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2008年 12月 04日

TOBにおける資金証明書-シャルレのケース

TOBにおける資金証明書
大証二部に上場しているシャルレのTOBが迷走している。TOBに対するシャルレ取締役会の賛同表明の不適切なプロセスが問題になった。さらに買収資金を融資する意向を示していた銀行が、融資をしないことを決定するという事態も発生した。
(日本経済新聞2008年12月4日17面 大機小機)
【CFOならこう読む】
シャルレのTOBの公開買付者は、有限会社サザンイーグルと有限会社オットーです。
「公開買付者らは、いずれもニューヨーク証券取引所上場会社であるMorgan Stanleyを頂点とするモルガン・スタンレーグループのアジア地域におけるプライベート・エクイティ部門であるMorgan StanleyPrivate Equity Asia(以下「MSPEA」といい、MSPEA並びにMSPEAがファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンド及び会社等を総称して「MSPEAグループ」といいます。)がファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンドが直接又は間接に支配し、本公開買付けのために設立されたTomorrowが、本日現在において、直接又は間接に発行済株式の100%を保有する特例有限会社です。」
(平成20年9月19日 公開買付けに関する賛同意見表明)
金商法は、公開買付者が十分な決済資金を有することを公開届出書に開示することと、これを証明する書類を公開買付届出書の添付書類とすることを要求しています。

シャルレのケースでは、Tomorrowが、MSPETHから最大33億円の出資を行う用意がある旨の証明書を、また株式会社三菱東京UFJ銀行から最大116億円の融資を行う用意がある旨の証明書(平成20年11月末日までが期限)を取得していました。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は次のようなものでした。
「               融資証明書

弊社は、貴社に対し、現在貴社が計画中である株式会社テン・アローズ(現シャルレ:筆者注)の発行済普通株式に対する金融商品証券取引法(原文通り:筆者注)及び関連法令に基づく公開買付における株式買付資金及びその付帯費用として、融資条件に基づき116億円を限度として融資を行う用意のあることを証明致します。

なお、融資条件の詳細(時期、融資実行の条件、方法、利率及び担保等)については、貴社と当行との間で誠実に協議のうえ決定されます。

なお、この証明の有効期限は2008年11月末日までとし、有効期限経過により自動的に失効するものとします。
                                   以上」
ところが、「平成20年11月19日、株式会社三菱東京UFJ銀行から当該証明書の期限を延長せず、融資を行わないことを決定した旨の連絡を受け」(平成20年12月3日 公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について)、現在までのところ資金調達の目途が立っていません。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は、実務上極めて一般的なものですが、このケースからもわかるように融資の実行を法的に約束するものではありません。

今日の大機小機は、この点について次のような改善案を提示しています。
「シャルレのTOBは不成立の可能性が高そうだ。しかし市場関係者はこれを契機に資金証明書に関する実務の妥当性を検証すべきである。買付者の負担を考慮する必要もあるがより確実な資金証明書の提出を義務付けることは、成功の見込みの薄い公開買付を仕掛けて経営者をどう喝する濫用的買収者へのけん制にもなる。決済資金の公開買付代理人への預託や、国内に拠点を有する金融機関による決済保証の義務付けなども検討されるべきであろう。」
【リンク】
平成20年9月19日「当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」株式会社テン・アローズ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20080919-1.pdf
平成20年12月3日「公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について」会 社 名 株式会社シャルレ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20081203-1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-12-04 09:20 | TOB
2008年 10月 01日

TOB不成立-大日本印刷・インテリジェントウェイブのケース

18日。大日本印刷によるインテリジェントウェイブのTOBは応募総数が買い付け予定株数の下限の半分にも届かず失敗した。過半数を占める個人が議決権に目覚め、安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた。
(日本経済新聞 2008年10月1日 16面)
【CFOならこう読む】
TOBは8月20日から9月18日まで実施されましたが、買い付け上限を52.02%、下限を33.41%に設定し、応募株数が下限を下回った場合は一切買い付けないことになっていました。買い付け価格の29,740円は過去3ヶ月間の終値平均を45%上回るプレミアムを付したものでしたが、多くの個人投資家が応募を見送った結果、わずか12.19%の応募にとどまりました。

