吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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カテゴリ:会計( 40 )


2008年 06月 20日

自社株の無償取得-ラ・パルレのケース

ラ・パルレ相談役 保有株すべてを会社に無償譲渡
エステティックサロンのラ・パルレは19日、創業者の大石洋子相談役が保有する同社株約75,000株(発行済株式数の34.3%)すべてを18日付で同社に無償譲渡したと発表した。同時に創業者一族の大石舞氏も保有株のうち約14,000株(同6.7%)を無償譲渡。これに伴い8.6%を持つモルガンホワイトフライヤーズが筆頭株主に、5%を持つ大石舞氏が第二位株主になった。
(日本経済新聞 2008年6月20日 14面)

【CFOならこう読む】
異動の理由を会社は次のように説明しています。
「当社は、平成20年3月24日に東京都より「東京都内17店舗の一部業務停止」の行政処分を受けております。(特定継続的役務提供の一部業務停止3ヶ月、平成20年3月25日より平成20年6月24日まで)また、経営改善への過程で財務基盤が弱体化し、平成20年3月期決算における会社法に基づく監査は意見不表明となっており、財務基盤の改善を図るための第三者割当増資等を複数社と交渉中であります。これを受けて、平成20年6月18日付で当社の創業者であり相談役である大石洋子が、行政処分と会社法に基づく監査の意見不表明に対する責任を取り、保有する当社普通株式の全株を、同時に当社主要株主である大石舞の保有する当社普通株式14,701株について、それぞれ当社へ無償譲渡する旨の申し出がありました。
これにより、譲渡契約を締結し当社普通株式が譲渡され、筆頭株主および主要株主に異動が発生しましたのでお知らせいたします。」

会計及び税制上の取扱いが気になるところです。
会計については、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」第14項が、次のように規定しています。
「自己株式を無償で取得した場合、自己株式の数のみの増加として処理する。」
税制については、「資本取引 税務ハンドブック」(税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編 中央経済社)356ページに次のように記載されています。
「平成18年度の税制改正により、自己株式の取得の場合は資本金等を直接減額させる扱いとなったために、自己株式の取得は資本等取引であるとして、取得価額の高低にかかわらず課税所得が生じないのではないかとも考えられます。
しかしながら、自己株式の取得は発行法人の資本金等の額を減額させる取引ではあるものの、株主への対価の交付を伴う取引であることから、「複合的取引」であるとする見方が一般的と思われます。すなわち、自己株式の資産としての譲受けの要素が残されている以上、自己株式の譲受けは時価によるべきであり、時価よりも高値あるいは安値で譲り受けた場合にはその差額について寄付金または受贈益課税が生じるものと考えられます(法人税法22②、37⑧)。
自己株式の取得については他の資産の取得と同様に法人と株主との間の利益の移転の問題であり、株主間での利益移転の問題ではないと思われます。」
大石洋子氏が譲渡した75,000株は、昨日(19日)の終値(17,900円)で計算すると13億4600万円に相当します。

【リンク】
平成20年6月19日「主要株主である筆頭株主および主要株主の異動に関するお知らせ」株式会社ラ・パルレ
http://qweb1-1.qhit.net/hercules/pdfdocs/contents/2008/06/19/2008061904037100.PDF


by yasukiyoshi | 2008-06-20 10:11 | 会計
2008年 06月 18日

HOYA・ペンタックス、のれん代180億円少なく資産の評価方法変わる

HOYAが3月、ペンタックスを吸収合併したことに伴って発生するのれん代が、当初見込みの総額500億円から317億円にとどまり、180億円強少なくて済むことが分かった。経営統合の方式を完全子会社化にとどめず、合併にまで踏み込んだことで、税金に関連した会計処理が変わった。のれん代は10年で均等償却する方針だ。毎年の償却額が減る。
(日本経済新聞 2008年6月18日 17面)
【CFOならこう読む】
記事によると、
「時価純資産が増える「原資」となったのは買収される前のペンタックスが、保有する特許権の転売可能性を踏まえて計上していた税金関連の負債など。買収時の再評価によりこれに180億円の資産価値が生じた」
とのことです。

はっきりと原資を特定できないのですが、繰延税金資産・負債への取得原価の配分額の見直しがあったものと思われます。
「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号)第73項は、繰延税金資産・負債への取得原価の配分額の見直しについて次のように規定しています。
「企業結合日に認識された繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しは、以下の場合がある。
(1) 暫定的な会計処理の対象としていた識別可能資産及び負債への取得原価への配分額の見直しに伴うもの
(2) 将来年度の課税所得の見積りの変更等による繰延税金資産の回収見込額の修正によるもの

