吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 12月 29日

財務担当役員が選ぶ今年のニュース

主要企業の財務担当役員に2007年に印象に残ったニュースを選んでもらったところ、「米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン問題)が大差でトップとなった。世界の景気の悪化から業績への影響を懸念する声が多く出た。直接的な業績への影響が大きいことから、史上最高値を付けた「原油高」への関心も高かった。
(日本経済新聞2007年12月29日)

【CFOならこう読む】
時価総額上位100社のCFOが選んだ今年のニューストップ5は以下の通りです。
1位 サブプライム問題をきっかけに信用不安から連鎖株安が発生
2位 安倍首相突然の辞意表明、福田内閣発足
3位 第21回参院選で民主党が第一党に
4位 原油価格が最高値更新、ガソリン価格が1リットル150円台に突入
5位 東京高裁がスティールを「乱用的買収者」と認定、ブルドック防衛策が発動

これってCEOに聞いてもほとんど同じ回答になるのではないでしょうか?
20位までの中に、伊藤園による種類株発行、長期金利が2%に迫る、日本の会計基準が2011年までに国際財務報告基準(IFRS)と共通化、キリンの協和発酵買収といったニュースが20位までに出てきません。

こういう調査結果を見ると日本にはまだまだプロのCFOが少ないことがはっきりとわかります。しかしそのことはスーパーCFOを目指す皆さんにとっては朗報です。ライバルが少ない今のうちに、来るべき市場型資本主義の時代に備え爪を磨き牙を研いでおきましょう。

そして私のブログがそんな皆さんにとって少しでも有意義なものであるように来年も頑張って更新を続けたいと思います。
今年の更新は今日でおしまい、年初は4日にスタートします。それでは皆様良いお年をお迎えください。

by yasukiyoshi | 2007-12-29 10:31
2007年 12月 28日

元ソリッドグループホールディングスの親会社、ソリッドアコースティックス社破

12面体スピーカーのソリッドアコースティックス、破産手続き開始決定
帝国データバンクによると、東京地裁は12月26日付けで、オーディオ機器メーカーのソリッドアコースティックスに対し、破産手続きの開始を決定した。負債は2007年3月期末時点で約340億6700万円。
12面体スピーカーの製造販売を手掛けるオーディオメーカーだったが、投資事業に進出。ライブドア子会社だった中古車販売のカーチス(現ソリッドグループホールディングス)を傘下にした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071227-00000051-zdn_n-sci

【CFOならこう読む】
ソリッドグループホールディングス社(SGH 元ライブドアオート)は今年1月にソリッドアコースティックス社(SA)の傘下に入ったのですが、このときSA社は買収資金150億円をリーマン・ブラザース(LB)から調達しています。LBは、融資の際、SH株過半数の売却権とSGHの保有する現金120億円を担保にとっています。

SA社はキャッシュマネジメントシステム(グループ企業のキャッシュマネジメントを効率的に行うために余剰資金を親会社に集中するシステム)によりSGH社の保有するキャッシュ120億円がLBに預託されました。要するにレバレッジド・バイアウトであったわけですが、このスキームではLBへの残債30億円をSGHのキャッシュフローにより返済するのが困難であり、何らかの事情により当初のプランニング通りのスキームが実行できなかったとも考えられます。

未上場会社が上場会社の親会社となることには相当の制約があり、また未上場の親会社と上場子会社が合併することも容易ではありません。これをSA社は読み違えたのかもしれません。
いずれにしてもSGH社株式は、TOBにより商工ローン最大手SFCGの大島健伸社長の資産管理会社ケン・エンタープライズの所有するところになりました。

12月12日(http://cfonews.exblog.jp/6930644/)にも書きましたが、東証の適時開示規則によると上場会社の非上場の親会社がTOBを開始した場合、その上場会社もそのTOBについて開示することが要求されています。しかし少なくともSFCGのホームページ(IR情報)にはこのTOBに関する記載はありません。

