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2008年 05月 31日

読書メモ

日本電産 永守イズムの挑戦 日本経済新聞社編
日本電産永守イズムの挑戦 (日経ビジネス人文庫 ブルー に 1-32)
日本経済新聞社

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日本経済新聞出版社 2008-04
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【CFOならこう読む】
先日、村上龍のTV番組に永守さんが出ているのを見て、未読であったこの本を読んでみました。
日本電産が三協精機を買収した時に、永守さんが最初に本社で行った訓示がとても具体的で明確なものでした。以下私自身の備忘メモとして書き記します。

1.赤字は罪悪という意識の徹底と計画必達意識の向上
 ・会社はどんなことをしても黒字であること
 ・全部門、全事業の黒字化の達成
 ・決めたこと、約束したことは必ずやり遂げる
 ・厳しいリスク会議のデイリー開催(時間外開催)
 ・現場現物主義の徹底(メーカーの原点は現場にあり)
 ・営業利益率10%が健全経営の最低目標
 ・キャッシュフロー最重視経営(売上より利益、利益よりキャッシュフロー)
2.社員モラールの向上
(当たり前のことを当たり前にやれる社員集団)
 ・3Q6S=全職場80点以上(時間外自主活動による)
  3Q=Quality Worker、Quality Company、Quality Products
  6S=整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾
 ・出勤率=全職場98%以上(まず、休まず遅れずが原点)
 ・競争力を保持できる年間労働時間への改定
 ・会議は時間外または休日に開催(緊急は除く)
 ・一人の100歩より100人の一歩(全員参加の経営)
 ・日々完結の経営の徹底(今日のことは今日中にして帰る)
3.「経営五大項目プラス二」の徹底管理
 ・品質=50PPM(百万分の一)<二万分の一の意味>以下
 ・材外費=最終売価の50%以下
 ・在庫=0.4ヶ月以下
 ・生産性=従業員一人当たり百万円/月以上の付加価値高
 ・経費=一人当たり付加価値高の25%以下(売上1億円当たり5百万円以下)
  -売掛金=45日以下(回収は早く、支払いは遅く)
  -遊休資産=有効活用の徹底、または売却の強力促進
4.営業マン一人当たりの訪問件数
 ・営業部門は会社の機関車の役目を果たすこと
 ・訪問百件/月以上(うち、新規開拓30件以上)
5.三大精神の厳守
(情熱・熱意・執念、すぐやる・必ずやる・出来るまでやる・知的ハードワーキン
グ)
 ・開発スピード=3倍アップ
 ・製造部門生産性=2倍アップ
 ・直間比率=50%改善
6.購買力の徹底強化
(利は元にあり)
 ・仕入先からの接待や贈答品の受け取りの厳禁
 ・3~5ステップネゴの徹底(世界一のコスト追求)
 ・前回比低減の徹底(全員参加によるコストネゴ)
7.実力実績の人事・賃金体系の確立
 ・学歴・年齢・社歴に関係ない人材登用を実行
 ・経営感性を持った人物の抜擢
 ・利益貢献度と業績変化率重視の人事評価の徹底
 ・競争原理の働いている賃金制度の確立
 ・グローバル社員の優遇制度の実施
 ・ぶら下がり社員の再教育と再指導の徹底(怠け者は去っていく、良貨が悪貨を駆逐する社風)
8.スピード感のある決裁体制づくり
 ・経営幹部が即断即決で方向性を指示
 ・営業部門と開発・生産各部門の同期体制確立(営業は働いている時間に他の全ての部門が対応、マーケット順応を最重視)
 ・幹部の率先垂範体制(自ら手を汚す)
 ・QCDSSS(クオリティ、コスト、デリバリー、サービス、スピード、スペシャライゼーション(顧客の要望を満たした特殊化)を最優先する組織と人事対応
 ・日本電産グループの全面支援体制(共同購買や販売支援の強化)

by yasukiyoshi | 2008-05-31 10:46 | コラム
2008年 05月 30日

アデランス、株主総会で社長他役員再任否決

アデランスHD総会、役員再任否決 スティールなどが反対
筆頭株主の米投資ファンド、スティール・パートナーズから全経営陣の退任を求められていたアデランスホールディングスは29日午前、東京都内で定時株主総会を開き、岡本孝善社長ら現取締役の再任に関する議案が否決された。同社株を議決権ベースで約28%保有するスティールをはじめ、業績不振に不満を持つ株主が反対に回り、過半数の支持を集められなかった。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2900F%2029052008&g=S1&d=20080529

