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2008年 12月 20日

円高は悪か?

日銀、0.2%利下げ 白川総裁「最大限の貢献行う」
日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を年0.3%から0.1%に引き下げることを決め、即日実施した。長期国債の買い入れ増額やコマーシャルペーパー(CP)の買い取りなど、資金供給策も拡充する。海外経済の後退や円高の進行で景気がさらに落ち込むリスクが高まり、金融政策面で一段の下支えが必要と判断した。日銀の白川方明総裁は記者会見で「中央銀行としてなし得る最大限の貢献を行う」と企業の資金繰り支援策をさらに検討することも強調、景気の底割れ回避に全力で取り組む決意を表明した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1902L%2019122008&g=E3&d=20081219
【CFOならこう読む】
FRBがゼロ金利を決めた影響で、「相対的に金利が高くなった円が買われ、為替市場では約13年ぶりに1ドル=90円を突破する円高・ドル安が進んだ。頼みの輸出産業が大打撃を受けた日本経済にとって、一層の円高はまさに「弱り目にたたり目」である。
(前掲紙)

円高は悪なのでしょうか?

そもそもすべての輸出産業は円高によって本当に大打撃を受けるのでしょうか?
例えば輸入資源価格の高騰を受け、鋼材輸出企業である新日鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼は軒並み決算を上方に修正しています。円高の水準にもよりますが、円高=輸出産業大打撃ということには必ずしもなりません。

輸出産業にとって円高が望ましくないとしても、それが直ちに日本全体にとって望ましくないということにはなりません。この点、昨日に引き続き、野口悠紀雄氏「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)から引用したいと思います。
「円高こそが、経済成長の利益を日本人が享受するための自然なルートなのである。なぜなら、「円高」とは、日本人の労働価値が高く評価されることだからである。
(中略)
消費者の立場から見て望ましい変化が生じたときに、それを打ち消すような圧力が生産者(とくに輸出産業)から生じるのが、日本の経済政策の基本的バイアスである。こうしたバイアスは、最近時点に始まったものではない。
日本の経済論議や経済政策論議は、高度成長期以来一貫して、消費者無視のバイアスを持っていた。ただし、これまでは、それに一定の合理性があった。多くの人は消費者であると同時に生産者でもあるため、企業が発展すれば賃金が上がり、生活水準が向上するからだ。
しかし、いまや企業が成長すれば自動的に消費者の生活が向上するという保障はない。日本人は、企業人としての立場と消費者としての立場を、秤にかけて勘案すべき段階にきている。」
日銀白川総裁の会見要旨を見る限り、日銀としては、円高=悪との判断はないようで、少しだけほっとしています。

【リンク】
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野口 悠紀雄

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2008年10月31日「2008年度第2四半期決算及び通期業績見通しについて」株式会社神戸製鋼
http://www.kobelco.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2008/11/07/ir_siryo.pdf

2008年10月24日「JFEグループ2008年度 上期決算 2008年度 業績見通し」JFE
http://www.jfe-holdings.co.jp/investor/zaimu/g-data/jfe/21/21-setumei081024.pdf

「実績と業績予想 2008年3月期連結業績実績」新日本製鐵株式会社
http://www.nsc.co.jp/ir/individual/finance.html

by yasukiyoshi | 2008-12-20 09:32 | 為替
2008年 12月 19日

ホンダ(下半期)、トヨタ(通期)営業赤字へ

ホンダ、工場稼働延期 減産、国内12社では220万台強に
世界的な自動車需要の縮小を受け、自動車各社が事業計画の見直しを急いでいる。ホンダは17日、国内の新工場・研究所の稼働延期を柱とする事業計画見直し策を発表。2008年度下半期(08年10月―09年3月)は営業赤字に転じる見通しで、戦略的な投資削減に踏み込むことで急場をしのぐ。日産自動車も減産幅を拡大。日本の自動車メーカー12社が世界で取り組んでいる減産規模は今年度、当初計画比で1割弱に当たる220万台強となる見込み。米国発の金融危機が顕在化して以降、業績悪化が急速に進んでいる。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081218AT1D170BR17122008.html
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081219AT2D1802818122008.html
【CFOならこう読む】
2008年11月6日にトヨタは業績の下方修正を発表しました。そこで発表されたのは、営業利益が対前年度で73.6%減少して6000億円になるという驚愕の内容でした。世に言う”トヨタショックです。そしてそれから1ヶ月と少ししか経っていないのに、さらに業績が悪化し、営業利益がマイナスとなる見通しと報道されました。2008年3月期には2兆2703億円であった営業利益が全て吹き飛んだのです。

