吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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カテゴリ:最適資本構成( 10 )


2008年 12月 29日

ディール・オブ・ザ・イヤー エクイティ部門

ベスト1位はヤマダ電機が2月に発行を決めた1500億円のCB。調達資金の一部を自社株買いにあてる「リキャップCB」と呼ばれる新戦略を市場は評価した。
(日経ヴェリタス2008年12月28日 2面)
【CFOならこう読む】
「CBはあくまでも負債と位置付けている。転換を前提とせず、手元資金で償還する方針だ。」(ヤマダ電機 岡本潤取締役兼執行役員専務 前掲紙)
負債と位置付けたCB発行がエクイティファイナンス部門のベストと評価されること自体、今年のエクイティファイナンスの低調さを象徴しています。
「山田昇・現会長の指示も希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろというものだった。」(岡本専務 前掲紙)
リキャップというより、”金利ゼロ&希薄化回避”の条件をクリアするための解がリキャップCBであったということだったのですね。
私のブログでは2008年2月27日にこのディールを取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7371460)。

そこで私は次のような指摘をしています。
「それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。」
リキャップというのは資本コスト引き下げのために行われる、資本構成の変更のことですが、そのためには負債で資金調達し、この資金で自己株取得をする必要があります。
このCBは最適資本構成を指向するものではなく、ゼロコストのためのCB発行+CBの希薄化効果を排除するための自己株取得=(結果として)リキャップCBであったということです。

それにしても山田会長の「希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろ」という指示は、単純明快で何とも言えず迫力を感じますね。

【リンク】
2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-12-29 08:39 | 最適資本構成
2008年 06月 03日

東芝のDEレシオ

フリーキャッシュフロー 東芝、今期500億円の黒字
東芝の2009年3月期のフリーキャッシュフローは500億円程度の黒字になる見通しだ。前期は756億円の赤字だった。在庫や売掛債権の圧縮などで現金を捻出する。半導体や原子力発電所などを中心に設備投資を増やすが、投資額を上回る現金を稼いで事業拡大と財務改善を両立する。今後3年間でFCFは3000億円の黒字を目標にする。
(日本経済新聞 2008年6月3日 15面)
【CFOならこう読む】
東芝の2010年度の経営目標を次のように設定しています。

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D/Eレシオが2008年度3月期の1.23倍から2010年度には1倍以下に低下させる計画になっています。これに向けて、東芝は4月からキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と呼ぶキャッシュフローを生み出す活動を全社で始めています。5月8日に行われた経営方針説明会でも、今後のフリーキャッシュフローの計画について会社は次のように説明しています。
「戦略投資を継続しながらキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)改善の更なる加速などにより、投資キャッシュフローを上回る営業キャッシュフローを創出し、3年間累計で今後+3,000億円のフリーキャッシュフローとなる計画を立てています。」
具体的には、
・事業部門ごとに在庫や売掛債権の管理を徹底する
・期末に集中しがちな債権の回収時期を期中に平準化したり回収期間を短くしたりするほか、前受金を増やすように顧客と交渉する
・債権流動化の規模を拡大する
・トヨタのジャストインタイム方式を火力発電所など重機部門の工場にも導入する
・高額な資材を必要以上に持たないようにして棚卸資産を圧縮する
といった施策を打つとのことです。

最適資本構成がD/Eレシオ100%であるとの財務的な判断があるかどうかは不明です。資本コスト(WACC)との関係でもう少し突っ込んだ説明が欲しいところです。

なお、上記新聞記事はD/Eレシオを有利子負債に対する自己資本の倍率、と説明していますが、自己資本に対する有利子負債の比率(有利子負債/自己資本)の誤りです。

【リンク】
2008年5月8日「2008年度経営方針説明会」株式会社東芝
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/pr/pdf/tpr20080508.pdf


by yasukiyoshi | 2008-06-03 09:02 | 最適資本構成
2008年 02月 27日

リキャップCBーヤマダ電機のケース

CB1500億円 自社株買い700億円 ヤマダ電、同時に実施
ヤマダ電機は26日、ユーロ市場で新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で1500億円発行する一方、700億円の自社株買いをすると発表した。CB発行で得た資金を自社株買いに充て一株利益を高めつつ資本効率の改善につなげる狙い。CB発行と自社株買いを同時に行う手法は米の有力企業の間で急速に普及しつつある。日本ではヤマダ電機が初めて。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
CBによって調達する1500億円の資金使途を会社は次のように説明しています。
【調達資金の使途】
本資金調達による発行手取金(グリーンシューオプション分を含む。)の資金使途は以下を予定しています。

