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2007年 10月 31日

NOVA社長持ち株売り逃げか?

NOVA前社長の持ち株比率低下を発表
会社更生法の適用を申請した英会話学校最大手のNOVAは30日、猿橋望前社長と同氏が実質支配するノヴァ企画が保有するNOVA株の比率が大幅に低下したと正式発表した。両者の保有比率は異動前に71.5%だったが、9月30日時点では19.7%。NOVA側は「経緯などの詳細は確認できていない」として本格調査に乗り出す構え。破綻前の大規模な株式異動に問題がなかったかどうかも今後焦点になりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D3000I%2030102007&g=S1&d=20071030

【CFOならこう読む】
NOVAは、10月10日に発行済株式総数の3倍に相当する新株予約権の発行を発表しています。

第1四半期の業績発表は8月26日、2007年6月末の純資産額は3億5千万円でした(2007年3月末28億2千万円)。貸借対照表項目を詳細に見ると、繰延駅前留学サービス収入(シビレル勘定科目ですね)が2007年3月末時点で長短合わせて255億円であったのが、2007年6月末時点には209億円まで減少しています。

本来負債に計上すべきものの一部を収益に計上することによりギリギリ純資産がプラスの決算を組んだ上で(つまり表面上債務超過でないことを装った上で)新株予約権の発行を決めたとの疑いが持たれているのです。

70%超の株式を保有していた猿橋前社長は、粉飾決算及び新株予約権の大量発行の前に持株を第三者に売却していた可能性があります。当然これだけの株式を市場で売却できず、相対で譲渡していたなら、本来TOBによるべきものをその手続きを欠いたことになり、そうだとすると重大な金商法違反です。

会社は「経緯など詳細は確認できていない」と説明していますが、額面通り受け取ることはできません。その証拠にNOVAは持ち株比率の増減を記載した大量保有報告書を1ヶ月以上提出していないのです。提出できない理由があるから提出していないと考えるのが自然でしょう。

いずれにしても今の日本にとって資本市場をまっとうに機能させることがとても重要です。一般投資家が恐くて近づけない市場しか持たない国がまともな資本主義国家であるわけがないのです。金融庁と証券取引等監視委員会には徹底した調査を望みます。

【リンク】
平成19年10月24日 第三者割り当てによる新株予約権の払込完了のお知らせ(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/yoyakuken_haraikomi_071024.pdf
平成19年10月10日 第三者割り当てによる新株予約権の発行に関するお知らせ(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/shinkabu_071010.pdf
平成20年3月期第一四半期財務・業績の状況(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/gaikyo_h20_1st.pdf
連結貸借対照表 平成19年3月31日現在(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/gaikyo_h19_mar.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-31 08:37 | コーポレートガバナンス
2007年 10月 30日

完全子会社か吸収合併か-HOYA・ペンタックスのケース

HOYA、ペンタックスを吸収合併へ
HOYAは29日、ペンタックスと2008年3月末に合併すると発表した。HOYAは8月にTOB(株式公開買い付け)によりペンタックスを子会社化していたが、経営判断をより迅速に進めるには一体化することが必要と判断した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D29008%2029102007&g=S1&d=20071029

【CFOならこう読む】
HOYAは9月末時点でペンタックス株の90.8%を保有しています。当初、HOYAとペンタックスは合併による統合を目指していましたが、ペンタックス経営陣の内紛もあり、TOBにより経営権取得の後、株式交換によりペンタックスがHOYAの完全子会社となることになっていました。

ところが昨日来年3月末にHOYAがペンタックスを吸収合併するとの再度の方針変更の発表がありました。プレスリリースによるとその理由を次のように説明しています。
ペンタックスの主要事業を強化するためには、経営の機動力や柔軟性が重要であり、ペンタックスの各事業部が、HOYAの他事業部と同等の迅速な経営判断と行動を行うことを可能にし、また経営資源の配分を子会社の小さな枠組みではなく、HOYAグループ全体の枠組みの中で最適化するには、当初計画していた合併による統合が最適であるとの結論に至りました。

