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カテゴリ:コーポレートガバナンス( 37 )


2009年 02月 07日

ゲーリー・ベッカー氏インタビュー 「甘えるな、自立せよ」

大恐慌教訓に競争守れ 目立つ保護主義の動き
国発の金融危機を契機に、保護主義の動きが世界で目立ってきた。こうした近隣窮乏化策が不況を深刻化させた1930年代の教訓を世界は生かせるか。競争と自由主義の有効性を掲げるシカゴ学派の重鎮で、ノーベル経済学者の受賞者であるシカゴ大学のゲーリー・ベッカー教授に経済再生への道筋を聞いた。
(日本経済新聞2008年2月7日9面)

【CFOならこう読む】
シカゴ学派とは、
「1920年代に米シカゴ大学経済学部から生まれた経済学派。政府の役割を極力小さくする一方で市場原理を活用し、民間の自発性を引き出す経済運営を唱える。1976年にノーベル経済学賞を受賞した故ミルトン・フリードマン氏らが代表とされる。」
(前掲紙キーワード解説)
インタビューの中で、ベッカー氏は規制の必要性や政府の役割について言及しています。

ー深く痛んだ金融機関はどう再生させればいいでしょうか。
「必要な公的資金を迅速に投入すべきだ。額は莫大かもしれないが、そこでひるんではいけない。金融仲介機能の回復は急務だ。」
ーシカゴ学派は政府の介入を極力排除すべきだと主張してきましたが。
「投資ファンドなどはバブル思考におぼれ、我々は経済の行方を楽観しすぎた。規律なき自由などあり得ない。米国は今後、民間の創意工夫や競争を後押ししながら、秩序維持にはどんな規制が必要か、新たなバランスを模索することになる。」
日本においても中小企業に対する金融仲介機能が一部麻痺している現状において、公的資金を投入することは必要でしょう。場合によっては、資金を必要とする会社に対し直接公的資金を投入することもやむを得ないでしょう。シカゴ学派であっても政府の役割を全否定するわけではないのです。

しかしエルピーダメモリや日産に公的資金を使って資本注入することについては、ベッカー教授は賛成しないでしょう。一般事業会社について、資本注入すべき会社であるか否か政府が線引きをし、政府が資源配分を決定する社会はもはや資本主義社会とは言えないと私は思います。

もう一つベッカー氏の人的資本論は、
「「投資によって生産能力を高めることができる資本」ととらえたベッカー教授の理論で、企業内教育などは生産能力向上のための投資で、訓練の成果は人的資本投資の収益である」
というものです。

人的資本投資に失敗した会社の価値は上がらず、いつか市場から退出せざるを得ないでしょう。またそのような会社に終身雇用という名目のもと生涯縛りつけられる労働者も不幸です。

いま重要なのは、雇用を守れと企業を脅迫することではなく、労働市場を機能させられるよう皆で知恵を絞ることだと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2009-02-07 11:42 | コーポレートガバナンス
2009年 01月 21日

親子上場件数減少(2008年12月末時点)

「親子上場」が減少 経営効率化狙い完全子会社に
親会社と連結子会社とがともに上場する「親子上場」の件数が減っている。2008年12月末時点で399件と2008年3月末から13件減少した。親会社がグループ経営の効率化を狙って完全子会社にするケースが目立つ。
(日本経済新聞2009年1月21日16面)
【CFOならこう読む】
EVAの伝道師として有名なベネット・スチュワートが、自著『EVA創造の経営』の中で、子会社の部分公開は親会社の株主にとってデメリットが大きいと結論づけています。

その理由として次のものを挙げています。
①公開を維持するためのコストが重複
②親子会社間の取引の公平性の確保が難しい
③子会社独自の取締役会が必要になり少数株主の権利の尊重が必要
④親会社が直接ファイナンスする場合よりもコスト高になる場合が多い
⑤連結納税対象から外れる
米国では子会社の部分公開は少数の利用に止まり、優良大企業の間では子会社は100%所有するというのが大原則です。

