2008年 06月 25日

負ののれん代

「負ののれん代」業績かく乱 一括利益計上へルール見直し
三越と伊勢丹が経営統合し、4月に発足した三越伊勢丹ホールディングス。初年度の2009年3月期は連結経常利益が470億円と、本業のもうけを示す営業利益の340億円を大きく上回る見通しだ。この背景には「負ののれん代」の償却による利益押し上げ効果がある。
この統合では、伊勢丹が三越を買収した形で会計処理した結果、負ののれん代が700億円発生。これを5年で償却するため、経常利益を140億円押し上げる。
のれん代はM&A時の買収額と受け入れる時価純資産の差額を示す。本来割安な価格で企業を買うことは難しいはずだが、マイナスののれん代=負ののれん代を計上する事例が相次いでいる。

(日本経済新聞 2008年6月25日 16面 M&A会計 最前線 下)
【CFOならこう読む】
日本基準では、「負ののれんは、20年以内の取得の実態に基づいた適切な期間で規則的に償却する。ただし、負ののれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することができる。」(企業結合に係る会計基準第三の2(5))とされています。

一方米国基準では、取得資産と引受負債が正しく識別されたかどうかを評価し、当初の評価が正しく認識されていない場合には、取得企業は、負ののれんを減額し、それでもなお残額がある場合には、取得日の取得企業の損益として認識しなければならないことになっています(SFAS141R:2008年12月15日以降開始する事業年度から適用)
(「M&Aの会計実務 日米基準の具体的取扱い」長谷川茂男著 中央経済社) 。

負ののれんが計上されるのは、例えば次の2つのような場合です。

①PBR(株価/1株当たり純資産額)が1を下回る会社を株価で買収する
②PBR(株価/1株当たり純資産額)が1を上回る会社を1株当たり純資産以下の価格で買収する。

このうち①のPBR1倍以下という状態は、その会社のオンバランスの資産のNPV(正味現在価値)がマイナスであると株式市場は評価しているということを意味しています。そして、その状況はM&Aによって経営権が移動することによって直ちに改善されるとは限りません。

そうすると、果たして負ののれんを利益として計上するという会計処理が、本当に企業の実態を正しく表すことになるのか、私にはとても疑問に思えます。

【リンク】
M&Aの会計実務―日米基準の具体的取扱い
長谷川 茂男

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by yasukiyoshi | 2008-06-25 08:31 | M&A


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