カテゴリ:M&A( 121 )


2008年 03月 12日

33.3%という持株比率ーイオン・CFSのケース

イオン、CFSに副社長を派遣・石田社長は取締役も退任へ
イオンは11日、発行済み株式の15%を保有するドラッグストア大手、CFSコーポレーションの取締役副社長としてイオンの役員級を派遣する方針を固めた。CFS側はこれを受け入れ、石田健二会長兼社長は社長職だけでなく取締役も退く見通し。業績不振のCFSは経営再建を狙って調剤薬局大手のアインファーマシーズと経営統合を目指したが、イオンの反対で統合撤回に追い込まれた。今回の首脳人事により、CFSの再建をイオンが主導する体制が鮮明になった。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080312AT1D110BI11032008.html

【CFOならこう読む】
イオンのCFSに対するTOBに関する報道があったため、昨日は一時CFS株の売買が停止されるといった混乱も見られましたが、上記記事のように、

①石田健二社長は退任し取締役にも残らない
②石田健二氏の子息、石田岳彦副社長が社長へ昇格
③イオンが出資比率を33.3%に引き上げ、取締役副社長を派遣


といった方向性が示されました。

33.3%という出資比率は、現経営体制の枠組みを基本的に支持しつつ、大きな影響力を行使するとの意思表示であると思われます。33.4%ではなく33.3%であるというのがそういった微妙な意思を表しているのです。この点10日、スティールがサッポロホールディングスに対する株式保有の目標を66.6%から33.3%に引き下げたのも同様の趣旨でしょう。
(http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1000I%2010032008&g=S1&d=20080310)

しかし33.3%というのは十分に支配権を行使し得る比率です。にも関らず建前としては支配権を行使しないというのは、単に問題先送りで大きな火種を残すことになると私は思います。CFSの11日の定例取締役会で追加出資の方法が決まらず、調整が難航しているのはその証左でしょう。

今日の日経新聞の経済教室で上村教授が紹介しているように英国では「マンダトリーオファールール」といって、議決権ベースで30%以上の株式を取得した場合、対象会社の全株式に対して公開買付をする義務が課されています。これは30%を取得したなら他の株主は少数株主となり保護しなければならないという趣旨であり、30%の出資比率というのはそれくらい重いものなのです。中途半端な問題先送りは混迷を深めるだけだと私は思うのですが…。

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【リンク】
2008年 03月 11日 11:38 JST「CFSコーポレーション株の売買を午後零時30分から再開=東証」ロイター
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-30757520080311

by yasukiyoshi | 2008-03-12 09:49 | M&A
2008年 02月 26日

反対株主の株式買取価格ーシティ・日興のケース

日興コーディアルグループが、米シティグループとの三角合併に反対した株主に対し、一株当り1650円で日興株を買い取る方針を伝えたことが分かった。賛同した株主に適用された評価額1700円を下回る。日興は株主との間で月内の合意を目指す。
三角合併に反対した株主は29の個人や機関投資家で、会社法に基づいて株の買い取りを日興に求めている。
株式は計1240万株(発行済株式総数の1.3%)で、買取総額は約200億円になる見通し。合併を実施した1月29日から30日以内にあたる月内に日興と合意できない場合、株主は東京地方裁判所に価格決定を申し立てることができる。

(2008年2月25日 日本経済新聞 夕刊 3面)

【CFOならこう読む】
会社法は合併や株式交換の際の株式買取請求を「公正な価格」によることとしています。これは旧商法が「合併等がなければ当該株式が有していたであろう価格」としていたのと異なり、シナジーも反映したものでなければならないという趣旨であると解されています(株式会社法 江頭憲治郎 有斐閣 776ページ)。

一般に合併や株式交換の場合に合併比率や株式交換比率が公表されるのみで、買収側が被買収会社の株式をいくらで評価したかは公表されません。したがって「公正な価格」について争いが起きることも多々あるのです。

ところがシティ・日興のケースではシティ側が一貫して日興株式の株価を1700円で評価していましたので「公正な価格」は1700円であることに議論の余地はないと思います。にもかかわらず反対株主の株式買取価格を1650円とした真意はどこにあるのでしょうか?

