カテゴリ:会計( 40 )


2009年 02月 20日

ポイント引当金の会計処理

家電量販店 ポイント引当金 異なる会計処理
家電量販各社が販促用に発行するポイントの戦略が割れている。ヤマダ電機が顧客の囲い込みのため大量発行しポイント引当金が急増する一方、エディオンなどは引当金がほぼ横ばいで推移している。ポイント引当金の計上方法は企業ごとにばらつきがあり、業績への影響が見極めにくい。透明性を高めるべきだとの指摘もある。
(日本経済新聞2009年2月20日12面)
【CFOならこう読む】
「ポイント引当金ポイントは販促の一環として商品の購入額などの一定割合を利用者に還元する仕組み。引当金はポイントが使われるのを想定し積み立てる。貸借対照表の負債の項目に計上する。日本では会計処理の基準がなく、企業は企業会計原則に基づき処理する。企業間でポイントを融通できるサービスが拡大。項目を設けて計上する企業が増えている。」
(前掲紙)
各社の引当金の計上基準を以下に列挙します。
ヤマダ電機
当社及び当社と同様の事業を営む連結子会社は、将来の「ヤマダポイントカード」の使用による費用発生に備えるため、使用実績率に基づき翌連結会計年度以降に利用されると見込まれるポイントに対し見積額を計上しております。

エディオン
ポイントカード制度において、顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、連結会計年度末における将来見込み利用額を計上することとしております。

コジマ
顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、当連結会計年度末における利用実績率に基づき将来利用されると見込まれる額を計上しております。

ベスト電器
顧客に付与されたポイントの使用による費用発生に備えるため、当連結会計年度末において将来使用されると見込まれる額を計上しております。
引当金の計上は、ポイントの使用見込み額を計上する方法と見込み額に原価率を掛けた額を引き当てる方法の2つがありますが、上記の各社の開示を見てもいずれを採用しているのか不明です。

金融庁の「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」(平成20年6月18日)の例示は後者を示しているのに対し、税務上は一定の要件のもと前者の処理を容認しており(法人税基本通達9-7-3)、どちらがスタンダードな方法であるか一概に言えません。

IFRSは、引当金を計上せず、ポイント相当分については、将来使用が見込まれる部分について、売上から控除するとともに繰延収益として負債に計上し、実際に利用した際に売上として認識する方法を採用しています(IFRIC13 「カスタマー・ロイヤリティ・プログラム」)。
「日本基準を国際基準と共通化すれば、一時的に売上高が急減し投資家が混乱する可能性もある」(前掲紙)
後者の方法を採用している会社は売上高だけでなく利益に与える影響も少なからずあると思われます。

【リンク】
「第31期 有価証券報告書」株式会社 ヤマダ電機[PDF]
「第7期 有価証券報告書」株式会社エディオン[PDF]
「有価証券報告書」株式会社コジマ
「IR情報」株式会社ベスト電器
平成20年6月18日「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」金融庁


by yasukiyoshi | 2009-02-20 10:39 | 会計
2009年 01月 27日

国際財務報告基準(IFRS)、2009年度から選択適用可能に

国際会計基準、09年度から利用可能 会計審方針
金融庁の企業会計審議会(長官の諮問機関)は2009年度(10年3月期)から「国際会計基準」の適用を企業に認める方針を固めた。同基準は欧州を中心に100カ国以上で使われており、産業界から早期の利用を求める声が出ていることに対応する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090127AT2C2600E26012009.html


【CFOならこう読む】

海外で起債している一部の企業にとっては、IFRSを選択できるようになることで、コストが削減できるといった一定のメリットは生じると思いますが、一方、原則主義であるIFRSをそのまま日本に導入しても実務は動かないだろうなあと思う部分もあります。適用指針、実務対応報告、委員会報告等細かい規定に基づき日本の実務は回っているのです。また投資家サイドからは比較可能性という観点から日本基準との相違について、詳細な開示を要求されることが予想され、結局コスト面で見ても割高になってしまうことも考えられます。

