吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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カテゴリ:資金調達( 49 )


2008年 05月 23日

キリンHD 負債枠4000億円拡大

社内基準見直し 買収資金など確保狙う
キリンHDは買収資金などを機動的に確保するため、有利子負債を現在より最大で4000億円程度増やせるよう社内の財務基準を見直す。同社は2007年12月期に協和発酵、豪乳業大手のナショナルフーズを相次いで買収した。国内のビール市場が縮小傾向にあるなか、海外事業の強化や多角化の推進に向け、今後も積極的にM&Aを進める狙いがある。
(日本経済新聞 2008年5月23日 17面)
【CFOならこう読む】
キリンHDは、2006-2009の中期経営計画で、
①M&Aに充てる資金のめどを3000億円
②DEレシオ(有利子負債/自己資本)0.5倍程度
に設定しています。

しかし買収金額は合計3700億円と、3000億円の投資額をすでに上回っており、またDEレシオも0.58倍まで上昇しています。このためDEレシオの目標値を1倍程度に見直すとのことです。これにより新たに4000億円近く有利子負債増額の余地が生まれます。

DEレシオを基準値として設定しているのか、目標値として設定しているのかは大きく違います。しかし上記記事でもその区別が曖昧になっているように一般に両者の違いは意識されません。最適資本構成を睨みながら、中期計画の中でDEレシオを目標値として設定する、財務先進企業は日本ではそれほど多くないのです。キリンHDも、戦略投資の制約条件として、DEレシオの基準値を設定している程度の話で、DEレシオ1倍が最適資本構成であると考えているわけではないのでしょう。

このことは、吉元CFOの「状況次第で様々な調達手段を検討するが、DEレシオが一時的に1倍程度まで上昇できるのは許容できる」という発言からも明らかです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-23 08:41 | 資金調達
2008年 05月 21日

ソフトバンク、無議決権優先株の発行を取りやめ

ソフトバンク、優先株の発行を一転取りやめ
ソフトバンクは20日、議決権がない代わりに普通株より配当を多く受け取れる「優先株」の発行準備を取りやめると発表した。同社は8日に優先株の発行準備に入ると発表していた。しかしその後、個人株主から、新株の発行による株価への悪影響などを懸念する声が寄せられ、配慮を余儀なくされたようだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2000K%2020052008&g=S1&d=20080520

【CFOならこう読む】
ソフトバンクの無議決権優先株については、当ブログで5月9日に取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7902931/)。
その後、優先株を使ったエクイティファイナンスに関する取り合わせが相当数に達したとのことで、12日に次のようなコメントを発表していました。
「当社は、平成20年5月8日付プレスリリース「定款の一部変更に関するお知らせ」を発表しました。このリリースにおいて「当社における柔軟な資金調達を可能とするものであり」との記載に関して、株主・投資家より、優先株式を用いたエクイティファイナンスによる資金調達の可能性についての問い合わせを数多く受けております。
 当社においては、現時点でエクイティファイナンスによる資金調達を必要とする事業・投資案件等は一切なく、当面の間エクイティファイナンスを行う意図は全くありません。
 当社はこれまでも、企業価値の向上による株主利益の増大に努め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに対し、適正に利益を還元することを基本方針としてきました。今後も株主の皆様へ様々な形により利益還元を行うように努めるとともに、キャッシュフローの最大化を目標に業績の拡大および株主価値の向上を目指し全力で取り組んでまいります。」
しかしその後も株価は軟調に推移していました。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9984.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

孫社長の「買収したいところが出てくれば、これを使って買収することもある」としていたが、多くの株主がこの部分を強く意識し、希薄化懸念から一部の個人や機関投資家に嫌気されたとのことです。