① 設備投資資金として調達した短期借入金の返済に約800 億円を充当する予定です。
② 自己株式取得資金に約700 億円を充当する予定です。本新株予約権付社債の払込日以前に自己株式を取得した場合、かかる取得資金として調達したブリッジローンの返済に充当する可能性があります。
ヤマダ電機の平成20年3月期第3四半期時点の自己資本比率は42.3%でした。これが700億円の自己株取得により33.7%まで下がることになります。D/E比率で見ると1.36から1.97へ上昇します。最近出版された「日本企業のコーポレートファイナンス」(砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳著 日本経済新聞出版社)によると、格付けは1ノッチ以上ダウンすることになります。節税効果がこの格下げによる資本コスト上昇の影響を上回れば、負債による自己株取得は合理的と言えます。

ただし本件は上の説明のような教科書的な財務戦略を志向したものではない可能性もあります。家電業界は今後M&Aによる再編が予想され、ヤマダ電機はその中心的なプレイヤーと目されています。TOBをかけるにはキャッシュが必要です。そのキャッシュを今回CBで調達したというのが本当の所かもしれません。それをキャッシュのままで持っていると業界他者の警戒心を必要以上にあおり、今後のM&A戦略に影響をあたえることにもなりかねないので、その意図を隠すために一旦金庫株で持つというのは十分考えられるところだと思います。

それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。

そして次のように転換可能性の低い商品設計にすることでエクィティ系の性格を相当程度緩和しているのです。
「時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定することで、発行後の一株当たり利益の希薄化を極力抑制するとともに、転換制限条項(※)の付与により、株式への転換可能性を抑制することで、既存株主に配慮した負債性の高い商品性としております。

※転換制限条項について
株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、投資家が新株予約権を行使できない条項をいいます。本件においては原則として、前四半期の最終30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が転換価額の125%を超えた場合に限って、投資家は新株予約権を行使することができます。ただし、償還期限の6ヶ月前の日以降、いつでも新株予約権の行使が可能となります。」
(2008年2月26日プレスリリース)

【リンク】
平成20年1月31日「平成20年3月期 第3四半期財務・業績の概況」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/kessan/2008/080131.pdf

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf

日本企業のコーポレートファイナンス
砂川 伸幸
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by yasukiyoshi | 2008-02-27 12:57 | 最適資本構成
2007年 11月 27日

キャッシュリッチ企業による普通社債発行―HOYA、堀場製作所のケース

SB発行企業、株価を意識 脱・バリュートラップ目指す
株式相場が不安定な動きを続ける中、株式市場では上場企業がエクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資金調達)を避けて、国内普通社債(SB)による資金調達による資金調達に動いている。国内の公募SBの発行額は 既に昨年を大幅に上回った。これは単なる金利低下を背景とした負債シフトと片づけたくはない。割安株を見つける意外なヒントがあるかもしれない。
(日経金融新聞 20面 スクランブル)

【CFOならこう読む】
この記事は、負債比率上昇による資本コスト低下が、株価を上昇させる可能性があることについて書いています。ファイナンス理論的に言うと、倒産コストとエージェンシーコストを無視するなら、負債比率上昇により支払利息の節税効果が働くので、その分理論株価が上昇します。

記事はHOYAと堀場製作所について次のように書いています。
9月に総額1500億円のSBを発行し、ペンタックスの買収資金に充てたHOYA。HOYAにとって初のSB発行だった。実はHOYAは2007年3月期末時点で1200億円を超える現預金を抱えていた。この現金を充てずに、あえてSBで調達した意図は何か。「07年3月末時点で80%を超えていた連結ベースの自己資本比率を下げる絶好の機会」(広報担当者)とみたからだ。堀場製作所は約6年ぶりのSBを7月に発行した。総資産に占める現預金の比率は前期末時点で約11%超と潤沢だった。やはり狙いは06年12月期末で56%に達する「自己資本比率の引き下げ」(財務担当者)だった。
要するに両社は、負債比率上昇のために潤沢に保有するキャッシュを使用せず、普通社債により資金調達を行ったということを言っているのですが、この記事は明らかな誤謬に基づいて書かれています。この誤謬は企業価値評価を行う場合にもしばしば見られるので注意が必要です。どこが間違っているのでしょうか?

