2008年 05月 20日

エクイティ・コミットメントラインーフルスピードのケース

新株予約権使う調達に新手 株価配慮し段階的 行使
新株予約権を使った新手の私募型の資金調達が広がっている。証券業界の規制で、株価に連動して条件が変わる転換社債(MSCB)が発行しにくくなり、株式の希薄化に上限を設けるなど”改良”を加えた点が特長だ。新興企業がまとまった成長資金を調達する際などに都合がよいが、株価下落を招くリスクは残る。安易な活用に警鐘を鳴らす向きもある。(日本経済新聞 2008年5月20日 16面)
【CFOならこう読む】
典型的なエクイティ・コミットメントラインは次のようなものです。
「発行会社は行使価額修正条項付新株予約権(行使価格はMSCBと同様、株価に応じて変動。時価から10%近い割引価格で新株の発行を受けられる点も同じ:筆者注)を第三者に割り当てる。これと同時に発行会社と割当先との間でエクイティ・コミットメント契約が締結される。発行会社は、資金需要に応じて行使すべき新株予約権の数(ただし、一度に行使要請できる個数には上限がある。)等を割当先に対して通知する。割当先は発行会社が行使の要請を行ってから一定の期間(例えば、発行会社が行使要請を行った日の翌日から20取引日目までの期間)内に指定された個数の新株予約権を行使する義務を負う。なお、株価が下限行使価額(例えば、当初行使価額の50%)を下回った場合や発行会社の財政状態又は業績に悪影響を及ぼす事態が発生した場合等には発行会社は行使要請を行うことはできない。
割当先は、発行会社の行使要請がない限り、原則として新株予約権の行使はできない。かかるエクイティ・コミットメントラインにより、発行会社が要請したときに割当先は新株予約権を行使しなければならず、発行会社の資金需要に応じた調達が可能となる。」
(新株予約権の法務・会計・税務 安部健介・須藤一郎著 税務研究会出版局)
フルスピードのエクイティ・コミットメントラインも上のものとほぼ同様の設計になっています。ただし「新株予約権が行使された場合のフルスピードの調達資金は4月の発表時の株価換算で約40億円。2007年8月の上場時の公募調達額9億円を大きく上回る。」(上記新聞記事)と調達規模が大きいのが特徴です。

会社はMSCBとの違いを力説していますが、既存株主から引受先へ富の移転を行うことにより資金を調達する仕組みであるという本質的な部分に全く相違はありません。

しかも、株価が当初株価の半分を下回った場合には、新株予約権を発行価額で買い取る義務が会社にあり、証券会社の極めて限定したリスクで利益を得ることができます。

それにしても上場会社が(しかも将来が期待されるマザーズ上場会社が)、平然とこのようなスキームでしか資金調達できないというのは何とも情けない話です。

フルスピードの株価の推移は次の通りです。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=2159.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on
何をかいわんや、です。

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(日本経済新聞 2008年5月20日 16面より)


【リンク】
平成20 年4月9日「新株予約権(第三者割当て)に関する説明資料」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586024

平成20 年4月9日「行使価額修正条項付第1回新株予約権(第三者割当て)の発行及びコミットメント条項付第三者割当て契約に関するお知らせ」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586023

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by yasukiyoshi | 2008-05-20 11:50 | 資金調達


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