ソフトバンクのM&A下手(特に上場会社の買収)を見透かされているのかもしれませんね。

個人的には、ソフトバンクの種類株の株価形成がどのようになるかに注目していたので、発行取りやめは残念です。
【リンク】
2008年5月20日「『定款一部変更の件』の株主総会への付議取りやめについて 」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080520_0001.html



by yasukiyoshi | 2008-05-21 10:00 | 資金調達
2008年 05月 20日

エクイティ・コミットメントラインーフルスピードのケース

新株予約権使う調達に新手 株価配慮し段階的 行使
新株予約権を使った新手の私募型の資金調達が広がっている。証券業界の規制で、株価に連動して条件が変わる転換社債(MSCB)が発行しにくくなり、株式の希薄化に上限を設けるなど”改良”を加えた点が特長だ。新興企業がまとまった成長資金を調達する際などに都合がよいが、株価下落を招くリスクは残る。安易な活用に警鐘を鳴らす向きもある。(日本経済新聞 2008年5月20日 16面)
【CFOならこう読む】
典型的なエクイティ・コミットメントラインは次のようなものです。
「発行会社は行使価額修正条項付新株予約権(行使価格はMSCBと同様、株価に応じて変動。時価から10%近い割引価格で新株の発行を受けられる点も同じ:筆者注)を第三者に割り当てる。これと同時に発行会社と割当先との間でエクイティ・コミットメント契約が締結される。発行会社は、資金需要に応じて行使すべき新株予約権の数(ただし、一度に行使要請できる個数には上限がある。)等を割当先に対して通知する。割当先は発行会社が行使の要請を行ってから一定の期間(例えば、発行会社が行使要請を行った日の翌日から20取引日目までの期間)内に指定された個数の新株予約権を行使する義務を負う。なお、株価が下限行使価額(例えば、当初行使価額の50%)を下回った場合や発行会社の財政状態又は業績に悪影響を及ぼす事態が発生した場合等には発行会社は行使要請を行うことはできない。
割当先は、発行会社の行使要請がない限り、原則として新株予約権の行使はできない。かかるエクイティ・コミットメントラインにより、発行会社が要請したときに割当先は新株予約権を行使しなければならず、発行会社の資金需要に応じた調達が可能となる。」
(新株予約権の法務・会計・税務 安部健介・須藤一郎著 税務研究会出版局)
フルスピードのエクイティ・コミットメントラインも上のものとほぼ同様の設計になっています。ただし「新株予約権が行使された場合のフルスピードの調達資金は4月の発表時の株価換算で約40億円。2007年8月の上場時の公募調達額9億円を大きく上回る。」(上記新聞記事)と調達規模が大きいのが特徴です。

会社はMSCBとの違いを力説していますが、既存株主から引受先へ富の移転を行うことにより資金を調達する仕組みであるという本質的な部分に全く相違はありません。

しかも、株価が当初株価の半分を下回った場合には、新株予約権を発行価額で買い取る義務が会社にあり、証券会社の極めて限定したリスクで利益を得ることができます。

それにしても上場会社が(しかも将来が期待されるマザーズ上場会社が)、平然とこのようなスキームでしか資金調達できないというのは何とも情けない話です。

フルスピードの株価の推移は次の通りです。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=2159.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on
何をかいわんや、です。

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(日本経済新聞 2008年5月20日 16面より)


【リンク】
平成20 年4月9日「新株予約権(第三者割当て)に関する説明資料」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586024

平成20 年4月9日「行使価額修正条項付第1回新株予約権(第三者割当て)の発行及びコミットメント条項付第三者割当て契約に関するお知らせ」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586023

新株予約権の法務・会計・税務
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by yasukiyoshi | 2008-05-20 11:50 | 資金調達
2008年 05月 09日

ソフトバンク、無議決権優先株を発行・上場

ソフトバンクが無議決権優先株、資金調達多様化へ動く
ソフトバンクは8日、議決権がない代わりに普通株より配当の多い種類株(無議決権優先株)の発行・上場に向け、定款変更などの準備に入ると正式発表した。地図大手のゼンリンも同様の定款変更を表明した。東証は種類株の上場に関する制度を7月に正式導入する。資金調達の多様化を目指した種類株の発行は年内に最大で10社程度に上りそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080509AT2C0801M08052008.html
【CFOならこう読む】
ソフトバンクの種類株は既存の普通株主に無償で割り当てられます。これは昨年9月
に上場した伊藤園と同じ手法です。
ソフトバンクと伊藤園の種類株の主な特徴は次の通りです。