これは大変なことです。日本における自動車産業の重要性を鑑みると、日本経済全体が危うい状況にあると言ってよいでしょう。しかし何故こんなことになっているのでしょう。今はまず現状を正しく理解することが大切だと私は思います。

野口悠紀雄氏は、最近出版した「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)の中で、今起きていることは、「アメリカ発の金融危機が日本に飛び火している」のではなく、「問題はマクロ経済の歪みであり、日本はその中心に位置している。今後の景気後退は不可避」と指摘しています。

私は野口氏の見解は極めて本質を突いたものだと思っています。野口氏が言っていることを要約すると次の通りです。
「アメリカ人の過剰消費が90年代末からのアメリカの経常赤字の拡大を生んだ。大きな家に住み、自動車を数台所有するという生活が過剰消費を生んでいる。アメリカが経常赤字を持続するには、資本取引によりファイナンスする必要がある。そのためにはドルが減価しないことが大前提となる。ところがサブプライム以降ドルの信認がゆらぎ、この構造を維持することが不可能になっている。であるなら、もはやアメリカの経常赤字は維持できず、過剰消費も改めざるを得ない。

日本は脱工業化が必要であるにも関らず、本当に必要な構造改革を断行せず、低金利・円安政策により、古い産業構造を温存した。これが円安バブルを生み、見せかけの日本の景気回復に繋がったが、決して日本経済が強くなったわけではない。

円安バブルが、円で資金調達し高金利通貨で運用する「円キャリー取引」を増加させ、これがサブプライムローン関連金融商品に回った。2005年以降の企業収益の増加と株価の上昇はこの円安バブルによるものである。現在この「円キャリー取引」の巻き戻しが起きており、円高をもたらした。円ドルレートの調整はまだ終わったとは言えず、さらなる円高もあり得る。

アメリカの経常赤字縮小は、日本の経常黒字縮小を意味する。日本の貿易黒字縮小は不可避だ。GDPの5%のマイナス成長もあり得る。

中長期的に見てより大きな問題を抱えているのはアメリカよりむしろ日本だ。これからの日本は、制御不可能な事態に直面する可能性がある。

必要なのは日本経済の構造大転換。」
そして野口氏はベンチャー企業の起業の重要性を強調しています。

その通りだとは思いますが、今の日本ではグリー程度の会社がもてはやされるに過ぎません。淋しい限りです。

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野口 悠紀雄

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by yasukiyoshi | 2008-12-19 10:05 | 為替
2008年 11月 15日

ドルが基軸通貨でなくなることの意味

「米ドル、もはや唯一の基軸通貨ではない」 仏大統領
【パリ支局】AFP通信によると、フランスのサルコジ大統領は13日、「米ドルはもはや唯一の基軸通貨ではない」と語った。14日にワシントンで開幕する緊急首脳会合(金融サミット)でも同様の主張を展開する見込みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081114AT2M1401614112008.html
【CFOならこう読む】
サルコジはユーロこそが次の基軸通貨だとでも言いたいのでしょうか?
ならば、それは間違いだと教えてあげなければなりません。
-下手をすると、日本がもっているドルも紙切れになるかもしれない。
岩井 このゲームがどうなるかが、ここ十年のポイントでしょう。理想的に言えば、世界中央銀行ができるしかないんだけれど、これはたいへんに難しい。ヨーロッパのなかでさえ、ユーロ中央銀行でだれが主導権をもつか、そしてユーロ中央銀行と各国の経済政策に関する主権との関係がほとんど解けない大問題になっているわけですから。だから、ここしばらくは二面作戦でいくよりほかないと思います。
 ひとつは、書生的な言い方ですが、たとえいくら困難であろうとも、世界中央銀行への足がかりとなるような国際機関や国際制度を、少しずつ地道につくりあげていくことです。もうひとつは、ひどくコンサバティブな言い方ですが、ほんとうの世界通貨ができるまで、なんとかドル基軸通貨体制をもたせていくこと。そのためには、脅しとかいろんなかたちで、アメリカに基軸通貨国としての責任を忘れないようにしなければならない。ぼくは、ユーロの登場は、そういう意味での脅しであるかぎりは、非常に意味があると思う。だが、第二の基軸通貨としてドルの簒奪をねらっているのだとしたら、それはものすごく危険です。基軸通貨とはひとつしかないことに意味があるのであり、複数の基軸通貨の共存などというのは、これだけ世界経済が一体化した現在においては、ありえない。脅しが行きすぎると、元も子もなくなる。

