吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 02月 29日

JFEのCB

JFEホールディングスは28日、新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で3000億円を発行する一方、1200億円の自社株買いを実施すると発表した。CB発行で得た資金で自社株を買うほか、残りの1800億円分は高級鋼の増産などに使う。CBはみずほコーポレート銀行など3メガ銀行が割り当て対象で、買収防衛策としての側面もあるようだ。
(2008年2月29日 日本経済新聞 17面)

【CFOならこう読む】
2月27日にヤマダ電機のリキャップCBをご紹介しましたが、本件も同様の性格をもっています。CB発行とこれにより調達される資金の一部を原資とした自社株買いをセットで実施することにより、負債比率が引き上げられます。一方、このCBは安定株主である3メガバンクに割り当てられることで、買収防衛策としての性格も合わせ持っています。ただし転換価格は8530円と28日終値4730円より約8割高い水準に設定されていること、及び「現金決済条項」と呼ぶ条件を付け加えることで希薄化を一定程度に抑える商品設計なっています。

「現金決済条項」は、JFEが持つ権利で、株式に転換される場合、一部を現金で渡すことが可能になっています。例えば、JFEの株価が1万円になったケースでは、1万円と転換価格8530円の差1470円の部分だけ、株式で渡すことができます。

このスキームでポイントとなるのは、会計上一括法(新株予約権を区分しない方法)が認められるかどうかです。これについては、「企業会計基準適用指針第17号 第23項(3)取得の対価が現金と自社の株式の場合」、に一括法が認められる要件として次の記載があります。

現金の交付がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式の交付がすべて新株予約権部分の取得に充てられるように、現金と自社の株式を対価とするそれぞれの部分をあらかじめ明確にされ、これらの額が経済的に合理的な額と乖離していないこと。

本件は、この要件を斟酌して設計されたものと思われます。

【リンク】
平成20年2月28日「第三者割当による取得条項付無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行に関するお知らせ」ジェイエフイーホールディングス株式会社
http://www.jfe-holdings.co.jp/release/2008/02/080228-01.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-29 09:03 | 資金調達
2008年 02月 28日

2月新規上場ー7社中5社、初値が公募価格割れ

新規株式公開(IPO)銘柄の株価が低迷している。今年に入って新規上場した7社(1月はゼロ)のうち、5社の初値が公募価格を下回り、上場後の株価もさえない。業績の不透明感などから個人投資家の買い意欲が後退。29日にセブン銀行という大型銘柄の上場を予定していることも手控えにつながっている。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
今年新規上場した銘柄の初値とその後の株価の状況は次の表の通りです。
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最近の傾向としては、公募価格を類似会社PERのレンジの最低のところで設定していることが言えます。その中でインサイトは類似会社PERの水準が8.1倍~11.2倍(http://biz.yahoo.co.jp/ipo/html/d2172.html)であるのに対し、公募PERは11.07倍と比較的高めの水準で公募価格を設定しています。それでも初値騰落率は▲23%と、控えめに公募価格を設定した東洋ドライループの騰落率▲28%やスーパーバリューの騰落率▲26%と比べて特段初値騰落率が大きいということはありません。

現在のIPO市場は、「相場に不透明感が強くリスクの高い新規上場銘柄への投資を敬遠している(丸和証券調査情報部大谷氏)」ため、もはや適切な株価形成が行われていないと言っても良いかもしれません。27日に上場したモリモトは公募価格をPER3.74倍という非常に低い水準に設定したにも関らず初値はそれを6%下回りました。記者会見した森本社長は、「投資家の評価として受け止めている。株主に期待してもらえるようがんばりたい」と述べたそうですが、「市場の評価は間違っている」くらいのことを言っても良いと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-28 08:53 | IPO
2008年 02月 27日

リキャップCBーヤマダ電機のケース

CB1500億円 自社株買い700億円 ヤマダ電、同時に実施
ヤマダ電機は26日、ユーロ市場で新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で1500億円発行する一方、700億円の自社株買いをすると発表した。CB発行で得た資金を自社株買いに充て一株利益を高めつつ資本効率の改善につなげる狙い。CB発行と自社株買いを同時に行う手法は米の有力企業の間で急速に普及しつつある。日本ではヤマダ電機が初めて。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
CBによって調達する1500億円の資金使途を会社は次のように説明しています。
【調達資金の使途】
本資金調達による発行手取金(グリーンシューオプション分を含む。)の資金使途は以下を予定しています。