私は2011年までコンバージェンスを進め、同時に日本企業向けのIFRS適用指針等の整備を進め、米国と同様2014年以降段階的にIFRSを義務付ける方向で行くのが良いと思っています。そうでないと内部統制のときと同様、またぞろ雨後の竹の子のようにハゲタカがうようよ現れ、億単位のカネを巻き上げられることになりかねません。コンサルタントに無駄なカネを使わなくても、全ての上場企業が無理なくIFRSに移行できるよう十分に時間をかけた工程表とすべきであると私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2009-01-27 08:57 | 会計
2009年 01月 15日

住友化学、退職給付会計における数理計算上の差異の会計処理方法変更を検討

住友化、長期化を検討 利益への影響、平準化狙う
住友化学は企業年金の想定利回りと実際の運用成績との差である「数理計算上の差異」の償却年数を現行の3年から長期化する検討に入った。現状の平均残存勤務年数である15年に、2010年3月期から切り替える案が出ている。年金運用の環境変化に伴い営業利益が大きく変動するため、情報開示面で支障があると判断した。
(日本経済新聞2009年1月14日12面)
【CFOならこう読む】
「数理計算上の差異」の償却年数を長期化する方向に変更した事例としては、セコムのケースを当ブログで昨年5月28日に取り上げています。
http://cfonews.exblog.jp/8022357/

セコムの場合、「数理計算上の差異」を発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用していましたが、2008年度3月期より、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主して10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました

セコムは変更の理由を次のように開示しています。
「当社は、従来退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用してきました。
この会計処理方法採用の背景には、確定給付型年金制度と確定拠出型年金制度の併用および厚生年金基金の代行部分の国への返上を骨子とする退職給付債務の減額を伴う退職給付制度の抜本改訂を決定したことがあり、長期的に確定給付型年金制度を確定拠出型年金制度へ全面移行する方針を前提としておりました。
確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度へ全面移行する方針については、関係諸法令の規制などもあり、確定拠出型年金制度への移行割合が30%と全面移行(100%)に比べ大きく乖離している状況にあり、関係諸法令の改正も不透明であることから、平成20 年3月開催の取締役会において確定拠出型年金制度への全面移行を断念する決議をいたしました。
確定拠出型年金制度への全面移行を断念したことに伴い、移行を円滑に進める目的であった数理計算上の差異の早期解消も必要性が薄れている現状においては、従来の会計処理方法に従った場合には、数理計算上の差異が発生連結会計年度の営業利益に大きな変動を与える可能性があり、年金資産の運用を含む退職給付制度が中長期的な視点を求めて行われるものであるという本来の性質上、単年度の数理計算上の差異が当該発生連結会計年度の企業業績を直接変動させる従来の会計処理方法が適合しなくなってきております。以上のような状況から、数理計算上の差異の処理方法を発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました。
この変更により、従来の方法によった場合と比較して、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ10,096 百万円増加しております。」
セコムのケースは、会計処理の前提となる経営判断に変更があったため、何とか説明がついていますが、一般的には合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

退職給付会計に関する実務指針の策定に携わった泉本小夜子氏も、著書「退職給付会計の知識」の中で次のように述べています。
「退職給付会計での会計方針の変更は、いずれも多額の費用(または利益)の計上方法が変わることになりますから、合理的な理由が必要です。「合理的」とは、従前の会計処理より新たに採用した会計処理のほうがより適切に財政状態と経営成績を表すことになるということです。どうして変更する必要性があるのか、何がより適切になるのかということを適切に説明することが必要なのです。

退職給付会計では、会計基準変更時差異の処理は激変緩和措置として15年以内の一定年数で処理すればよいと政策的に認めています。企業が適用初年度の期首に決定した5年、10年という年数には意味がありませんから、これを変更したいと考えても、通常は合理的な理由にはならないでしょう。」
多くの会計士が泉本氏と同様の見解であると思われますので、慎重に検討することをお勧めします。

