吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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カテゴリ:会計( 40 )


2008年 04月 09日

SPC連結ルール厳格化へ

特別目的会社、連結ルール厳格化・会計基準委、国際団体と合意

日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会は8日、金融機関や企業が設立、投資している特別目的会社について、連結決算の対象範囲を厳格化することで国際団体と基本合意した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080409AT2C0801F08042008.html


【CFOならこう読む】

上記記事によると、
「従来の国際会計基準や日本基準では、実質的な支配権を持っているかどうかを連結の判断基準としていた。新ルールでは、どの企業が実質的な支配権を握っているか判断が難しい場合は、特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業に連結を義務付ける方向で検討している。」
とのことです。

ASBJのウェブサイトに開示がないので、詳細は不明ですが、方向性としては正しいように思います。もちろん” 特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業”以外の企業には持分法を義務付けるのでしょうね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-09 08:32 | 会計
2008年 03月 29日

リストラ費用の持つ意味

上場企業の特損、4-12月期21%増 外需変調でリストラ加速 実効性、市場の目厳しく
リストラと巨額の特別損失-。いつか来た道を企業がたどり始めた。2007年4-12月期に上場企業(新興市場、金融除く3月期決算)が計上した特損は2兆4百億円。前年同期に比べ21%増え、今年に入っても基調は変わらない。通期でも前期の3兆7200億円を上回る可能性が強まっている。
(中略)
株式市場は相次ぐリストラを厳しく「監視」している。追い込まれた末の苦し紛れの一手なのか、将来の展望を開くための「選択と集中」なのかー。
新世代DVD事業の終息を決めた東芝。撤退に伴う一時的な損失として450億円を計上する。営業損益段階で計上する650億円の赤字と合わせ、新世代DVD事業の損失額は合計1100億円にのぼる。しかし、撤退報道を受けた2月18日は株価が急騰した。市場は「選択と集中」が進むとして、大規模なリストラを歓迎した。
「過剰な設備や人材を調整するだけのリストラと事業効率を高める前向きなリストラは性格が違う」と野村證券の藤田貴一ストラテジストは話す。業界内で限られたパイを争えば一握りの企業が勝者となるが、ほかは敗退せざるを得ない。展望の開けない事業に早々に見切りをつけることを、投資家は悪材料とは受け取らない。

(2008年3月29日 日本経済新聞 15面)
【CFOならこう読む】
CFOにとって大きなリストラ費用を計上するのはとても勇気がいることです。株価が暴落するのではないか…、そんな不安が頭をよぎります。

しかし投資家が見ているのは単なる会計利益ではなく経営そのものなのです。そして発生ベースの会計情報は、キャッシュフローを上回る多くの情報を提供してくれるのです。私の愛読書であるクリステンセンとデムスキの「会計情報の理論」(佐藤紘光他訳 中央経済社)に次のような記述があります。
「われわれは早くから、発生項目を会計生産物の中心的な存在として認識してきた。キャッシュベースの認識が用いられるとすると、会計システムはキャッシュフローのみを報告し、それ以外の何かを伝える能力をもたなくなる。発生主義会計が厳密に導入される場合、キャッシュフローが伝達するものを上回る情報が発生項目には含まれることになる。」
われわれは会計情報の有する豊かな報告構造をもっと信用して良いのだと私は思います。

なお上の”発生主義会計”という言葉は、”時価会計”や”公正価値会計”のアンチテーゼとして用いられています。この点はまた機会を設けて取り上げたいと思います。

【リンク】
2008年2月19日「HD DVD事業の終息について」
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2008_02/pr_j1903.htm

(株)東芝 【東証1部:6502】
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=6502.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

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by yasukiyoshi | 2008-03-29 09:45 | 会計
2008年 03月 26日

日本の株式市場は効率的か?-出光興産のケース

出光興産株、8日続落 石油製品、営業赤字に
出光興産の株価が急落している。25日の終値は前日比2%安の7420円で、8営業日連続で下落した。原油高騰による収益圧迫が懸念された。原油在庫の資産計上の方法の違いも響き、堅調な株価の同業他社とは対照的な値動きとなった。
出光興産は2008年3月期の連結経常利益を前期比50%減の540億円と見込む。原油高騰の中、競争激化で石油製品への価格転嫁が遅れており、石油製品部門は110億円の営業赤字に転落する見通しだ。
一方、同業他社の25日終値はコスモ石油が2%高、新日鉱ホールディングスが3%
高、新日本石油が前日と同じ。明暗が分かれた理由は「在庫の資産計上の方法の違いが響いた」(みずほ証券の塩田英俊シニアアナリスト)との見方が強い。
新日本石油など3社は総平均法を採用。原油価格が上昇すると、期初の割安な在庫も原価に含めるため会計上の原価が下がり、利益がかさ上げ(在庫評価益)が生じる。一方、出光興産が採用する後入先出法は在庫評価益が発生しない。
石油元売大手4社の今期業績は、在庫評価の影響を除くとそろって実質経常減益の見通し。原油高騰で、各社とも収益実態は厳しさを増している。