【リンク】
「12面体スピーカーのソリッドアコースティックスが破産-「不当な資産奪取」を理由に関連会社が破産申し立て」AV Watch
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20071212/solid.htm


by yasukiyoshi | 2007-12-28 09:35 | M&A
2007年 12月 27日

日本、世界の10%割る・06年の名目GDP

2006年の世界の名目国内総生産(GDP)に占める日本の割合が9.1%となり、24年ぶりに10%の大台を割り込んだことが判明した。ピーク時の1994年と比べて半減。国民1人当たりの名目GDPでも順位を下げた。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071227NT003Y12126122007.html

【CFOならこう読む】
上の記事を受けて3面には次のような記事があります。
「日本が見習うべきはかつて「英国病」と言われ、経済の停滞が著しかった英国だ。サッチャリズムで始まった規制改革、民営化、労働市場改革は労働党のブレア政権にも引き継がれ、潜在成長率の引き上げに結びついた。一人あたりGDPは2004年に24年ぶりに日本を抜き、その後も水をあけている。」
                  
いわゆるウィンブルドン現象です。1986年サッチャー政権は、「ビッグバン」と言われる金融分野における規制緩和を実施し、シティには外資系金融機関が進出し、激しい競争が発生しました。その結果イギリスのマーチャントバンクはほとんど姿を消し、国籍を問わず実力のある金融機関のみが生き残るという厳しい環境がイギリスの金融業を成長させ新たな雇用を創出しました。

下表からわかるように2005年のイギリスの外資の比重はGDP比で36.6%に達しています。これに対し日本はわずか2.2%に過ぎず、資本のグローバリゼーションの潮流から完全に取り残されていることがわかります。

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野口氏は「日本は、「外国資本に対して鎖国している」といわれても反論できない状態になっている、と指摘しています。

実際に昔から日本企業は外資を極度に恐れるところがあります。ブルドックのような中堅企業の買収があれだけ話題になったのもその現れでしょう。しかしそのこと自体単純に否定するのも間違いであるように思います。日本人は組織への帰属意識が非常に強い民族です。日本国に殉ずる民族なのです。しかし今我々はその意識を変革することが求められているのです。日本国という狭い了見ではなく、地球規模で考えることが日本人一人一人に求められているのです。


【リンク】
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄

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by yasukiyoshi | 2007-12-27 10:26 | 資金調達
2007年 12月 26日

松下・キヤノン・日立提携発表

薄型パネル3社提携合意・松下など、25日発表
松下電器産業とキヤノン、日立製作所の3社は24日、薄型パネルでの包括提携に基本合意した。中小型液晶パネルを製造し、次世代パネルの有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)を開発する日立の子会社に松下とキヤノンが今年度内をめどに出資する。3社社長が25日に都内で記者会見を開き発表する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071225AT1D2401S24122007.html

【CFOならこう読む】
提携という穏やかなプレスリリースになっていますが、実態は日立からキヤノン・松下への液晶事業の売却です。売却は2段階のステップにより行われます。まず2008年3月末までに日立が全額出資する中小小型液晶子会社、日立ディスプレイズ(日立DP 現在日立の100%子会社)の株式を24.9%ずつ松下とキヤノンが取得します。

さらに来年度に日立DPの株式の過半をキヤノンが取得、さらに日立、松下、東芝が共同出資する大型液晶製造会社IPSアルファテクノロジー(IPS)の経営権を松下が握ることになっています。ここで何故2段階のステップを踏む必要があるのかが少し疑問に思えます。その理由としては次のようなことが考えられます。
①日立DPのデューデリジェンスを年度内に完了することが困難なこと
②年度決算への影響を極力小さくするため 2008年3月末時点の日立の日立DPへの持分を50.2%とするというのは、少なくとも当年度は連結子会社として決算を組むという意思の現れです。
③IPSの資本再編と同時に完了させる必要があるが、年度内の完了は困難であること
特に②に関してはのれんの影響を考慮したことも考えられます。例えば第4四半期の利益とのれん償却費を予測し、当年度中の株式移動の規模を決定した等です。