【リンク】

退職給付会計の知識 (日経文庫)
泉本 小夜子

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by yasukiyoshi | 2009-01-15 09:28 | 会計
2009年 01月 06日

子会社株式減損に伴うのれんの償却-第一三共のケース

第一三共 のれん代焼却3540億円 ランバクシー株急落で
第一三共は5日、昨年買収したインド製薬最大手ランバクシー・ラボラトリーズの株価下落を受けて2008年4月-12月期に3595億円の株式評価損(単独決算ベース)を計上すると正式発表した。この結果、連結ベースではのれん代の一時償却として3540億円の特別損失が発生する。
(日本経済新聞2008年1月6日 15面)
【CFOならこう読む】
金融商品会計に関する実務指針91項は、市場価格のある有価証券の減損処理について次のように規定しています。
「売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む)のうち、市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(減損処理)しなければならない。」
 「時価のある有価証券の価額が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化するできるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得価額に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。」
第一三共は単体財務諸表上、ランバクシー株式を上記規定に基づき減損処理したものと思われます。

さらに、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針32項はのれんの会計処理について次のように規定しています。
「親会社の個別財務諸表上、子会社株式の簿価に減損処理が行われたことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額と連結調整勘定未償却残高との合計額を下回った場合、その差額のうち、連結調整勘定未償却残高に達するまでの金額について償却しなければならない」
この規定に基づき第一三共は連結財務諸表上、のれん代3540億円を一括償却することになったものと思います。

CFOとしては、子会社株式及び関連会社株式の減損処理を行う場合、連結財務諸表上のれんの償却も行わざるを得ない場合があることに留意が必要です。

【リンク】
2009年 1月 5日「ランバクシー・ラボラトリーズ・リミテッドに係る関係会社株式評価損の計上、及びのれんの一時償却に関するお知らせ」第一三共株式会社
http://www.daiichisankyo.co.jp/4less/cgi-bin/cs4view_obj.php/b_newsrelease_n1/798/090105v1-j.pdf


by yasukiyoshi | 2009-01-06 08:30 | 会計
2008年 12月 30日

子会社株式売却の際の繰延税金資産取崩し-イオンのケース

イオン最終赤字の公算
イオンの2008年3-11月期の連結業績は、最終損益が赤字となった公算が大きい。米衣料販売子会社のタルボットが実施した保有資産の減損処理や、会計処理の変更に伴う繰延税金資産の取崩しなどが響く。消費低迷で国内の衣料品販売も伸び悩む。2009年2月期通期の見通しを下方修正する可能性もある。
(日本経済新聞2008年12月30日 11面)
【CFOならこう読む】
記事には、
「前期までの子会社株式売却の際に計上した繰延税金資産を取り崩す。」

とあります。これは連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第6号)の平成19年3月29日の変更を受けてのものです。

旧委員会報告6号30項では、
「連結グループ内の会社に投資を売却することによる一時差異の解消については、当該売却取引は連結財務諸表上消去されるので、対応する税効果は第三者に投資を売却するまでは、本報告の未実現損益に係る一時差異と同様に処理することになる。」
とされていたのが、新委員会報告6号では、この文章が削除され、新たに30-2項が設けられました。
「30-2 企業集団内の会社が企業集団内の他の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却すると、個別貸借対照表上の投資簿価が購入後の取得原価に置き換わることになり、投資の連結貸借対照表上の簿価との差額、すなわち、連結貸借対照表上の一時差異の全部又は一部が解消することになる。」
イオンは中間財務諸表で次のように会計処理の変更の開示を行っています。
「(連結財務諸表における税効果会計)
当中間連結会計期間より、改正後の「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会 平成10 年5月12 日 最終改正平成19 年3月29 日 会計制度委員会報告第6号)の第30-2項を適用している。
これにより、前連結会計年度まで連結会社間で子会社株式等を売却した際に生じた未実現利益の消去に伴い計上していた繰延税金資産を当中間連結会計期間にて取崩すこととなったため、繰延税金資産取崩しに伴う法人税等調整額156 億40 百万円を計上した結果、従来の方法に比べ中間純損失が151 億1百万円増加している。」
今年はこれで最後です。
新年は1月5日(月)のスタートになります。
来年は激動の年となるような予感がしますが、時代を映す重要なニュースを、わかりやすく、ためになるように読みほぐしてお伝えしていけるよう今年以上に頑張りたいと思っています。
引き続きご愛読のほど、宜しくお願いします。