極めてまっとうな理由です。

事業統合を完全子会社化により行うのか、吸収合併により行うのかは統合を考える全ての企業が悩むところでしょう。しかしプレスリリースに書かれているような吸収合併の特徴を鑑みると、完全子会社化するメリットはあまりないように思います。

一般的に挙げられるメリットは、
①子会社の独立性を保持する
②子会社が経営陣にモチベーションを与える
③企業文化の異なる会社同士が時間をかけてゆっくりと統合していくための第1段階としてこの形を選択する
④買収リスクが高まっているときに、上場を維持したまま他社の傘に入る

といったところでしょうか。
日本では、③の理由から、持株会社の傘下に入ることも含め、子会社化による統合を選択するケースが多いように思います。

しかしグループとして迅速な経営判断が要求される現代の経営環境下においては、子会社化するよりも合併を選択すべき場合がほとんであるように思います。子会社として統合する方が良いのは、子会社と親会社の間に事業シナジーがほとんどなく、将来的に再上場、スピンオフ等の次の再編を視野に入れている場合に限られると思います。

「とりあえず(・・・・・)一緒になって、時間をかけてゆっくりとひとつになっていきましょう」

という日本的な統合のあり方はもはや通用しないと考えるべきでしょう。
そういう意味でHOYAの朝令暮改的な方向転換を私は支持します。

【リンク】

合併契約に関するお知らせ(PDF)
http://www.pentax.co.jp/japan/news/announce/20071029-02.pdf

Yahoo!ファイナンス:ペンタックス株式会社
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=7750.t&d=c&k=c3&z=m&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-30 08:43 | M&A
2007年 10月 29日

来年度税制改正、法人税下げ実施せず・所得税改革先送り

政府・与党は26日、2008年度税制改正で法人課税の実効税率引き下げと個人所得課税の抜本改革を見送る方針を固めた。法人課税は国際競争力の強化、配偶者控除など所得控除の見直しは共働き夫婦の増加など働き方の多様化に合わせてそれぞれ検討していたが、一体改革を目指してきた消費税増税の結論が出ておらず先延ばしする。税体系の抜本改革は09年度以降になる見通しだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071028AT3S2602S26102007.html

【CFOならこう読む】
結局何もかも先送りですね。一番の問題は、この国の中長期的なビジョンが描けていないことにあります。

ビジョンが共有できていないのに、行政が横の連携をとらず、付け焼刃的に対応しているので、どんどん国の活力が奪われていきます。本気で市場型資本主義へ向かうなら、国を挙げて外資を呼び込む努力をする必要があります。そしてそのためのインフラ(証券市場、会社法、金商法、税法、会計、監査、教育、社会保険等)をしっかり整備する必要があります。

企業価値研究会が狭い了見にしたがって事後の買収防衛策を株主総会の普通決議で導入してよいかどうか議論しても、記事にあるように「日本の実効税率は約40%と主要国の中で高い。産業界は国際競争力が弱まりかねないとの懸念から引き下げを強く求めている」という声に引きずられて法人税率だけ引き下げても、格差問題の是正を図っても全く意味がないのです。これらはすべて一体で議論すべき問題です。

今求められるのは強力な政治のリーダーシップです。
ですが福田さんにしても小沢さんにしてもこの点では全く期待できない、と私は思っています。

by yasukiyoshi | 2007-10-29 08:16 | 税制
2007年 10月 27日

事後の買収防衛策:買収の是非を判断するのは経営者ではなく株主である

敵対的買収者出現後の防衛策、導入ルール検討・経産省研究会
経済産業省の企業価値研究会(座長、神田秀樹東大大学院教授)は26日、敵対的買収者が現れた後に企業が買収防衛策を導入・発動する際のルールづくりに着手した。買収者に手を引かせるため金銭を補償しなくて済むようにするほか、事後の防衛策導入に株主の3分の2の同意(特別決議)は不要とする方向で調整する。来春までに報告書をまとめる方針だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071027AT3S2602J26102007.html