本件、そもそも友好的TOBでありながら、筆頭株主である安達会長がTOBに応募しておらず、本気度今ひとつのTOBでしたが、記事が言うように、個人株主が「安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた」、と解釈するのもどうかなという気がします。

TOBという制度は、必ずしも株主の望む通りの結果にならない可能性があることが、「TOBによる敵対的買収の不可能性」として1980年にサンフォード・グロスマンとオリバー・ハートにより指摘されています。

この理論によると、多くの株主が次のように考えます。
「大日本印刷はインテリジェントウェイブの将来性について自分たちの知らない良い情報を持っているに違いない。大日本印刷がマジョリティを握ることで株価はTOB価格より上がるはず。ならばそのまま持っていよう。」多くの個人株主がこのように考えるなら、当然TOBは不成立に終わります。

また、大日本印刷への支配権の移動に反対の株主もTOBには応じません。従って、こう考えるといずれにしてもTOBは成立しないことになるのです。さらに他の株主の行動をどのように予想するかということまで考えると、この結論は大きく変わり得ます。

大日本印刷への支配権の移動に反対の株主も、このTOBが成立しそうだと考えると、自分が支持しない経営者のもとで株主として取り残されるより、TOBに応募しようと考えるでしょう。

また、大日本印刷を支持する株主は、TOB不成立の可能性が高いと思えば、TOBに応募せず市場で売り抜けようと考えるでしょう。本件で、TOB期間の最終日付近でインテリジェントウェイブの株価が大きく下がったのは、このような要因によるものだったのかもしれません。

いずれにしても、TOB不成立=安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた、ということではない可能性があることを我々は理解しておく必要があります。

【リンク】
平成20年8月19日「株式会社インテリジェントウェイブ株券に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」大日本印刷株式会社
http://www.dnp.co.jp/jis/news/2008/080819.pdf

平成20年8月19日「当社株式に対する公開買付けに関する参道の意見表明のお知らせ」株式会社インテリジェント ウェイブ
http://www.iwi.co.jp/pdf/pdf_080819_3.pdf

平成20年9月20日「大日本印刷株式会社による当社株式の公開買付けの結果に関するお知らせ」株式会社インテリジェント ウェイブ
http://www.iwi.co.jp/pdf/pdf_080919_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-10-01 10:17 | TOB
2008年 07月 23日

解散価値によるTOB−コマ・スタジアムのケース

東宝がコマ・スタジアム買収へ 友好的TOBで
東宝は22日、東京・歌舞伎町の「新宿コマ劇場」を運営するコマ・スタジアムを完全子会社化すると発表した。株式公開買い付け(TOB)を実施し、友好的に買収する。劇場は年内で閉館する予定で、東宝が主導して跡地を再開発する。
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072201000610.html
【CFOならこう読む】
コマの7月22日終値1545円に比し、TOB価格は何とその4.8倍の7400円です。このTOB価格は何のバリューに基づくものなのでしょうか?

新聞記事によると東宝のTOBの目的を次のように説明しています。
「コマは演歌など興業の不振から主力の「新宿コマ劇場」閉鎖を決めたが、建物の解体から新しいビルの完成まで約4年間は事業停止となる。事業の継続が難しくなるため、東宝傘下で再建を図る。東宝はコマ劇場に隣接する自社の不動産と一体で再開発を進める。」(日本経済新聞 2008年7月23日 11面)
東宝は、この点公開買付開始公告の中で次のように書いています。
「当社は、対象者の所有する「新宿コマ劇場」建物の所在地(東京都新宿区歌舞伎町一丁目19 番1)を含む一帯の土地(以下「本件土地」といいます。)を所有しており、対象者は、本件土地5,385.33平方メートルの南側部分3,164.38 平方メートル(以下「本件土地南側部分」といいます。)を当社より賃借し、「新宿コマ劇場」建物の敷地として利用しております。また、当社は、本件土地の北側部分を、自社の所有する「新宿東宝会館」建物(地下4階・地上9階、テナントとして映画館・飲食店・レジャー施設等)の敷地として利用しております。ところが近年になり、演劇公演における観客ニーズの多様化から、特に対象者が得意とした演歌公演の観客動員の減少が続き、対象者は深刻な業績不振に陥りました。そのため、対象者は、平成15 年11 月には「経営再建計画」を策定し、平成17 年3月には「梅田コマ劇場」の資産売却により大阪地区の劇場経営から撤退いたしました。その後、対象者は、「新宿コマ劇場」を唯一の拠点として、話題性のある企画公演、他社との提携・貸館公演の実施等、時代のニーズに合った公演施策への転換を図ってまいりましたが、観客動員の回復には結びつかず、平成20 年3月期決算では2期連続の大幅な営業赤字を計上するに至り、再び抜本的な経営の見直しを迫られました。