(2008年3月26日 日本経済新聞 17面)
【CFOならこう読む】
ファイナンスという学問では市場の効率性を3つのレベルで定義しています。

第1のレベルは現在の証券価格が過去の価格に含まれている情報を反映しているというもので、ウィークフォームでの効率性と言います。
第2のレベルの効率性は、現在の証券価格が過去の価格だけでなはなく、すべての公開情報を反映しているとするもので、これはセミストロングフォームの効率性と言います。
そしてすべての情報が証券価格に反映されているとするレベルをストロングフォームでの効率性と言います。

市場がセミストロングフォームのレベルで効率的であるなら、会計方針の選択が株価に影響を与えることはありません。この点、ブリーリーとマイヤーズはMBAのためのテキスト「コーポレートファイナンス」(日経BP社)の中で次のように説明しています。
「FIFO(先入先出法)によれば、先に在庫として積まれた商品の原価を費用控除する。LIFO(後入先出法)によれば、倉庫に最後に到着した商品の原価を費用控除する。インフレ率が高いときには最初に購入した商品のコストは、通常最後に購入した商品のコストよりも低い。したがって先入先出法によって計算された利益は、後入先出法によって計算された利益よりも大きくなるように見える。

さて、これが、プレゼンテーションの問題にすぎないのであれば、後入先出法から先入先出法に変更することは、何ら実害をもたらすものではないだろう。しかし、内国歳入庁、株主への報告に用いられるのと同じ方法を用いて企業の税金が計算されるべきだと主張している。したがって、後入先出法を用いることにより当面の税金支払いが軽減されている場合には、見かけ上の利益も低くなっていることになる。

 仮に市場が効率的であるならば、投資家は見かけ上の利益の減少をもたらすものであっても、後入先出法への会計の変更を歓迎するだろう。BiddleとLindahlはこの問題を研究し、このとおりのことが実際に起きており、後入先出法への変更は通常以上の株価の上昇をもたらすと結論付けた。株主は、計数の背後を読み、節約された税金の額に焦点を当てているようであった。」

つまり日本の株式市場がセミストロングフォームで効率的であるなら、出光興産の株価は上がり、コスモ石油の株価は下がらないといけないのです。しかしそうはならず、単純に利益の増減によって株価が上下するということなら、少なくともセミストロングフォームのレベルで日本の株式市場は効率的でないということになります。

このことは、日本企業の株価が全く実態を表していない可能性があることを意味しています。これは価値創造の担い手であるCFOにとっては由々しき問題です。しかしただ嘆いているだけでは何も変わりません。市場に理解してもらえるようなわかり易い言葉で、会計情報の持つ意味を伝えていく努力が求められるのだと思います。

【リンク】
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=965160

http://www.cosmo-oil.co.jp/ir/financial/valuable/2007/pdf/val2007_05-05.pdf


by yasukiyoshi | 2008-03-26 09:32 | 会計
2008年 03月 22日

子会社株式、持分法適用会社株式の減損処理に伴うのれんの償却-三井不動産のケース

三井不の今期 帝国ホテル株下落で特損130億円 取得価格の半分以下 のれん代償却 必要に
三井不動産は21日、33%出資する持分法適用会社の帝国ホテルの株価が大きく下落したため、2008年3月期の連結決算で130億円の特別損失を計上する予定だと発表した。20年償却の予定だった帝国ホテルののれん代130億円の一括償却が必要になった。ただ本業の収益などで吸収し、連結業績予想は修正しなかった。
 三井不動産は昨年10月、1株8750円で帝国ホテル株を33%取得した。帝国ホテル株の21日終値では3970円で、評価損の計上が必要な、取得価格の50%以下に下落している。
単独決算で取得価格と時価との差額として関係会社株式評価損440億円と特別損失に計上。これに伴い会計ルール上、連結決算で取得価格と時価純資産の差額であるのれん代130億円についても一括償却しなければならなくなった。

(2008年3月22日 日本経済新聞 15面)
【CFOならこう読む】
金融商品会計に関する実務指針91項は、市場価格のある有価証券の減損処理について次のように規定しています。