【CFOならこう読む】
事後の防衛策導入に株主総会特別決議を不要とする方向で調整するとのことです。

昨日の企業価値研究会会合では、「特別決議が可能な態勢を目指した株式持ち合いの動きが復活する」との懸念が示され、特別決議は不要との意見が大勢を占めたということです。

しかしこれは程度の問題で、事後的に株主総会の決議(かりに普通決議であったとしても)によりあらゆる買収者を排除できるのであれば、結局経営者は過半数の安定株主作りのために株式持ち合いに走るでしょう。

M&Aの最も重要な効用は、株主価値(企業価値)を創造しない経営者の交替を促すところにあります。だからこそ経営者は規律づけされ、私的に会社の資産を浪費するといったことが厳しく戒められるのです。

今企業価値研究会が考えるべきことは、株主総会の決議が特別決議か普通決議かなどといった皮相的なことではなく、企業価値を創造する買収であれば経営者がどんなに反対しようが株主の意思で実現できる仕組みを作ることだと思います。それには株主総会が長期的に株主価値を創造するか否かにより買収の是非を判断できるように機能させることが絶対に必要不可欠なのです。

第三者割当増資という名のもと実質的に経営者が支配している取締役会の決議により、株主をいかようにも選択できるのなら、いくら株主総会の決議を諮ったところでそれが株主価値の創造、ひいては公共の利益につながる保証は全くないのです。

企業価値研究会などという仰々しい名前をつけているのですから、ぜひともそこにメスを入れてもらいたいと切にお願いする次第です。

【リンク】
企業価値報告書2005年5月27日「公正な企業社会に向けた提案」(PDF)
http://www.meti.go.jp/press/20050527005/3-houkokusho-honntai-set.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-27 09:28 | 買収防衛策
2007年 10月 26日

シティ・日興コーディアルの株式交換比率

英米ファンドが日興株を大量売却、三角合併控え利益確定
日興コーディアルグループの大株主の投資ファンドが日興株の売却を進めている。英系の投資ファンド、オービス・インベストメント・マネジメントが日興株の大半を売却し、持ち株比率が5.30%から0.33%に低下したことが、24日付の大量保有報告書で明らかになった。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071026AT2C2503B25102007.html

【CFOならこう読む】
株式交換比率は12月または1月に、一定期間の平均市場株価に基づき下限37ドル、上限58ドルの間で決定すると10月2日に発表されています。日興株式を売却した英米ファンドは、シティの株価がサブプライム問題の影響から37ドルを割り込むリスクを考慮したものと思われます。ちなみに昨日のシティの終値は41.23ドルでした。

売り手である日興株式の評価を1700円と明確に示した上で株式交換比率の算定をすることとしているので、株主も売り買いの判断ができるのです。

この案件と比較するとキリン・協和発酵の経営陣がいかに株主に対して不誠実であるかよくわかります。

【リンク】
包括的戦略提携の一層化を図る シティ、株式交換にて日興コーディアルグループ全株式を追加取得へ
http://www.nikko.jp/ICSFiles/afieldfile/2007/10/02/071002_2.pdf

CFOニュース:2007年10月03日記事 米シティ、日興を三角合併方式で完全子会社に
http://cfonews.exblog.jp/6562144/


by yasukiyoshi | 2007-10-26 08:46 | M&A
2007年 10月 25日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4

キリンホールディングス傘下入りを決めた協和発酵。キリンHDによるTOB価格は1,500円だが、株価はTOB価格にさや寄せするどころか、発表後に3日連続で下落した。TOB後の新株発行による一株利益の希薄化が強く、市場の評価は芳しくない。なぜ今回の決断を下したのか、展望を含めて山上一彦専務執行役員に聞いた。
(日経金融新聞2007年10月25日7面)

【CFOならこう読む】
まだまだしつこくやります。

23日のコラムで株式交換割当株数に基づくキリンファーマの株主価値を次のように計算しました。
株式交換キリンに伴い発行される株式177,240,000株×TOB価格1500円=2,658億円