ードルが揺らぐと、これはほんとうに世界危機になる。そのなかで日本がどうなる
か。
岩井
 心中でしょう。ユーロのほうは大丈夫だと思っているだろうけれど、ユーロがもっているユーロダラーというのは膨大です。ドル危機が本格化したら、ユーロだって危機に陥る。ユーロはある程度は穏便にいくように振る舞うしかない。」
(「資本主義から市民主義へ」 岩井克人 新書館)


【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-11-15 00:53 | 為替
2008年 10月 09日

為替マネジメントの方向性

中小企業の高成長実現に
8日の外国為替市場は円相場が一時、1ドル=98円台まで急騰した。金融危機をきっかけにドルは中長期的な先安観が強まり、しかも為替市場の予想変動率は歴史的高水準に達している。海外展開を加速する日本企業にとって、為替マネジメントは試練の時を迎えた。
(日本経済新聞 2008年10月9日 17面)
【CFOならこう読む】
8日、円・ドル相場の先行き1ヶ月の見通しを示す予想変動率(ボラティリティ)は、前日比2.1ポイント増の24.9%と1998年10月20日に25%を付けて以来の高水準となりました。

また円相場は大幅続伸し、一時1ドル=99円61銭まで円高・ドル安が進みました。

そんな中、多くのCFOは為替マネジメントに苦慮していることと思います。
今日の日経新聞17面の特集記事、「グローバル財務の潮流」の中でいくつかの企業の為替マネジメントの事例が掲載されています。
商船三井
「1ドル=60円なら2500億円の損失ー。同社はこんな想定の下、いざという時でも十分な資本と投資を確保できるよう、自己資本1兆円構想(前期末は6800億円)を掲げ資本の積み増しに励む。90年代に比べ円高への耐久力は高まっており、現時点で極端な円高を予想しているわけではない。それでも有事に備え、踏み込んだ議論を続けている。」

エイチ・アイ・エス
「2008年10月期から、新規の長期為替予約(ドル買い)を中止した。海外旅行先のホテルなどの仕入れ代金を固定するため、前期までは1ドル=110円程度の水準で2-3年先まで為替予約をしていた。しかし為替相場が激しくなり、思わぬ損失を被る可能性が出てきたためだ。」

三菱電機
「エアコンなど欧州圏での事業が拡大するなか、ドル建て取引のユーロ建てへの変更を進めている。昨年後半からの米国金利の低下で、世界的にドル安が進むと予測したからだ。取引先によってはドル建てを希望するケースもあり、個別に交渉してユーロ建てに順次切り替えている。」

ユニデン
「ドルに偏る保有資産の分散を検討中。約300億円のドル預金を、円建ての預金や有価証券などに配分し直す方針だ。」

コメリ
「同社は売上高の約15%が輸入品で原則ドルでの決済。現時点ではドル建ての決済方針を変えていないが、円に変えた方が利点が多いとなれば、変更も選択肢の一つだ。」
一番難しいのは、ドルが駄目ならユーロに行けば良いというものではない点です。岩井克人教授は、「資本主義から市民主義へ」の中で、次のように言っています。
―ドルが揺らぐと、これはほんとうに世界危機になる。そのなかで日本がどうなるか。

岩井 心中でしょう。ユーロのほうは大丈夫だと思っているだろうけれど、ユーロがもっているユーロダラーというのは膨大です。ドル危機が本格化したら、ユーロだって危機に陥る。ユーロはある程度は穏便にいくように振る舞うしかない。
それでもドルのリスクをとるよりはマシだとは思いますが。

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by yasukiyoshi | 2008-10-09 08:09 | 為替
2008年 08月 14日

主要輸出企業の今期為替見通し、想定レート据え置き大勢

主要輸出企業が為替相場の先行きを慎重に見ている。足元の為替相場は一時、約7ヶ月ぶりに1ドル=110円に下落するなど期初よりも円安傾向にあるが、多くの企業が2008年度の想定為替レートを期初に設定した水準から変えていない。円安傾向が続けば業績の上ぶれ余地が出るが、米国景気の後退など外部環境は厳しく楽観視する声は聞かれない。
(日本経済新聞 2008年8月14日 15面)
【CFOならこう読む】
主要企業の2009年3月期の想定為替レートと影響額は次の通りです。