リリースがないので推測するしかないのですが、三角合併に反対せず日興株式1株と引き換えにシティ株式0.602株を受け取って現に持っている株主との公平を考慮した結果なのかもしれません。

1月22日のシティ株価は終値ベースで25.12ドル、円ドルレート107.21円でしたので、これを使って計算したシティ株式0.602株の価格は、25.12×107.21×0.602=1,621円となります。
これだったら1650円でもおかしくないですかね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-26 10:11 | M&A
2008年 02月 12日

米ヤフー、マイクロソフトの買収提案拒否・「買収額低すぎる」

【ニューヨーク=米州総局】米ヤフーは11日、マイクロソフト(MS)から受けた買収提案を拒否すると発表した。MSの446億ドルという買収額はヤフーのブランドなどを含めた価値を正当に評価していないというのが理由。MSが買収額引き上げなどに動くかどうかが焦点となる。
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080211D2N1100A11.html

【CFOならこう読む】
e0120653_167912.jpg同じ拒否でも、どこかの国の企業のように、”企業価値が破壊される”云々ではなく、少なくとも表向きの理由としては”買収額が低すぎる”と株主価値に焦点が当っています。これを受けてMS側は31ドルの買収価格を引き上げあくまで友好的買収を目指すか、現状の価格で敵対的TOBをかけるか注目されます。
次のようにMSは35ドルか36ドルに引き上げる用意があるとの報道もあります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080212-00000696-reu-bus_all

ヤフーとしてはホワイトナイトその他の買収防衛策を講じることになるでしょう。
英タイムズ紙がAOLとの合併の可能性について報じています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080211-00000659-reu-bus_all

米国のM&Aの適法性の判断基準として「レブロン基準」というものがあることを知っておく必要があります。
「経営者が会社をホワイトナイトなどに売却している中で敵対的買収者が現れた場合には、会社の売却価格を上げることが取締役の責務とされ、ホワイトナイトとの提携を有利にするような防衛策を取締役が導入されることは、過剰防衛とみなされて違法とされています」(企業価値報告書)。
支配権の移動を伴う組織再編があった場合にも「レブロン基準」の適用がありますが、再編後の会社に支配株主が生じない場合であれば、売却の局面ではないと判断され、「レブロン基準」の適用はありません。例えば、パラマウント社から敵対的買収を受けたタイム社は、ワーナー社との合併により対抗しましたが、ワーナー社との合併契約では、合併後の会社の株式が多数の株主の間で拡散して保有されることから、会社は売りに出されたと判断されませんでした。

日本の経営者としては、”好ましからざる相手”から買収提案があった場合、それにどう対抗するか絶好のケーススタディになると思います。

【関連過去記事】
2008年02月02日「米マイクロソフト、ヤフーに総額4.75兆円で買収を提案」
http://cfonews.exblog.jp/7177119/


by yasukiyoshi | 2008-02-12 08:04 | M&A
2008年 02月 08日

メザニンの金利

買収ファンドなどのM&Aで多用される買収融資。欧米では信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で金融機関が融資を渋る反面、日本は資金調達しやすい環境が残っている。融資は大型案件の成立を左右するが「思わぬ壁」(外国証券会社)を指摘する声が増えている。利息制限法の上限金利(年15-20%)の存在だ。
(日本経済新聞2008年2月8日7面 金融取材メモ)

【CFOならこう読む】
利息制限法は元本の多寡に応じて上限金利を定めており、元本百万円以上なら上限金利は年15%となります。メザニンのひとつである劣後債は年利が2桁台になる場合も珍しくありません。記事によると「劣後債の条件を設定しようとしたら、想定金利が利息制限法の上限に抵触することがわかり、資金調達案を見直したケースもある」(外国証券)とのことです。

M&Aの資金調達は、買い手の自己資金であるエクイティ(通常は普通株)に加えて、デットや第三者からのエクイティで調達され、デットについては、シニア・ローン、社債、劣後ローン、劣後社債などが、エクイティについては、優先株などの種類株が代表的なものです。 LBOやMBOの場合には、エクイティのリターンを高めるために、多額の外部ファイナンスを活用することが通常です。