この計算は極めて常識的なもので誰にでもわかりやすいと思いますが、実際に会社が行った計算はこのようなものではなかったのかもしれません。

株式を対価としたM&A(合併、株式交換、会社分割等)の場合、売り手の株主価値だけでなく、買い手の株主価値も計算されます。これらの計算は、DCF法、類似会社比較法、市場株価法といった各種の方法により行われ総合的な判断に基づき最終的に比率の決定が行われます。

現金で買収する場合、売り手の株主価値がいくらであるかが明示されるのに対し、比率計算の場合には、両社の株主価値の相対的評価が問題になるので、それぞれの株主価値が明示されないケースも多いのです。100:200でも150:300でも、ともに1:2だから100か150かについては白黒つける必要がないのです。

今回の株式交換比率の決定が、上のように行われたとしたら、比率計算上用いられた協和発酵の株式価値はTOB価格の1500円とは乖離していた可能性が十分にあります。例えば、10月18日の終値1208円を使って割当株数の株主価値を計算すると、177,240,000株×TOB価格1,208円=2,141億円となり、私が20日のコラムで計算したキリンファーマの株主価値2,080億円と極めて近いものになります。

株式交換だけでM&Aが完了するスキームであれば、これはこれでありなのですが、今回のようにTOBと組み合わせて過半数の株式を取得するスキームで、TOB価格が1500円(プレミアムあり)なのに株式交換比率の計算上1208円(プレミアムなし)に基づき比率が計算されていたとするなら、TOBにより株式を売却できない株主は大きな不利益を被ることになります。

キリン及び協和発酵両社はキリンファーマの株主価値をいくらと算定したのか市場に説明する必要があると思います。その上で株式交換比率の計算上、協和発酵株主にプレミアムをどの程度与えているかも合わせて説明してもらいたいと思います。

次の点は重要なので強調したいと思います。

“この件で問題なのはEPSの希薄化ではありません。株価の希薄化が問題なのです。“

【リンク】
協和発酵工業株式会社に対する公開買い付け開始に関するお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_04.pdf

協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の株式交換契約締結のお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_05.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-25 08:44 | M&A
2007年 10月 24日

新株予約権を利用した買収―ウォルマート・西友のケース

米ウォルマート、西友を完全子会社へ・1000億円投じTOB
世界最大の小売業、米ウォルマート・ストアーズは22日、50%超を出資する東証1部上場の大手スーパー、西友を完全子会社にするためTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D220B8%2022102007&g=S1&d=20071022

【CFOならこう読む】
2002年3月に西友とウォルマートは包括業務提携し、その内容は次の通りでした。
業務提携
①日本国内における成長戦略モデルの構築に向けた相互協力(商品調達、IT戦略、販売手法、新店舗の共同開発)

②ウォルマートによる西友の営業力アップと収益構造改革への協力

資本提携
①第三者割当増資
 2002年5月に60億円出資

②新株予約権割当
 新家具予約権の内容
 発行価格:無償
 行使価格:270円(2回、3回は2003年1月1日より、年率5%ずつ上方に修正)
 (1) 第1回
  行使期限:2002年12月27日
  株数:192,800,000株
  この段階でウォルマートの出資比率33.4%、筆頭株主となる。
 (2) 第2回
  行使期限:2005年12月末日
  株数:232,100,000株
  この段階でウォルマートの出資比率50.1%、西友はウォルマートの子会社となる。
 (3) 第3回
  行使期限:2007年12月末日
  株数:471,400,000株
  この段階でウォルマートの出資比率66.7%となる。


ウォルマートは日本市場という経験のない市場に参入するに際し、初期投資額を最小限に抑え、かつ追加投資と子会社化する権利を温存するために段階的に新株予約権を行使する手法を選択しました。

これは当時いつでも撤退することができるようしたものと解釈されていましたが、今考えると投資額を最小限に抑えるために新株予約権でリスクヘッジした上で、この買収をやりとげるというコミットメントを示したものだったのかもしれません。