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円ドルの想定レート見直しは少数派で、大半は期初の想定レートを事実上維持しています。記事は、今後の収益悪化に備えて、想定レート見直しによる利益押し上げの「のりしろ」を確保したいと考える企業が多いためと分析しています。

想定為替レートの水準はどの程度に設定するのが適当なのでしょう。参考になるかどうかわかりませんが、以下、最近の新聞紙面等から市場関係者他の為替予想を列挙しておきます。
「個人投資家の間でユーロやポンドの手じまい売りが出始めた」(インヴァスト証券三ヶ田裕信氏 日経新聞2008年8月13日)

「日本の機関投資家が米国の短期債に再投資する可能性もあり、大きな円高要因にならないかもしれない」(ソシエテジェネラル銀行斉藤祐司氏 同)

「ファンダメンタルズからみれば、ドルを買う理由は乏しい」(JPモルガン佐々木融氏 同)

「米経済は最悪期を脱していない。今のドル高はこれまで売ったドルを買い戻す持ち高調整が主因。経済のファンダメンタルズは全く反映されていない。再びドル売りが強まる。年末にかけて1ドル=102円まで円高・ドル安が進む。」(JPモルガン佐々木融氏 日経ヴェリタス2008年8月10日)

「景気悪化で投資家のリスク資産への投資意欲が一段と低下して、国境を越えた資金の移動が著しく減少する。巨額の経常赤字を抱える米国への資金流入は細り、次第にドル安が進む。年末にかけて1ドル=100円まで円高・ドル安が進む。」(ステート・ストリート銀行富田公彦氏 同)

「来年にかけて日本経済が再評価される。日本はバブル崩壊の経験を生かし、株式も不動産も傷が浅かった。日本が政策金利を据え置く一方、海外では利下げする国が増える。年末にかけて1ドル=105円まで円高・ドル安が進む。」(みずほコーポレート銀行竹中浩一氏 同)

「年末にかけて米住宅価格の下落速度が鈍化し、景気が回復し始める。米経済を下支えする新興国の高成長がいきなりストップするとは考えにくい。年末にかけて1ドル=112円まで円安・ドル高が進む。」(住友信託銀行瀬良礼子氏 同)。

「日本の景気が後退局面に入ったうえ、ユーロ圏も失速。豪ドルなどの高金利通貨も金利先安観が出ており、相対的にドルが買われやすい。11月ごろに1ドル=113円まで上昇する。」(ドイツ証券深谷幸司氏 同)
見方にはかなりばらつきがありますが、少なくとも大幅な円安・ドル高を予想する声はないようです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-08-14 09:18 | 為替
2008年 08月 09日

為替ヘッジのタイミング

円相場 予想変動率が低下 9.5%、7ヵ月半ぶり水準
外国為替市場で円相場が今後、やや落ち着くとの見方が広がっている。先行き1ヵ月後の円・ドル相場の見通しを映す予想変動率(ボラティリティ)は、9%台半ばまで下がり、9%台半ばまで下がり、7ヶ月ぶりの低水準となった。原油価格の下落などでドルが急落するリスクが和らいでいるためだ。
(日本経済新聞 2008年8月9日 17面)
【CFOならこう読む】
記事でいう予想変動率とは、インプライド・ボラティリティのことです。
「インプライド・ボラティリティとは、マーケットで観測されるオプション価格から逆算したボラティリティのことである」(「ファイナンシャルエンジニアリング」ジョンハル著 金融財政事情研究会)
ボラティリティはリスクの価格を表すので、ボラティリティが高いときに為替リスクヘッジ目的の金融商品を買うと高くつきます。

そういう意味では、そろそろ、ヘッジを厚めにしても良い時期なのかもしれません。

【リンク】
2008年 08月 8日「東京外為市場・15時=ドル再び110円に接近、買いの動き強まる」ロイター
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-33152920080808


