カテゴリ:種類株式( 4 )


2008年 07月 19日

無議決権株の価格

普通株より割安に評価 日本市場の未熟さ反映?
「日本の株式市場のために、議決権のない優先株は必要だ。我々が実験台になる」。伊藤園の本庄八郎社長は他社に先駆け、昨年9月に同株を上場させた意義をこう強調する。「議決権の拡散を恐れ、資金調達に踏み切れない企業にとって成長の一助になる」と同社長。だが高い理想と裏腹に、伊藤園の無議決権優先株の株価は上場来、低空飛行が続いている。
配当が普通株に連動し25%上乗せされるにもかかわらず、株価は上場来ずっと、普通株より3-4割程度安いまま。伊藤園に続く企業が出ないのは「今、上場させても市場で割安に評価される」(大手食品企業)との警戒感もある。

(日本経済新聞 2008年7月19日 14面 無議決権株を追う㊦)
【CFOならこう読む】
このコラム、日経にしては珍しく(?)面白い記事です。

なぜ伊藤園の種類株の株価は普通株より3割以上も安いのか。記事ではその理由を2つ挙げています。

①無議決権優先株が東証株価指数に採用されていないため流動性が低い
②普通株にあって優先株にない議決権の価値が大きいから、価格差が拡大している

さらに記事は、イタリア、韓国の事例を引いて、
「国の法制度や市場のルールが未整備で、企業経営に対する規律付けが弱いと、株主は自ら議決権を握り、株主の利害に背かないよう経営を監視する必要性が増す。その場合、議決権の価値は増大し、結果として無議決権株と普通株の価格差が広がる。」
という仮説を立てています。

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確かに、安定株主作りに勤しむ日本の上場企業を見ると、議決権の価値は思っている以上に大きいのかもしれませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-19 09:19 | 種類株式
2008年 04月 21日

伊藤園の優先株 上場半年、普通株より3割安続く

伊藤園が普通株と別に東京証券取引所に上場している「無議決権優先株」の株価が上場半年を過ぎても軟調に推移している。国内初の試みとして注目を集めたが、株価は普通株より3~4割安い水準のまま。議決権が無いことで割安に放置されているのか、投資家が優先株に及び腰なのか。背景を探ってみた。
(日経ヴェリタス 2008年4月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事では普通株と優先株の流動性の価値が同じであると仮定して、同じPER(18日終値ベース)で試算した議決権の価値を799円(普通株の株価の43%)と計算しています。

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この計算は、当ブログで9月4日に説明したのと同様のものであると思われます。
http://cfonews.exblog.jp/6398916/

ただしこの計算だけをもって議決権の価値を推定することはできません。伊藤園の優先株の流動性は低水準であり、流動性ディスカウントを考慮する必要があるからです。

非流動性ディスカウントに関して、米国では制限付き株式(公開企業が発行するSECには登録されない株式)を検証することにより次のような研究結果が得られています。
1.マーハーは1969年から1973年の間に4つのミューチュアルファンドが購入した制限付き株式を調査した結果、同じ企業の公開株に対する平均割引率は35.43%であると結論づけている。
2.1970年以降のデータを使ったもろにーの調査によれば、10社の投資会社が購入した146銘柄の制限付き株式の平均割引率は35%である。
3.ジルバーは1984年から1989年にかけて発行された制限付き株式を調査し、割引率のメジアンが33.75%であることを見出した。
(資産価値測定総論3 アスワス・ダモダラン著 山下恵美子訳 Pan Rolling)
ということは上で計算された価値の大半は流動性の価値なのかもしれません。いずれにしてももう少し事例を重ねる必要がありそうです。

【リンク】
資産価値測定総論3―非公開企業から不動産、金融派生商品まで (ウィザードブックシリーズ 133)
アスワス・ダモダラン 山下恵美子
4775970992


by yasukiyoshi | 2008-04-21 10:01 | 種類株式
2008年 01月 09日

IPOに向けた資本政策ー種類株式の利用

東証、無議決権株4月にも上場制度・資金調達多様に
東京証券取引所は、株式を公開していない企業が議決権のない株(無議決権株)だけを上場できる制度を設ける方針だ。早ければ4月からの実施をめざす。創業間もない新興企業などが経営の枠組みを維持したまま成長に必要な資金を調達する手段を増やす。無議決権株は一般的に普通株より配当が高い種類株の一種。上場により一般投資家の選択肢も増えることになる。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080109AT2C0801608012008.html