また、「新宿コマ劇場」(昭和31 年築)及び「新宿東宝会館」(昭和44 年築)はともに、築後相当の年数が経過し、施設・設備の老朽化が激しくなっております。さらに、歌舞伎町一丁目地区は、演劇劇場2館、映画館計14 スクリーンが集積する一大映画・演劇興行街でありますが、昨今の周辺環境の変化や近隣競合地区へのシネマコンプレックス(複合映画館)の新規出店の影響を受け、映画・演劇興行立地の地盤沈下が急速に進んでいる状況にあります。

このような事態を踏まえ、対象者は、「新宿コマ劇場」建物の敷地を所有する当社に対して全面的な経営支援を要請し、「新宿コマ劇場」を閉館して当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組むことが、最善の選択との判断に至りました。また、当社にとっても、本件土地は、都内の主要繁華街では希少な大型物件でありながら、きわめて収益性・効率性の低い資産と化しており、当社の経営方針に照らして、本件土地の早期の再開発による有効活用が必要と考え、そのためには、何よりも本件土地南側部分の借地権を有する対象者の協力が不可欠と判断いたしました。」
要するに土地再開発のためにコマが有する借地権を取得する必要があり、TOBの目的はそこにあるというわけです。

こういうことですから、コマ・スタジアムの評価をもはや継続価値によって行うことはできません。東宝は時価純資産法に基づきTOB価格の決定を行ったことを開始公告の中で次のように説明しています。
「当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定する際の参考とするため、当社及び対象者から独立した第三者算定機関としての算定人であるアビームM&A コンサルティング株式会社(以下「アビームM&A コンサルティング」といいます。)に対し、対象者の株式価値の評価を依頼しました。アビームM&A コンサルティングは、当社からのかかる依頼に基づき、時価純資産法及び市場株価法により対象者の株式価値の評価を実施し、当社は、アビームM&A コンサルティングから平成20 年7月18 日付で株式価値算定書(以下「アビームM&A コンサルティング算定書」といいます。)を受領しています。それぞれの手法において算定された対象者の株式1株当たりの価値の範囲は、時価純資産法では7,057 円から7,401 円、市場株価法では1,555 円から1,728 円です。なお、アビームM&A コンサルティングは、対象者の株式価値の評価においては、対象者の本件土地南側部分の借地権には相当の含み益が存在しその重要性が高いことから、時価純資産法を採用するとともに、株式会社生駒データサービスシステム(以下「生駒データサービスシステム」といいます。)により実施されたかかる借地権の不動産鑑定に基づき、かかる借地権の適正な時価を対象者の株式価値に反映しております。また、対象者が唯一の事業所であり収益基盤であった「新宿コマ劇場」を閉館して、当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組み、対象者の演劇事業が大幅に縮小されることが予定されていることから、対象者の事業資産から生み出される将来キャッシュフローに基づく株式価値の評価を行うことは難しいため、ディスカウンティッド・キャッシュフロー法は採用しておりません。当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定するに際して、アビームM&A コンサルティング算定書の時価純資産法の評価結果を重視しつつ、対象者に対する事業・法務・会計・税務に係るデュー・ディリジェンスの結果、対象者による本公開買付けへの賛同の可否、対象者株式の市場価格の推移、及び本公開買付けの見通し等を総合的に勘案し、かつ、対象者と協議・交渉した結果等も踏まえ、平成20 年7月22 日の取締役会において本公開買付けにおける買付価格を7,400 円と決定いたしました。なお、本公開買付けにおける買付価格は、対象者株式の株式会社大阪証券取引所(以下「大阪証券取引所」といいます。)市場第二部における平成20 年7月18 日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値1,559 円(小数点以下を四捨五入)に対して約375%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20 年7月18 日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値1,680 円(小数点以下を四捨五入)に対して約341%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20年7月18 日の終値1,545 円に対して約379%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムをそれぞれ加えた価格となります。」
なお、TOBに先立ち、5月28日付で東宝はコマ・スタジアムと「新宿コマ劇場」跡地の再開発に共同して取り組む旨合意したことを公表しています。時価純資産法による評価の前提として、このような合意が必要であると考えたのではないかと推察されます。