それでは、良い年をお迎え下さい。

【リンク】
2008年10月8日「2009年2月期 中間決算短信」イオン株式会社
http://www.aeon.info/ICSFiles/afieldfile/2008/10/08/kessan_2009.pdf


by yasukiyoshi | 2008-12-30 11:41 | 会計
2008年 12月 11日

NTT繰延税金負債700億円近く取崩し

NTTの今期 税負担700億円近く軽減
NTTは連結子会社のNTTドコモが7月に実施した地域会社の再編などに伴って、2009年3月期に会計上の税負担が700億円近く軽減される見通しだ。連結決算で織り込んでいた将来の税負担が少なく済むため。現金の増減は伴わないが、純利益を押し上げる要因となる。
(日本経済新聞2008年12月11日14面)
【CFOならこう読む】
今年7月にドコモがドコモ関西など地域会社8社を吸収合併したことに伴い減少する繰延税金負債が569億円、ドコモの自社株買いに伴い減少する繰延税金負債が110億円ということです。

この点11月7日に行われた記者会見で、小林取締役財務部門長は次のように話しています。
Q.今期の通期の見通しのところで税金についての話があったが、もう少し詳しく教えて欲しい。

A. (小林取締役財務部門長)

 繰延税金負債の取り崩しのところのご質問と思うが、ドコモを分社したときに、税務上の簿価と財務上の簿価は一致していたが、ドコモを上場した際あるいはドコモが公募増資をするとドコモの純資産が増え、財務上の簿価が税務上の簿価に比べて大きくなる。そうすると、将来、仮に持株会社がドコモの株を売却するとなると、その売却益が出るだろうということで、ドコモの上場あるいは公募増資の時点において、繰延税金負債を立てている。ところが、今回、ドコモが地域ドコモを吸収合併して一社化すること及びドコモが自己株式を取得するといった営みを行うことによって、持株会社の持っているドコモ株の財務上の簿価、即ち課税対象となる分が引き下がることになる。したがって、これまで積んでいた繰延税金負債をその分取り崩すことになるが、これは税負担額を引き下げるという税効果の財務上の処理が必要になるということである。


Q. この繰延税金負債の取り崩し分で、今期、税効果で効いてくるプラス分というのは、その部分だけで言うといくらになるのか。

A. それは、569億円になる。

(小林取締役財務部門長)
 補足すると、ドコモの一社化によるものは569億円であるが、ドコモの自己株買いによるものも含めると、第1四半期と第2四半期両方合わせておおよそ700億円ぐらいある。これは決算短信に記載している繰延税額のところに、▲1,000億円程度と出ているが、そのうちの約700億円というふうにご理解頂ければと思う。」
地域子会社8社はすべてドコモの100%子会社ですので、吸収合併したところでドコモの連結FSへの影響はありません。にも関らずNTTのドコモ株式の会計上の簿価が切り下がる理由がよくわかりません。

機会を見つけて後日またフォローしたいと思います。

【リンク】
2008年11月7日「NTT(持株会社)社長会見より」
http://www.ntt.co.jp/kaiken/index.html


by yasukiyoshi | 2008-12-11 09:48 | 会計
2008年 11月 28日

エルピーダ、台湾合弁会社を子会社化 純資産を増やすため?