今日の記事にあるように、日本では子会社の知名度向上や株式売却益などを目的に親子上場は1986年から2007年3月末はほぼ一貫して増えて来ました。

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「減少の背景には、利益相反を招く可能性があるとして、東証などが2007年秋に親会社と事業内容などが類似した主要子会社の上場を慎重に判断する方針を示したことがある。」(前掲紙)
東証は、2007年10月30日に、「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」で次のような方針を示しています。
「昨今、親会社と実質的に一体の子会社、若しくは中核的な子会社(親会社グループの企業価値の相当部分を占めるような子会社)の上場意向が散見されております。
このような中核的な子会社の子会社上場は、証券市場において実質的には新しい投資物件であるとは言えず、また、上場している親会社が企業グループの中核事業を担う子会社を上場させて新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えます。

このような状況から、例えば、事業ドメイン(事業目的・内容・地域等)が極めて類似している子会社や、親会社グループのビジネスモデルにおいて、非常に重要な役割を果たしている子会社、親会社グループの収益、経営資源の概ね半分を超える子会社などのいわゆる中核的な子会社の上場については各企業グループ、子会社の事業の特性、事業規模、過去の業績の状況、将来の収益見通し等を総合的に勘案しながら、慎重に判断していくことといたします。」
子会社公開は、親会社の資金調達を目的としている場合が多いと思われますが、子会社上場の際、高PERがつく場合、それは子会社の高成長性が評価されたもので、一般投資家は自己の資金がこの高成長事業に投入されることを期待して投資するのです。したがって親会社にキャッシュを横流しにするだけの子会社公開は、一般投資家との間で重大な利益相反が生じます。したがって事業ドメインが類似しているか否かに関わらず親子上場には問題があると私は思います。

【リンク】
2007年10月30日「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」株式会社東京証券取引所
http://www.tse.or.jp/news/200710/071030_d.html


by yasukiyoshi | 2009-01-21 10:33 | コーポレートガバナンス
2009年 01月 14日

内部留保活用で雇用守れる?

利益の蓄積、手元資金と別
雇用を守るため、企業の「内部留保」を活用すべきだとの意見が政治家や労働組合から出ている。だが内部留保は企業が自由に使える手元資金とは違う。内部留保の考え方の要点をまとめた。
(日本経済新聞2009年1月14日 11面 雇用Q&A)

【CFOならこう読む】
確かに、最近多くの政治家から内部留保を使って雇用を守れ、といった意見が聞かれます。しかしこういうことを言う人は、企業の財務諸表の見方がよくわかっていないように思います。京セラの創業者である稲盛和夫さんが、「稲盛和夫の実学―経営と会計」の中で、”剰余金(準備金)は会社のどこの金庫にあるのか”ということを経理担当者に何度も聞いたけれど、なかなかその意味がわからなかった、というようなことを書かれていますが、同様の誤解が「雇用を守るため内部留保を活用すべきだ」と言う人にあるのだと思います。

今日の新聞記事にもあるように、内部留保(=利益剰余金)とは、純資産の内訳のひとつにすぎません。
純資産とは、資産と負債の差額ですから、その分手元資金として会社が保有しているわけではありません。
これを取り崩せということは、企業に損を出せと言っているに等しいのです。損を出してまで雇用を守れ、ということを政治家は何の権利があって経営者に要求できるのでしょうか?

損を出さないまでも、従業員への配分を厚くしてそこまで利益を出さなくても良い、という意味で、「内部留保活用」という言葉を使っている人もいるようですが、資本コストに見合う利益を生めない会社は、上場を維持することはできないのです。
価値創造のプロフェッショナルである企業経営者に対し、価値を毀損しても従業員への配分を厚くしろと要求するのは間違っています。

どうしてもそれをしたいなら、法人税率を引き上げるしかありません。増税によって企業から富を吸い上げ再配分すればよいのです。しかしそんなことをすれば、多くの企業は日本から出て行ってしまうでしょう。そのとき日本人の雇用はいったい誰が守るのでしょう。

企業と従業員は対立するものではありません。価値創造のために共存するものです。逆に価値創造が出来なくなった企業は、市場から退出するしかありません。時代に合わなくなったスキルしか持ち合わせていない従業員も同様です。しかし死ぬわけではありません。再生するのです。どんなに失敗してもやりなおす、それが次のイノベーションを生んで行くのです。