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ソフトバンクは種類株式の発行の理由を次のように説明しています。
「本優先株式は、投資家の嗜好が多様化するなか、配当を選好する投資家に対しては本優先株式を、また、より議決権を重視される投資家には普通株をという形で、その嗜好に応じた投資機会の選択肢を提供するものであり、新たな投資家層を開拓し、我が国の証券市場のさらなる発展に貢献できるものと考えています。従いまして、現実に発行する場合には、まずは既存株主に対し、無償割当という形で実行し、既存株主にその選択の機会を提供すべきものと考えております。
 なお、将来的には本優先株式は、当社の企業価値の基礎となる経営理念・大きな志に基づいた中長期的な経営判断を可能とする株主基盤を維持しながら、当社における柔軟な資金調達や株式による買収等の選択肢を増やすものものでもあり、当社の企業価値の更なる向上に寄与するものと確信しています。」
また孫正義社長は、「M&Aなど攻めの経営の道具としても使える」と種類株発行の意義を強調しています。

無議決権優先株の市場株価が普通株の株価を上回る場合には道具として使え得ると思いますが、伊藤園の種類株のように普通株の株価を3~4割下回るようだとあまり種類株発行の意義は認められません。
http://cfonews.exblog.jp/7785958/

ソフトバンクの配当水準は普通株の2倍~5倍と伊藤園の1.3倍を大きく上回るので、これが種類株の株価形成にどう寄与するか注目されます。

【リンク】
2008年5月8日「定款の一部変更に関するお知らせ」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080508_0001.html
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/pdf/080508_0001.pdf

「優先株式の無償割当て及び優先株式の内容」伊藤園
http://www.itoen.co.jp/ir/class1/outline/index.html


by yasukiyoshi | 2008-05-09 11:15 | 資金調達
2008年 04月 17日

買収防衛型ファイナンス?-住友金属鉱山のケース

割高な調達コスト 株主への説明難しく
「調達コストが高すぎないか」。住友金属鉱山が2月に調達した「新株予約権付ローン」に対して、市場関係者の間でこんな感想が聞かれた。
このローンでは、住友金属鉱山が三井住友銀行から1000億円を借り入れるとともに、同行に新株予約権2万個を割り当てた。金利は実質年1.45%で基準金利のスワップ金利に対する上乗せ幅は0.36%前後だった。
ある国内証券の担当者は「1000億円の巨額調達とはいえ、普通社債なら上乗せ幅は0.2%前後で済み、年利は1.29%程度になったはず」と解説する。
住友金属鉱山株式を取得できる新株予約権の価値を含めれば、実は普通社債より金利が安くなってもおかしくない。にもかかわらず、金利が高いのはなぜか。「自社の判断で自由に資本調達をコントロールできるようにしたかった」(田尻直樹常務執行役員)という住友金属鉱山側の要望が一因だ。

(2008年4月17日 日本経済新聞 14面 検証買収防衛型ファイナンス)
【CFOならこう読む】
私はこの日経の記事がよくわかりません。
2月1日に住友金属鉱山の新株予約権付ローンをこのブログでとりあげました。
http://cfonews.exblog.jp/7170502/

この日の日経はこのスキームについて「通常の借入金に比べ低利のため今回のスキームを採用することにした。」と報じていました。
それが今日の日経の記事は、「金利が高い」と評価しているのです。しかもその理由を「万が一のための用心棒代」と説明しているのです。

私には社債マーケットについての勘が備わっていないので、金利の高い安いを論じる能力はないのですが、あえて言わせてもらえば、そもそもCBを始めオプションが付与されているデットで資金調達をする理由は、一括法により会計処理をすることができるため表面金利を引き下げることができるからのはずで、”金利が高い”株式転換型のデットによりあえて資金調達をしようと考える企業があるとは思えないのです。

今日の日経17面は住友金属工業の7年債百億円の募集について報じています。利率は1.35%、国債利回りに対するスプレッドは0.4%。住友金属工業の格付けはダブルAマイナス、住友金属鉱山の格付けはシングルAプラス(JCR)であることを考えると1.45%という金利が特に高いという風には思わないのですが…