いずれにしても短時間で会計、税務、法務のビジネスプランニングを行ったものと思われます。今後こういったM&Aのビジネスプランニングを社内で完遂する能力がス全ての上場会社に求められるようになると思います。

【リンク】
2007年12月25日「液晶ディスプレイ事業における日立、キヤノン、松下の基本合意について」 株式会社日立製作所・キヤノン株式会社・松下電器産業株式会社
http://web.canon.jp/pressrelease/2007/p2007dec25j.html

「東芝、液晶パネルでシャープと提携・松下-日立連合を離脱」IT+PLUS
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AS1D200CR%2020122007



by yasukiyoshi | 2007-12-26 08:26 | M&A
2007年 12月 25日

ROEは経営効率の指標となりうるか

英運用会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ(運用資産230億ドル)が日本企業への投資を増やしている。大量保有報告書で明らかになっただけで岩手銀行や常陽銀行、マツモトキヨシなど20社を超える企業の大株主として登場。創業者で会長のスティーブン・バット氏に聞いた。
(2007年12月25日 日本経済新聞5面)


【CFOならこう読む】

オートバックスセブンのCBの発行差し止めの仮処分申し立てで一躍有名になったシルチェスターのバット会長のインタビュー記事です。
―日本企業への注文は?
「一般株主を意識した経営を求めている。その面で日本企業は課題もある。例えば自己資本利益率(ROE)の低さ。過去35年間の世界の上場企業の平均は12%。日本企業も最低10%は必要だ。有効な投資先がないのなら、手元資金は配当などの形で投資家に配分すべきだろう」

ROE(Return on Equity)とは、当期純利益/株主資本と定義され、企業が株主資本を活用している効率性の度合いを表わす尺度です。経営上最も重要な指標は”株価”ですが、”経営上の意思決定が株価にどのような形で反映されるかが正確に特定しにくい”(ファイナンシャルマネジメント〔新版〕 59ページ)ため、株価との相関が高く、指標の分解を通じ価値の創造を現実的な財務目標に落とし込むことができるROEが経営のツールとして米国の実務では広く使われています。近年日本でもROEを業績評価の尺度として採用している企業が増加しているように思います。

ところでROEについて、多くの学者は次のように批判しています。
①単に借入を増やすことでROEが改善されることになる。
②ROEは利益にのみ焦点を当ててリスク要素を無視している。
③ROEの分母・分子とも会計上の数値なので、採用する会計処理方法によって大きく影響を受けることがある。
例えば野口悠紀雄氏は”ROEは経営効率の指標にならない”(「超」経済脳で考える 150ページ)しかし、”これまでROEが極端に低かった日本の状況では、以上の点を根拠にROEの問題点を強調することはあまり意味がないと思われる。むしろ、ROEの問題点を正しく認識しながらも、ROEの意義を理解することのほうがより重要であろう。”(経営財務入門 〔第3版〕 523ページ)と言ってよいと思いますし、多くの日本企業は徹底的にROEを意識することで大きく経営効率の改善が図れると思います。

【リンク】
新版 ファイナンシャル・マネジメント ― 企業財務の理論と実践
ロバート・C・ヒギンス グロービス・マネジメント・インスティテュート

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by yasukiyoshi | 2007-12-25 11:48 | 業績評価
2007年 12月 22日

製薬大手 株主配分、高水準続く

製薬大手の株主配分が2008年3月期も高水準を維持しそうだ。大手4社の2007年3月期の株主配分総額(配当金と自社株買いの合算)は4社合算純利益を上回ったが、今期も9月中間期で通期予想純利益の半分弱を株主に配分、通期では利益のほとんどを株主に返すペースが続いている。業績好調で潤沢な手元資金がさらに積み上がりかねない状況の中、自己資本利益率(ROE)など資本効率の悪化を防ぐのが狙いだ。
(2007年12月22日 日本経済新聞15面)

