用期限が延長されなかった租税特別措置には次のような実務上影響が大きいものが含まれています。

・試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(控除率の加算措置に係る部分)
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
・交際費等の損金不算入
・欠損金の繰戻しによる還付の不適用
・退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止

租税特別措置とは、なんらかの政策目的の実現のために、特定の要件に該当する場合に、税負担を軽減しあるいは加重することを内容とする措置のことで、その大部分が租税特別措置法により定められています。例えば交際費に関しては、これを無制限に認めると、いたずらに法人の冗費・濫費を増大させるおそれがあるとの理由で、資本金が1億円を超える法人については交際費等の損金算入を一切認めず、資本金がそれ以下の法人についてのみ、400万円の範囲内でその90%の損金算入を認めています。

”法人の冗費・濫費を増大させるおそれがある”というのがよくわかりませんし、本来こんなものは本法で規定すべきものです。良い機会なので、交際費も含めて、すべての租税特別措置項目についてその必要性を徹底的に議論したらよいと思います。中でも欠損金の繰戻しによる還付の不適用についてはぜひとも廃止してもらいたいと思います。

欠損金の繰戻し還付制度とは、欠損金の生じた年度において青色確定申告を行い、かつ過去の関係年度において青色確定申告をしていたことを条件として、欠損金を当該事業年度の開始の日前一年以内に開始した事業年度に繰り戻し、これらの事業年度の税額を計算しなおして、その差額の還付を求めることを認める制度です。

「法人の事業年度は、もともと事業成果を期間損益の形で算定するために人為的に設けられた期間であるから、企業の成果を長期的に測定するためには、ある年度に生じた欠損金は、その前後の事業年度の利益と通算するのが妥当」(租税法 金子宏 弘文堂)であり、これを担保する制度の一つを租税特別措置法という形でで停止している現状は大問題であると思います。特に平成18年の税制改正で、役員報酬を期中で改訂できなくなってしまったこととの平衡を保つためにもぜひともこのまま適用停止の打ち切りをお願いしたいものです。

【リンク】
「租税特別措置の課税関係について」財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200331.htm
「適用期限が経過した租税特別措置(条文順)」財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200331/200331i.pdf




by yasukiyoshi | 2008-04-07 08:28 | 税制


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