加重平均資本コストはネットデットと株主資本の構成比に基づき計算されます。ネットデット=有利子負債-余剰となっている現預金なので、有利子負債を増やしても現預金を減らしてもネットデットに影響はないのです。

実際HOYAと堀場製作所の過去3ヶ月の株価の推移を見ても両社に共通の傾向は見られません。
(HOYAの株価上昇はペンタックスの買収効果によるものと思われます。)

チャート
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チャート
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つまり当面資本コストを上回る投資機会がないのであれば、自己株取得または配当を行うべきなのです。これにより株主資本が圧縮されネットデットの比率が上昇するので資本コストを引き下げることができるのです。

日経の私の履歴書を今月は野村證券の田淵節也さんが書いておられますが、11月25日掲載分に現野村ホールディングス社長古賀信行氏の次のような言葉が紹介されていました。
「これからの経営は、利益は配当で吐き出し、利益が出なくなったら社長が替わればいいんじゃないか」
最適資本構成という観点からも非常に的を得ていると私は思います。

【リンク】
平成19年10月29日「平成20年3月期 第2四半期財務・業績の概況」HOYA株式会社
http://www.hoya.co.jp/data/current/briefingsubobj-235-pdffile.pdf

平成19年11月13日「平成 19年 12月期 第3四半期財務・業績の概況」株式会社 堀場製作所
http://www.jp.horiba.com/ir/pdf/2007111301.pdf

by yasukiyoshi | 2007-11-27 10:47 | 最適資本構成
2007年 11月 16日

自社株買いによるEVAの改善―花王のケース

花王、投下資本圧縮を加速 自社株買い最大300億円 EVA低下に歯止め
花王が資本効率の向上に再び動き出した。化粧品分野への先行投資や原材料高で収益が圧縮されるなか、自社株買いによって余剰資金を減らし、経営指標とするEVA(経済付加価値)の低下に歯止めを掛ける。EVAは2008年3月期には前期より悪化するが、2009年3月期から上昇トレンドへの回復を目指す。
(日経金融新聞2007年11月15日7面)

【CFOならこう読む】
EVAとは税引後営業利益から投下資本コスト(有利子負債と株主資本コストの合計)を差し引いて算出される金額で、これがプラスなら、投資家の期待リターンを上回る付加価値を生み出したことになります。EVAを増やすには、
① 税引後営業利益を増やす
② EVAがプラスとなる新規投資を行う
③ EVAがマイナスとなっている既存投資案件から撤退する
④ 資本コスト率を引き下げる

の4つの方法があります。

新聞記事によると300億円の自社株買いにより投下資本が圧縮され、EVAが20億円程度改善するとのことですが、この考え方は間違っていると私は思います。

20億円は、300億円に花王の加重平均資本コスト7%を掛けて計算されたものと思われますが、自社株買いをしても投下資本総額は減少しません。投下資本=ネットデット(有利子負債-余剰資金)+株主資本なので、自社株買いの原資が余剰資金でも借入でもネットデットは300億円増加するのです。

投下資本の圧縮によるEVAの改善は上で説明した③のルートを通じて行われます。これには運転資本の圧縮も含まれます。単に自社株買いをしても③の改善効果が生まれないのは当然といえます。

それでは自社株買いによるEVAの改善効果は全くないのかというとそんなことはありません。上の④の資本コストに影響してくるのです。簡単に言うと投下資本の総額が変わらなくても、その構成が資本コストの高い株主資本が減り資本コストの低い有利子負債が増加するというように変化すれば加重平均資本コストが低下するのです。