by yasukiyoshi | 2008-08-09 08:05 | 為替
2008年 07月 04日

欧州、0.25%利上げ

欧州中銀、0.25%利上げ インフレ抑制図る
【フランクフルト=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は3日の定例理事会で政策金利を引き上げることを決めた。ユーロ圏15カ国に適用する最重要の市場調節金利を0.25%上げ、年4.25%とする。昨年6月以来、1年1カ月ぶりとなる利上げで、インフレ抑制を図る姿勢を示す。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2R0100V%2003072008&g=MH&d=20080703
【CFOならこう読む】
昨年10月17日(http://cfonews.exblog.jp/6638557/)に当ブログで、ドル基軸通貨体制崩壊のリスクについて指摘しました。その上で岩井克人氏の、「資本主義から市民主義へ」から次の一節を紹介しました。
「基軸通貨国であるアメリカには基軸通貨国としての世界経済全体の立場に立った規律が求められているということです。たとえば、アメリカが不況であっても、世界中がインフレになれば、アメリカはドルの供給を減らしてデフレ政策をとらなければならないということです。
その意味で、アメリカは、基軸通貨国としての地位を保っているかぎり、世界経済の中央銀行的な役割を果たすように義務づけられている。だが問題は、アメリカという国は、かつてのモンロー・ドクトリンにもあるように、伝統的に内向きの国なのです。そして、その傾向は、冷戦が崩壊してから、ますます強まってきている。
基軸通貨国であることが要請する世界に向けた規律を、往々にして忘れてしまっているように思えるのです。ここに、現在の世界資本主義がかかえているもっとも根源的な危機の種がある。」
今日の日経新聞3面は、「米利上げに動けず」という見出しで次のような記事を載せています。
「米FRBが金融引き締めに動くのは当面難しそうだ。3日発表の6月の雇用統計で失業率の高止まりと雇用者の減少傾向が鮮明となり、景気の足腰の弱さが改めて浮かび上がった。経済活動を冷やしかねない利上げのハードルは一段と高くなった。インフレへの対応を優先する欧州との調整も難しく、FRBの政策のさじ加減はさらに難度が高まる。」
まさに岩井克人氏の危惧が現実味を帯びてきているように思えます。
CFOとしてなすべきことは、(予定取引も含め)ドル建債権のエクスポージャーを極力減らすこと、です。

【リンク】
資本主義から市民主義へ
岩井 克人

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by yasukiyoshi | 2008-07-04 08:16 | 為替
2008年 05月 17日

2009年3月期の想定為替レート

上場企業 今期5.8%減益 3月期経常益 自動車・鉄鋼減速響く
上場企業の2009年3月期の連結経常利益は前期比5.8%減る見通しだ。米景気の減速や資源高が響き、7期ぶりの減益となる。輸出企業の多くが想定為替レートを1ドル=100円と前期より大幅に円高・ドル安で見ていることも影響する。商社をはじめ増益予想の企業も全体の6割あるが、自動車や鉄鋼といった主力企業の不振が打ち消す構図が鮮明になった。
(日本経済新聞 2008年5月17日 1面)
【CFOならこう読む】
企業が業績の見通しや事業計画を決める際、前もって決めておく為替レートのことを想定為替レートと言います。3月からの急激な円高を受けて、トヨタ自動車は今期の為替レートを1ドル=100円と前期より円高に設定しました。中小企業の中には今年度の想定レートをまだ決めかねているところも少なくないと思われます。
主力輸出企業の想定為替レートは次の通りです。参考にしてください。

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【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-17 09:34 | 為替
2008年 03月 14日

ドル不安の行方

対ドル以外は「円安」 総合的な実力05年の水準
円の対ドル相場は十二年ぶりの高値水準になったが、対ドル以外の通貨も含めた円の総合的な実力を示す実効為替相場はまだ二〇〇五年ごろの水準にある。日本からの輸出比率に応じて二十二カ国の通貨との相場を加重平均して算出している日経通貨インデックス(二〇〇〇年=一〇〇)は十三日時点で前日比一・二ポイント高い九二・一。これは〇五年九月の水準だ。
今の相場は「円の独歩高」というより、米国経済やサブプライムローン問題の懸念に伴う「ドル安」という側面が強いことが分かる。
これとは別に、日銀が月次で算出している実質実効為替レート(各国の物価の格差も反映)も、昨夏から上昇基調にあるが、二月時点では〇六年十一月以来の水準にとどまっている。
(日本経済新聞2008年3月14日 3面)
【CFOならこう読む】
「円高」ではなくドル安です。これを読み違えてはいけません。

昨年10月17日に私はドルの信認が揺らいでいるということを書きました。
http://cfonews.exblog.jp/6638557/

どうやらあの時危惧した方向に少しずつ向かっているように思います。
あの記事の中で紹介した「資本主義から市民主義へ」の中で岩井克人氏は基軸通貨としてのドルの脆弱性を指摘した後次のように続けています。
―ドルが揺らぐと、これは本当に世界危機になる。そのなかで日本はどうなるか。

