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2008年 08月 28日

PIPEs-田崎真珠のケース

経営改善「PIPEs」広がる 上場維持しファンド活用 改革効率はMBOに軍配
上場企業が経営改善として投資ファンドから「PIPEs(パイプス、株式公開企業への私募投資)」と呼ぶ手法で出資を受ける事例が増えている。株式の非公開化前提のMBO(経営陣が参加する企業買収)と違い、上場を維持しながら支援を得られるのが特徴。経営改革にファンドの資金は活用したいが、上場廃止はしたくないという企業の間で広がっている。「経営再建にはファンドの力が必要」。7月末、3期連続の最終赤字で財務体質が悪化した田崎真珠は、投資ファンドのMBKパートナーズの出資受け入れを決断した。MBOも検討したが、最終的には「社員や取引先への影響が大きい」(明石靖彦常務)上場廃止を避けるためにPIPEs方式を選んだ。
(日本経済新聞2008年8月28日 14面)
【CFOならこう読む】
「PIPEsはPrivate Investment In Public Equitiesの略。ファンドは投資先と相対で私募増資や第三者割当増資などの条件を交渉、市場価格より安く株式の一部を譲り受ける。経営にも関与して企業価値を高め、保有株の売却益を狙う。企業側には公募増資などに比べて迅速に資金調達できる利点がある。上場企業のステータスを保ちつつ、一定の改革を期待できる手段として経営者も受け入れやすい。」
(前掲 日経新聞記事)
田崎真珠のスキームの概要は次の通りです。
第三者割当による種類株式の発行(A種優先株式)
発行期日 平成20年10月下旬(予定)
調達資金の額 6,900,000,000 円(発行価額: 200 円)(差引手取概算額)
当該増資による発行株式数  35,000,000 株
募集後における発行済株式総数  35,000,000 株
割当先  Watermunt Spare Parts B.V.(MBK パートナーズの投資目的子会社)
A種優先株式には議決権が付与されており、発行後におけるWSPの議決権比率は49.55%となります。

発行価額の200円は、本件取締役会決議日7月31日の終値142円に比し高い設定となっていますが、A種優先株式には、優先株式1株につき4株の普通株式の交付を請求することができる取得請求権が付与されており、これを勘案すると有利発行となるので、株主総会の特別決議を必要とします。

臨時株主総会は9月下旬又は10月上旬に開催され、①(i)発行可能株式総数の変更やA種優先株式の内容に関する規定の新設等A 種優先株式発行のために必要となる事項に関する定款の一部変更並びに(ii)社外取締役との間の責任限定契約に関する規定の新設を内容とする定款の一部変更、②A 種優先株式の有利発行、並びに③本増資実行後の発行可能株式総数等に関する定款の一部変更について決議されます。

更に、本増資を条件として現取締役5名中代表取締役を含む4名及び現監査役4名中3名が辞任し、同じ臨時株主総会において、新たな役員の選任について併せて承認を求め、経営陣を一新することが予定されています。

PIPEsは、株主総会の特別決議を要すること、株価が大きく希薄化するため一般投資家への影響が大きいと考えられること、上場を維持しながら経営改善に取り組むため、ファンドにとってもMBOに比しExitまで時間がかかる場合が多いと考えられること等を勘案すると、この方式を選択すべきケースはあまりないと思われます。

【リンク】
平成20年7月31日「第三者割当による優先株式の発行、定款の一部変更、代表取締役及び役員の異動、主要株主である筆頭株主及び親会社の異動、大規模買付行為への対応方針の取り扱い、並びに臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」田崎真珠株式会社
http://www.tasaki.co.jp/kessan/whats031.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-28 10:21 | M&A


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