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2008年 05月 28日

会計処理方法の変更事例-セコム、退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法変更

セコム401Kへの全面移行を断念
セコムは準備していた確定拠出型年金制度(日本版401k)への全面移行を断念した。
確定給付型年金制度からの転換を目指し一部導入していたが、法人税が非課税となる拠出額の上限が低く抑えられたままで環境が整わないと判断した。全面移行を前提に年金運用の利差益である「数理計算上の差異」
を発生年度に一括消却しており、業績への影響も大きかった。
(日本経済新聞 2008年5月28日 19面)

【CFOならこう読む】
当ブログで3月8日に私は数理計算上の差異の会計処理方法の変更について次のように書きました(http://cfonews.exblog.jp/7460642/)。
「今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。」/span>

セコムは、従来「数理計算上の差異」発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用していましたが、2008年度3月期より、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主して10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しています。

3月8日にも書きましたが、「数理計算上の差異」の会計処理には以下のa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りの方法があります。このうち最も保守的なのはa-Aの方法です。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

セコムの会計処理方法の変更は、この最も保守的な方法であるa-Aからb-Bへ変更するものです。

セコムは変更の理由を次のように説明しています。
「当社は、従来退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用してきました。
この会計処理方法採用の背景には、確定給付型年金制度と確定拠出型年金制度の併用および厚生年金基金の代行部分の国への返上を骨子とする退職給付債務の減額を伴う退職給付制度の抜本改訂を決定したことがあり、長期的に確定給付型年金制度を確定拠出型年金制度へ全面移行する方針を前提としておりました。
確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度へ全面移行する方針については、関係諸法令の規制などもあり、確定拠出型年金制度への移行割合が30%と全面移行(100%)に比べ大きく乖離している状況にあり、関係諸法令の改正も不透明であることから、平成20 年3月開催の取締役会において確定拠出型年金制度への全面移行を断念する決議をいたしました。
確定拠出型年金制度への全面移行を断念したことに伴い、移行を円滑に進める目的であった数理計算上の差異の早期解消も必要性が薄れている現状においては、従来の会計処理方法に従った場合には、数理計算上の差異が発生連結会計年度の営業利益に大きな変動を与える可能性があり、年金資産の運用を含む退職給付制度が中長期的な視点を求めて行われるものであるという本来の性質上、単年度の数理計算上の差異が当該発生連結会計年度の企業業績を直接変動させる従来の会計処理方法が適合しなくなってきております。以上のような状況から、数理計算上の差異の処理方法を発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました。
この変更により、従来の方法によった場合と比較して、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ10,096 百万円増加しております。」
一括法から定額法への変更理由としては相当なのかもしれませんが、処理開始時期を発生年度ではなく翌会計年度に変更した理由はよくわかりません。

2008年3月期の営業利益は104,706百万円、2007年3月期の営業利益97,840百万円に対し6,865百万円の増益であったわけですが、この会計処理方法の変更がなければ減益であったことになります。

IFRsでは数理計算上の差異を純資産の部に直接計上する方法が認められており、コンバージェンスを睨んでの対応とも考えられます。

【リンク】
平成20年5月8日「平成20年3月期 決算短信」セコム株式会社
http://www.secom.co.jp/corporate/ir/finance/result/pdf/kessan20-3.pdf




by yasukiyoshi | 2008-05-28 08:28 | 会計


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