【リンク】
「投資家の皆様へ」東宝株式会社
http://www.toho.co.jp/toho_ir/welcome-j.html

開示情報 平成20年7月22日「株式会社コマ・スタジアム株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」


by yasukiyoshi | 2008-07-23 08:42 | TOB
2008年 04月 11日

TOBルールの特別関係者と5%ルールの共同保有者

不明確な記載規定 共同保有情報など混乱
「買収防衛策逃れではないか」。日本ハウズイング幹部は、同社にTOBを提案した原弘産に疑問を投げかける。
日本ハウズの防衛策の発動基準は20%以上の買い付け。このため日本ハウズ株を11.77%保有するランドマーク(広島市)と同16.16%保有する原弘産の関係が日本ハウズには大問題だ。合計すると発動基準に達するからだ。
ランドマークは昨年2月に原弘産の子会社から日本ハウズ株4.4%を譲り受けた。親会社の合人社計画研究所は原弘産の分譲マンションの管理を請け負っており、取引関係はあるが、大量保有報告書では「共同保有者」ではない。合人社は「原弘産とは無関係に投資しており、連絡は取り合っていない」とするが、日本ハウズは一日、改めて両社の関係を問う質問状を送付した。
同様の問題は、ダヴィンチ・アドバイザーズによるテーオーシーの敵対的TOBでも起きた。
TOBに対抗し、大谷卓男テーオーシー社長らが18.74%、ホテル運営のニューオータニ(東京・千代田)が最終的に15.53%までテーオーシー株を買い増した。ニューオータニの大谷和彦社長はテーオーシーの大谷卓男社長のいとこでテーオーシー会長も兼務する。関係は深そうだが共同保有者ではない。
発行株の三分の一超を取得するにはTOBが必要。テーオーシー側の保有株合計は三分の一を超えるとみたダヴィンチ側から「TOBルール違反では」との声も出た。
(2008年4月11日 日本経済新聞16面 大量保有報告書残された課題)
【CFOならこう読む】
TOBルールの三分の一の計算及び5%ルールの計算は本人だけでなく、本人と共同して株券等の取得を行うことを合意している者も含めて行われますが、その者をTOBルールでは「特別関係者」、5%ルールでは「共同保有者」といい、定義されている条文が異なります。上の記事では、この両者さらに自主ルールである買収防衛策の発動の要件を明確に区別せずに書かれているため、一般の読者には何が書いてあるのかよくわからないのではないかと思い、今日は「特別関係者」と「共同保有者」について書いてみることにしました。

「特別関係者」については、金商法27条の2第7項にいわゆる形式基準(同項第1号)と実質基準(同項第2号)の2つの基準が定められています。

買付者が法人の場合の形式基準の「特別関係者」は、簡単に言うと以下の3つが該当します。
①当該法人の役員(取締役、執行役、会計参与・監査役・理事・監事またはこれに殉ずる者)
②当該法人が特別資本関係(20%以上の株式等を自己又は他人の名義で所有する関係)を有する法人及びその役員
③当該法人に対して特別資本関係を有する個人ならびに法人およびその役員
また実質基準の「特別関係者」は簡単に言うと以下の4つが該当します。
①共同して株券等を取得することを合意している者
②共同して株券等を譲渡することを合意している者
③共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者
④買い付け等の後に相互に株券等を譲渡し、もしくは譲り受けることを合意している者
一方5%ルールでは金商法27条の23第5項に共同保有者、金商法27条の23第6項にみなし共同保有者の基準が定められています。

