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2008年 05月 08日

日本企業の利益構造に変化ー財務省「法人企業統計季報」

企業-利益構造 近年は経常利益優位に
近年、日本企業の利益構造に特徴的な変化が起きている。統計開始の1956年以降、常に営業利益が経常利益を上回っていたが、2005年から関係が逆転した。背景には、金利の低下や債務削減による支払利息減少がある。だが、それ以上に、受取利息などに反映される海外子会社からの配当や特許使用料の増加が影響している。このことは、日本企業の海外事業の収益性が向上し、海外現地法人の稼いだ利益の国内への還流が拡大していることを示す。国内の人口減少や高齢化を考えると、日本企業がグローバル化の対応をさらに進めることはさけられず、今後も経常利益が営業利益を上回る関係が続く可能性が高い。
(日本経済新聞 2008年5月8日 25面 統計で読む日本経済)
【CFOならこう読む)】
営業利益と経常利益を区分表示することから得られる情報のうち最も重要なことは企業の借入余力(財務上の安全性)が計れることにあります。経常利益が改善している理由の一つは、所謂バランスシート調整により企業の借入金の削減が進んだことによるものと思われます。

営業外損益が資金調達費用又は余剰資金の運用収益のみで構成されるなら、こういった傾向はより明確に把握できるのですが、記事にもあるように海外子会社からの配当や特許使用料も営業外損益に計上されるので、経常利益の持つ情報の価値は減殺されてしまいます。本来日本法人の獲得利益は海外法人の損益も含めた連結ベースで捉えなければその実態は見えてきません。

法人企業調査の目的を財務省は次のように説明しています。
「法人企業統計調査は、指定統計第110号として「法人企業統計調査規則」(昭和45年大蔵省令第48号)に基づいて行うもので、その目的は、我が国における法人の企業活動の実態を明らかにし、あわせて法人を対象とする各種統計調査のための基礎となる法人名簿を整備することにある。」
実態把握をその目的としている以上、連結ベースの数値も調査対象に加えることを検討すべきであると思います。

【リンク】
「法人企業統計調査 > 調査の概要」財政総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/ssc/gaiyou.htm


by yasukiyoshi | 2008-05-08 08:38 | 会計


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