(1)については第70項に従い会計処理する。
(2)の繰延税金資産の回収見込額の修正のうち、企業結合年度における修正は、第70項に従い、企業結合日におけるのれんの額を修正し、企業結合年度の翌年度における修正は、第70項の定めにかかわらず、原則として、翌年度の損益(法人税等調整額)に計上する。ただし、企業結合年度の翌年度における修正であっても、その修正内容が、明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の修正と考えられるとき(企業結合日以後1年以内に行われたものに限る。)は、企業結合日におけるのれん(又は負ののれん)の額を修正する(第379項参照)。」
記事の「180億円まとめて利益に計上し、のれん代はそのままとする会計処理も可能だったが、合併で可能になったのれん代の圧縮を選択した。」は、第73項の(2)における企業結合年度の翌年度における修正を参照しているものと思われます。

【リンク】
平成20年5月16日「(訂正)平成20 年3 月期第4 四半期(3 ヶ月間)連結決算概況<ご参考>の訂正について」HOYA株式会社
http://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-605-pdf.pdf


by yasukiyoshi | 2008-06-18 10:21 | 会計
2008年 06月 10日

株主優待引当金

株主優待引当金計上企業が増加
株主優待の費用を引当金として計上する企業がじわりと増えている。2007年3月期ー2008年2月期の貸借対照表に株主優待引当金を計上した企業は18社と1年前に比べ11社増加した。個人株主を獲得する手段として株主優待制度が広がる中、企業は優待のコストを認識する必要に迫られている。
(日本経済新聞 2008年6月10日16面)

【CFOならこう読む】
会社計算規則における負債の評価に関する規定は、会社計算規則第6条に通則的な規定が設けられています。
①原則
負債については原則として債務額を付さなければなりません(計算規則6条1項)
②引当金
引当金の計上の可否については、債務性の有無にかかわらず、企業会計の基準その他の会計慣行により判断されることを前提としたうえで、引当金については、債務額ではなく適正な価格により評価することができるとしています(計算規則6条2項1号)。

そしてこの引当金には、「株主に対して役務を提供する場合において計上すべき引当金を含む」と規定されています(計算規則6条2項1号)。

会社法立案担当者は、「会社法の計算詳解 第2版」(郡谷大輔・和久友子編著 中央経済社)の中でこの規定の趣旨を次のように説明しています。
「また、「株主に対して役務を提供する場合において計上すべき引当金を含む」とあるのは、創設的な意味ではなく、役務を提供の相手方が誰であるかにかかわらず(例:株主に対する株主優待)、費用・損失の発生または収益の控除が見込まれることにより引当金を計上すべき場合には、適正な価格を付すことができることを注意的・確認的に規定したものである。」
”できる”という表現が引当計上してもよい(しなくてもよい)という風に読めますが、これはそういうことではなく、株主優待のように、役務の提供の相手方が株主の場合でも引当計上できるのか、という昔からある疑問に対して、”問題なくできる”と答えたものと解されます。

【リンク】
会社法の計算詳解 第2版―株式会社の計算書類から組織再編行為まで
郡谷 大輔 和久 友子

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by yasukiyoshi | 2008-06-10 08:36 | 会計
2008年 06月 04日

「特別目的会社の開示指針」の開示対象

特別目的会社を重点審査、金融庁が上場企業など対象
金融庁は3日、上場企業など有価証券報告書を提出している全企業について、特別目的会社(SPC)の保有状況や情報開示の実態を重点審査すると発表した。不動産開発や投資事業を運営する器として設立する企業が多い点に着目。子会社に該当しないようにみせ、連結対象から外すことで投資家に不利益を与えるケースが発生するのを防ぐため、情報開示が不十分な企業には訂正を求める。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C03020%2003062008&g=E3&d=20080603
(日本経済新聞 2008年6月4日7面)
【CFOならこう読む】
適用指針15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」3は開示対象とすべき特別目的会社について次のように規定しています。
「連結財務諸表に注記しなければならない「連結の範囲等」(連結原則 第七 1)及び「その他の重要な事項」(連結原則 第七 5)には、子会社等の範囲の見直しに係る具体的な取扱い 三により、出資者等の子会社に該当しないものと推定された特別目的会社(この場合において関連会社とされているものも含む。以下「開示対象特別目的会社」という。)」
会社等の範囲の見直しに係る具体的な取扱い 三は、特別目的会社の取扱いについて次のように記載しており、この規定に従い子会社としなかった特別目的会社が開示対象となります。