政治が今行うべきことは、死に行く企業や死に行くスキルを生きながらえさせることではありません。今新たに生まれようとしているものを支援することです。

そういう意味では、今日の日経新聞3面、景気討論会記事中での深尾光洋氏(日本経済研究センター理事長)の発言、「昨年半ばから今年末までにGDPは3%ぐらい落ち込む。そうすると職がなくなる人が200万人規模で出る。ムダな公共投資より職業訓練をすべきだ。一人200万円使っても百万人で2兆円で済む。」は的を射ていると思います。

ところが日経新聞の39面を見ると、東京都が昨年秋に募集した職業訓練コースは、定員の2.6倍と狭き門であったと報じています。
私は、給食配送の仕事をしながら、会計士の試験勉強をしていた時期があります。配送先は、幼稚園、中学校、職業訓練校でしたが、職業訓練校の学生がもの凄く真剣に勉強をしていたのをとても印象深く覚えています。

今カネを使うべきはここだと私は思います。

【リンク】
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by yasukiyoshi | 2009-01-14 10:51 | コーポレートガバナンス
2009年 01月 09日

アーバンコーポレイション問題-昨日の続き

不透明な取引 ルールづくり後追いに
1月23日、東京地裁でアーバンコーポレイションの株主289人が元役員を相手取って起こした訴訟の1回目の弁論が始まった。
原告は300億円の新株予約権付社債(CB)発行で資金繰りがついたと判断し、株を買った個人投資家たちだ。「資金をBNPパリバ証券に払い戻すスワップ契約の存在を知っていたら買わなかった。これでは株取引などできない」。破綻まで契約は開示されず、多くの投資家が巻き込まれた。
スワップ契約を開示しないように強く働きかけたのはパリバ。問題を検証する外部検討委員会の松尾邦弘委員長は「市場を軽視した極めて不適切な行為。幹部の責任は免れない」と断じた。

(日本経済新聞2009年1月9日4面 外資系証券の虚実 上)
【CFOならこう読む】
より本質的な問題として、”経営者と既存株主”との間のコンフリクトに乗じて経営者に取り入り、一般株主の利益に反する”商品”を売り込むことで利益をあげる投資銀行が少なからず存在する点が挙げられます。

特に会社が生きるか死ぬかの瀬戸際にあるときに、”経営者と既存株主”との間に重大なコンフリクトが生じる可能性があります。生き延びなければ職を失うことになる経営者と希薄化を避けたい株主との間には重大なコンフリクトが存在します(エージェンシー問題と言っても良いかもしれません)。

ファイナンスという学問は、企業が多角化をする必要性を否定します。株主が分散投資すればそれで足りると考えるからです。

しかしこの考え方に私は違和感を覚えます。人間が本来持つはずの生存本能を無視しているからです。ゴーイングコンサーンであり続けるという経営者の強い意志が、強い企業を生み、そういった企業群が、活力ある資本主義経済ベースになければならないと私は思うのです。

どこまでも生き続けたいと考える経営者は、時に既存株主の利益に反するとしても、とにかく生きながらえる方策を模索します。そして投資銀行はそういった経営者の知恵袋となることで大きな利益を獲得するチャンスを窺うのです。

これは野放しに出来ません。

今日の新聞にも書かれているように、「不透明な取引が横行するグレーな市場のままでは、一流の参加者は集まらない(大崎貞和・野村総合研究所主席研究員)」のです。
「金融当局の動きが鈍いのは、今回の取引を違法と判断する明確なルールがないためだ。「これまで見過ごしてきた行為を違法とはいえない」(監視委幹部)。立証の難しい案件への「ためらい」が見え隠れする。自主規制を担う日本証券業協会も今回の取引を規制するすべをもたなかった。「問題だが違法ではない」。東京市場では「グレーな取引」が問題になるたびに、新たな規制を作る、いたちごっこが続いてきた。」
(前掲紙)
事前にルールを書き切ることは不可能です。
”株主価値”という大義を掲げるだけではやっていけないということも明らかです。

