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2008年 05月 01日

資生堂、買収防衛策を取りやめ

資生堂は30日、6月の株主総会までが期限となっている買収防衛策について継続しないことを決めたと発表した。2年前に事前警告型の防衛策を導入したが、金融商品取引法など株式取得に関連する法整備が進んだことに加え、業績の伸びで時価総額も増加、買収リスクが低下した。市場からの批判もある防衛策を継続していく意義は小さいと判断した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D3008O%2030042008&g=S1&d=20080430
【CFOならこう読む】
買収防衛策導入の企業は、2007年末時点で413社。このうち8割以上が「取締役会決定型」(買収意欲をそぐため新株予約権の発行で対抗する際に、第三者で構成する独立委員会の判断を仰ぎ、取締役会で最終決定する形)でした。しかし、昨年八月の司法のブルドック判断を境に、対抗策を発動する際に必要に応じて、株主総会などで承認を求める株主判断型が増加しつつあり、1―3月に導入を決めた企業は16社あります。(2008年4月7日 日本経済新聞)

また、この事例を参考にして「敵対的買収者に金銭など対価を渡す可能性がある」と明記する企業も1-3月に買収防衛策を導入した40社のうち5割近い19社に上りました。資生堂は、2006年6月29日の定時株主総会で「取締役会決定型」の買収防衛策を導入しましたが、今年の定時株主総会で買収防衛策の期限が切れるため、新たな制度設計を上のような他社事例を踏まえた上で検討していたものと思われます。

結論としては、「大量買付に関する法制度の整備状況も勘案し、当社としては、本定時株主総会において、本プランの継続をお諮りするよりも、新3 ヵ年計画を着実に実行していくことこそが、グローバル市場における当社の競争力と持続的成長性を高め、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に繋がるものと判断し、本日開催の取締役会において、本定時株主総会終結の時をもって本基本方針を廃止し、以降、本プランを継続しない」(4月30日プレスリリース)ということです。

前田社長の「防衛作は『猛犬注意』の張り紙にすぎない。」との言葉はなかなかに含蓄があります。

なお、実務的には買収防衛策廃止に伴い定款変更(新株予約権無償割当ての決定機関に関する規定の削除)が必要となることに留意する必要があります。

【リンク】
平成20年4月30日「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続について」株式会社資生堂
http://www.shiseido.co.jp/ir/ir_news/img/067.pdf

平成18年4月27日「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の導入について」
http://www.shiseido.co.jp/ir/ir_news/img/018.pdf



by yasukiyoshi | 2008-05-01 08:37 | 買収防衛策


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