シニア・ローンとメザニンの相違は次の通りです。

①シニア・デット

シニア・デットにはシニア・ローンやシニアの社債なども含まれますが、現状日本ではシニア・デットというと、主に銀行が供与するシニア・ローンを指していることが多いようです。シニア・ローンはキャピタル・ストラクチャー上、最も期間が短く、返済が最優先され、かつ、多くの場合は有担保のファイナンスです。また、保証やコベナンツなどが融資条件に入れられることで、相対的に最もリスクの低い買収ファイナンスのプロダクツとなっています。 シニア・ローンは、買収資金の調達額の中で最も大きく、50%を超えることが通常で、高い場合には80%ぐらいの比率を占めることもあります。

②メザニン
メザニンは、キャピタル・ストラクチャー上のシニア・デットと普通株の間のすべてのプロダクツが対象になりますが、大きくは劣後ローン、劣後社債などのデットと種類株などのエクイティものに分けられます。バイアウト案件は、シニア・デットのほうがメザニンよりもコストが安いので、シニア・デットと買い手が出資する普通株のみで資金調達されるものも多く、メザニンは必ずしも含まれていません。

メザニンの最終期限は、シニアよりも長く、返済は期限一括で、すべてのシニア・デットが返済されるまで元本返済がないものが多いのですが、一方、シニア・デットに比べてよりリスクが高いため、金利はシニアよりも高く固定金利のことが多いと言えます。優先配当型の種類株によるメザニン・ファイナンスの場合には、金利的なものとして配当金が支払われます。デットの場合も、エクイティ・キッカーと呼ばれる新株予約権などのエクイティものを付加し、その売却によるキャピタル・ゲインを合わせることで、リターンがより高くなるようにストラクチャリングすることもあります。
(笹山幸嗣、村岡香奈子「M&Aファイナンス」金融財政事情研究会を筆者が加筆・
修正)
ディール・ストラクチャー上、メザニンを組み込もうとしても利息制限法の制約があるため、うまく設計ができない場合が出てきているのです。一般消費者保護を対象にした金利規制が、プロのM&A投資家にまで及ぶのは、全く馬鹿げた話です。早急に金利規制の適用対象から金融機関やファンドをはずすよう改正をお願いしたいものです。

【リンク】
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by yasukiyoshi | 2008-02-08 08:27 | M&A
2008年 02月 07日

JT、日清、加ト吉が冷食統合計画を解消その2

JT、日清食が冷凍食品事業の統合撤回を発表
日本たばこ産業(JT)と日清食品、加ト吉は6日、3社による冷凍食品事業の統合計画を解消すると発表した。3社は昨年11月、JTが加ト吉を完全子会社化した後に加ト吉株を日清食品に49%譲渡し、3社の冷凍食品事業の加ト吉への集約で合意していた。中国製冷凍ギョーザの中毒事件は、JTを核とした国内冷食事業の再編計画に大幅な修正を迫る事態に発展した。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080206AT2F0600906022008.html

【CFOならこう読む】
昨日、日清、JTの両社長がそれぞれ記者会見を行い、冷食事業統合撤回の理由を次のように語りました。
日清安藤社長「統合会社への出資比率引き上げを打診したがJTに断られた。中途半端なのは良くないという結論に達した」
JT木村社長「安全への責任は出資比率と直結している。問題を前に逃げるわけにはいかない」
日清としては、自らが過半をとり主体的に経営に当らなければ「食の安全性確保」はままならないという確信を持ったのでしょう。

中毒事件発覚前の経営統合発表時点で、日清の株主から「なぜ大型投資をするのに過半をとらないのか」という声があがったそうですが、過半をとるかとらないかは買う側に立つか売る側に立つかという決定的な立場の違いを意味します。中途半端な出資が(緩やかな提携というような株式持ち合いも含めて)株主価値増大につながるケースは極めて稀であるように思います。

(本日の経済教室で松本啓二弁護士が持ち合いによる買収防衛策の是非について検討しています。私と考え方は異なりますが、この問題を考える上でとても参考になると思いますので是非お読みください)

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-07 08:36 | M&A
2008年 02月 06日

JT、日清、加ト吉が冷食統合計画を解消

JT、日清、加ト吉が冷食統合計画を解消・ギョーザ事件が影響
日本たばこ産業(JT)、日清食品、加ト吉は6日、3社による冷凍食品事業の統合計画を解消すると発表した。中国製冷凍ギョーザの中毒事件の発覚で、統合作業を進めるのは困難と判断した。JTはTOB(株式公開買い付け)により93.88%を取得した加ト吉の100%子会社化は予定通り実施する。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080206AT3K0600606022008.html