やはり何らかの包括的な規制が必要です。

しかしこの役割を従来通り役所に委ねることにも抵抗があります。
私は、英国のパネルをより拡張した形で、M&Aに限らず企業の資本取引全般を、民間団体により入口規制をしていく方向が良いのではないか、と思っています。

英国のパネルについては例えば次の論文を参照してください。
http://www.shinnihon.or.jp/knowledge/library/issue/infosensor/2006_02/2006_02_07.pdf

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2009-01-09 10:35 | コーポレートガバナンス
2008年 12月 01日

カネボウ元CFO嶋田賢三郎の小説 「責任に時効なし」

トップとの対決、検察との闘い、苦悩の日々…。
著者は日本を代表する名門企業の常務として巨額粉飾事件に遭遇し、逮捕された。しかし、粉飾に異を唱えていたことが判明、不起訴となり釈放された。その体験をもとに3年かけ、長編小説として本書を綴った。企業崩壊をもたらした組織的粉飾とは何か? 粉飾を長年放置してきたにも拘わらず、時効の壁によって不問に付された歴代の経営者たちの責任はどうするのか? 法的告発には時効があっても、「責任に時効はない」と著者は訴える。
【CFOならこう読む】
この週末、カネボウの元CFO嶋田賢三郎が書いた内幕暴露小説「責任に時効なし」を読みました。

この小説は、基本的に嶋田氏がカネボウで体験した事実に基づき書かれています。カネボウの粉飾の長年に渡る粉飾の実態及び会計士の関与、2003年末一旦花王への化粧品事業売却を決めながら、これを撤回し産業再生機構に支援を要請した経緯、逮捕後の検察官とのやりとり等が克明に描写されていて、一気に読んでしまいまいました。

嶋田氏と言えば、産業再生機構に支援を決めた際に、「評価の厳しい花王のデューデリジェンスであれだけの金額がついた。公的機関の再生機構は割引率なども緩くなり、事業価値が相当上がると考えるのが一般常識」(日経産業新聞2004年2月18日)と発言したことが印象深く記憶されています。これが再生機構を逆の意味で刺激し、その後機構は一貫して厳しい姿勢でカネボウと対峙して行くことになるのです。

嶋田氏が何故このような発言をしたのかその経緯について、本の中では触れられていません。ただ次のような記述があるだけです。
「日本企業再建機構の最高幹部の一人がリップサービスのつもりか、しかし自信を持ってこう言い切った。「きっとわれわれ公的機関が評価すると、まちがいなくクレセントさんが評価した金額よりも高くなるでしょう」誰しも化粧品事業の評価価額には関心を寄せていたので、その大幹部が明確に言い切った台詞には強烈な響きがあった。
ところがその後2週間も過ぎないうちに、再建機構はクレセントの提示した4400億円よりも低い価額3800億円あたりで評価していると番匠に内々に伝えてきた。その理由として、以前と状況が変わった。まだこの価格でも少し高いぐらいだ、という。まったく人を食った話である。「事業算定価額を抑えろ」との財務省の意向を再建機構が忖度したためであるとの情報が水面下で流れた。どう考えてみても、この低い価額は再建機構が化粧品事業を売却するときのエグジットの価額を意識して算段した値づけであるとしか思えない。」
番匠というのが嶋田氏その人です。どうやら割引率云々という自らの発言の重さを全く認識しておられないようです。この本は、自分は粉飾を強要された犠牲者であり、責任の根幹は伊藤淳二氏を始めとする旧経営陣にあることを繰り返し主張しています。

一方元CFOとして一般株主へ謝罪の言葉は全くありません。CFOとしてのこの人の仕事は、ただカネボウという会社を存続させ、経営陣のポストと雇用を守ることにあり、株主価値創造などとは無縁であったことが本を読むとよくわかります。そして良い悪いではなく、これが多くの上場会社の現実です。

我々がコーポレートガバナンスを議論するときに、この現実を忘れてはいけないと、私は思います。

【リンク】

責任に時効なし―小説 巨額粉飾
嶋田 賢三郎

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by yasukiyoshi | 2008-12-01 09:56 | コーポレートガバナンス
2008年 11月 26日