「特別目的会社(特別目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第2項に規定する特定目的会社及び事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいう。以下同じ)については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に対する出資者及び当該特別目的会社に資産を譲渡した会社(以下「出資者等」という。)から独立しているものと認め、上記一にかかわらず出資者等の子会社に該当しないものと推定する。」

【リンク】
平成19 年3 月29 日「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」企業会計基準委員会
http://www.asb.or.jp/html/documents/docs/spe-kaiji/spe-kaiji.pdf



by yasukiyoshi | 2008-06-04 08:09 | 会計
2008年 05月 29日

日立キャピタル、リース会計基準変更に伴う特別利益一括計上

日立キャピ、純利益34%増 リース会計基準変更 特別利益を一括計上
日立キャピタルは28日、2009年3月期の連結純利益が前期比34%増の144億円になりそうだと発表した。従来予想は135億円だった。4月から新しいリース会計基準が適用されたのに伴い、前期末までに流動化したリース債権の未実現利益を、今期に特別利益として一括計上することになった。
(日本経済新聞 2008年5月29日 16面)
【CFOならこう読む】
日立キャピタルは、プレスリリースで本件を以下のように説明しています。
「当社は、リース債権の流動化を財務の1つの手段として活用しております。これは将来の受取リース料を現金化するものであり、会計上は損益の発生しない取引としておりました。しかしながら、「金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14 号)」の改正により、流動化しているリース債権は過去に遡及して売買処理として取扱うこととなり、本年3月31 日までに既に流動化していたリース債権の未実現利益を今年度に一括して損益計上することと致しました。なお、このリース債権の流動化処理の変更により特別利益243 億円を計上する予定であります。」
これは、この4月から適用になった新しいリース会計基準が、所有権移転外ファイナンスリースについても原則通常の売買取引に準じた方法によることを定めており、また、適用指針16号が「リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理を行い、変更による影響額を特別損益として処理すること」としていることに伴うものと思われます。

なお、改正「金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14 号)」18項は、リース取引について次のように規定しています。
「リース取引は、企業会計基準委員会企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)に従って処理されるため、金融商品会計基準の適用外である。ただし、リース取引により認識されたリース債権及びリース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分(リース会計基準第41項)又はリース債務は、金融資産又は金融負債として、その消滅の認識や貸倒見積高の算定等につき金融商品会計基準に従って処理する。また、リース取引に組み込まれたデリバティブには金融商品会計基準が適用される。」
日立キャピタルの「将来のリース料を収受する権利」の流動化が、金融商品会計基準の消滅の認識の要件を満たすことから、売買処理されたということです。

【リンク】
平成20年5月28日「特別損益の計上および業績予想の修正に関するお知らせ」日立キャピタル株式会社
http://www.hitachi-capital.co.jp/hcc/ir/pdf/080528_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-29 10:35 | 会計
2008年 05月 28日

会計処理方法の変更事例-セコム、退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法変更

セコム401Kへの全面移行を断念
セコムは準備していた確定拠出型年金制度(日本版401k)への全面移行を断念した。
確定給付型年金制度からの転換を目指し一部導入していたが、法人税が非課税となる拠出額の上限が低く抑えられたままで環境が整わないと判断した。全面移行を前提に年金運用の利差益である「数理計算上の差異」
を発生年度に一括消却しており、業績への影響も大きかった。
(日本経済新聞 2008年5月28日 19面)

【CFOならこう読む】
当ブログで3月8日に私は数理計算上の差異の会計処理方法の変更について次のように書きました(http://cfonews.exblog.jp/7460642/)。
「今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。」/span>

セコムは、従来「数理計算上の差異」発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用していましたが、2008年度3月期より、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主して10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しています。

3月8日にも書きましたが、「数理計算上の差異」の会計処理には以下のa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りの方法があります。このうち最も保守的なのはa-Aの方法です。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