「売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む)のうち、市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(減損処理)しなければならない。」
 「時価のある有価証券の価額が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化するできるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得価額に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。」
三井不動産の単体の財務諸表上、帝国ホテル株式を上記規定に基づき減損処理したものと思われます。

さらに、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針32項(及び持分法会計に関する実務指針9項)はのれんの会計処理について次のように規定しています。
「親会社の個別財務諸表上、子会社株式(関連会社株式)の簿価に減損処理が行われたことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額と連結調整勘定未償却残高との合計額を下回った場合、その差額のうち、連結調整勘定未償却残高に達するまでの金額について償却しなければならない」(一部筆者加筆・修正)
この規定に基づき三井不動産は帝国ホテルののれん代130億円を一括償却することになったものと思います。
CFOとしては、子会社株式及び関連会社株式の減損処理を行うと同時に連結財務諸表上のれんの償却をせざるを得ない場合が少なからずあることに留意が必要です。

【リンク】
平成20年3月21日「特別損失の計上に関するお知らせ」三井不動産株式会社
http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/news/2008/pdf/news_080321.pdf


by yasukiyoshi | 2008-03-22 09:30 | 会計
2008年 03月 08日

退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法

「株価が少しでも上昇してくれれば…」住生活グループの伊奈啓一郎取締役は3月末を控えたこの時期、日経平均株価の動きにやきもきする日々を過ごしている。株式相場の低迷によりグループの年金基金の運用利回りが悪化、2008年3月期に多額の年金費用の計上を迫られる可能性が高まっている。
昨年4月から今年1月までの運用成績はマイナス7%前後。今年度は最大マイナス10%の悪化を見込む。同社は「数理計算上の差異」と呼ばれる年金運用の利差損益を発生年度に一括償却している。マイナス10%の場合、この「差異」は約80億円発生し、今期の予想連結営業利益(500億円)を大きく押し下げる。
大和ハウス工業、住友林業も「差異」の発生年度に一括償却。東京ガス、三菱レイヨン、日清食品は翌年度に一括償却している。運用収益が期待収益を上回った場合は増益要因となるが、現在のような相場環境では強烈な逆風だ。「投資家から本業が原因だと誤解されては困るのだが」と伊奈取締役は心配する。

(日本経済新聞2008年3月8日 17面 揺れる)


【CFOならこう読む】

「数理計算上の差異」の費用処理方法は次の組み合わせがあります。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

つまりa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りあるのです。

年金資産の数理計算上の差異はいわゆる含み損なので処理を先送りせず、一括処理することが望ましいと考える経営者も少なからずいます。2005年3月期の調査では8%~10%の企業一括処理を選択しているとの報告があります(退職給付会計の実務 泉本小夜子 日経文庫)。

 今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。

【リンク】
退職給付会計の知識 (日経文庫)
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by yasukiyoshi | 2008-03-08 10:24 | 会計
2008年 01月 31日

連結:国際会計基準、単体:日本国内基準?

会計基準の世界的統一が加速するなか、日本の孤立感が深まっている。国際会計基準を採用する国は百カ国を超え、2011年には資本市場の「共通語」となることがほぼ確実。欧米間で基準作りの主導権争いが激しさを増す一方で、出遅れた日本は会計分野で発言力を失いかねない。決算書の透明性向上を目指した「会計ビッグバン」を経て、日本は再び大きな試練を迎えている。
(2008年1月31日日経金融新聞7面)

【CFOならこう読む】
企業会計基準委員会(ASBJ)は、昨年8月、国際会計基準とのその時点での差異を2011年6月末までに解消すると発表しました。しかしこれは国際会計基準を全面採用するということではなく、あくまで自国の会計基準を存続させた上で、昨年時点の国際基準との差異を解消するということなので、国際会計基準審議会(IASB)が開発するルールは、2011年時点でも解消されません。

つまり今のままではいつまでたっても国際会計基準と完全に統一されることはないのです。何故国際会計基準を全面採用することができないのでしょうか? 記事では国内法制や税制との整合性が障害となっていると指摘しています。しかしそれは日本固有の問題ではないはずです。こういった障害を解決し2011年にはカナダ、韓国、インドなども一斉に国際基準に乗り換えます。

日本は縦割り行政であり調整不可能であると、自国の会計基準にいつまでも拘泥していると、世界の中で完全に孤立することになりかねません。会計士協会会長の増田氏は解決策として「連結決算だけに国際基準を適用してはどうか」と言っているそうです。しかしそれが企業にどれだけ余計な負担を強いることになるかわかっているのでしょうか? それともその分会計士の仕事が増えて望ましいとでも思っているのでしょうか? 