【CFOならこう読む】
全く予期していない事態が起き正直驚いています。
アデランスという少し脇の甘い会社の特殊事例ではありますが、こういうことが起こりうるんだと経営者や一般投資家が認識知ることでコーポレートガバナンスが変わる契機になるような気がします。

一昨日の山田太一のドラマ「本当と嘘とテキーラ」で主演の佐藤浩一の台詞が、頭の中でリフレインしています。

「大人はゆっくり変わるんです」

そう、日本の会社だって変わるんです。

さて、取締役が欠けた場合の法的な措置ですが、次のように会社法は規定しています。

「取締役が欠けた場合、または、法令・定款所定の取締役の員数が欠けた場合には、遅滞なく後任の取締役を選任しなければならない(会社法976条22号)。しかし、その場合、任期の満了または辞任により退任した取締役は、後任者が就任するまでの間、なお取締役としての権利・義務を有する(会社法346条1項)」
【リンク】
平成20年5月29日「第39回定時株主総会決議及び役員人事について」株式会社アデランスホールディングス
http://www.aderans.co.jp/company/investors/images/pdf/20080529a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-30 10:32 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 29日

日立キャピタル、リース会計基準変更に伴う特別利益一括計上

日立キャピ、純利益34%増 リース会計基準変更 特別利益を一括計上
日立キャピタルは28日、2009年3月期の連結純利益が前期比34%増の144億円になりそうだと発表した。従来予想は135億円だった。4月から新しいリース会計基準が適用されたのに伴い、前期末までに流動化したリース債権の未実現利益を、今期に特別利益として一括計上することになった。
(日本経済新聞 2008年5月29日 16面)
【CFOならこう読む】
日立キャピタルは、プレスリリースで本件を以下のように説明しています。
「当社は、リース債権の流動化を財務の1つの手段として活用しております。これは将来の受取リース料を現金化するものであり、会計上は損益の発生しない取引としておりました。しかしながら、「金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14 号)」の改正により、流動化しているリース債権は過去に遡及して売買処理として取扱うこととなり、本年3月31 日までに既に流動化していたリース債権の未実現利益を今年度に一括して損益計上することと致しました。なお、このリース債権の流動化処理の変更により特別利益243 億円を計上する予定であります。」
これは、この4月から適用になった新しいリース会計基準が、所有権移転外ファイナンスリースについても原則通常の売買取引に準じた方法によることを定めており、また、適用指針16号が「リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理を行い、変更による影響額を特別損益として処理すること」としていることに伴うものと思われます。

なお、改正「金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14 号)」18項は、リース取引について次のように規定しています。
「リース取引は、企業会計基準委員会企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)に従って処理されるため、金融商品会計基準の適用外である。ただし、リース取引により認識されたリース債権及びリース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分(リース会計基準第41項)又はリース債務は、金融資産又は金融負債として、その消滅の認識や貸倒見積高の算定等につき金融商品会計基準に従って処理する。また、リース取引に組み込まれたデリバティブには金融商品会計基準が適用される。」
日立キャピタルの「将来のリース料を収受する権利」の流動化が、金融商品会計基準の消滅の認識の要件を満たすことから、売買処理されたということです。

【リンク】
平成20年5月28日「特別損益の計上および業績予想の修正に関するお知らせ」日立キャピタル株式会社
http://www.hitachi-capital.co.jp/hcc/ir/pdf/080528_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-29 10:35 | 会計
2008年 05月 28日

会計処理方法の変更事例-セコム、退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法変更

セコム401Kへの全面移行を断念
セコムは準備していた確定拠出型年金制度(日本版401k)への全面移行を断念した。
確定給付型年金制度からの転換を目指し一部導入していたが、法人税が非課税となる拠出額の上限が低く抑えられたままで環境が整わないと判断した。全面移行を前提に年金運用の利差益である「数理計算上の差異」
を発生年度に一括消却しており、業績への影響も大きかった。
(日本経済新聞 2008年5月28日 19面)

【CFOならこう読む】
当ブログで3月8日に私は数理計算上の差異の会計処理方法の変更について次のように書きました(http://cfonews.exblog.jp/7460642/)。
「今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。」/span>

セコムは、従来「数理計算上の差異」発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用していましたが、2008年度3月期より、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主して10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しています。

3月8日にも書きましたが、「数理計算上の差異」の会計処理には以下のa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りの方法があります。このうち最も保守的なのはa-Aの方法です。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