セコムの会計処理方法の変更は、この最も保守的な方法であるa-Aからb-Bへ変更するものです。

セコムは変更の理由を次のように説明しています。
「当社は、従来退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用してきました。
この会計処理方法採用の背景には、確定給付型年金制度と確定拠出型年金制度の併用および厚生年金基金の代行部分の国への返上を骨子とする退職給付債務の減額を伴う退職給付制度の抜本改訂を決定したことがあり、長期的に確定給付型年金制度を確定拠出型年金制度へ全面移行する方針を前提としておりました。
確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度へ全面移行する方針については、関係諸法令の規制などもあり、確定拠出型年金制度への移行割合が30%と全面移行(100%)に比べ大きく乖離している状況にあり、関係諸法令の改正も不透明であることから、平成20 年3月開催の取締役会において確定拠出型年金制度への全面移行を断念する決議をいたしました。
確定拠出型年金制度への全面移行を断念したことに伴い、移行を円滑に進める目的であった数理計算上の差異の早期解消も必要性が薄れている現状においては、従来の会計処理方法に従った場合には、数理計算上の差異が発生連結会計年度の営業利益に大きな変動を与える可能性があり、年金資産の運用を含む退職給付制度が中長期的な視点を求めて行われるものであるという本来の性質上、単年度の数理計算上の差異が当該発生連結会計年度の企業業績を直接変動させる従来の会計処理方法が適合しなくなってきております。以上のような状況から、数理計算上の差異の処理方法を発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました。
この変更により、従来の方法によった場合と比較して、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ10,096 百万円増加しております。」
一括法から定額法への変更理由としては相当なのかもしれませんが、処理開始時期を発生年度ではなく翌会計年度に変更した理由はよくわかりません。

2008年3月期の営業利益は104,706百万円、2007年3月期の営業利益97,840百万円に対し6,865百万円の増益であったわけですが、この会計処理方法の変更がなければ減益であったことになります。

IFRsでは数理計算上の差異を純資産の部に直接計上する方法が認められており、コンバージェンスを睨んでの対応とも考えられます。

【リンク】
平成20年5月8日「平成20年3月期 決算短信」セコム株式会社
http://www.secom.co.jp/corporate/ir/finance/result/pdf/kessan20-3.pdf




by yasukiyoshi | 2008-05-28 08:28 | 会計
2008年 05月 10日

仕掛中の研究開発費一括費用処理 武田薬品減益に

大型買収で償却費増、2期連続の営業減益=武田薬品の09年3月期連結業績
武田薬品工業=2009年3月期連結業績予想は、売上高が14.2%増の1兆5700億円、営業利益が43.3%減の2400億円、経常利益が51.5%減の2600億円、最終利益が55.0%減の1600億円。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008050900631&rel=j&g=eco

【CFOならこう読む】
武田薬品の平成20年3月期及び平成21年3月期(予想)の連結業績は次の通りです。

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平成21年連結業績予想が下方修正された主な要因は、買収したミレニアムやTAPの開発中の新薬候補の価値について、「仕掛中の研究開発費」として一括費用計上されるためです。

米国及びIFRSでは、仕掛中の研究開発費が無形資産として計上され、減損テストの対象となります。研究開発プロジェクト完了時に取得企業は個別に耐用年数を決定し償却を開始します。研究開発費が資産計上されなければ、日本基準ではのれんに含めて最長20年で償却されるのですが、米国で資産計上されているなら、「実務対応報告18号 連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」により、研究開発費は日本基準への修正、すなわち一括費用処理が求められます。

しかし少なくともM&Aの場面では、買収価格の大きな部分を開発中の新薬候補の価値が占めるにも関らず、これに資産性を認めず一括費用処理を強制する日本基準は妥当とは言えません。2011年までに予定される日本基準のIFRSへの統一の中で改正されるものと思いますが、それだけ武田薬品の減益を額面通り受け取るべきではないでしょう。

余談ですが、この影響により従来30%~40%であった武田薬品の配当性向が平成21年3月期には88.5%に跳ね上がるという予想が発表されています。
武田薬品は配当政策を次のように公表しています。
「配当につきましては、長期的な視点に立ち、連結業績に応じた安定的な利益の配分を基本方針とするとともに、「06-10中期計画」最終年度の連結配当性向を「45%程度」とすることを目標に、段階的に引き上げてまいります。」
この方針をどのように変更するのか注目されます。