【CFOならこう読む】
同じ買収リスクにさらされている製鉄会社の最近の動きと比較すると面白いですね。M&Aが市場型資本主義において不可欠である理由は、経営資源がより効率的に経営されるような資源配分の効率化を促すからです。

希少な資源を効率的にマネジメントできない経営者の手から剥奪し、より効率的にマネジメントできる経営者に移動させることによって社会全体の富が増大すると考えられているのです。ですから買収されたくない経営者(ほぼ全ての経営者)は、他者よりもより効率的に経営する他ないのです。資本の観点から言うと”資本効率の悪化を防ぐ”ために余剰資金を株主に還元することが重要なのです。

ハーバード大学のとても著名な教授Michael C. JensenがM&Aについて、次のように言っています。M&Aの本質を極めて的確についていると思うので紹介します。
「経済的な分析と証拠は、テイクオーバー、LBO、そして企業再構築が、過去20年間において、主要な競争的変化に経済が適応するのを助ける、重要な役割を果たしてきたことを示している。代替的な経営チーム及び企業資産をコントロールするための組織構造の競争は、莫大な経営資源が、より素早く、最も有効活用される場所に移動することを可能にした。その過程において、株主だけでなく経済全体に対しても、かなりの利益が生み出された。1977年から88年の12年間における合併、買収、レバレッジド・バイアウト、及びその他の企業再構築による売手企業の株主の全体的な利益は、合計5000億ドル以上に達した。私は、同期間における買手企業の株主の利益が、少なくとも500億ドルになると推定する。これらの利益は、同時期に企業セクター全体で、投資家に対して支払われた現金配当合計額の53%に等しい。 合併と買収は、企業の方向性あるいは資源の利用について、戦略的な変化を求める新技術あるいは市場状況に対する、一つの反応である。既存の経営陣と比べて、新たなオーナーはしばしば、既存の組織構造の主要な変更をよりうまく実行できる。あるいは、レバレッジド・バイアウトは、経営陣に対する起業家的インセンティブを生み出すことと、大きな公開企業に内在する機動性を妨げる集権的官僚的障害を取り除くことにより、組織的変化をもたらす。
 経営陣が組織の実質的所有権を持つ場合、企業のフリー・キャッシュフローの支出に関する、株主と経営陣の間の利害衝突は軽減される。経営陣のインセンティブは、株主価値を無視して帝国を築くことよりも、企業価値を最大化することに焦点が絞られる。最後に必要となる負債の返済が、経営陣の配当支払に関する裁量と現金を過剰保有する傾向に置き換わる。こうした効率性の実質的な向上が生み出されるのである。」
(コーポレートファイナンスの原理 〔第6版〕 Stephen A. Ross他 1210ページ)

買収されないように入り口を閉じる会社と、買収されないようにさらなるROEの向上を目指す会社、どちらが資本主義経済における本質と合致しているか明らかだと私は思います。

【リンク】
「新日鉄・住金・神鋼、株式の相互追加取得を発表」日経ネット
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D190AZ%2019122007&g=S1&d=2
0071219


コーポレートファイナンスの原理 第7版
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by yasukiyoshi | 2007-12-22 11:24 | M&A
2007年 12月 21日

委任状争奪戦ーイオン・CFSのケースその3

CFS、イオンに反論する意見書発表
調剤薬局アインファーマシーズとの経営統合を目指すCFSコーポレーションは20日、統合阻止を目指すイオンに対して反論する意見書を発表した。統合を諮る1月22日の株主総会に向けて、イオンは17日からCFS株主に、統合反対を呼び掛ける委任状勧誘を始めており、これに対抗する狙いだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2008H%2020122007&g=S1&d=2
0071220

【CFOならこう読む】
12月17日にイオンが行ったCFS・アイン統合反対の記者会見の中で示された疑問点について20日CFSは文書により反論を行いました。複数ある論点の中でCFS株の評価の問題が最大の論点でしょう。しかし両社の議論はどうもちぐはぐでうまく噛み合っていないように感じます。