社外取締役 導入企業、5割に迫る

昨年度776社 透明性向上狙う
東証一部上場企業のうち社外取締役を導入した企業の割合が2007年度に45%強に上昇し、5割に迫ったことが日本経済新聞社の調べで分かった。株主によるコーポレートガバナンス(企業統治)を機能させる代表的な仕組みが日本でも日常化してきたことを示す。ただ、買収防衛策導入に伴って制度を取り入れる企業もあり、一時的要因で増えた面もある。
(日本経済新聞2008年11月26日19面)
【CFOならこう読む】
一部上場企業1718社のうち776社が導入したということです。これをコーポレートガバナンスに対する意識の向上の結果と見るか、機関投資家の要請や買収防衛策導入のために仕方なく社外取締役の導入に踏み切る会社が増えたということなのか、解釈が難しいところです。

海外の機関投資家の多くが社外取締役の指名を投資対象会社に求めています。また、今年5月にカルパースやハーミーズ等欧米の有力年金基金や機関投資家が日本企業のコーポレートガバナンスの向上を求める提言をし、そこでは社外取締役最低3人指名することが謳われています。

その理由を英ハーミーズ・ファンド・マネジャーズのシニアアド バイザー、マイケル・コナーズ氏は次のように話しています。
――なぜ社外取締役は最低3人必要なのですか。

米国でも英国でも半数以上を独立取締役にする決まりだ。社外取締役として発言力を確保するには、1人や2人では多勢に無勢だろうと考えた。提言に参加した個々の機関投資家が3人という基準を持っているわけではない。よく適任者がいないと聞くが、いくらでもいる。多くの企業では長年務めた社員のなかから1人だけが社長になり、残り は経営能力があるのにうずもれていく。人材の無駄遣いであり、社外取締役として他企業でどんどん活躍できるようにすればいい」
3名でも多勢に無勢でしょう(笑)。

取締役会が経営者を選任し、監督する責務があることがコーポレートガバナンスの要であることを経営者自身が理解しないと、結局社長のお友達を社外取締役として3人並べてそれでおわり、ということになるでしょう。

HOYAの鈴木社長のように、取締役会が自らをクビに出来ることが経営の規律付けのために重要であると経営者自らが認識し、取締役会の過半数を社外取締役が占めるように機関設計をした会社を、投資家が良い会社であると評価し、株価に反映するようになって始めて、そういう会社が増えてくるのだと思います。

そしてそういう傾向が少しずつ現れてきているというのが今日のニュースであると、私としては思いたいところです。

【リンク】
「日本企業の社外取締役、最低3人必要 英運用会社幹部に聞く(08/5/18)」
http://www.acga-asia.org/public/files/(2008-05-18)Mike%20Connors%20interview%20on%20White%20Paper%20(Nikkei%20Veritas).pdf


by yasukiyoshi | 2008-11-26 14:51 | コーポレートガバナンス
2008年 10月 16日

持合い株式の評価損-アデランスのケース

アデランス最終赤字8億円 8月中間
アデランスホールディングスは15日、2008年8月中間期の連結最終損益が8億3百万円の赤字(前年同期は5億6千8百万円の赤字)になったと発表した。従来予想は7億円の赤字。保有する大和生命株に評価損が発生した。
(日本経済新聞 2008年10月16日 16面)

【CFOならこう読む】
昨日アデランスは次のようなプレスリリースを公表しています。
「平成20年10月10日の大和生命保険㈱の破綻に伴い、当社の所有している同社株式(簿価701百万円)について、中間期において全額評価損として特別損失に計上いたしました。」
持合い株式には当然このようなリスクがあります。リスクに見合ったリターンが本当にあるのか、このようなリスクを取ってまで株式の持合いをする意味がどこにあるのか、株式持合いを行っている全ての会社が考えるべきであると、私は思います。