エルピーダメモリ、台湾合弁を子会社化 生産調整などで主導権
エルピーダメモリは2009年3月末までに、台湾の合弁生産会社を連結子会社化する方針を固めた。合弁相手の力晶半導体が保有する株式を一部取得し、出資比率を52%程度に引き上げ経営権を握る。半導体市況の急激な悪化に対応、需要動向に応じた生産調整や投資をエルピーダ主導で実施できるようにし、グループの経営安定化につなげる。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2700C%2027112008&g=S1&d=20081127
【CFOならこう読む】
子会社化の狙いは、純資産を増やすことにあるのではと今日の新聞に書かれています。

「一方、財務面に視点を移すと、子会社化には別の意味がある。エルピーダは9月末時点で3000億円強の有利子負債があり、このうち800億円に純資産維持に関する「財務制限条項」が付く。10月に融資枠を使って借り入れた1100億円にも同様の条項があり、いずれも期末の純資産額が1年前の75%を下回ると条項に抵触する。「抵触しても銀行が即座に返済を求めることはない」(エルピーダ)が、財務の安定性は低下する。
前期末の純資産は3478億円で、この75%は2608億円。今期の最終赤字額は900億円を超えそうなため、純資産額が大幅に目減りし、条項に抵触する可能性が高まっていた。子会社化で連結純資産が600億円程度増えるため、今期は条項抵触を回避できそうだ。」(日本経済新聞2008年11月28日11面)。
エルピーダの台湾合弁会社レックスチップエレクトロニクスに対する出資比率は48.8%。同社はエルピーダの持分法適用会社です。これを合弁相手から株式の一部譲渡を受けることにより、出資比率を52%まで高めるとのことです。

キャッシュで株式を取得するということは、対象会社の純資産をキャッシュで買うことを意味し、等価交換であるので連結上純資産の増加はないように思えます。

それでは上記記事の「子会社化で連結純資産が600億円程度増える」とは何のことを言っているのでしょうか?持分法適用会社から連結子会社になることで何が変わるかを考えてみればその答えがわかります。

その答えは少数株主持分です。連結子会社になることで合弁相手の純資産に対する持分が、少数株主持分として純資産の部に計上されるのです。

少数株主持分が純資産の部に計上されるようになったのは「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(2005年12月9日公表)施行以降で、それ以前は負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示されていました。これが純資産の部に表示されるようになったことから、連結子会社が増えれば少数株主持分の分だけ純資産が増えることになったのです。

もっとも少数株主持分は親会社に帰属するのではなく、だから株主資本以外の項目として表示されるわけで、財務制限条項で縛るべきは純資産ではなく株主資本とすべきかもしれませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-11-28 10:04 | 会計
2008年 11月 08日

金融機関の自己資本比率規制緩和

地域金融の株含み損、算入不要に 自己資本規制を弾力化
中川昭一財務・金融担当相は7日、閣議後の記者会見で、銀行などの自己資本比率規制を見直し、保有する有価証券の含み損の一部を算入しなくて済むルールを決めたと表明した。2008年12月期から、12年3月期まで適用する。なかでも多くの地域金融機関は株式や債券などの含み損を算入しなくて済むようになり、株価急落が自己資本比率を押し下げる影響を回避できる。銀行の貸し渋りを防ぐ効果もあるとみている。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081107AT2C0700807112008.html
【CFOならこう読む】
従来金融庁が有価証券の含み損益を金融機関の自己資本に厳格に反映させてきたのは、金融機関の健全性を示す自己資本比率を正確に把握する必要があったからです。これを当座の貸し渋り対策として、ルールそのものを変更するのは、会計基準を変更するのと同様、本末転倒だと私は思います。

自己資本が基準値を下回る金融機関には、資本増強を促すのが筋でしょう。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-11-08 17:28 | 会計
2008年 10月 29日