イオンが「CFS 1株の価値を800円以上と考えている。アインファーマシーズとの経営統合では、CFS 1株の株式価値を約500円と評価している。」と指摘する点についてCFS側は次のように反論しています。
⇒ 株式移転比率の検討には、アインファーマシーズ株式の評価が不可欠です
本件統合における株式移転比率(以下「本件株式移転比率」といいます)の決定に際して、当社は、様々な手法を用いて当社普通株式の1株当たりの理論価値を算出し、また同様の手法によりアインファーマシーズの普通株式の1株当たりの理論価値を算出した上で、両社の普通株式の1株当たりの理論価値の比率のレンジを算定し、本件株式移転比率を決定しました。しかし、当社の法律顧問に確認したところ、本件株式移転比率の決定過程で当社自身が算出した当社普通株式の1株当たりの理論価値を対外公表すると、当社経営陣が、上場会社である自社の将来株価の予想値を対外的に公表することとなり、金融商品取引法157条第2号への違反を問われるおそれがあります。従って、イオンが主張する当社株価の絶対水準に対して、当社が算定した当社普通株式の1株当たりの理論価値を当社が提示することができないことは、上場会社であるイオンもよく承知されているものと考えます。

なお、当社が算定した当社普通株式の1株当たりの理論価値には一定のレンジがあり、イオンが主張するように、当社が当社普通株式の1株当たりの理論価値を「アインファーマシーズとの経営統合では、約500円と評価」しているわけではありません。理論価値にレンジが生じるのは、通常の経営統合案件における極めて一般的な事象であり、多数の経営統合案件等を実施しているイオンもよく承知されているものと考えます。

上記二点を踏まえ、当社は、イオン書面には、他の当社株主の皆様の誤解を生じさせる以下の問題点が含まれていると考えます。

(1) 本件株式移転比率が当社株主に不利とイオンが主張するならば、イオンが想定する将来収益を踏まえたアインファーマシーズ普通株式の1株当たりの理論価値と、同じくイオンが想定する将来収益を踏まえた当社普通株式の1株当たりの理論価値を比較して株式移転比率を試算したうえで、本件株式移転比率の妥当性を議論すべきだと当社は考えます。平成19年12月13日付のプレスリリースにおいても指摘しましたとおり、イオンは、自らが予想した当社の将来収益を踏まえた当社普通株式の1株当たりの理論価値を800円以上と算定していますが、自らが予想した当社の将来収益を踏まえたアインファーマシーズ普通株式の1株当たりの理論価値は一切提示していません。

(2) イオンは、アインファーマシーズ普通株式の1株当たりの理論価値として本件統合公表前日のアインファーマシーズの市場株価(すなわち2,100円)のみを取り上げる一方で、同株価に株式移転比率を調整して算出した当社普通株式1株当たりの価値(すなわち504円)を算出しています。その上で、アインファーマシーズの一時点の市場株価に基づく当社株価(すなわち504円)と、自らが予想した当社の将来収益を踏まえた当社普通株式の1株当たりの理論価値を比較した上で、本件株式移転比率があたかも当社株主にとって不利な条件で決まっているかのような印象を与える主張を行っています。これは、本来性質が異なるために単純に比較できない二つの数字を敢えて組み合わせることにより、当社株主に誤解を生じさせるおそれがあるものです。
従って、イオンの主張は、本件株式移転比率の妥当性を議論する上での土台が整っていない不完全なものと考えざるを得ません。


「【イオン書面に関して弊社の主張及び見解を正しくご理解いただくために】」株式会社CFSコーポレーション
http://www.cfs-corp.jp/corp/topics/pdf/press071220_2.pdf