「共同保有者」とは、株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における当該他の保有者をいいます。
したがってこの基準は、実質基準の「特別関係者」とほぼ同様のものです。

「みなし共同保有者」とは、一定の人的関係や資本関係(①夫婦②50%超の資本関係にある親子会社や兄弟会社)にある者をいいます。したがってこの基準は、形式基準の「特別関係者」の基準と異なっています。

実質基準の「特別関係者」(及び金商法27条の23第5項の共同保有者)の判定の上で、どのような場合に合意があったと見なされるのかが大きな問題となります。この点、「M&A法大全」(西村総合法律事務所編 商事法務)は次のように説明しています(67頁)。

「このような悩みは現実の取引の世界でしばしば発生する。仮に上記のような事案が裁判所に持ち込まれた場合には、当該取引に関するすべての事実・要素を総合的に勘案して判断されることになるであろう。取引の交渉から実行までの間にAとBの間で頻繁に話し合いが行われた場合、AとBに対して同一のアドバイザーがアドバイスを与えた場合、あるいは取引実行の直後にA、B間で株主間契約が結ばれた場合などには、これらの事実がAとBが特別関係者である(つまり、「共同して取得する合意」があった)と認定する際の根拠とされやすいであろう。もっとも、これらはあくまで認定の際の一つの判断要素にすぎず、たとえば、取引の実行前には、A,Bは互いの取引のことを知ってはいたがAB間での話合い等は一切なく、取引直後に始めて議決権行使の合意が行われた場合には、「共同して取得する合意」があったとはいえない
だろう。」

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-11 10:28 | TOB
2007年 12月 12日

ディスカウントTOBーソリッドGHのケース

商工ローン最大手SFCGの大島健伸社長の資産管理会社ケン・エンタープライズが、ソリッドグループホールディングス(ソリッドGH)に対して進めてきたTOBが12日、期限を迎える。買付価格は市場価格を下回るが、事実上の筆頭株主であるリーマン・ブラザーズ証券がTOBに応募する可能性が浮上。TOBに反対するソリッドGHが有効な対抗策を打ち出せないでいるなかで、リーマンの出方が焦点となっている。
(日経金融新聞2007年12月12日 日経金融新聞)

【CFOならこう読む】
ソリッドGHとは旧ライブドアオート、その前はジャック・ホールディングスで、中古車売買を営んでいる会社です。この会社は今年1月にソリッドアコースティックス社の傘下に入ったのですが、このときソリッドアコースティックス社は買収資金150億円をリーマン・ブラザースから調達しています。リーマンは、融資の際、GH株過半数の売却権とソリッドGHの保有する現金120億円を担保にとっています。

ソリッドアコースティックス社のTOB反対意見表明書によると、リーマンは平成19年9月28日現在、114,592千株保有しており、これをケン・エンタープライズ社が取得するためにTOBを実施したということのようです。買付価格の26円はTOB開始日である10月31日の前日の終値43円を40%程度下回り、また年初来最安値33円(9月19日)を20%以上下回ります。

一般的にこのようなディスカウントTOB(市場価格を下回る価格でのTOB)は、大株主との間で株式譲渡の合意が出来ているときに、その大株主以外の株式の譲り受けをしたくないときに行われます。市場価格を下回る価格でTOBに応募する一般株主はいないからです。
この辺の事情をTOB反対意見表明書は次のように記載しています。
「現時点で最新の変更報告書である平成19年10月5日付変更報告書によりますと、LB社は当該株式を市場内取引で継続的に売却しており、LB社が担保として保有している当社株式数は平成19年9月28日時点で114,592,300株とされています。当社の調査によれば、SA社のLB社に対する債務残高は現在2,656,722,603円であり、LB社にとってはその担保として保有する当社株式を1株26円で売却すればSA社に対する債権を回収することができることになります。つまり、本公開買付けにおける買付価格はこのような状況下で最初に「26円」という数字ありきで計画されたものであり、「26円」という数字は当社の企業価値には何の関心もない当社の元親会社の債権者と、当社の株式を安価で買い取りたい買収者の論理に基づいてのみ決定されたものではないかとの疑念を強く抱かざるを得ません。」
事実のほどはわかりませんが、市場株価はTOB価格26円には大きな影響を受けずに推移しているようなので、一般株主への実害はないのかもしれません。

