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2008年 05月 16日

カルパースらによる「日本のコーポレートガバナンス白書」

欧米有力年金 「経営者に保身の傾向」 企業統治提言を発表
欧米の有力年金基金や運用会社が日本企業にコーポレートガバナンス(企業統治)改革を求める提言をまとめ、15日発表した。「経営者に保身の傾向が強まっている。外部の目を入れ規律を働かせるべき」(会見した英運用会社、ハーミーズのマイケル・コナーズ氏)として、最低3人の社外取締役起用などを柱とする改革を求めた。
(日本経済新聞 2008年5月16日 14面)


【CFOならこう読む】
米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)をはじめ、年金・運用会社7社が参加し、ガバナンス研究などの専門機関「ACGA(エイシアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーション)」が今回の提言をまとめました。

提言の骨子は次の通りです。

●「所有者としての株主」という原則を認識し、その他のステークホルダーとの利益均衡を図る
●資本を効率的に活用し、長期的な企業価値の向上に努める(ROEの目標値や配当性向の設定、自社株買いを推奨)
●独立した立場で経営陣を監督する社外取締役を最低3人指名(中期的には社外取締役が取締役会の3分の1、長期的には2分の1を占めるのが望ましい)
●第三者や少数の特定株主への新株発行などによる希薄化から株主を保護するような原則を確立(株主総会で年間発行額の上限を決議するなど)
●ポイズンピル型の買収防衛策は廃止(導入の場合は社外取締役の人数や株主が判断する機会を増やす)
●株主総会と議決権行使の公平性・透明性を高める(総会の集中日開催や株式持合いは避け、議決権行使結果は公表)

特に4番目については、1年間で既発行済株式総数の5%を超える第三者割当増資を禁じる、という相当厳しい内容になっています。

提案としては至極まっとうであると思いますが、提言の前提として、日本の経営者の多くは、自己の保身のために行動をしている訳でなく、会社という名の”お家”のために自己を犠牲にして働いているということを知る必要があると思います。このような古くからの日本の組織の有様を理解しなければ対話は全く進まないと私は思います。

【リンク】
ACGA 日本のコーポレート・ガバナンス白書 2008年5月
http://www.acga-asia.org/public/files/ACGA_Japan_White_Paper_FINAL_Japanese.pdf



by yasukiyoshi | 2008-05-16 07:54 | コーポレートガバナンス


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