① 設備投資資金として調達した短期借入金の返済に約800 億円を充当する予定です。
② 自己株式取得資金に約700 億円を充当する予定です。本新株予約権付社債の払込日以前に自己株式を取得した場合、かかる取得資金として調達したブリッジローンの返済に充当する可能性があります。
ヤマダ電機の平成20年3月期第3四半期時点の自己資本比率は42.3%でした。これが700億円の自己株取得により33.7%まで下がることになります。D/E比率で見ると1.36から1.97へ上昇します。最近出版された「日本企業のコーポレートファイナンス」(砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳著 日本経済新聞出版社)によると、格付けは1ノッチ以上ダウンすることになります。節税効果がこの格下げによる資本コスト上昇の影響を上回れば、負債による自己株取得は合理的と言えます。

ただし本件は上の説明のような教科書的な財務戦略を志向したものではない可能性もあります。家電業界は今後M&Aによる再編が予想され、ヤマダ電機はその中心的なプレイヤーと目されています。TOBをかけるにはキャッシュが必要です。そのキャッシュを今回CBで調達したというのが本当の所かもしれません。それをキャッシュのままで持っていると業界他者の警戒心を必要以上にあおり、今後のM&A戦略に影響をあたえることにもなりかねないので、その意図を隠すために一旦金庫株で持つというのは十分考えられるところだと思います。

それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。

そして次のように転換可能性の低い商品設計にすることでエクィティ系の性格を相当程度緩和しているのです。
「時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定することで、発行後の一株当たり利益の希薄化を極力抑制するとともに、転換制限条項(※)の付与により、株式への転換可能性を抑制することで、既存株主に配慮した負債性の高い商品性としております。

※転換制限条項について
株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、投資家が新株予約権を行使できない条項をいいます。本件においては原則として、前四半期の最終30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が転換価額の125%を超えた場合に限って、投資家は新株予約権を行使することができます。ただし、償還期限の6ヶ月前の日以降、いつでも新株予約権の行使が可能となります。」
(2008年2月26日プレスリリース)

【リンク】
平成20年1月31日「平成20年3月期 第3四半期財務・業績の概況」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/kessan/2008/080131.pdf

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf

日本企業のコーポレートファイナンス
砂川 伸幸
4532133459



by yasukiyoshi | 2008-02-27 12:57 | 最適資本構成
2008年 02月 26日

反対株主の株式買取価格ーシティ・日興のケース

日興コーディアルグループが、米シティグループとの三角合併に反対した株主に対し、一株当り1650円で日興株を買い取る方針を伝えたことが分かった。賛同した株主に適用された評価額1700円を下回る。日興は株主との間で月内の合意を目指す。
三角合併に反対した株主は29の個人や機関投資家で、会社法に基づいて株の買い取りを日興に求めている。
株式は計1240万株(発行済株式総数の1.3%)で、買取総額は約200億円になる見通し。合併を実施した1月29日から30日以内にあたる月内に日興と合意できない場合、株主は東京地方裁判所に価格決定を申し立てることができる。

(2008年2月25日 日本経済新聞 夕刊 3面)

【CFOならこう読む】
会社法は合併や株式交換の際の株式買取請求を「公正な価格」によることとしています。これは旧商法が「合併等がなければ当該株式が有していたであろう価格」としていたのと異なり、シナジーも反映したものでなければならないという趣旨であると解されています(株式会社法 江頭憲治郎 有斐閣 776ページ)。

一般に合併や株式交換の場合に合併比率や株式交換比率が公表されるのみで、買収側が被買収会社の株式をいくらで評価したかは公表されません。したがって「公正な価格」について争いが起きることも多々あるのです。

ところがシティ・日興のケースではシティ側が一貫して日興株式の株価を1700円で評価していましたので「公正な価格」は1700円であることに議論の余地はないと思います。にもかかわらず反対株主の株式買取価格を1650円とした真意はどこにあるのでしょうか?