【CFOならこう読む】
私は新興市場に新規上場する会社の資本政策策定のお手伝いを数多く行っています。資本主義体制化の企業は所有と経営の分離が大前提ですが、資本市場から資金調達しない非公開企業はその限りではありません。同族会社が厳しい規律のもと好業績をあげ続ける事例は数限りなくあります。上場企業の場合は、多数の一般投資家にリスクが分散され、大きなシェアを持たない多数の一般投資家の民意により経営の大枠が決定されるのが基本です。一方新興市場に新規上場する会社の場合、組織的な経営など行われておらず、もっぱらオーナー経営者の実力で上場にこぎつけることができているケースがほとんどでしょう。こういう会社も資本市場には必要です。大きく成長した暁に、結果として所有と経営が分離して行けば良いのです。それまではオーナー経営者が安定した経営権を持って経営に当たることが一般投資家にとっても望ましいと言えます。

ところで新規上場企業の資本政策は、オーナー会社型かVC(ベンチャーキャピタル)型かによって大きく異なります。オーナー会社の場合、過半数の持分を持ったまま上場することが比較的容易です。ところがVC型の場合、上場までに何度かエクイティファイナンスを実行しており、経営者のシェアは過半数ぎりぎりという場合も少なくありません。この場合上場時の公募により経営者のシェアは過半数を下回ることになります。ところが先ほどもお話しした通り、オーナー会社型であろうがVC型であろうが、少なくとも新興市場にいる間は、経営者に安定した経営権を付与しておいた方が一般投資家にとっても望ましい場合が少なくないのです。したがって非公開企業が無議決権株式を上場できるという方向性は正しいと思います。しかしこれが買収防衛策その他誰かの利権を守るために使われることは許されません。東証にはこの点に十分留意した上で制度整備及び運用を行ってもらいたいものです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-01-09 10:40 | 種類株式
2007年 12月 01日

伊藤園の優先株―上場して3ヶ月

伊藤園の優先株軟調に-普通株より3割安く
伊藤園の優先株が軟調に推移している。12月3日で上場から3ヶ月を迎えるが株価は普通株を上回って推移し、値幅も拡大傾向にある。「優先株は議決権がなくても配当が高いという利点があるので普通株と大きな差はつかない」との見方もあったが、普通株に比べて流動性が低いことなどが嫌気されている。優先株は上場初日の9月3日に付けた2850円からはほぼ1本調子で下落。12日には初値と比べ38%安の1760円を付けた。同期間の普通株の下落率(14%)と比較しても下げがきつく、30日の終値も1800円と普通株より3割強安い水準にとどまっている。
(日本経済新聞2007年12月1日 15面)

【CFOならこう読む】
伊藤園の種類株式の価格が普通株の価格を下回っている理由として、市場関係者は流動性の低さを指摘していることが、記事の中で書かれています。非流動性ディスカウントは日本の企業評価実務では、相続税評価上、30%~50%を遣っていることもあり、30%程度見るケースが多いと思います。

米国では、公開企業の譲渡制限株式の公開価格と公開市場外取引価格の統計データやIPOした会社の公開前の株価に関する実証データから算定された非流動性ディスカウントの統計数値が、多くの研究機関から公表されているが、これによると「非流動性ディスカウントは23%~45%とされているが、平均で30%前後のディスカウントが最も多い」(「M&Aの企業価値評価実務」 監査法人トーマツ編 中央経済社)。

日本では非流動性ディスカウントについての明示的な統計資料は今までなかったわけですが、伊藤園の種類株の市場価格は非流動性ディスカウントの実証データとして今後使われるようになるかもしれませんね。

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25935:伊藤園種類株
2593:伊藤園
NKY:日経平均


【リンク】
M&Aの企業価値評価―理論と実務の総合解説
トーマツ

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by yasukiyoshi | 2007-12-01 09:10 | 種類株式