【リンク】
平成20年10月15日「業績予想の修正および特別損失の発生に関するお知らせ」株式会社アデランスホールディングス
http://www.aderans.co.jp/hd/pdf/news/2008/20081015.pdf


by yasukiyoshi | 2008-10-16 09:18 | コーポレートガバナンス
2008年 10月 04日

日本相撲協会と経営の規律

朝青龍関が八百長疑惑を否定 名誉棄損訴訟、法廷で証言
八百長疑惑の記事で名誉を棄損されたとして、日本相撲協会と力士らが記事を掲載した「週刊現代」を発行する講談社などに損害賠償を求めた訴訟の弁論で、横綱の朝青龍関が3日、東京地裁(中村也寸志裁判長)に出廷し、「真剣勝負でやっている」と疑惑を全面否定した。横綱が法廷で証言するのは異例。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1G03034%2003102008&g=K1&d=20081003
【CFOならこう読む】
今日は相撲の話を少しさせてください。

私は子供の頃から相撲が大好きで、それこそ40年近く相撲を見続けています(若貴が嫌いだったので、全く見ていない時期もありますが)。

国技館にも1場所に2度は必ず足を運びます。接待で行くわけではありません。
純粋にスポーツ観戦に行くのです。

相撲のチケットは昔に比べて随分と取りやすくなりました。千秋楽の枡席もぴあで普通に買うことができます。
枡席では飽き足らず、ここ数年は溜り席(土俵下の座布団だけ置いてある席。砂かぶりとも言います。)で見ています。

溜り席のチケットはさすがにぴあでは売っていません。
親方やお茶屋さんにコネがないと一般に入手不可能と言われています。
私にはコネなんぞありませんので、最初お茶屋さんに直談判してチケットを売ってもらったのです。今では何も言わなくてもお茶屋さんがチケットを送ってきてくれます(もちろん正規料金をお支払いします)。

初めて溜り席で相撲を見たときに、立会いの際に力士同士がぶつかる、その時の音の大きさに驚きました。

真剣勝負の音です。

八百長が行われているかどうか私にはわかりませんが、目の前で八百長が行われていれば私にはわかると思います。”土俵の充実”と前理事長は馬鹿の一つ覚えのように言っていましたが、土俵はいつも充実しています。

充実していないのは、経営者たる相撲協会の理事連中です。経営努力が全く足りていません。
全ては部屋任せで、組織としての経営は行われていないに等しい。
顧客にも全然目が向いていない。
相撲協会に注文は山ほどあります。

一番の問題は経営に規律が働いていないことです。

みんな身内ですから、責任が問われることがありません。
従業員同士が殺し合いをしているのに、経営陣が責任を全く認識していない、全く稀有な組織なのです。

経営を規律付けするにはどうしたら良いか。仲良しの有識者を外部理事として迎え入れれば万事解決なんてことは絶対にありません。

そう、これはコーポレートガバナンスの問題なのです。

日本の多くの経営者に相撲協会は腐っているなんて言う資格はありません。
自社のコーポレートガバナンスと相撲協会を比べてみてください。
50歩100歩じゃないでしょうか?

【リンク】
大相撲:八百長疑惑報道訴訟 板井氏法廷証言「80%八百長」「長く地位保つため」
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081004ddm035040060000c.html


by yasukiyoshi | 2008-10-04 12:07 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 22日

ヒロセ電機、利益率30%の命題

ヒロセ電機、利益率30%の命題 研究・営業・製造、連動する高収益の歯車
携帯電話部品のコネクターを得意とするヒロセ電機は一般の知名度は高くないが、海外投資家の間では根強い人気がある。売上高経常利益率30%超を維持する経営姿勢が好感され、外国人持株比率は45%を超える。「研究開発を最優先」「社長が値決めする」「外注先には資本を入れない」といった独自のルールが研究、営業、製造の各部門に連携して浸透。従業員1人当たりの生産性を高める少数精鋭主義のもと、業界で
は比類のない高収益を達成している。
今春、ヒロセ電機の社内がざわめきたった。内規の水準を超えて顧客からの値引き要請に応じたことを理由に、営業本部の社員に出勤停止処分が下されたためだ。営業の担当者は5万点を超えるコネクターの採算をすべて把握し、売上高経常利益率が30%を下回らないように顧客と交渉する。価格下落が厳しい場合は中村達郎社長に決裁を求める。この値決めのルールを逸脱したのだ。

(日経ヴェリタス 2008年9月21日 12面)
【CFOならこう読む】
売上高経常利益率を重視する理由は?