岩井 心中でしょう。ユーロのほうは大丈夫だと思っているだろうけれど、ユーロがもっているユーロダラーというのは膨大です。ドル危機が本格化したら、ユーロだって危機に陥る。

―下手をすると日本がもっているドルも紙切れになるかもしれない。

岩井 このゲームがどうなるかが、ここ10年のポイントでしょう。理想的に言えば、世界中央銀行ができるしかないんだけれど、これはたいへんに難しい。ヨーロッパのなかでさえ、ユーロ中央銀行でだれが主導権をもつか、そしてユーロ中央銀行と各国の経済政策にかんする主権との関係がほとんど解けない大問題になっているわけですから。だから、ここしばらくは二面作戦でいくよりほかはないと思います。ひとつは、書生的な言い方ですが、たとえいくら困難であろうとも、世界中央銀行への足がかりとなるような国際機関や国際制度を、少しず地道に作り上げていくことです。もうひとつは、ひどくコンサバティブな言い方ですが、ほんとうの世界通貨ができるまで、なんとかドル基軸通貨体制をもたせていくこと。
焦点は当面いかにドル基軸通貨体制を支えるかにあるのです。そしてその当面というのは”ここ10年”などという気長な話ではなく、もっと緊急性を帯びてきている、と私は感じています。

【リンク】
日経インデックス
http://rank.nikkei.co.jp/keiki/nkidx.cfm


by yasukiyoshi | 2008-03-14 09:20 | 為替
2008年 01月 04日

金利・為替

新年明けましておめでとうございます。
今年も頑張って早起きし、今日考えるべきニュースをわかりやすく読みほぐしてお届けしていきますので、よろしくお付き合いください。


昨日から日経新聞の経済教室が'08ニッポン再設計という特集を組んでいます。昨日1月3日はポール・サミュエルソン氏、今日1月4日は堺屋太一氏が寄稿しています。
2人の議論は今後の日本のあるべき姿を考える上でとても参考になります。

サミュエルソン氏は論文の中で、
①日本人は国内貯蓄の低金利を容認するのをやめるべきだ。
②ドルは今後も長期間下落する。
③日本は米国型の経済政策を目指すのではなく、スイス・フィンランド・アイルランドなど成功を収めている小国の戦略、すなわち”市場原理を導入しながら公的規制のもとで競争するという中間の道”から学ぶべきだ。(日本経済新聞2008年1月3日 24面)
と主張しています。

③は「市場原理を導入しながら」というのがポイントです。かなり強い公的規制が必要であるという点は全く同感ですが、官僚の復権につながるような形は是が非でも避けるべきだと思います。

堺屋太一氏は戦後の日本を次のように総括しています。
①官僚主導・業界協調体制により製品や施設の規格化を進め、過不足ない投資配分によって大量生産を達成し、その甲斐あって自動車や電機などの大量生産は世界一上手になり、大いに成長することができた。
②80年代から物財の豊かさが幸せであるという近代思想が疑われだし、人間の本当の幸せは物財の大きさから満足の大きさに変化した。この変化が社会主義を吹き飛ばし、ロシアや中国は大きな変貌を遂げたのに対し、日本は官僚主義の規格化と計画性で発展した成功体験から抜け出せず、このままでは「最も後に滅ぶ社会主義国」になりかねない。
(日本経済新聞2008年1月4日 21面)
私がこのブログで繰り返し主張している「政官財一体の経済体制」から「市場型資本主義」へという時代の流れとほぼ同様の歴史観です。そしてこの時代の流れが日本におけるCFOの役割をより重要なものに変質させるはずだという認識が、このブログの出発点であるということも何度かお話ししている通りです。

こうした大きな流れは野口悠紀雄氏が主張する資本開国へ向かっていくと考えるべきです。そしてその流れは、
①金利の上昇
②円高・ドル安
を推し進める可能性が極めて高いでしょう。

CFOとして何をすべきか。
一つ言えるのは銀行の言い成りになるのは止めるべきだということです。自分の頭で考えてそれを最も低コストで実現してくれる金融機関を探しましょう。”メインバンク”というのはとうの昔に死語になっていることを知るべきです。
追伸:
日経新聞の私の履歴書を書いているFRB前議長グリーンスパーンは、著書「波乱の時代 下巻」の「未来を占う」という章の中で、アメリカ及び諸外国におけるインフレ率と実質金利の上昇、及びリスク・プレミアムの上昇が名目長期金利を押し上げると予想しています。
【リンク】
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by yasukiyoshi | 2008-01-04 11:30 | 為替