ただし花王の株式時価総額は1兆7000億円もあるので300億円程度の自社株買いでは加重平均資本コスト率の低減効果は限定的であると思います。

【花王】
「中間連結財務諸表」花王株式会社 平成20年3月中間決算短信
http://www.kao.co.jp/corp/ir/i03/pdfs/2007s/200709_06fs.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-16 09:07 | 最適資本構成
2007年 10月 04日

キヤノン、今期16.7% ROE最高水準に

キヤノンが資本政策を大きく見直している。2007年12月期に初めて自社株買いを始め、すでに4500億円を買い付けた。
業績好調で手元資金が積み上がる中、株主への利益配分を増やし資本効率を改善する。今期の自己資本利益率(ROE)は16.7%と前期比0.4ポイント上昇し、過去最高だった2004年12月期と同水準になる見通しだ。

(2007年10月4日 日経金融新聞7面)

【CFOならこう読む】
サブプライム問題の影響を受け、株価が大きく下がったタイミングで連続して自社株買いを実行しています。キヤノンは業績好調であるため、そのままにしておくと株主資本が積み上がりROEは低下してしまいます。

多くの日本企業は自己資本が充実するのは良いことであると考えますが、資本効率という観点からは当面使う予定のない現金は株主に還元する方が望ましいと考えられます。このような資本政策を採用することにより資本構成を企業の考える最適点に誘導することを可能にします。
ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ(総資産/株主資本)

と分解できます。各財務指標の最近5年間の推移は以下の通りです。
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業績好調なのは良いのですが、その分キャッシュが積み上がり総資産回転率と財務レバレッジが低下していることがわかります。

今期の自社株取得は4,500億円で設備投資額に匹敵する水準です。これだけの自社株買いを実行することにより、総資産回転率及び財務レバレッジの2つの財務数値が大きく改善されるため、その結果ROEが押し上げられることになります。

キヤノンは配当性向についても見直しを行い、従来配当と自社株買いを合わせた総配分性向で30%を目指すとしていたのを、今期からは連結配当性向だけで30%を目標とするとしています。

株主としては自分の手取り分が明確にわかるため配当性向だけで目標値を示す方が望ましいと言えます。

【リンク】
キヤノン株式会社:第106期 有価証券報告書(PDF)
http://www.canon.co.jp/ir/yuuhou/canon2006.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-04 09:00 | 最適資本構成
2007年 09月 19日

4―9月の社債発行、9年ぶり5兆円超・長期金利低下で56%増

米住宅ローン問題を背景に長期金利が急低下した機会をとらえ、機動的に発行する動きが広がった。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070919AT1C1800F18092007.html

(CFOならこう読む)

バブル以後多くの日本企業は時間をかけてバランスシート調整を進めてきました。
バランスシート調整とは、借方サイドに未稼働資産・不良債権を抱え、
貸方サイドに多額の借入金を有する状態から、
収益力の改善、資産の整理・圧縮、借入金の返済を進め、
株主資本比率(総資産に対する株主資本の比率)の上昇を図ることを言います。

バブル期の反動で1990年代は過度にリスクを嫌った時代であり、
ゼロ金利下でも、デット(借入)により新規投資はあまり実行されませんでした。
それが2003年頃になって漸くバランスシート調整が終わり、
企業のリスク許容度が増加したため、デットによる資金調達が増え始めました。

以前にもこのブログでお話ししたように、
サブプライム問題で一時的に信用状態が収縮し、
長期金利が低下している今はデットによる長期資金調達の好機です。

そして財務レバレッジ(負債比率)上昇によるROE上昇を図るチャンスでもあるのです。
MM理論が示すように、デットの節税効果により
財務レバレッジの上昇が資本コストを引き下げます。
資本コストの引き下げは企業価値を押し上げます。

もちろんあるレベル以上にデットの比率を高めると
財務破綻の懸念から資本コストは上昇に転じるのですが、
漸くバランスシート調整が終わったばかりの日本の企業は
まだまだ財務レバレッジを上昇させる余地があります。
財務がしっかりしている会社では、
今後デットによる長期借入+自己株取得(又は増配)により
最適資本構成を目指す動きが加速するでしょう。
そして今は最適資本構成を目指す絶好機でもあるのです。

by yasukiyoshi | 2007-09-19 09:10 | 最適資本構成
2007年 09月 10日

経済小説 『挑戦 巨大外資』 (高杉良 著・小学館)