セコムの会計処理方法の変更は、この最も保守的な方法であるa-Aからb-Bへ変更するものです。

セコムは変更の理由を次のように説明しています。
「当社は、従来退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用してきました。
この会計処理方法採用の背景には、確定給付型年金制度と確定拠出型年金制度の併用および厚生年金基金の代行部分の国への返上を骨子とする退職給付債務の減額を伴う退職給付制度の抜本改訂を決定したことがあり、長期的に確定給付型年金制度を確定拠出型年金制度へ全面移行する方針を前提としておりました。
確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度へ全面移行する方針については、関係諸法令の規制などもあり、確定拠出型年金制度への移行割合が30%と全面移行(100%)に比べ大きく乖離している状況にあり、関係諸法令の改正も不透明であることから、平成20 年3月開催の取締役会において確定拠出型年金制度への全面移行を断念する決議をいたしました。
確定拠出型年金制度への全面移行を断念したことに伴い、移行を円滑に進める目的であった数理計算上の差異の早期解消も必要性が薄れている現状においては、従来の会計処理方法に従った場合には、数理計算上の差異が発生連結会計年度の営業利益に大きな変動を与える可能性があり、年金資産の運用を含む退職給付制度が中長期的な視点を求めて行われるものであるという本来の性質上、単年度の数理計算上の差異が当該発生連結会計年度の企業業績を直接変動させる従来の会計処理方法が適合しなくなってきております。以上のような状況から、数理計算上の差異の処理方法を発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました。
この変更により、従来の方法によった場合と比較して、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ10,096 百万円増加しております。」
一括法から定額法への変更理由としては相当なのかもしれませんが、処理開始時期を発生年度ではなく翌会計年度に変更した理由はよくわかりません。

2008年3月期の営業利益は104,706百万円、2007年3月期の営業利益97,840百万円に対し6,865百万円の増益であったわけですが、この会計処理方法の変更がなければ減益であったことになります。

IFRsでは数理計算上の差異を純資産の部に直接計上する方法が認められており、コンバージェンスを睨んでの対応とも考えられます。

【リンク】
平成20年5月8日「平成20年3月期 決算短信」セコム株式会社
http://www.secom.co.jp/corporate/ir/finance/result/pdf/kessan20-3.pdf




by yasukiyoshi | 2008-05-28 08:28 | 会計
2008年 05月 27日

CSK、コスモ証券を完全子会社化

CSKHD株が急反落、コスモ証を完全子会社化へ-交換比率にらむ
5月26日(ブルームバーグ):情報サービス大手のCSKホールディングの株価が売り気配で始まり、寄り付き後は一時前週末比175円(7%)安の 2320円まで下げた。23日に、現在発行済み株式総数の49%あまりを保有する子会社のコスモ証券について、株式交換などを通じて完全子会社化すると発表。株式交換比率をにらんで売りが優勢となった。コスモ証株は一時4円(3.9%)高の108円と反発。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003003&sid=aSvS6qOMpjzA&refer=jp_stocks
【CFOならこう読む】
株式交換の日程は次の通りです。

株主総会基準日(コスモ証券) 平成20 年3月31 日
株式交換決議取締役会(両社) 平成20 年5月23 日
株式交換契約締結(両社) 平成20 年5月23 日
株式交換承認株主総会(コスモ証券) 平成20 年6月25 日(予定)
取引所市場最終売買日(コスモ証券) 平成20 年7月25 日(予定)
上場廃止日(コスモ証券:大阪証券取引所)平成20 年7月26 日(予定)
上場廃止日(コスモ証券:東京証券取引所、名古屋証券取引所)
平成20 年7月28 日(予定)
株式交換の予定日(効力発生日) 平成20 年8月 1日(予定)
株券交付日 平成20 年9月 中旬(予定)


株式交換比率は、コスモ証券1株に対しCSKHD株式0.046株。

評価基準日である5月21日の終値で計算される交換比率は1:0.042
第三者機関の評価は次の通りでした。

ZECOOパートナーズ(コスモ証券側)
市場株価法 0.038 ~ 0.042
類似上場会社法 0.043 ~ 0.044
DCF法 0.034 ~ 0.043
ダフ・アンド・フェルプス(CSK側)
市場株価法 0.038 ~ 0.042
DCF法 0.031 ~ 0.049


若干のプレミアムを乗せて1:0.046に決めたものと思われます。

それにしても、CSKはコスモ証券を一体いくらと評価したのでしょうか?
買値がまず決まって、次に支払い手段を決めるというのがあるべき意思決定の順序であるはずです。ならば買値(コスモ証券株式の評価額)を明らかにすべきです。というか評価額を示さないM&Aに両社の株主は賛成・反対の意見表明なんぞできないはずです。