リリースがないので推測するしかないのですが、三角合併に反対せず日興株式1株と引き換えにシティ株式0.602株を受け取って現に持っている株主との公平を考慮した結果なのかもしれません。

1月22日のシティ株価は終値ベースで25.12ドル、円ドルレート107.21円でしたので、これを使って計算したシティ株式0.602株の価格は、25.12×107.21×0.602=1,621円となります。
これだったら1650円でもおかしくないですかね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-26 10:11 | M&A
2008年 02月 25日

株式オプション、大証が米取引所と新市場

【ニューヨーク=松浦肇】米有力取引所のインターナショナル・セキュリティーズ取引所(ISE)と大阪証券取引所は株式オプションの新市場を2009年に共同開設することで基本合意した。NYSEユーロネクストとシカゴ・オプション取引所(CBOE)がそれぞれ東京証券取引所に同様の市場開設を打診したことも判明。オプション取引で先行する米取引所の進出で日本の投資家にとっても資産運用の選択肢が広がりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080224AT2M2302R23022008.html

【CFOならこう読む】
現在大証では130銘柄程度の株式オプションしか取引されていないのが、米取引所との連携後は、1000銘柄程度に拡大する見通しです。多数の株式オプションが市場で取引され、価格付けされることは喜ばしいことですが、会計、税法その他の法律といったインフラを整備する必要性を感じます。

例えば、ファイナンス理論でいうプット・コール・パリティを考えれば、株式の発行=①割引債の発行+②当該株式についてのコールオプション(割引債の償還金額を行使価格とする)の売り+③当該株式についてのプットオプション(同じ行使価格)の買いですので、式の左辺と右辺は経済的効果は同じでなければならないのに、会計、税法の取扱いは同じではありません。このことは割引債の利息が費用になるのに、株式の発行で配当は費用にならないことを考えればお分かり頂けると思います。

また、自己の株式オプションを使った粉飾の手法もあれこれと考えられます。エンロンの会計不正の主役が自己株式とエンロンの株式オプションだったことが思い出されます。

今のままでは堀江や榎本といった輩の活躍の余地が相当出てくると思います。機会平等から生じる格差は致し方ない部分がありますが、インフラ未整備をついた”やった者勝ち”的な不公正から生じる格差は徹底的に排除しなければならないと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-25 07:58
2008年 02月 23日

オーナー企業、統治に課題

みずほ総合研究所が非上場の有力企業を対象に実施したアンケート調査で、創業家が代表権を持つ「オーナー企業」では半数以上が取締役や監査役に社外の人材を置いていないことが分かった。従業員が社内の不正行為を知らせる「社内通報制度」がある企業も二割にとどまり、企業統治の課題が浮き彫りになった。従業員30人超で売上高10億円超の非上場企業6000社を対象に昨年10月調査し、1702社から回答を得た。回答企業の7割がオーナー企業。
社外取締役や社外監査役を置くオーナー企業は約45%だった。会社法では「委員会設置会社」に移行しなければ社外取締役を置く義務はないが、同総研は「一定規模以上の企業では企業統治の体制整備が必要」と指摘している。
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【CFOならこう読む】
アンケート調査では、オーナー企業の長所として「迅速な意思決定ができる」(63.5%)、「より長期的視野に立った経営ができる」(48.6%)、「トップの責任で大きなリスクを取ることができる」といったところが上位にあげられています。

これらは上場企業であっても同様であり、こういった長所がある以上オーナー企業の上場を否定すべきでないと思います。一方調査では、「人事の停滞等組織の硬直化を招きやすい」(25.0%)、「公私の境目があいまいになりがち」(23.1%)といったオーナー企業の弱点があげられています。こういった弱点は「一定の見識のある、しかも自分にとって目の上のたんこぶになりうる人物」(上村・金児著 「株式会社はどこに行くのか」279ページ)を社外取締役や社外監査役に据えることにより相当程度緩和されると考えられますが、オーナー企業では半数以上が取締役や監査役に社外の人材を置いていません。

また社外取締役がいたとしてもその多くが社長の縁故や友人で、「いざとなれば社長にとって恐い行動を取る人」(同上)ではありません。「いざとなれば恐い行動をとりうる人に「現に信任されている」ということが経営者としての権威を高めるのですが、そこまで腹をくくったオーナー経営者は少数だと思います。

調査結果は、内部ガバナンスに係る制度・仕組みの導入を通じて、オーナー企業の競争力が引き上げられる可能性を示唆しており、オーナー企業は、その採用を真剣に検討すべきであると思われます。

【リンク】
「オーナー企業の継続的発展に向けて」みずほ総合研究所
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/report/report08-0213.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-23 17:49 | コーポレートガバナンス
2008年 02月 22日

先物価格はどう決まるか?