臨時株主総会で問うべきは、CFS経営陣は何故CFSがアイン傘下に入ることがイオングループにとどまるより有利であると判断したのか、そしてCFS株式の評価額はいくらであるとアインと合意しそれを何故CFS経営陣は妥当と考えたのか、ということをCFS株主に説明した上で、CFSの株主がアイン傘下に入ることを選択するかどうかということにあります。

CFS側は株式の評価について、統合比率の妥当性という観点から反論を行っていて、CFS自体の株式評価額の開示を拒否していますが、株主にとっての最大の関心事は、CFSがいくらで売却されるのかにあります。このことはM&Aのスキームが株式交換だろうがTOBだとうが同じことです。
売却額(評価額)を明らかにした上で次に対価の妥当性(アイン株式の評価)について説明する責任がCFS経営陣にはあります。これらの説明責任を果たさず、イオン側にアイン株式の評価の提示を求めるのは全く理屈が通っていないと私は思います。

一方イオン側にも問題はあります。委任状勧誘を行うのであれば、CFSがイオングループにとどまることが有利であることを株主に訴える必要があります。そこでのポイントは結局のところ株価です。800円が理論株価であると言うならその根拠をもっと明確に示すべきだし、それを実現していく覚悟を一般株主に説明する必要があります。そしてそれを実現していくために持分比率をあげていく必要があるのかないのかについても明確にする必要があると思います。

つまり今はバリュエーションのコンテストの局面なのです。判定するのはもちろん株主です。この点本件をシティ・日興の三角合併と比較すると私が言っていることがわかって頂けるでしょう。
議論が噛み合わない理由は、CFS経営陣もイオン経営陣もCFSという会社が自分のモノだと思っているところにあるのだと私は思います。一般株主(少数株主)にとっての価値創造という視点を両陣営が持てば議論がもう少し噛み合ってくると思います。そういう視点を持てば焦点はCFSの株価ということに自ずとなるのですから。

【リンク】
平成19年12月20日「イオンによる経営統合議案反対表明に対する当社の意見」株式会社CFSコーポレーション
http://www.cfs-corp.jp/corp/topics/pdf/press071220_1.pdf

「【イオン書面に関して弊社の主張及び見解を正しくご理解いただくために】」株式会社CFSコーポレーション
http://www.cfs-corp.jp/corp/topics/pdf/press071220_2.pdf

平成19年10月2日「株式交換についての基本契約書締結に関するお知らせ」株式会社日興コーディアルグループ
http://www.nikko.jp/ICSFiles/afieldfile/2007/10/03/071002_1.pdf



by yasukiyoshi | 2007-12-21 14:07 | M&A
2007年 12月 20日

社員に自社株贈与ーテクノアルファのケース

新興企業の間で、創業社長が報酬の一環として保有する自社株を社員に無償で譲渡する動きが相次いでいる。株価や業績に対する社員の意識を高めながら、社員に報い、優秀な人材をつなぎとめる狙い。昨年の法改正でストックオプション(株式購入権)の評価額を費用計上する必要が生じ、負担の重い新興企業がストックオプションを利用しにくくなったことが背景にある。
(日本経済新聞2007年12月19日 16面)

【CFOならこう読む】
テクノアルファのケース
松村勝正社長が保有する自社株を2008年1月31日付で社員に無償で譲渡する。
社歴10年未満で、今年12月1日から2008年1月末の間に在籍する社員18人が対象。譲渡総数は33株。上場前に株式を取得した人には1株、しなかった人には2株を付与。18日終値ベース(31万8千円)で計算した譲渡総額は1049万円。

税法上の取扱いが気になるところですが、個人間売買により株式を譲渡した場合、時価よりも譲渡代金が低くても、課税対象となるのは実際の譲渡代金であり、時価で課税されることはありません。一方譲受人には贈与税が課税されます(「M&A実務ハンドブック第3版」 鈴木義行編著 中央経済社)。

無償譲渡を受けた者が、その対価と株式の時価に相当する金額を、譲渡人から贈与によって取得したものとみなされ、納税の義務を負うことになります(「租税法第11版」 金子宏著 弘文堂 488ページより)。
ただし贈与税には基礎控除が110万円あるので(平成19年4月1日現在法令等)、譲渡された株式の時価がこれ以下であるなら贈与税は課税されません。