【関連過去記事】
2008年02月16日「社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も 」
http://cfonews.exblog.jp/7274985/
【リンク】
平成20年1月31日「新株予約権付ローンに係る第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付)」住友金属鉱山株式会社
http://www.smm.co.jp/release/2008/pdf/20080131-2.pdf

2008年04月16日「UPDATE2: 住友金属工業<5405.T>、期間7年国内SB発行条件を決定=利率1.35% 」ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK011854820080416?rpc=144


by yasukiyoshi | 2008-04-17 10:49 | 資金調達
2008年 03月 13日

有利発行か否か 「日本証券業協会の自主ルール」ーグッドウィルのケース

グッドウィル株が急落 増資嫌気、一転ストップ安に
12日の東京株式市場で、グッドウィル・グループの株価が一転して急落した。朝方は買い気配で始まったが、結局、制限値幅の下限(ストップ安)となる前日比3000円(11%)安の23400円で比例配分された。11日に第三者割当増資の実施を発表。発行済み普通株式数が約2割増加すると伝わり、一株利益の希薄化懸念から売り注文が膨らんだようだ。
同社は米大手ファンドのサーべラスと米大手証券モルガン・スタンレーの2社連合に対し45億円で50万株の普通株式を割り当てる。1株当たり発行価額は9000円。現在、株価は20000円台で推移しており、「発行価額の安さが再建見通しへの不安感を募らせた可能性もある」(外資系証券)。
グッドウィル・グループの株価は11日まで5営業日連続で急騰していた。「信用取引の売り残りが多く、潜在的な買い圧力は強い。ただ、指標面では明らかに買われすぎの水準」(日興コーディアル証券)。市場では「投機目的の短期資金売買が続いており、株価の先行きは全く見通せない」(国内証券)と戸惑う声が多く聞かれた。

(2008年3月13日 日本経済新聞 17面)


【CFOならこう読む】

プレスリリースで会社は普通株式の発行価額の根拠を次のように説明しています。
「普通株式の発行価額については、当該普通株式発行にかかる取締役会決議の直近取引日までの2 ヶ月(平成20 年1 月11 日から平成20 年3 月10 日)に株式会社東京証券取引所が公表した当社普通株式の普通取引の最終価額の平均値を参考として、9,000 円(ディスカウント率8.3%)と致しました。これは、当社グループにおける子会社コムスン等介護・介護関連事業からの撤退や子会社グッドウィルにおける労働者派遣法違反にかかる行政処分を受けている等の当社の置かれた事業環境や、これらの影響による最近の業績等を勘案し、割当先との交渉の結果決定いたしました。なお、上記の普通株式の発行価額は日本証券業協会の「第三者割当て増資の取扱いに関する指針」(平成15年3月11日付)に準拠し決定しております。」
証券業協会の「第三者割当て増資の取扱いに関する指針」いわゆる自主ルールは有利発行か否かの判断基準となる公正価額を次のように指示しています。

「発行価額は、当該増資に係る取締役会決議の直前日の価額に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から発行価額を決定するために適当な期間(最長6ヶ月間)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる」

これはすなわち次の通り要約できます。

「つまり有利発行か否かの判断の基準日が原則として『当該増資に係る取締役会決議の直前日』であることが明確化され、例外的にそれ以前の一定の期間における株価を基準として用いることができる場合にも、当該期間は「任意の期間ではなく、買占め等による株価の高騰等の事情にかんがみて、当該決議の直前日から遡って発行価額を決定するために『適当な期間』でなければならないこととなり、株価の高騰があった場合においても、発行会社経営陣が恣意的に公正価額算定のための算定期間を設定することによって有利発行該当性を回避することはきわめて困難になった」(商事法務No.1702 太田洋 「宮入バルブの新株発行差止申立事件東京地裁決定」)

これを今回のグッドウィルの増資に当てはめてみると、何故発行価額を取締役会決議日の前日終値23,400円としないことが是とされるのか、また仮に是とされるとしても何故2ヶ月間の平均を取ることとしたのか、大きな疑問があるといわざるを得ないように思います。

グッドウィル・グループ(株) 【東証1部:4723】
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【リンク】
平成20年3月11日「第三者割当により発行される普通株式及び優先株式の募集に関するお知らせ」グッドウィル・グループ株式会社
http://www.goodwill.com/gwg/pdf/20080311163151.pdf