株価指数先物・オプション・大引け――大幅反発、仕掛け的な買い入る
21日の日経平均先物3月物は大幅反発。前日大引け比390円高の1万3690円で取引を終え、売買高は13万6806枚だった。前日の米株高を受け、朝方から買いが優勢となった。後場に入ると仕掛け的な大口の買いが断続的に入り、上げ幅を拡大。一時は前日大引け比490円高の1万3790円を付けた。市場では「前日に日経平均先物の売りと債券の買いを組み合わせて仕掛けていた向きが、きょうは反対売買をしたようだ」(ひまわり証券投資情報室の堀川秀樹室長)との見方が出ていた。
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/summary.aspx?site=MARKET&genre=m1&id=ASS0ISF12%2021022008

【CFOならこう読む】
「将来の値上がり期待を反映して先物価格が現物価格よりも高く推移している」と解説されることがあります。これは「先物価格=現物資産の予想価格」という誤った解釈に基づくものと思われます。
先物価格は現物価格に一定の調整(金利と配当)を加えて決定されるものです。しかし大きな調整が入るわけではないので、通常、先物価格≒現物価格となります。

日経225銘柄の株式を買った場合も、先物株式を買って最後まで反対売買しない場合も、売却価格は同じ現物株の価格を基準に決まるので、両者の儲けは同じでないと裁定機会が生じてしまいます。ですから先物価格と日経225指数が大きく乖離する理由はないのです。ただし両者は別々の市場で取引されるので、乖離が一時的に生じることはあり得ます。

それでも裁定取引を通じてたちどころに乖離は解消されます。先物価格が割高であれば先物売り&現物買いの取引を行うことで利益を得ようとするものが現れ、先物価格が割安であれば先物買い&現物売りの取引を行うことで利益を得ようとする者が現れます。この結果、先物価格が現物価格に対して理論価格から大きく乖離した状態で放置されることはありません。

今日の記事の、

「裁定取引を経由して現物株も乱高下している」

というのはそういう意味です。
現物ではなく日経225先物が買われるのは、

①買付けに買付代金を払う必要がない(証拠金は必要)
②売りから始めることができる
③期限があり、期日には強制的に反対売買され差額金で決済される

というように現物株式とは異なるルールが適用されており使い勝手が良いからにすぎないのです。

今日の記事は次の本を参考に書かせて頂きました。この本はデリバティブの本質を数式に頼らず平易な言葉でわかりやすく説明していてお奨めです。

「デリバティブズ・ビジネス入門」(三田哉著 中央経済社)

【リンク】
デリバティブズ・ビジネス入門―エクイティの現場ノウハウ
三田 哉

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by yasukiyoshi | 2008-02-22 08:28
2008年 02月 21日

新日鉄取引先持株会立ち上げ

新日鉄、取引先持株会を立ち上げ・親密な100社強参加
新日本製鉄は取引企業で構成する「取引先持株会」を立ち上げた。3月以降、参加企業が払う毎月の拠出金で証券市場から新日鉄株を継続的に買い付ける。同社の仕入れ先企業は千数百社にのぼるが、まず購買などで親密な100社強が参加する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080221AT1D2009A20022008.html

【CFOならこう読む】

いつか来た道にまた戻ろうとしているように思えます。
昔は、資本政策の要諦は安定株主作りとされ、取引先も重要な安定株主として位置付けられていたものです。上場指南本にもそんなことが必ず書かれていました。しかし時代が変わり、株主価値創造を志向する会社が増える中で、政策的投資を受けることも投資することも好ましくないというコンセンサスが徐々に出来つつあるように思います。

実際株式持合いは大きく減少しています。M&Aにしても徐々に抵抗が薄れ、株主価値を創造する買収なら受け入れるというまっとうな感覚を持つ経営者が増えているように思います。一方買収の脅威に対し過度に反応する旧態然とした一部の会社がしゃにむに安定株主作りに勤しんでいるのもまた事実です。新日鉄もそんな会社の一つです。新日鉄は平成18年に新株予約権による買収防衛策を導入しています。この買収防衛策導入のプレスリリースに次の記載があります。

「当社に対し買収を行おうとする者がいる場合に、これを受け入れるか否かの最終的な判断については、その時点における株主の皆様に委ねられるべきものであると考えます。」
最終的には一般投資家による民主的な判断に委ねるという極めてまっとうな姿勢と安定株主作りがどこでどう繋がるのか私にはさっぱりわかりません。