実際第1回の新株予約権は行使されたものの、第2回の新株予約権は行使されていません。しかしウォルマートは西友に対し出資を継続し、現時点で50.9%の持株比率を保持しています。22日に行われた記者会見でもウォルマート副社長ブレット・ビックスは“コミットメント”という言葉を効果的に使っているのが印象的でした。

ウォルマートが採用した新株予約権を活用したM&Aは、未知の市場でM&Aを考えている全ての企業が選択肢のひとつとして検討すべきものになると私は思っています。

【リンク】
Yahoo!ファイナンス:株式会社西友
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=8268.t&d=c&k=c3&a=v&p=m130,m260,s&t=5y&l=off&z=m&q=c&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-24 09:11 | M&A
2007年 10月 24日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その3

協和発酵株続落、TOB価格乖離広がる
協和発酵の株価は1500円に設定されたTOB価格にさや寄せせず、下落が続く異例の展開になっている。23日の終値は前日比58円(4.2%)安の1320円。22日午前の正式発表後2日連続で下がり、TOB価格との差は180円に開いた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2308G%2023102007&g=S1&d=20071023

【CFOならこう読む】
協和発酵株の昨日の終値はTOB価格よりも1割以上安い1,320円でした。これは一株当たり利益(EPS)の希薄化懸念というより、株価の希薄化懸念を市場が示しているととらえるべきです。これはすなわち株式交換により発行される協和発酵株の株数が、キリンファーマの株主価値に見合わないと市場は評価していると解するべきです。

ちなみにキリンの財務アドバイザーはJPモルガン、メリルの財務アドバイザーはメリルです。こういうディールを主導するアドバイザーの名前は良く覚えておきましょう。

【リンク】

Yahoo!ファイナンス:協和発酵工業株式会社
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=4151.t&d=c&k=c3&z=m&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-24 09:07 | M&A
2007年 10月 23日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その2

キリンが買収発表・協和発酵にTOBへ
キリンホールディングスと協和発酵は22日、キリンが協和発酵を傘下に収めることで合意したと正式発表した。キリンが31日からTOB(株式公開買い付け)を実施し、協和発酵の株式を1株1500円で27.95%(1億1157万8000株)取得する。最終的に2008年10月、協和発酵とキリンの医薬品事業を統合する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F2200D%2022102007&g=S1&d=20071022

【CFOならこう読む】
22日に書いたコラムを訂正しなければなりません。

希薄化が生じてしまいそうです。私は20日のコラムでも書いたように、キリンファーマの株式価値を2,080億円と算定しました。ところが昨日発表された株式交換比率(統合は2008年4月に株式交換によりキリンファーマを協和発酵の完全子会社とし、2008年10月に合併するという2段階で行われる)に基づき計算すると2,658億円になります。

(株式交換キリンに伴い発行される株式177,240,000株×TOB価格1,500円=2,658億円)

逆にいうと協和発酵は1株1,173円の大幅な有利発行でキリンファーマを取得することになります。

この比率による株式交換が協和発酵の株主総会特別決議により承認されるかどうかわかりませんが、少なくとも有利発行決議の瑕疵または不公正発行の訴えが株主からおこされる可能性は十分にあると思います。

まあ交換比率に不満があり、希薄化を確信している株主はTOBに応ずるでしょうから、上で述べたような問題は顕在化しない可能性もあります。というか、多少問題のある交換比率の方がTOBの成功可能性は高まると考えているのかもしれませんね。

【リンク】
協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の株式交換契約締結のお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_05.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-23 08:55 | M&A
2007年 10月 22日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?