グッドウィル、米系2社主導で再建・みずほ銀、債権売却
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080311AT2C1002E10032008.html


by yasukiyoshi | 2008-03-13 10:47 | 資金調達
2008年 03月 04日

武富士の実質的ディフィーザンス

武富士、仕組み債取引損失計上を発表・最大300億円
武富士は3日、欧米企業の信用リスクを扱う金融派生商品関連の金融取引で、最大300億円の損失を計上すると正式に発表した。メリルリンチ日本証券が組成した仕組み債による取引で、サブプライムローンに絡む信用収縮が響いて取引の清算に追い込まれる。2008年3月期の予想連結純利益(433億円)は下方修正する可能性があるという。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D03006%2003032008&g=S1&d=20080303

【CFOならこう読む】

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社債の実質期限前償還(実質的ディフィーザンス)は負債をオフバランス化することにより、バランスシートをスリム化することを目的に行われます。具体的には、企業が社債の元利金を信託銀行に払い込み、信託銀行は国債など安全資産でこの資金を運用し、社債投資家への元利金払いに充当される仕組みになっています。

オフバランスの為の要件を、金融商品会計に関する実務指針46項は、「取消不能で、かつ社債の元利金の支払に充てることを目的とした他益信託等を設定し、当該元利金が保全される高い信用格付けの金融資産(例えば、償還日がおおむね同一の国債又は優良格付けの公社債)を拠出することである」としています。上記記事は、メリルリンチが組成した仕組み債がこの要件を満足しているかどうかについて疑問を呈しています。

金融商品会計に関するQ&Aは、「わが国において、元利金が保全される高い信用格付けの金融資産とは、国債や政府機関債のほかに、例えば、拠出時に複数の格付け機関よりダブルA格相当以上を得ている社債が含まれると考えられます」としており、メリルリンチの仕組み債はムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズからトリプルAの格付けを取得していることから、この要件は満足していると一応は言えます。

しかし大きな損失が現実に発生しましたのです。武富士とメリルリンチはお互いに責任をなすりつけているようですが、そもそも4%の利率の社債を無リスクでオフバランスできると考えること自体常識から外れています。そういう意味では、武富士、メリルリンチのみならずオフバランスを容認した監査法人にも責任の一端はあると私は思います。

【リンク】
2007.5.24「実質的ディフィーザンスの実施について」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/070524_3.html

2008.3.3「実質的ディフィーザンス解消のお知らせ」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/080303.html


by yasukiyoshi | 2008-03-04 09:58 | 資金調達
2008年 03月 01日

JFEのCBその2

JFE株が逆行高 CB発行・自社株買い材料に
29日の東京株式市場でJFEホールディングスが逆行高になった。28日に発表した3000億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)発行と1200億円の自社株買いが材料。約1800億円分を高級鋼の生産設備増強などに使うことが評価されたようだ。
(2008年3月1日 日本経済新聞 17面)

【CFOならこう読む】
昨日お話ししたようにこのJFEのCBは買収防衛策としての性格があるのですが、それについては、市場は否定的に捉えていないようです。また希薄化効果についても株価には現れていません。この理由は次の2つ考えられます。

一つは、希薄化効果を上回る増益が見込まれると市場が評価しているため、もう一つは、転換価格が非常に高いところに設定されており、株式への転換は行われていないと投資家が考えているため

私は二番目の理由による部分が大きいと考えています。転換価格は8530円と28日終値4730円より約8割高い水準に設定されていること、及び「現金決済条項」と呼ぶ条件を付け加えることで希薄化を一定程度に抑えたことが功を奏したのでしょう。ところで、「企業会計基準第2号 1株当たり当期純利益に関する会計基準」はCBのような転換証券の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の計算は、期首の時点で全て転換が行われたと仮定して行われます(期首に存在する転換証券の場合)。