という問に中村社長は次のように答えています。
「酒井秀樹元会長が社長に就任した1970年代の定期預金金利は10%程度だった。
『10%以上もうからないなら、あくせく働く必要はない』として、最低20%の利益率を目指したのが始まりだ。企業の成長に伴い、現在は30%になった。仮に5%に落として同額の利益を維持するには6倍の売上高が必要だ。社員を増やせばいいが、業績悪化時にはリストラも必要になる。少数精鋭主義を保てない」
ヒロセ電機の場合、売上拡大志向を厳に戒めています。これはガルブレイスの次の言葉にもあるように、経営者の本性とは相反するものです。
「ひとたび最低限の収益によってテクノストラクチュアの安全が保証されると、目標選択の幅がでてくる。生存の必要くらい強いものはない。しかしこの選択が、多くの場合、どのような形で実行されているかについては、ほとんど疑問の余地がないのであって、それは、売上高で測って、会社の最大可能な成長率を達成することである。」
(新しい産業国家 J.K.ガルブレイス 河出書房新社)
ガルブレイスは、個人の目標と、組織及び社会の目標は一致していなければならず、経営者が売上高拡大により、自己の影響力の拡張を図るのは当然のことだと言っているのです。

ヒロセ電機にはこの本性を抑えるだけの規律が働いているのです。

ヒロセ電機は、売上高を超える手元流動性(現預金+有価証券)を保有しています。この活用について市場から厳しい目が向けられているようですが、これを単純に増配やM&Aに費やすべきではないでしょう。

これを全部経営者・従業員で山分けしたとしても、それが中長期的な利益獲得のインセンティブになるなら全く問題ないと思うのです。株主価値重視の経営とは、闇雲に増配することではありません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-22 11:29 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 10日

取引先持株会広がる

保有比率10%超、3月末で9社
仕入先や販売先など取引関係のある中小企業などに自社の株式を購入してもらう取引先持株会が広がっている。日本経済新聞社が2008年3月末時点で調べたところ、428社で取引先持株会が10位以内の大株主に名を連ねた。買収防衛に向けた安定株主づくりの一環と位置付ける企業もある。
(日本経済新聞 2008年9月10日 18面)
【CFOならこう読む】
次の表は、取引先持株会の保有比率が10%を超える企業のリストです。

e0120653_1958860.jpg新聞記事によると、新日鉄のケースを参考にして設立準備に動く企業が多くなっているとのことです。
「新日鉄は3月に資材の調達先や作業の外注先など104社で持株会を発足、現在は105社に増えた。1回の合計購入額は約3000万円。8月末で約31万株(発行済株式の0.0045%)と保有量は少ないが着実に増加している。
鉄鋼世界最大手のミタル・スチールが同2位のアルセロールを買収した2006年夏ごろから設立を検討。260社に加入案内を送付した。住友金属工業などとの株式持ち合いと合わせた安定株主づくりとみられる。」
日本では、例えばおもちゃ業界のように卸問屋や下請けといった取引先と緊密な関係を構築し、一つのグループとして経営している会社も少なからずあります。そういった会社が自社のみならず、取引先にも持株会を設立するのは悪いことではないし、否定すべきものでもありません。
一方現経営陣保身のための安定株主づくりは容認されるべきではなく、取引先持株会設立がその一環で、記事にあるように、
「取引先持株会は、取引関係を裏付けにしているため退会が少なく、1回の買付額も比較的大きい。上場企業が実質的に設立を主導することが多く、強い立場を利用して無理に株を買わせると、独占禁止法違反になる恐れもある。」
ということなら大問題であると言えます。

結局、保有比率の上限を設定する等、コーポレートガバナンス上弊害が生じないような設計にするしかないのかもしれません。この点は従業員持株会についても同様であると思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-10 09:08 | コーポレートガバナンス