【リンク】
平成20年5月23日「株式会社CSKホールディングスによるコスモ証券株式会社の株式交換による完全子会社化に関するお知らせ」コスモ証券株式会社
http://www.cosmo-sec.co.jp/press_release/00000078.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-27 08:30 | M&A
2008年 05月 26日

資本政策詳解-プライムワークス

【CFOならこう読む】
久々のIPOであるプライムワークスは23日上場初日はカイ気配のまま値付かずとなりました。公募価格23万円に対し気配値は47万円まで切り上げる展開でした。

2009年2月期予想EPSが12,151.05円なので公募価格23万円はPER18.9倍の水準です。

プライムワークスの主な資本政策は(表1)の通りです。

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会社設立後数ヶ月間で発行済株式数を大きく上回る第3者割当を行っているところが特徴的です。ここで調達した資金に会社は手をつけることなく現預金で保有し続けています。つまりこの第三者割当は資金調達を目的としていないのです。割当先であるバンダイやシャープが主な販売先であることから、営業上の関係構築を目的としたものであることが推察されます(但しバンダイ割当分はその後池田社長が買い戻ししています)。
増資から約1年後に池田社長の持分増加のために3,110株という大量のストックオプションを池田社長に割当ているのも特徴的と言えます(3,110株はその時点における発行済株式数の約6割に相当します)。

(表2)はプライムワークスの株主構成です。

e0120653_14143913.jpg


池田社長の売出株数は800株(モバイル・インターネット第1号は1,000株)、上場直後池田社長の保有割合は30.9%となります(潜在株式を含む)。
従業員の持株割合が約16%と比較的大きな部分を占めています。この大半はストックオプションと平成18年9月に行われた池田社長からの譲渡によるものです(単価は52,500円)。

【リンク】
平成20年4月「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」プライムワークス株式会社
https://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?template=609&brand=131&data=57385&filename=pdf_file.pdf



by yasukiyoshi | 2008-05-26 14:15 | IPO
2008年 05月 24日

取得条項付新株予約権を用いた転換社債-武富士700億円発行

武富士がCB700億円
武富士は23日、UBSグループを引受先とするユーロ円建て新株予約権付社債(=転換社債=CB)を700億円発行すると発表した。期間は10年で、CB発行で得る約682億円は有利子負債の返済に充て、資金調達構造の適正化や金融収支の改善を進めていく方針だ。
現金決済条項や転換制限条項を採用し、既存株主の利益の希薄化を抑制するという。
ノンバンクの海外でのCB発行では最大規模とみられる。
発行日は6月19日、表面利率1.5%。
(日本経済新聞 2008年5月24日 16面)

【CFOならこう読む】
CBの場合、株価が転換価格を大きく上回ると希薄化が生じてしまうので、既存株主の利益を害しないような配慮が必要となります。

武富士のCBは、株価が転換価額を上回った場合に、額面金額相当額の金銭に加え、市場株価と額面金額相当額との差額に相当する価値の株式を受け取ることができるというもので、日本郵船が2006年9月20日に発行したユーロ円CBとほぼ同様の商品設計となっています。通常のCBは額面相当の新株を交付するのに対し、このCBは市場株価が額面を超える部分に相当する新株しか発行されないので、希薄化の抑制が可能です。

さらに、次のように株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、新株予約
権の行使ができない転換制限条項が入っています。
「2017年6月20日まで(当日を含まない。)は、本新株予約権付社債権者は、ある四半期の最後の取引日(以下に定義する。)に終了する30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が、当該最後の取引日において適用のある転換価額の120%を超えた場合に限って、翌四半期の初日から末日までの期間(2017年4月1日に開始する四半期については、同日から同年6月19日までの期間)において、本新株予約権を行使することができる。2017年6月20日以降、本新株予約権付社債権者は、同日以降のいずれかの取引日において当社普通株式の終値が当該取引日に適用のある転換価額の120%を超えた場合、以後いつでも本新株予約権を行使することができる。」
この商品は、CBの取得が帳簿価額で行われるのか、時価で行われるのかが最大のポイントです(時価で行われると、差損益が発生する可能性があるので)。
この点「企業会計適用指針第17号」23項は次の要件が全て満たされた場合、帳簿価額で取得される旨規定しています。

①取得条項に基づく取得の対価の金額は、当該取得条項に基づき、当該転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の目的である自社の株式の数に基づき算定された時価であること
②当該取得条項に基づいて取得した際に消却することが募集条項等に示されており、かつ、当該募集条項等に基づき取得と同時に消却が行われていること
③現金の交付がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式の交付がすべて新株予約権部分の取得に充てられるように、現金と自社の株式を対価とするそれぞれの部分があらかじめ明確にされ、これらの額が経済的に合理的な額と乖離していないこと。