EUが上場企業に対し連結ベースの決算書に国際基準を適用し、各国の法制や税制が絡む単独決算は自国基準を使う「連単分離方式」を採用していることを理由に、増田氏の言うような方向性もあり得るとの意見もあるようですが、言語も文化も異なるEU内の統一と、日本国内の権益の調整を同じ次元で語る神経が私には全く理解できません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-01-31 08:53 | 会計
2007年 12月 05日

会計方針と株価

減価償却法 見直し広がる -設備状況の変化に対応-
企業が相次ぎ設備など固定資産の減価償却方法を変更し始めた。4月の減価償却制度の改正を機に設備の利用実態の見直しを進め、初期に償却負担が重くなる分、早めに償却が進む定率法と、償却速度は遅くなるが利益への影響が安定的な定額法のうち、現状に適した方法へと切り替えている。ただ、償却を加速し税負担を抑える新制度の利点を活用しにくいという課題も浮かび上がってきた。
(日本経済新聞2007年12月5日17面)

【CFOならこう読む】
記事によると今年に入って減価償却方法を変更した主な企業は次の通りです。

e0120653_914710.jpg減価償却方法は、収益との対応や経営者の保守的な態度を反映した形で企業が決めることができます。そして一度決めた方法はみだりに変更することは許されません。変更する場合、会計上「正当な理由」が必要です。

例えば富士通は、「主力のコンピュータシステム事業で長期契約中心の運用受託が増えているほか、需要動向が激しいメモリー事業撤退で収益が安定した。償却期間を通じて一定の利益を得られるなら、償却という費用も期間を通じて均等に発生すると見た方が理にかなう。したがって定率法から定額法に変更することでより適切にビジネス実態を表すことができる」を「正当な理由」としています。

ところで、日本では昔から会計方針の変更が“益出し”の手段として使われていることです(上の企業はそうではないと思いますが…)。在庫の評価におけるFIFOとLIFO、工事進行基準か完成基準かといった会計方針を会計上の利益を捻出するために変更する、という本来あっては行けないことが数多く行われてきたのです。政府主導で行われたこともあります。

そうまでして、会計上の利益を捻出することにいかなる意味があるのか、特に株価にどのような影響を与えるのか、が問題になります。コーポレートファイナンスでは、市場は効率的であるということが仮定されます。これを効率的市場仮説と言います。効率性の程度は3つのレベルに分けられます。

市場が過去の株価を完全に織り込んでいる場合をウィーク・フォームの効率性、過去の株価だけでなく全ての公開情報を反映しているならセミストロング・フォームの市場の効率性、株式に関係する全ての情報を反映しているならストロング・フォームの市場の効率性を満たすと言われます。

米国の数多くの実証分析がセミストロング・フォームの市場の効率性は満足することを証明しています。つまり会計上の利益を会計方針の変更によっていかに捻出しても市場が公開情報を正しく解釈しているなら株価には全く影響しないことになります。これを証明する実証分析もたくさんあります。

ところが会計方針の変更が株価に影響を与える場合もあるのです。Stephen A. Ross等の「コーポレートファイナンスの原理」(金融財政事情研究会)に次のような記述があります。
「Biddle and Lindahl」はLIFOへの在庫の原価計算の変更が、株価の上昇を伴うことを発見した。インフレ傾向の環境では、FIFOによる在庫の原価計算に比べて、LIFOの在庫原価計算は税金を減少させる(売上原価が現在の高い時価を反映する…吉永注釈)ので、これは予想されることである。彼らは、LIFOを用いることによる税金の減少額が大きいほど、株価の上昇が大きいことを発見した。」
減価償却方法の場合、定率法が定額法に比し税金を減少させる効果があるので、株価という観点からは定率法が望ましいと言えます。一方投資家により有益な会計情報を示すという観点からは、富士通のように定額法が望ましい場合もあり得ます。

日本では「確定決算主義」と言って会計上費用計上していないと税務上損金計上が認められない方式が採用されているので、このような会計上のニーズと税務上のニーズの違いを使い分けることができないのです。

「税法」が、来るべき市場型資本主義を阻害することがないように、コーポレートファイナンスの点から改正すべき点は山ほどあると、私は思います。
ところで、現在の日本の市場がセミストロング・フォームのレベルで市場が効率的であるかどうかについては、私は甚だ疑問であると思っています。

【リンク】
コーポレートファイナンスの原理 第7版
Stephen A.Ross 大野 薫

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by yasukiyoshi | 2007-12-05 08:54 | 会計
2007年 11月 28日