【リンク】
2008年05月09日「当社子会社による米国バイオ医薬品会社・Millennium Pharmaceuticals, Inc.株式公開買付けの結果について」武田薬品工業株式会社
http://www.takeda.co.jp/press/article_27166.html


by yasukiyoshi | 2008-05-10 15:33 | 会計
2008年 05月 08日

日本企業の利益構造に変化ー財務省「法人企業統計季報」

企業-利益構造 近年は経常利益優位に
近年、日本企業の利益構造に特徴的な変化が起きている。統計開始の1956年以降、常に営業利益が経常利益を上回っていたが、2005年から関係が逆転した。背景には、金利の低下や債務削減による支払利息減少がある。だが、それ以上に、受取利息などに反映される海外子会社からの配当や特許使用料の増加が影響している。このことは、日本企業の海外事業の収益性が向上し、海外現地法人の稼いだ利益の国内への還流が拡大していることを示す。国内の人口減少や高齢化を考えると、日本企業がグローバル化の対応をさらに進めることはさけられず、今後も経常利益が営業利益を上回る関係が続く可能性が高い。
(日本経済新聞 2008年5月8日 25面 統計で読む日本経済)
【CFOならこう読む)】
営業利益と経常利益を区分表示することから得られる情報のうち最も重要なことは企業の借入余力(財務上の安全性)が計れることにあります。経常利益が改善している理由の一つは、所謂バランスシート調整により企業の借入金の削減が進んだことによるものと思われます。

営業外損益が資金調達費用又は余剰資金の運用収益のみで構成されるなら、こういった傾向はより明確に把握できるのですが、記事にもあるように海外子会社からの配当や特許使用料も営業外損益に計上されるので、経常利益の持つ情報の価値は減殺されてしまいます。本来日本法人の獲得利益は海外法人の損益も含めた連結ベースで捉えなければその実態は見えてきません。

法人企業調査の目的を財務省は次のように説明しています。
「法人企業統計調査は、指定統計第110号として「法人企業統計調査規則」(昭和45年大蔵省令第48号)に基づいて行うもので、その目的は、我が国における法人の企業活動の実態を明らかにし、あわせて法人を対象とする各種統計調査のための基礎となる法人名簿を整備することにある。」
実態把握をその目的としている以上、連結ベースの数値も調査対象に加えることを検討すべきであると思います。

【リンク】
「法人企業統計調査 > 調査の概要」財政総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/ssc/gaiyou.htm


by yasukiyoshi | 2008-05-08 08:38 | 会計
2008年 04月 18日

FAS157の適用について、SECが米国の全上場企業のCFOに送付した手紙

米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)に米証券取引委員会(SEC)から手紙が届いた。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になるなか、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。
手紙が取り上げているのは米財務会計基準審議会(FASB)が2007年11月に導入した新会計基準「FAS157」。企業がこれに基づくSEC提出書類(フォーム10-K)を作る際の考え方を示している。
FAS157は有価証券を性質に応じて三つに分類。流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3だ。
手紙は広範な有価証券をレベル3に分類できるとしている。本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。そのうえでレベル3について、どういう方法で評価したかのモデルを開示するように求めている。
例えばサブプライムローンを組み込んだ証券化商品などレベル2の参照価格はトリプルA格でもとの価格の50%程度。それをレベル3と見なし、開示モデルによる評価を公正価格(フェアバリュー)として構わないというわけだ。開示モデルさえしっかりしていれば70%と評価することも可能になる。
これによって金融機関のサブプライム関連損失の抑制効果が見込める。レベル2には債務担保証券(CDO)やLBO(借入で資金量を増やした買収)融資などかなりの資産が入る。
一部の会計士はレベル2を市場の参考価格を使って厳格評価する姿勢だった。その場合、債務超過に陥る金融機関が出て、連鎖破綻がおきかねなかった。SECは会計士へのけん制も狙ったもようだ。
市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。

(2008年4月17日 日本経済新聞夕刊9面 十字路)
【CFOならこう読む】
手紙(リンク↓)はレベル3インプットを利用して公正価値を評価した場合の開示の
充実を要請する趣旨で書かれているのですが、中に次のような記述があります。
Under SFAS 157, it is appropriate for you to consider actual market prices,or observable inputs, even when the market is less liquid than historical market volumes, unless those prices are the result of a forced liquidation or distress sale. Only when actual market prices, or relevant observable inputs, are not available is it appropriate for you to use unobservable inputs which reflect your assumptions of what market participants would use in pricing the asset or liability.
市場がゆがんでいる場合にはレベル3インプットに分類できる場合がある、ということが書かれているわけです。