キリン、協和発酵買収で22日合意・来週から友好的TOB
キリンホールディングスは東証一部上場の医薬品大手、協和発酵を買収することで同社と22日に基本合意する。友好的TOB(株式公開買い付け)を来週実施し、協和発酵の株式を取得。さらにキリンの医薬品子会社と合併させ、協和発酵を連結子会社にする。少子高齢化や医療費抑制などで経営環境が急激に変化する中、食品・医薬品業界でもM&A(合併・買収)戦略が活発になりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071022AT2F2100C21102007.html

【CFOならこう読む】
今日の日経金融新聞が1面で、次のように協和発酵のEPSの希薄化の懸念について論じています。
現時点ではキリンHDが友好的TOBで協和発酵株を取得、その後傘下の医薬品子会社キリンファーマと合併させる案が検討されているようだ。協和発酵は上場を維持、キリンHDは合併新会社の50%超の株式を持つ方針だ。ただこの方式が一部に不安を抱かせている。関係者の脳裏をよぎるのが2002年、中外製薬がスイス製薬大手ロッシュの傘下に入ったこと。
ロッシュは中外薬にTOBをかけたが取得したのは約10%。その後ロッシュに対する第三者割当増資、ロッシュ日本法人と中外薬の合併で持株比率を50%超に高めた。この過程の新株発行で発行済株式数が急増、大幅な一株利益の希薄化が発生し、急騰していた中外薬株は発表前の水準まで逆戻りした。
今回キリンHDが仮にTOBプレミアムを高く設定しても、その後の協和発酵とキリンファーマの合併比率次第で同じことが起これば…。19日の市場で協和発酵株がストップ高の1,402で値を付けながらその後、一時1,359円まで下落したのは「第二の中外になるかもという投資家の不安」(大手投信)を物語る。

私はこの指摘は的外れであると思います。

まず第一に、M&Aおいて希薄化が生じるかどうかは買い手の立場で論じられるべきです。M&Aの通貨として自社株を使用する合併や株式交換の場合にEPSの希薄化が生じることがあります。しかし今回のキリン・協和発酵のケースでは、買い手であるキリンは、キャッシュと子会社であるキリンファーマ株式を対価として協和発酵株を取得するので、キリンに新株発行はなく、キリンHDにEPSの希薄化は生じません。

第二に、協和発酵についてEPSの希薄化が生じるリスクですが、これはTOBで思った以上に株式が取得できず、協和発酵がキリンに対して第三者割当増資がある場合と協和発酵がキリンファーマを吸収合併するときの2回の局面である可能性があります。しかし前者はTOB価格の適正性の問題で、価格が協和発酵株主にとって魅力的であるなら、目標とする株式数を取得できるでしょうし、それができないなら協和発酵株主はキリンによる経営権取得を拒否したことになるので、無理に第三者割当増資を行うなら不公正発行に該当する可能性があります。つまりEPSの希薄化うんぬん以前の問題として法的に問題が生じる可能性出てくるのです。

後者の場面ではキリンファーマの株式価値と等価な協和発行株式が新規で発行されるなら株価に与える影響はないはずです。つまりおかしな合併比率で合併しない限り、EPSの希薄化が問題になることはないのです。仮に協和発酵に不利な合併比率で合併することになったなら(この場合希薄化が生じます)、その合併比率について有利発行の問題が生じるので、そのような比率で合併を行うことは極めて困難であると言えます。

以上の理由から、キリン・協和発酵のケースで希薄化について現時点であれこれ言うのは間違っていると思うのです。ところでより根源的な問題としてM&AによりEPSが希薄化するのは悪いことなのでしょうか?

M&Aといえども買い手にとってみれば新規投資の一形態にすぎません。投資の意思決定は、その投資が付加価値を生むかどうかにより判断されます。この新たに創造される付加価値と同じ価値の買い手株式が新たに発行されるならそのM&Aは株価には中立です。

したがってこの意思決定メカニズムには来年や再来年のEPSがどうなるかは全く無関連なのです。EPSの希薄化が何故嫌われるかというと、EPS×PER=株価の等式があまりに浸透していて、しかもPERが定数であるかのような誤解があるので、EPS↓⇒株価↓になってしまうという固定観念が一般にあるからです。しかし、今説明したように創造される付加価値と新規の発行株式数との関係で株式価値が先に決定するので、PERは逆算で後から決まるだけなのです。

したがってEPSの希薄化自体をM&Aの意思決定の場面で問題とするのはナンセンスであるのです。
問題とすべきは株価の希薄化が生じるかどうかです。

by yasukiyoshi | 2007-10-22 08:55 | M&A