のれんの償却期間延長―ゼンショーのケース

牛丼店「すき屋」を展開するゼンショーの異例の会計処理変更が業界内で話題になっている。2007年9月中間期から突然、のれん代の償却期間を延長した。単年度ごとの償却負担が減るため、今期の営業利益は上乗せされる。同社は短期から中長期的に投資を回収するM&A戦略に変えたためとするが、重い金利負担や回転ずし事業の行き詰まりなど、苦しい財務事情も見え隠れする。
(日経金融新聞2007年11月28日 5面)

【CFOならこう読む】
記事の中で中央大学の間嶋教授の「保守的な会計処理の観点から償却期間を短くするケースはあるが、延長はよほど正当な理由がないと認められない」という意見が紹介されていますが、その通りだと思います。

昨年エム・ピー・テクノロジーという会社がのれんの償却期間の延長について、会計監査人である中央青山が了解しなかったというような事例もあります。記事にあるように「会計処理の変更は当社からではなく、監査法人(あずさ)から言われた」ということが本当ならかなり問題だと私は思います。

【リンク】
2007年11月16日「2008年3月期 中間決算短信」株式会社ゼンショー
http://www.zensho.co.jp/documents/ir/report/pdf/20071116-1.pdf

平成18年6月15日「平成18年7月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社エムピー・テクノロジーズ
http://www.mptech.co.jp/jp/news/pdf/pr060615_02.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-28 09:24 | 会計
2007年 11月 14日

連結子会社の決算期変更―花王・カネボウのケース

花王は2009年3月期から連結子会社のカネボウ化粧品の決算期を現在の12月期から3月期に変更する。本体と決算期をそろえ投資家に対し情報開示の透明性を一段と高めるのが狙い。2009年3月期から四半期決算が義務づけられることも背景にある。
(2007年11月14日日本経済新聞19面)

【CFOならこう読む】
子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超えない場合には、親会社は子会社の正規の決算をそのまま利用して連結決算を行うことができます(連結原則注解7)。

しかし3ヶ月決算がずれていると、四半期決算では、親会社の4-6月期に子会社の1-3月期を連結することになり連結情報としての有用性が低くなる問題があります。

日本では2009年3月期から四半期決算制度が正式に導入され、3ヶ月単位の即時開示が求められることもあり、多くの会社が決算期変更に踏み切るものと予想されます。

子会社の決算期変更をする場合、子会社の損益をどのように連結するかについては次の2つの方法が考えられます。
①前年1月から3月までの損益は連結損益計算書に含めず、連結株主資本等変動計算書に利益剰余金の増減として、「決算期の変更に伴う子会社剰余金の修正」のように表示する方法。
②子会社の事業年度の月数を15ヶ月として、連結損益計算書に含める方法。ただしこの場合その旨、及びその内容を連結財務諸表に注記する必要があります(連結財務諸表規則ガイドライン3-3)。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2007-11-14 08:27 | 会計
2007年 11月 05日

米シティ:CEOが辞意表明へ、緊急役員会で追加評価損検討も-報道

11月3日(ブルームバーグ):米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は2日、米銀最大手シティグループのチャールズ・プリンス最高経営責任者(CEO)が辞意を表明する見通しだと報じた。トップの引責辞任は大手金融機関の間で広がる様相を見せている。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=aycw.UfBMKhQ&refer=jp_home

【CFOならこう読む】
サブプライム問題は、SPCを使った損失飛ばし疑惑に発展しそうです。

米大手金融機関が運営する「SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)」と呼ばれるSPCが米国では簿外とされることを利用した「飛ばし」疑惑が浮上しているのです。

ウォールストリートは、シティにすでにSECが調査に入っていることを報じています。先週末の金融株式は、決算への不振から全面的に売られ、シティの株価は11月2日、日興との株式交換の下方限度である37ドルを割りこむ事態となっています(11月2日終値は37.730ドル)。

証券化商品の会計処理は不透明で、取引量が少なく時価の把握が難しいため、会社の推定で評価額を左右できてしまうことから、その価格を「市場価格」ならぬ「神話価格」とウォーレン・バフェットは揶揄しているそうです(日経金融新聞11月5日 1面)

それでは、不透明さいっぱいの日本の株式市場が決める価格を、私は「オッパッピー価格」と呼ぶことにします。
その心は、“特に意味はありません”です。

【リンク】
Bloomberg.com:Citigroup Inc
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=C:US


by yasukiyoshi | 2007-11-05 08:05 | 会計