3月28日のNew York Timesは、これに対し” If Market Prices Are Too Low, Ignore Them”と強烈な皮肉を込めた記事を掲載しています。FAS157は会計上公正価値をいかに測定し表示すべきかについて規定した会計基準です。そこでのポイントは、公正価値を、時価がある場合にはそれに基づき測定し、ない場合には内部データ(レベル3インプット)に基づき測定することを求めているところにあります。

サブプライムローン関連の証券化商品がどのように評価されるかについて、新日本監査法人の情報ポータルサイトに次のような記載があります。
「一口にサブプライムローン関連の証券化商品といっても、いろいろなものがあり、格付けがあるものと、ないものによっても状況が違います。格付けのある債券については、それと同一格付債券の気配値や、売買実績など、市場で根拠となるもの(レベル2インプット)が取れれば、それを使って評価することになります。格付け機関はこの問題の初期段階では格下げの必要はないといっていましたが、その後、全面的に
格下げを行った結果、債券の保有者は大きな評価損を計上することになりました。投資家は、債券が売られ気配値が下がることと、格下げの両方で評価損の拡大に見舞われました。こうした市場価格を推計するデータも市場からまったく得られなくなった場合、レベル3インプットによって、評価することになります。」

http://www.a2msn.jp/portal/column/single/subprime/story/02.html
このコラムはSECからの手紙以前に書かれています。SECからの手紙は、このコラムでレベル2インプットを取れるものと位置付けられているものを、市場価格が歪んでいると認められる場合にはレベル3インプットを用いて公正価値の評価を行うことを認めると言っているわけです。これは4月12日に当ブログで私が指摘した(http://cfonews.exblog.jp/7724804/)ように、”状況が悪いときには、それを測るモノサ
シを変えてやり過ごそう”ということに他なりません。

言うまでもなく、今は、実態をルールに従い正しく把握した上で、それに対し適切に対処していくことが求められている時です。場当たり的にモノサシを変えてやりすごそうという姿勢は全く持って間違っていると私は思います。
一方私自身は、全面時価会計が会計の正しい方向性であるとは思っていないので、これを機会に会計基準を見直すための議論はあってしかるべきであると考えています。

それにしても十字路の「市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。」とは一体何を言いたいのでしょうか? 少なくとも、私は市場原理主義者かもしれませんが(笑)、時価会計の信奉者ではありません。

情緒的なだけで中身がない議論を公の場ですることは厳に戒めてもらいたいものです。

【リンク】
SECからの手紙
http://www.sec.gov/divisions/corpfin/guidance/fairvalueltr0308.htm

New York Times 3月28日記事
http://norris.blogs.nytimes.com/2008/03/28/if-market-prices-are-too-low-ignore-them/


by yasukiyoshi | 2008-04-18 10:41 | 会計
2008年 04月 12日

金融商品の時価評価、G7で議題に・FRB議長「市場、不安定に」

【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は10日、バージニア州の講演後の質疑応答で「流動性の低い市場では時価評価の会計によって不安定になることがある」と述べ、証券化商品などの時価評価がもたらす損失の拡大で市場が揺さぶられているとの認識を示した。時価評価の問題は 11日にワシントンで開く7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で取り上げられる見通しとなった。G7会議の関係者が10日、明らかにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080411NTE2INK0311042008.html

【CFOならこう読む】

状況が悪いときに、それを測るモノサシを変えてしまおうという発想は日本の専売特許だと思っていましたがそうでもないのですね。
日本ではこんなことがあったのをご記憶の方も多いと思います。
「1998年3月期より銀行が保有する有価証券の評価方法について、それまで用いられていた低価法に加えて原価法による評価も認められることとなった。これは1997年から1998年の株価の大幅な下落に伴って、銀行が保有する株式の時価が簿価を下回る事態が続出し、これまでのように低価法を採用すれば評価損の計上によって収益の大幅な減少(すなわち自己資本の大幅な減少)が見込まれたことが背景にある。1998年3月期決算では都銀8行のうち東京三菱銀行を除く7行が株式について原価法に変更し、合計で約2兆円の評価損の計上を免れることとなった。」(郵政研究所月報2000.10)
このとき、「日本は国家ぐるみで粉飾をする国だ」と世界各国から袋叩きにあいました。今度のG7では日本が「時価会計見直し」を批判する番です。断固たる態度で反対意見を表明することを望みます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-12 10:38 | 会計