債務保証の会計処理

信用不安の元凶はCDS
昨年夏のサブプライム問題の深刻化から始まった米国の金融不安は、欧州諸国を巻き込んだ世界規模の金融危機に拡大した。特に9月15日のリーマンブラザーズの破綻以降、米国最大級の保険会社であるAIGの急速な経営悪化、一部MMFの元本割れ、モルガン・スタンレーなどに対する預かり資産の大量引き出しなどが重なり、世界のドル短期金融市場は閉塞状態に陥っている。こうした危機は1929年の大恐慌以来のことといえよう。本稿では、当初は米国の住宅金融市場に限られていた金融不安が、世界的に拡大した背景を探った上で、日本の金融システムへの影響を分析する。
(日本経済新聞 2008年10月29日 33面 経済教室)
【CFOならこう読む】
今日の経済教室で日本経済研究センター理事長の深尾光洋さんが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる信用デリバティブの会計処理について次のように言っています。
「CDS取引による保証供与からの収入は、将来の保証債務の負担に見合っているはずで、大半を引当処理する必要がある。だがAIGは受け取った保証報酬の大半を利益計上していたとみられる。」
深尾さんの言っていることはもっともですが、日本の会計基準はそんな風にはなっていません。
金融商品会計に関する実務指針 138項
「クレジット・デリバティブ及びウェザー・デリバティブのうちデリバティブの特徴を満たし市場価格に基づく価額又は合理的に算定された価額がある場合には当該価額をもって評価する。ただし、クレジット・デフォルト・オプションのうち市場価格に基づく価額がないものについては、債務保証に準じて処理する。」
ということで大半は債務保証に準じて処理されると思います。
金融商品会計に関する実務指針 137項
「債務保証については、金融資産又は金融負債の消滅の認識の結果生じるものを除いて時価評価は行わず、監査委員会報告第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」によって処理する。保証料は、受取保証料又は支払保証料として収益又は費用に計上し、期末には発生主義に基づき未収若しくは前受け又は未払若しくは前払いを計上する。」


監査委員会報告第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」

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つまり、平時において保証料見合いの金額を引当計上する実務はないのです。この点日本でも見直しが必要だと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-29 10:51 | 会計
2008年 10月 24日

変動利付国債についても市場価格以外の評価容認へ

市場価格以外の評価容認、変動利付国債も対象 会計基準委方針
金融危機を受けた時価会計の見直しを検討している企業会計基準委員会(ASBJ)は、価格が下落している変動利付国債や物価連動国債を単純な市場価格以外の時価で評価することを認める方針だ。新たに作成する指針の中に、価格が極端に下落している国債などはそれ以外の時価で評価してよいとの考え方を盛り込む。変動利付国債を大量に保有する銀行など金融機関は決算で評価損を計上せずに済むことになりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081024AT2C2301X23102008.html

【CFOならこう読む】
新聞記事によると、
「変動利付国債は市中発行残高が40兆円強あり、主に銀行など金融機関が保有。通常の国債と比べて流動性が乏しいため海外勢などの売却で価格が急落し、多くの投資家が含み損を抱える状況になっている。」

「変動利付国債にこのまま時価を当てはめると多額の含み損を抱えるため、「時価会計を適用するのと緩和するのでは自己資本比率が大きく変わってくる。」
とのことです。

今後は「理論価格の算定法や監査法人の実務対応が焦点になる」(国内証券)でしょう。

この点について、ロイターが次のように書いています。
「2008年9月中間期以降の決算の会計処理で、変動利付国債のどの回号に理論値を採用するかは、各金融機関の判断にゆだねられるが、大和総研の吉井一洋制度調査部長は、理論値採用の判断を金融機関にゆだねるなら、変動利付国債の同じ回号でも違う価格で評価されることが起こりうると指摘。「同じ金融商品で金融機関によって評価額がばらつくなら時価会計の理念とかけ離れてしまう」と厳しく指摘している。」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-34460220081022
吉井さんが言うように、会計士の判断により評価額がぶれるということがあれば大問題です。ASBJは、理論値による評価を容認するのであれば、責任を持って、指針となる価格評価フォーミュラーを提示すべきでしょう。

ただ、私自身は満期のある債券の評価は、東京大学経済学部の醍醐教授が言う、「償却原価・時価比較高価法」(http://cfonews.exblog.jp/8772474/)により行うのが良いのでは、と思っています。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-24 08:54 | 会計