挑戦 巨大外資 上
高杉 良

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小学館 2007-08-23
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【CFOならこう読む】

珍しくCFOが主人公の小説なので結構期待して読みましたが、単なる立身出世物語で全くの期待はずれでした。
唯一主人公である池田岑行がCFOの役割について主張している場面が印象に残ったのでこれを少し紹介します。
①経理マンは経理マンである前に、ビジネスの目標、マーケティング、経営者の役割などを充分に理解したビジネスマンであるべきだと考える。
②長期的な観点からの利益達成を考え、単にコスト削減に走ると会社を間違った方向へ導くことになる。
③経営者の意思決定に必要な情報の提供こそが、経理の重要な役割であり、経理マンは、経営者が会社全体の観点から、効率的にタイミングよく、正確な意思決定ができるようにアドバイスすることが大切である。
④経理は、それ自体では直接的には利益を産み出すものではないので、経理など間接部門(スタッフ)の組織は、機能する限りにおいて、なるべく小さく、コストのかからないものであるべきだ。
またその組織は硬直的であってはならず、事業の目的によって弾力的に変化しなければならない。

これを読んで私は元ディズニーのCFOゲーリー・ウイルソンを思い出しました。ゲーリー・ウイルソンはアメリカを代表するスーパーCFOであると同時に、ステファン・ボーレンバッハを始め数多くの優秀なCFOを育てたことでも有名です。1990年ハーバードビジネスレビューのインタビューの中で、ゲーリー・ウイルソンは自身を「私は財務の専門家というより、むしろ財務に強い企業戦略家だと思っています」と語っています。

池田岑行とゲーリー・ウイルソンは基本的に同じことを言っているように思います。そしてこれからのCFOにとってこのような意識付けこそが重要なのだと思います。正確に記録し、正しくディスクローズするだけでは足りないということを認識すべきです。

ちなみに、ハーバードビジネスレビューのインタビューのタイトルは、“財務トップは価値創出者であれ”です。
ゲーリー・ウイルソンの創造的財務手法が幾つも紹介されていてなかなか役に立つので、機会があれば読んでみてください。

by yasukiyoshi | 2007-09-10 08:55 | 最適資本構成
2007年 06月 06日

有利子負債伸び率「現金収支」上回る・1―3月法人統計

企業の資金需要が増勢を強めている。財務省の1―3月期の法人企業統計によると、企業の有利子負債残高は458兆9000億円で1年前と比べて6.4%増えた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S0402E%2004062007&g=E3&d=20070605

(CFOならこう読む)

バブル崩壊以後続いてきたバランスシート調整(投資を控え、借入を返済)が一巡し、
企業の投資意欲が旺盛になってきました。
これと連動して長期金利も上昇しています。

長期金利は株価の先行指標と見ることもでき、
日経平均もじわり上昇し、昨日の終値は1万8千円を回復しています。

先日もお話ししたように、CFOとしては為替の動向を読むことが重要です
が、これには定石がありません。
しかし、為替のボラティリティ(変動性)が上昇していくことを
想定したリスクヘッジを検討すべきであろうと思います。

by yasukiyoshi | 2007-06-06 08:44 | 最適資本構成
2007年 05月 31日

日航が商社に増資要請、新型機導入へ1000億超を検討

経営再建中の日本航空が、双日や三井物産、伊藤忠商事など大手商社を引受先に計1000億~1500億円の第三者割当増資を検討していることが30日、明らかになった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070531-00000101-yom-bus_all

(CFOならこう読む)
つい先日も2000億円~4000億円のDES(デット・エクイティ・スワップ)
による資本増強を図るとの報道があったばかり。

今回の増資と併せると、大幅なダイリューションが起きると考えられます。
既存株主を犠牲にし、一体誰の利益を守ろうとしているのでしょうか。

by yasukiyoshi | 2007-05-31 08:19 | 最適資本構成