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2008年 06月 03日

東芝のDEレシオ

フリーキャッシュフロー 東芝、今期500億円の黒字
東芝の2009年3月期のフリーキャッシュフローは500億円程度の黒字になる見通しだ。前期は756億円の赤字だった。在庫や売掛債権の圧縮などで現金を捻出する。半導体や原子力発電所などを中心に設備投資を増やすが、投資額を上回る現金を稼いで事業拡大と財務改善を両立する。今後3年間でFCFは3000億円の黒字を目標にする。
(日本経済新聞 2008年6月3日 15面)
【CFOならこう読む】
東芝の2010年度の経営目標を次のように設定しています。

東芝のDEレシオ_e0120653_124567.jpg

D/Eレシオが2008年度3月期の1.23倍から2010年度には1倍以下に低下させる計画になっています。これに向けて、東芝は4月からキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と呼ぶキャッシュフローを生み出す活動を全社で始めています。5月8日に行われた経営方針説明会でも、今後のフリーキャッシュフローの計画について会社は次のように説明しています。
「戦略投資を継続しながらキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)改善の更なる加速などにより、投資キャッシュフローを上回る営業キャッシュフローを創出し、3年間累計で今後+3,000億円のフリーキャッシュフローとなる計画を立てています。」
具体的には、
・事業部門ごとに在庫や売掛債権の管理を徹底する
・期末に集中しがちな債権の回収時期を期中に平準化したり回収期間を短くしたりするほか、前受金を増やすように顧客と交渉する
・債権流動化の規模を拡大する
・トヨタのジャストインタイム方式を火力発電所など重機部門の工場にも導入する
・高額な資材を必要以上に持たないようにして棚卸資産を圧縮する
といった施策を打つとのことです。

最適資本構成がD/Eレシオ100%であるとの財務的な判断があるかどうかは不明です。資本コスト(WACC)との関係でもう少し突っ込んだ説明が欲しいところです。

なお、上記新聞記事はD/Eレシオを有利子負債に対する自己資本の倍率、と説明していますが、自己資本に対する有利子負債の比率(有利子負債/自己資本)の誤りです。

【リンク】
2008年5月8日「2008年度経営方針説明会」株式会社東芝
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/pr/pdf/tpr20080508.pdf


by yasukiyoshi | 2008-06-03 09:02 | 最適資本構成


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