2008年 12月 01日

カネボウ元CFO嶋田賢三郎の小説 「責任に時効なし」

トップとの対決、検察との闘い、苦悩の日々…。
著者は日本を代表する名門企業の常務として巨額粉飾事件に遭遇し、逮捕された。しかし、粉飾に異を唱えていたことが判明、不起訴となり釈放された。その体験をもとに3年かけ、長編小説として本書を綴った。企業崩壊をもたらした組織的粉飾とは何か? 粉飾を長年放置してきたにも拘わらず、時効の壁によって不問に付された歴代の経営者たちの責任はどうするのか? 法的告発には時効があっても、「責任に時効はない」と著者は訴える。
【CFOならこう読む】
この週末、カネボウの元CFO嶋田賢三郎が書いた内幕暴露小説「責任に時効なし」を読みました。

この小説は、基本的に嶋田氏がカネボウで体験した事実に基づき書かれています。カネボウの粉飾の長年に渡る粉飾の実態及び会計士の関与、2003年末一旦花王への化粧品事業売却を決めながら、これを撤回し産業再生機構に支援を要請した経緯、逮捕後の検察官とのやりとり等が克明に描写されていて、一気に読んでしまいまいました。

嶋田氏と言えば、産業再生機構に支援を決めた際に、「評価の厳しい花王のデューデリジェンスであれだけの金額がついた。公的機関の再生機構は割引率なども緩くなり、事業価値が相当上がると考えるのが一般常識」(日経産業新聞2004年2月18日)と発言したことが印象深く記憶されています。これが再生機構を逆の意味で刺激し、その後機構は一貫して厳しい姿勢でカネボウと対峙して行くことになるのです。

嶋田氏が何故このような発言をしたのかその経緯について、本の中では触れられていません。ただ次のような記述があるだけです。
「日本企業再建機構の最高幹部の一人がリップサービスのつもりか、しかし自信を持ってこう言い切った。「きっとわれわれ公的機関が評価すると、まちがいなくクレセントさんが評価した金額よりも高くなるでしょう」誰しも化粧品事業の評価価額には関心を寄せていたので、その大幹部が明確に言い切った台詞には強烈な響きがあった。
ところがその後2週間も過ぎないうちに、再建機構はクレセントの提示した4400億円よりも低い価額3800億円あたりで評価していると番匠に内々に伝えてきた。その理由として、以前と状況が変わった。まだこの価格でも少し高いぐらいだ、という。まったく人を食った話である。「事業算定価額を抑えろ」との財務省の意向を再建機構が忖度したためであるとの情報が水面下で流れた。どう考えてみても、この低い価額は再建機構が化粧品事業を売却するときのエグジットの価額を意識して算段した値づけであるとしか思えない。」
番匠というのが嶋田氏その人です。どうやら割引率云々という自らの発言の重さを全く認識しておられないようです。この本は、自分は粉飾を強要された犠牲者であり、責任の根幹は伊藤淳二氏を始めとする旧経営陣にあることを繰り返し主張しています。

一方元CFOとして一般株主へ謝罪の言葉は全くありません。CFOとしてのこの人の仕事は、ただカネボウという会社を存続させ、経営陣のポストと雇用を守ることにあり、株主価値創造などとは無縁であったことが本を読むとよくわかります。そして良い悪いではなく、これが多くの上場会社の現実です。

我々がコーポレートガバナンスを議論するときに、この現実を忘れてはいけないと、私は思います。

【リンク】

責任に時効なし―小説 巨額粉飾
嶋田 賢三郎

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by yasukiyoshi | 2008-12-01 09:56 | コーポレートガバナンス


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