私がこの件で問題だと思うのは、SFCGのホームページにTOBの開示がないことです。東証の適時開示規則によると上場会社の非上場の親会社がTOBを開始した場合、その上場会社もそのTOBについて開示することが要求されています。

また、何故SFCG本体ではなく大島社長の資産管理会社(SFCGの親会社)がTOBを実施したのかよくわかりません。仮にソリッドGHを連結決算に組み入れたくないがためのスキームだとしたら、それはそれで大問題です。少なくとも会計監査では必ず問題になるでしょう。

【リンク】
平成19年11月12日「株式会社ケン・エンタープライズによる公開買付けの反対に関するお知らせ」株式会社ソリッドグループホールディングス
http://www.solidgroup.co.jp/ir/images/20071112000001.pdf

平成19年11月14日「株式会社ソリッド グループ ホールディングスによる意見表明報告書に対する当社の見解について」株式会社ケン・エンタープライズ
http://www.hd.tzone.co.jp/ann/ann071114_003.pdf


by yasukiyoshi | 2007-12-12 08:24 | TOB
2007年 11月 17日

TOBとインサイダー取引規制―オリックス・アスキーのケース

オリックス、アスキーソリューションズ向け増資引き受け中止
オリックスは16日、大証ヘラクレス上場の情報システム会社、アスキーソリューションズが同日払い込みで実施を予定していた第三者割当増資の引き受けを取りやめたと発表した。アスキーソリューションズの決算内容に疑義があると判断したため。現在実施中のアスキーソリューションズ株へのTOB(株式公開買い付け)は継続する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D1607G%2016112007&g=S1&d=20071116

【CFOならこう読む】
公開買付者であるオリックスはデューデリジェンスの中で未公表の重要事実を知ったものと思われますが、このままTOBを完了した場合インサイダー取引規制違反とならないのでしょうか?

金商法166条は、会社関係者または情報受領者が上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知った場合、それが公表された後でなければ、当該上場会社等にかかる株券等の売買が禁止されると規定しています。

インサイダー取引規制は市場取引だけでなく市場外取引も対象となるので、TOBもインサイダー取引規制の対象になります。ただし金商法166条6項8号は次のようにインサイダー取引規制の適用除外を定めています。
上場会社に係る第1項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に締結された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等に関する契約の履行又は上場会社等に係る同項に規定する業務等に関する重要事実前に決定された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の計画の実行として売買等をする場合その他これに準ずる特別の事情に基づく売買等であることが明らかな売買等をする場合(内閣府令で定める場合に限る
これを受けて取引規制府令6条1項8号で、「業務等に関する重要事実を知る前に法第27条の3第2項の規定に基づく公開買付開始公告を行った法第27条の2第1項に規定する公開買付け等の計画に基づき買付け等を行う場合」を定めています。

つまり重要事実を知る前にTOBを開始している場合には、その買付け等はインサイダー取引規制の違反とはなりません(逆に言うとTOB開始前に重要事実を知っていてそれを公表せずに株券等を買い付けることはインサイダー取引規制違反になります)。

ただしTOB開始後に知った重要事実については訂正公開買付届出書を提出しなければなりません(金商法27条の8第2項)。重要事実の開示がないまま株主が応募するかしないかの判断をしなければならないということでは株主が不利益を被る恐れがあるからです。

したがってオリックスは訂正届出書を提出しなければならないと思いますが、それを受けてアスキーソリューションズ自身が重要事実の公表を行うか否か注目されます。

【リンク】
平成19年11月1日「当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」株式会社アスキーソリューションズ
http://www.asciisolutions.com/ir/pdf/20071101ir2.pdf