【CFOならこう読む】

今朝私の家に届けられた朝刊(13版)では、JT・日清冷凍事業統合凍結と報じられていましたが、正式に解消が発表されました。

事業統合は次のように進められる予定でした。
2007年12月 JTがTOBにより加ト吉株式を93.88%取得
2008年3月  加ト吉を100%子会社化
その方法はプレスリリースでは次のように説明しています。
「加ト吉は、その発行する全ての株式を全部取得条項付株式に変更した上で、その株式の取得と引替えに加ト吉の新たな株式を交付します。かかる交付に際して加ト吉はJT に対して加ト吉株式を交付し、JT 以外の加ト吉の株主に対して交付する加ト吉株式の数が1 株に満たない端数となるよう決定し、JT 以外の加ト吉の株主には当該端数の合計数を売却することによって得られる金銭を交付する方法により、加ト吉をJT の100%子会社とすることを予定しています。この場合の1 株に満たない端数の株主に対し交付される金銭の額については、特段の事情がない限り本件公開買付けの買付価格を基準として算定する予定です。」

2008年3月 JT保有の加ト吉株式のうち49%を日清に譲渡
2008年4月 JT と日清食品の冷凍食品事業を、両社の加ト吉に対する前記議決権保有割合に変動を及ぼさない方法により加ト吉に移管(具体的な方法については明らかにされませんでしたが、会社分割又は事業譲渡によるものと予想されていました)
今日発表されたのは日清による加ト吉株式の取得及び加ト吉への事業譲渡の中止でした。JTによる加ト吉の100%子会社化は予定通り行われるとのことですが、JTから加ト吉への事業譲渡が行われるかどうかはわかりません。

解消の理由を日清は次のように説明しています。
「この度、本件統合対象であるJTの子会社が輸入販売する冷凍食品の一部に殺虫剤が混入したことが原因と疑われる健康被害事例が発生し、食の安全・安心を揺るがす事態に至りました。当社は、かかる事態の発生を踏まえ、本件統合に責任をもって取り組むための体制、方針等の見直しを含め真摯に協議し、安全性確保のため全面的に協力することを提案して参りましたが、協議の結果、本件統合を遂行することは困難との結論に達し、三者合意の上これを解消することといたしました。」
また、JTは次のように説明しています。
「加ト吉、日清食品、JT の3 社で協議をした結果、当社冷凍食品に端を発した現下の情勢に鑑み、当該基本契約にかかる日清食品との関係を、3 社合意の上、解消することを決定しました。」
日清の冷凍食品事業の売上高は150億円程度に過ぎず、統合により得られるプラスのシナジー価値より、統合による日清ブランド毀損の可能性等マイナスの影響が大きいと判断したものと思われます。M&Aでは止める意思決定が最も難しくかつ最も重要です。そういう意味で今回の日清の判断を私は支持します。

【リンク】

2007年11月22 日「加ト吉、JT 及び日清食品における冷凍食品事業の統合について ~冷凍食品事業を中核とするグローバル食品メーカーを目指して~」
http://www.jti.co.jp/News/2007/11/20071122_01.pdf

2008年2月6日「冷凍食品事業の統合の解消等に関するお知らせ」日清食品株式会社
http://cache.nissinfoods.co.jp/com/ir/library/pdf/new_080206.pdf

2008年2月6日「冷凍食品事業統合における日清食品株式会社との関係解消について」日本たばこ産業株式会社
http://www.jti.co.jp/News/2008/02/080206_JT_Frozen_Press_Release_J.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-06 10:26 | M&A
2008年 02月 05日

サッポロ・スティール

正当性の点では、買収防衛策発動の条件整う=サッポロHD
[東京 4日 ロイター] サッポロホールディングス(2501.T: 株価, ニュース, レポート)から諮問を受けていた特別委員会は4日、米系投資ファンドのスティール・パートナーズの買収提案について「サッポロHDの企業価値をき損し、株主共同の利益を著しく害する恐れが大きい」との意見書をまとめた。特別委員会の武藤春光氏(弁護士)は会見で、正当性という点では、買収防衛策発動の条件が整った、と述べた。今後、サッポロHDの取締役会が、買収防衛策を発動するかどうかについて判断することになる。
http://jp.reuters.com/article/fundsNews/idJPnTK006566920080204