それにしても日経の好意的なこの記事は一体どういうことでしょう。

【リンク】
「株主・投資家の皆様へ」新日本製鉄
http://www0.nsc.co.jp/investor/


by yasukiyoshi | 2008-02-21 08:09 | 買収防衛策
2008年 02月 20日

モック端株株式の処分進まず

結婚式場を運営するモックは19日、昨年10月の株式併合で生じた一株未満の端数株式の売却が進まず、保有者への処分代金の支払ができていないと発表した。流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため、市場外での一括売却も検討している。
(日本経済新聞2008年2月19日16面)
【CFOならこう読む】
モックは昨年10月30日付で10株を一株に株式併合した上で、併合によって浮いた授権株式を利用して、理論株価から大幅にディスカウントした金額を行使価額とした新株予約権をファンドに発行しました。株式併合により80%の株式が端株となり、これを会社が集めて売却し、保有比率に応じて保有者に代金を支払うことになっていますが、いまだこの支払が実行されていないというのが、このニュースの要旨です。

その理由を会社は、「流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため」としています。酷い話です。こういったスキームが法的に可能であるとしても、一般株主の保護については慎重な配慮が求められます。流動性が低いのは最初からわかっていたはずで、それを考慮した上で速やかに現金化するのが会社の義務だと思うのですが…。

希薄化後の大幅に下落した現在の株価をもって端株保有者への支払を行うのも問題があります。株式併合発表前日の株価を基準に、会社が端株の買取に応じるべきであると私は思います。

【リンク】

2008年2月19日「株式併合に伴う端数株式処分代金のお支払いについて」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/080219.pdf

2007年9月7日「第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090705.pdf

2007年9月7日「株式併合に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090706.pdf
【関連過去記事】
2007年 09月 08日「モック、10株を1株に併合・新株予約権で59億円調達」
http://cfonews.exblog.jp/6422299/


by yasukiyoshi | 2008-02-20 10:14 | 資金調達
2008年 02月 19日

一六堂の社長 社員に自社株贈与

居酒屋チェーンの一六堂は18日、柚原洋一社長は保有する同社株の一部を社員に無償贈与すると発表した。新株発行を伴うストックオプションと違って、一株利益が薄まったり、費用負担が生じることがない。既存株主の利益や会社業績に悪影響を与えずに、社員の勤労意欲を高める。
(日本経済新聞2008年2月19日16面)
【CFOならこう読む】
プレスリリースによると本件の概要は以下の通りです。
1.贈与の内容
 贈与日(平成20年2月21日)時点で在籍する従業員のうち、昨年度からの組織変更に伴い主要役職に従事する者15名を対象に、過年度までに実施したインセンティブ等の状況を加味し、普通株式を贈与
2.贈与する株式数
 240株
3.贈与日(予定)
 平成20年2月21日
4.贈与の目的
 近年入社の従業員を含めた主要役職者へ付与し、既存従業員とのインセンティブの平衡を図り、全従業員一丸となり、当社の株式保有を通じた業績向上及び株主価値の最大化への意欲を一層高めるために実施するもの
18日終値で計算した譲渡総額は1372万円になります。一人当たりの譲渡株数が公表されていませんが、一人当たりの平均譲受株式は240株÷15=16株、91万5千円相当と計算されます。

税法上の取扱いが気になるところですが、個人間売買により株式を譲渡した場合、時価よりも譲渡代金が低くても、課税対象となるのは実際の譲渡代金であり、時価で課税されることはありません。一方譲受人には贈与税が課税されます(「M&A実務ハンドブック第3版」 鈴木義行編著 中央経済社)。

無償譲渡を受けた者が、その対価と株式の時価に相当する金額を、譲渡人から贈与によって取得したものとみなされ、納税の義務を負うことになります(「租税法第11版」 金子宏著 弘文堂 488ページより)。
ただし贈与税には基礎控除が110万円あるので(平成19年4月1日現在法令等)、譲渡された株式の時価がこれ以下であるなら贈与税は課税されません。

したがって一六堂の場合、18日終値ベースで計算する限り、12株の無償譲渡を受けた社員に対する贈与税の課税は生じないものと思われます。

【リンク】
平成20年2月18日「当社代表取締役社長保有株式の従業員に対する贈与に関するお知らせ」株式会社一六堂
http://ir.eol.co.jp/EIR/3366?task=download&download_category=tanshin&id=531558&a=b.pdf

平成19年4月1日現在法令等「 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」国税庁
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm
【関連過去記事】
2007年12月20日「テクノアルファのケース」
http://cfonews.exblog.jp/6969550/


by yasukiyoshi | 2008-02-19 08:52 | 税制