平成19年11月16日「第三者割当増資の結果に関するお知らせ」株式会社アスキーソリューションズ
http://www.asciisolutions.com/ir/pdf/20071116_1ir.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-17 08:58 | TOB
2007年 09月 29日

旧カネボウ株買い取り価格 鑑定人、1株323円提示

旧カネボウの少数株主が保有株式の適正な買い取り価格を東京地裁に求めていた問題で、価格決定に必要となる事業・資産を評価していた鑑定人が一株323円という価格を東京地裁に提示していたことが28日、明らかになった。
主要株主であるユニゾン・キャピタルなどファンド連合はTOBを実施したときと同じ162円での買い取りを主張。少数株主側700円-1,800円を要求してきた。今後は同地裁の判断が焦点となった。

(2007年9月29日 日本経済新聞朝刊14面)

【CFOならこう読む】

少数株主にとって適正な株価とは一体どのように決められるべきか有識者も含めこの裁判に関連して様々な意見がとびかっています。

東京大学大学院の神田秀樹教授は、少数株主の適正株価は「配当還元方式」によって計算された株価であると言っています。昨日の鑑定人の評価の詳細はまだわかりませんが、わかり次第このブログでとりあげたいと思います。

いずれにしても今の会社法は少数株主の権利をないがしろにすることが可能なものになっているので、最低限スクィーズ・アウトの際の価格が公正なものでなければならないと思います。

そして上場会社のMBO等により少数株主をスクィーズ・アウトする場合の株価が「配当還元方式」で良いわけがないと思います。何故なら彼らは上場株式を市場で買っていて、その価格は「配当還元方式」なんぞで決まるものでは決してないからです。
カネボウ個人株主の権利を守る会
http://www.geocities.jp/tob_kanebo/

TOBを拒否したカネボウ株主のブログ
http://kanebo.seesaa.net/

カネボウ株式会社
http://www.kanebo.co.jp/index.html


by yasukiyoshi | 2007-09-29 09:00 | TOB
2007年 09月 28日

フリージア、技研興株3分の1株保有へ 株式対価にTOB割安価格で先行き不透明

フリージア・マクロスは27日、株式を対価に技研興業に対しTOB(株式公開買付)を実施すると正式に発表した。
(日経金融新聞2007年9月28日朝刊5面)

【CFOならこう読む】

エクスチェンジ・オファーのスキームが明らかになりました。

フリージア・マクロスの子会社であるフリージアトレーディングが買い付けを行い、対価としてマクロス株式が割当てられます。したがって買い付け当事者の資本取引には該当しないことから、現物出資及び有利発行といった会社法上の問題は回避されることになります。

交換比率は技研興業株1株にマクロス株4株が割当てられますが、26日終値ベースでは13.85%のディスカウントTOBになります。昨日このブログで有利発行を回避するため交換比率引き上げ時期を慎重に探っている旨のことを書きましたが、今回のTOBでは有利発行の問題はないので、ディスカウントのまま行くのかもしれません。

これは事前に売り手と買い手との間でネゴが出来ていて、買い手としてはこの分だけの買取りを予定していることを意味しています。ディスカウントTOBに一般株主は応募してこないからです。

ディスカウント価格で売ることによる売り手のメリットはどこにあるのでしょう。

昨日も書いたように、税務上売り手は技研興業株式を売却し、対価としてマクロス株式を取得したとみなされるので、株式譲渡損益を認識しなければなりません。売り手に資金需要があり、かつ株式譲渡損が計上される、または繰越欠損金がある場合、売り手は税務メリットを享受できることになります。
大きなブロックを市場で売却すると、株価が大きく下がるリスクがありますが、TOBによればこれを避けられるということもメリットの一つです。

フリージア・マクロス
企業情報
http://nikkei.goo.ne.jp/perfect/basic_1064.html
株価
http://company.nikkei.co.jp/index.cfm?scode=6343

技研興業
http://www.gikenko.co.jp/
会社情報・株価
http://company.nikkei.co.jp/index.cfm?nik_code=0000087


by yasukiyoshi | 2007-09-28 08:36 | TOB