【CFOならこう読む】

企業価値報告書は、防衛策の適法性について、

①企業価値への脅威の存在
②脅威に対する防衛策の妥当性
③防衛策の維持・発動・解除に関する取締役会の慎重かつ適切な行動を判断の基準として掲げています。


つまり、サッポロ経営陣はスティール・パートナーズのTOBが企業価値を明らかに毀損するものであることを立証した場合、その脅威との関連で妥当と認められる範囲で防衛策の発動が法的にも容認される場合があるわけです。しかし防衛策はあくまで抑止力であって発動されることを前提とはしていません。明らかに企業価値を破壊する買収者であるならお引取り願うし、そうでないなら後は株主の判断に任せるというのが企業価値報告書の基本的な考え方であるのです。

そのとき「特別委員会」の唯一かつ重大な仕事は、スティールが企業価値を明らかに毀損する濫用的買収者であるかどうかの判断をすることであるはずです。ましてやサッポロの大規模買付行為への対応方針(本対応方針)では、買収対応策の発動について、大規模買付行為者が濫用目的を持っていることが独立した要件としているのですから、この判断をしないわけにはいきません。

ところが「特別委員会」は「株主共同の利益を害するかが問題で、濫用目的かの判断は不要」と判断を回避しました。これは全く自己の存在意義を理解していないものと言わざるを得ません。「特別委員会」は判断を回避する理由として、ブルドック事件のときに最高裁が濫用的買収者に当たらない場合でも、買収対応策の発動が是認されることを認めたことを挙げています。

しかしそれは株主総会で大多数の株主が賛成している以上、最高裁としては濫用的買収者であるかどうかを判断する必要はないということを言っているにすぎず、「特別委員会」がスティールを濫用的買収者であるかどうかを判断しない理由には全くなりません。

売り買いを株主の判断に委ねるという基本的な株主の権利を否定する会社は即刻上場を廃止すべきであると私は思います。

【リンク】
平成20 年2 月4 日「『当社株券等の大規模買付行為への対応方針』に基づく特別委員会からの意見書受領について」サッポロホールディングス株式会社
http://www.sapporoholdings.jp/news/up_img/1209.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-05 11:39 | M&A
2008年 02月 04日

エクスチェンジテンダーオファー(自社株対価のTOB)が日本で出来ない理由

NY株の続伸、ヤフーへの買収提案を好感
【ニューヨーク=財満大介】1日の米株式相場は続伸。ダウ工業株30種平均は前日比92ドル83セント高の1万2743ドル19セントで取引を終えた。マイクロソフトによるヤフーへの買収提案を受け、株式市場にM&A(合併・買収)資金が流入するとの期待が高まった。ただ、1月の雇用統計が弱含んだ影響で上昇幅は限られた。
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080202D2M0200M02.html

【CFOならこう読む】
先週ヤフーがマイクロソフトの買収提案を拒否した場合、TOBを行うこともあり得るとの報道がありました。その場合エクスチェンジテンダーオファー(マイクロソフト株式を対価としたTOB)を行う可能性があります。ところが日本では税制の問題があり、エクスチェンジテンダーオファーを行うことができない、というお話しをしました。税制の問題は確かに大きいのですが、実は会社法も実質的にエクスチェンジテンダーオファーを行えないような規定になっているのです。具体的には次の通りです。

(1)現物出資
買い手は買収対象会社株式を受入資産とする増資を行うことになり、これ自体現物出資とみなされる。現行会社法は、受入資産が時価のある有価証券である場合検査役検査は不要としていますが、これは対価として受領する有価証券の市場価格が十分な場合に限定されるので、プレミアムの支払いが前提となるTOBの場合問題となり得る。時価20ドルのヤフー株式を時価31ドル相当のマイクロソフト株式で取得するなら、マイクロソフトは31ドルの増資に見合う資産(ヤフー株式)を取得していないことになります。

(2) 有利発行
買い手がプレミアムを支払って買収対象株式を取得した場合、新株を特に有利な価格で発行したとみなされる可能性があり、株主総会の特別決議を要する。時価20ドルのヤフー株式を時価31ドル相当のマイクロソフト株式で取得するなら、マイクロソフトは自社株式を有利な価格でヤフー株主に交付したことになります。