したがってテクノアルファの場合、18日終値ベースで計算する限り、無償譲渡を受けた社員に対し贈与税の課税は生じないものと思われます。

【リンク】
「 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」国税庁
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm

M&A実務ハンドブック―会計・税務・企業評価と買収契約の進め方
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法律学講座双書 租税法 第12版 (法律学講座双書)
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by yasukiyoshi | 2007-12-20 08:20 | 税制
2007年 12月 19日

証券税制ー民主税制大綱原案

民主税制大綱原案、法人税率下げを明記
民主党税制調査会(藤井裕久会長)が年内にまとめる2008年度税制改正大綱の原案が明らかになった。法人税について「租税特別措置(租特)の抜本見直しを進める一方で法人税率を引き下げる」と明記。寄付税制を大幅に拡充し、公益事業を担う団体への寄付に関して所得税額の4%を上限に税額控除できる措置の新設も盛り込んだ。総所得の40%を上限に所得控除できる現行制度との選択制とする。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071218AT3S1702917122007.html

【CFOならこう読む】
何度かお話ししている通り、株式譲渡益と配当の税率が異なるのは全く理論的ではありません。

コーポレートファイナンスでは自己株取得と配当では企業価値には無差別です。だからこそ、それぞれの企業の成長ステージ及び資金需要にしたがい、安定配当するか、無配でいって将来のキャピタルゲインで株主に報いるかを決めればよいのです。

ところが、株式譲渡益と配当の税率が異なると、本来無差別であるべきものがそうでないことになり、企業の財務戦略に大きな足枷がはめられることになるので、差異を設けるべきではないのです。

この点は保守だろうがリベラルだろうが同じことです。来たるべく市場型資本主義の時代に向けて企業価値創造をめぐり厳しい競争に勝ち抜かなければいけない企業の財務行動に不必要な制約を課すのは政官ともに差し控えて頂きたいと心からお願いする次第です。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2007-12-19 09:00 | 税制
2007年 12月 18日

委任状争奪戦ーイオン・CFSのケースその2

イオン、委任状勧誘を開始・CFSのアインとの統合反対
大手ドラッグストアCFSコーポレーションと調剤薬局大手アインファーマシーズの経営統合に反対するイオンは17日、CFSの株主に対し、統合反対を呼びかける委任状勧誘を始めたと発表した。「CFS株主に極めて不利な統合比率」と訴え、1月22日に開くCFSの臨時株主総会で議決権の3分の1超の反対票を集め、統合案を廃案にする狙いだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D17086%2017122007&g=S1&d=2
0071217

【CFOならこう読む】
イオンは統合比率がCFS株主にとって不利であることを理由に統合反対の委任状勧誘を開始するとのことですが、焦点はCFSがアイン傘下に入るのか、イオングループのメンバーであり続けるのかにあるはずです。この点は12月11日に書いたとおりです(http://cfonews.exblog.jp/6925859/)。

この点をはっきりしないとイオン以外のCFS株主は何を選択するのかよくわからないことになります。また判断するための情報も明らかに不足しているように思います。そもそも、CFSの件は、イオンにとって15%という中途半端な持分ではグループ経営を行っていくことが困難であるというグループの資本提携のあり方そのものを見直す契機とすべきであり、いずれにしてもCFSの持分を最低過半まで増やす必要があると思います。それなら今イオンがやるべきことは、委任状勧誘ではなくイオン側が適正であると主張している株価800円でTOBを行うべきだと思います。

【リンク】
2007年12月17日「㈱CFSコーポレーションの臨時株主総会に向けた委任状勧誘の開始について」イオン株式会社
http://www.aeon.info/ICSFiles/afieldfile/2007/12/17/071217R.pdf


by yasukiyoshi | 2007-12-18 08:34 | M&A