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2008年 09月 26日

東武のハイブリッド証券

東武鉄道、転換社債800億円発行 東京スカイツリー地域の開発
東武鉄道は25日、ユーロ円建て新株予約権付社債(転換社債=CB)を800億円発行すると発表した。発行に伴う費用を除いた784億円を、有利子負債の削減と設備投資に充当する。地上デジタル放送の電波タワー「東京スカイツリー」(東京・墨田)を中心とする業平橋・押上地区の再開発に備え財務体質を強化する。
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hotnews.aspx?site=MARKET&genre=c1&id=AS2D2500F%2025092008
【CFOならこう読む】
東武の資金調達のスキームは次の通りです。

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平成20年9月25日プレスリリースより

東武は、2012年春の開業を目指す「東京スカイツリー」建設など資金需要が旺盛ですが、一方中期経営計画の中で負債の削減目標を掲げており、負債による資金調達は行えない状況にあるため、SPC(子会社)を通じて優先出資証券を割り当てることによる方法を選択しました。

会社はプレスリリースの中で、この資金調達方法を選択した理由を次のように説明しています。
「① 本優先出資証券は、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、主要格付機関(株式会社格付投資情報センター及び株式会社日本格付研究所)から、70%以上の資本性が認められる見通しであるなど、実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性も兼ね備えております。
自己資本を直截拡充できる時価発行増資では、発行済株式の増加及び一株当たり利益の減少等の株式の希薄化を招くことになり、他方、長期負債の積み増しでは実質的な財務改善につながりません。今般の資金調達については、これらの手段に比して、株式の希薄化の抑制と、実質的な資本増強による財務構成比率の改善の双方を実現できるものと判断しております。

② 当社が発行する社債に新株予約権を付与すること(本優先出資証券には、本新株予約権付社債に交換することができる交換権が付与されており、当該交換権を行使した場合は、本優先出資証券は本新株予約権付社債に交換され、当該新株予約権付社債は自動的にかつ直ちに当社の普通株式に転換されます。)により、本邦でも実績のある海外SPCを通じた株式への交換権を付与せず優先出資証券を発行する調達手段に比して、相対的に有利な金利(配当)条件で資金調達を行うことが可能となっております。
但し、既存株主の皆様に配慮した商品性を実現すべく、時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定するとともに現金決済による取得条項(※)を付与することにより、将来の株価上昇時においても株式の希薄化を極力抑制することを重視致しました。
※ 【現金決済による取得条項及び償還について】
本新株予約権付社債には、発行から5年経過以降において、当社がその裁量により、一定期間の事前通知を行うことにより下記の財産の交付と引き換えに本新株予約権付社債を取得する権利が付与されます。TR社は、当社が本新株予約権付社債の現金決済による取得条項の権利を行使した場合には、当社から交付される下記の財産を対価として本優先出資証券を償還します。
なお、当社及びTR社は、本優先出資証券の割当先との間で、割当先の当社の議決権保有比率が銀行法上の制約である5%を超過することとなる現金決済による本優先出資証券の償還を行わないことを約束する予定です。この限りにおいて、現金決済による本新株予約権の取得条項を行使できる当社の権利は制約されることとなり、期待する効果が限定される可能性があります。
(ⅰ)額面金額並びに1口当たり金額の100%に相当する金額、及び
(ⅱ)転換価値から額面金額並びに1口当たり金額を差し引いた額(正の数値である場合に限る。)を1株当たり平均VWAPで除して得られる数の当社普通株式
・ 転換価値: (額面金額÷転換価額)×1株当たり平均VWAP
・ 1株当たり平均VWAP: 当社が取得通知をした日の翌日から5取引日後の日から始まる20連続取引日に含まれる各取引日において株式会社東京証券取引所が発表する当社普通株式の売買高加重平均価格の平均値

③ 本邦においては事業法人による今般の資金調達のようなハイブリッド証券による資金調達のマーケットが必ずしも成熟しているとは言えない状況の中、当社子会社であるTR社が発行する本優先出資証券の特性に鑑み、且つ当社が企図する財務構成比率改善を実現するための今般の調達予定額を確実にするとの観点から、当社と長年の取引関係があり、当社の経営状況等についてご理解を頂いている主要取引銀行3行を割当先とする第三者割当方式による調達に決定した次第です。
東武本体で優先出資証券を発行しなかったのは、優先出資証券にCBへの交換権を付与することで金利を引き下げることが可能であるためです。ただしこの金利引き下げ効果については、このブログでも繰り返し指摘しているように、オプション部分を区分して会計処理しないことが認められていることから生じる一種のまやかしに過ぎず、実質的には格付けに応じた金利が支払われます。

【リンク】
平成20年9月25日「第三者割当による2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」東武鉄道株式会社
http://www.tobu.co.jp/file/1749/080925-1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-09-26 09:08 | 資金調達


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