エクスチェンジテンダーオファーが出来れば、株主価値を創造するようなTOB実行の機会が増加するはずです。これを阻害する制度は直ちに改正することを望みます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-04 08:06 | M&A
2008年 02月 02日

米マイクロソフト、ヤフーに総額4.75兆円で買収を提案

[サンフランシスコ/ニューヨーク 1日 ロイター] 米マイクロソフト(MSFT.O: 株価, 企業情報, レポート)は1日、ヤフー(YHOO.O: 株価, 企業情報, レポート)に買収案を提示したと発表した。提示額は1株当たり31ドル、総額約446億ドル(約4兆7500億円)で、株式と現金の組み合わせで行うとしている。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-30123220080202

【CFOならこう読む】
プレスリリースによると、ヤフーの株主は1株当たり31ドルの現金かマイクロソフトの普通株0.9509株のいずれかを受け取ることができ、全体では現金とマイクロソフト普通株の割合は半々となる必要があります。IRC368Aは現金での支払いが50%を下回る場合の合併を非課税で行うことを認めており、この適用を前提にしたスキームであると思われます(但し現金を受領した株主は売却益に対し課税されます)。日本では現金を支払対価とする合併は非適格となり、現金を受領した株主のみならず、被合併会社自体にも譲渡益課税がかかります。ですから同じようなスキームを日本で行うことは非常に困難なのです。

ヤフーがマイクロソフトの買収提案を拒否した場合、TOBを行うこともあり得るとの報道があります。その場合マイクロソフトはTOBの対価として自社株式を用いるかもしれません。米国の場合自社株式を対価としたTOBが頻繁に行われていますが、日本では行われていません。日本でも制度上は一応可能なのですが、税法の問題がありやりたくてもできないのです。TOBの対価が現金でも株式でも株主は課税されてしまうのです。米国では自社株式を対価としたTOBを非課税で行うことができます。

税制が障害になって株主価値を創造するM&Aが封印されてしまう日本の現状には大きな苛立ちを感じます。

【リンク】

Microsoft Proposes Acquisition of Yahoo! for $31 per Share
http://www.microsoft.com/presspass/press/2008/feb08/02-01CorpNewsPR.mspx


by yasukiyoshi | 2008-02-02 12:14 | M&A
2008年 01月 28日

同族企業の後継者問題-大手企業などに株式売却の動き広がる

まい泉など同族企業の株売却広がる・後継者不足や市場縮小背景
トンカツ総菜店で有名な井筒まい泉(東京・渋谷)がこのほどサントリーの傘下に入ることを決めた。同社に限らず、同族・オーナー経営企業の間で創業者らが自社株を大手企業などに売却する動きが広がっている。後継者難に加え、国内市場が成熟・縮小する中で中堅規模では生き残れないとの危機感も背中を押している。オーナーが経済合理性を重視、同族経営にこだわらなくなった気質の変化も背景にありそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080128AT1D2700727012008.html

【CFOならこう読む】
記事の中で同族企業のM&Aについて、「証券優遇税制の今年末の期限切れを控え、駆け込み的に増えている」という専門家の指摘が紹介されています。これはどういうことかと言うと、未上場株式の譲渡益の税率は20%ですが、上場株式の譲渡益の税率は今年末まで10%の優遇税率が適用されるので、同族企業のオーナーとしては普通に株式を売却するのではなく、株式交換等で上場企業の株式と交換した上でこの上場株式を売却すれば税制上有利であるのでこれを利用しようというものです。

駆け込み的に増えているかどうかの真偽は不明ですが、いずれにしても買い手のCFOとしては株式交換ありきで交渉にあたるのはやめた方が良いと思います。M&Aの通貨として現金を使うか株式を使うかは最適資本構成の観点から考えるべきです。買い手の立場からは現金買収を選択すべきということになったとしてもそれで交渉が決裂するとは限りません。何故ならオーナーが被る税務上の損失分を売却代金に上乗せすることもできるからです。マイロン・ショールズ等は”Taxes and Business Strategy”というMBAテキストの中で、税引後の売り手の手取り金額に着目して価格交渉を行うことの重要性が詳しく説明されているので参考にしてください。

【リンク】
Taxes and Business Strategy: A Planning Approach
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by yasukiyoshi | 2008-01-28 09:51 | M&A