ワラントの場合、期中平均株価はワラントの行使価格を上回る場合にのみ希薄化効果を認識します。つまり同じオプションでありながら両者の取扱いは会計上異なるのです。JFEのCBは転換証券ですので、行使価格がどれだけ現状の株価に比し高い水準に設定されていようと、会計上は希薄化効果を見ないといけないのですが、市場は希薄効果はないと見ている、すなわち希薄化効果がないワラントとして見ているのかも知れません。そうであるなら今の転換証券に関する会計上の取扱いはミスリードに繋がる可能性があり問題があると私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-03-01 08:42 | 資金調達
2008年 02月 29日

JFEのCB

JFEホールディングスは28日、新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で3000億円を発行する一方、1200億円の自社株買いを実施すると発表した。CB発行で得た資金で自社株を買うほか、残りの1800億円分は高級鋼の増産などに使う。CBはみずほコーポレート銀行など3メガ銀行が割り当て対象で、買収防衛策としての側面もあるようだ。
(2008年2月29日 日本経済新聞 17面)

【CFOならこう読む】
2月27日にヤマダ電機のリキャップCBをご紹介しましたが、本件も同様の性格をもっています。CB発行とこれにより調達される資金の一部を原資とした自社株買いをセットで実施することにより、負債比率が引き上げられます。一方、このCBは安定株主である3メガバンクに割り当てられることで、買収防衛策としての性格も合わせ持っています。ただし転換価格は8530円と28日終値4730円より約8割高い水準に設定されていること、及び「現金決済条項」と呼ぶ条件を付け加えることで希薄化を一定程度に抑える商品設計なっています。

「現金決済条項」は、JFEが持つ権利で、株式に転換される場合、一部を現金で渡すことが可能になっています。例えば、JFEの株価が1万円になったケースでは、1万円と転換価格8530円の差1470円の部分だけ、株式で渡すことができます。

このスキームでポイントとなるのは、会計上一括法(新株予約権を区分しない方法)が認められるかどうかです。これについては、「企業会計基準適用指針第17号 第23項(3)取得の対価が現金と自社の株式の場合」、に一括法が認められる要件として次の記載があります。

現金の交付がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式の交付がすべて新株予約権部分の取得に充てられるように、現金と自社の株式を対価とするそれぞれの部分をあらかじめ明確にされ、これらの額が経済的に合理的な額と乖離していないこと。

本件は、この要件を斟酌して設計されたものと思われます。

【リンク】
平成20年2月28日「第三者割当による取得条項付無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行に関するお知らせ」ジェイエフイーホールディングス株式会社
http://www.jfe-holdings.co.jp/release/2008/02/080228-01.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-29 09:03 | 資金調達
2008年 02月 20日

モック端株株式の処分進まず

結婚式場を運営するモックは19日、昨年10月の株式併合で生じた一株未満の端数株式の売却が進まず、保有者への処分代金の支払ができていないと発表した。流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため、市場外での一括売却も検討している。
(日本経済新聞2008年2月19日16面)
【CFOならこう読む】
モックは昨年10月30日付で10株を一株に株式併合した上で、併合によって浮いた授権株式を利用して、理論株価から大幅にディスカウントした金額を行使価額とした新株予約権をファンドに発行しました。株式併合により80%の株式が端株となり、これを会社が集めて売却し、保有比率に応じて保有者に代金を支払うことになっていますが、いまだこの支払が実行されていないというのが、このニュースの要旨です。

その理由を会社は、「流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため」としています。酷い話です。こういったスキームが法的に可能であるとしても、一般株主の保護については慎重な配慮が求められます。流動性が低いのは最初からわかっていたはずで、それを考慮した上で速やかに現金化するのが会社の義務だと思うのですが…。

希薄化後の大幅に下落した現在の株価をもって端株保有者への支払を行うのも問題があります。株式併合発表前日の株価を基準に、会社が端株の買取に応じるべきであると私は思います。

【リンク】

2008年2月19日「株式併合に伴う端数株式処分代金のお支払いについて」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/080219.pdf

2007年9月7日「第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090705.pdf

2007年9月7日「株式併合に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090706.pdf
【関連過去記事】
2007年 09月 08日「モック、10株を1株に併合・新株予約権で59億円調達」
http://cfonews.exblog.jp/6422299/


by yasukiyoshi | 2008-02-20 10:14 | 資金調達