本件はこの要件を全て満たすように商品設計されたものと思われます。

もうひとつ潜在株式調整後1株当たり当期利益の計算上、新株予約権が潜在株式にカウントされるかどうかも大きなポイントとなります。この点プレスリリースで武富士は次のように希薄化効果が生じない旨説明しています。
本新株予約権付社債には転換制限条項が付されており、新株予約権の行使が制限されております。そのため、「一株当たり当期純利益に関する会計基準」(企業会計基準第二号)及び「一株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第四号)に基づき、本新株予約権付社債は「条件付発行可能潜在株式」に該当し、新株予約権の行使の条件が充足されない限り潜在株式に含まれず、会計上希薄化効果が認識されないため、募集時における潜在株式数及び募集後における発行済株式総数に関する記載は省略しております。
【リンク】
2008.05.23「第三者割当によるユーロ円建取得条項(現金決済条項)付及び転換制限条項付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
http://www.takefuji.co.jp/corp/nwrs/detail/080523_2.html



by yasukiyoshi | 2008-05-24 10:22 | 資金調達
2008年 05月 23日

キリンHD 負債枠4000億円拡大

社内基準見直し 買収資金など確保狙う
キリンHDは買収資金などを機動的に確保するため、有利子負債を現在より最大で4000億円程度増やせるよう社内の財務基準を見直す。同社は2007年12月期に協和発酵、豪乳業大手のナショナルフーズを相次いで買収した。国内のビール市場が縮小傾向にあるなか、海外事業の強化や多角化の推進に向け、今後も積極的にM&Aを進める狙いがある。
(日本経済新聞 2008年5月23日 17面)
【CFOならこう読む】
キリンHDは、2006-2009の中期経営計画で、
①M&Aに充てる資金のめどを3000億円
②DEレシオ(有利子負債/自己資本)0.5倍程度
に設定しています。

しかし買収金額は合計3700億円と、3000億円の投資額をすでに上回っており、またDEレシオも0.58倍まで上昇しています。このためDEレシオの目標値を1倍程度に見直すとのことです。これにより新たに4000億円近く有利子負債増額の余地が生まれます。

DEレシオを基準値として設定しているのか、目標値として設定しているのかは大きく違います。しかし上記記事でもその区別が曖昧になっているように一般に両者の違いは意識されません。最適資本構成を睨みながら、中期計画の中でDEレシオを目標値として設定する、財務先進企業は日本ではそれほど多くないのです。キリンHDも、戦略投資の制約条件として、DEレシオの基準値を設定している程度の話で、DEレシオ1倍が最適資本構成であると考えているわけではないのでしょう。

このことは、吉元CFOの「状況次第で様々な調達手段を検討するが、DEレシオが一時的に1倍程度まで上昇できるのは許容できる」という発言からも明らかです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-23 08:41 | 資金調達
2008年 05月 22日

TCI、Jパワーの株主総会に向け委任状争奪戦へ

TCI 委任状勧誘開始 Jパワーと争奪戦
英系投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)は21日、株式の9・9%を保有するJパワー(電源開発)に対して求めている増配などの株主提案を株主総会で可決するため、他の株主の賛同を募る委任状の勧誘を始めると発表した。Jパワーが会社提案する中垣喜彦社長の取締役再任議案にも反対する。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200805220055a.nwc

【CFOならこう読む】
TCIが行う委任状勧誘の対象となる議案は次の通りです。

<株主提案に係る議案>

1. 株式持合い・株式投資に対する制限
 定款において、株式持合いを含む株式投資を総額50 億円に制限
2. 社外取締役の導入
 定款で、最低3 名の社外取締役枠を設定
3. 期末配当案(その1)
 期末配当を1 株につき90 円とする(年間合計で120 円)
4. 期末配当案(その2)
 期末配当を1 株につき50 円とする(年間合計で80 円)
5. 自己株式の取得
 総額700 億円の自己株式取得枠を設定

<反対する会社提案に係る議案>
6. 期末配当案
 期末配当を1 株につき40 円とする(年間合計で70 円)
7. 中垣喜彦氏の取締役選任の件

この株主提案は、当ブログで5月16日(http://cfonews.exblog.jp/7947236/)と5月19日(http://cfonews.exblog.jp/7965979/)にとりあげたコーポレントガバナンス白書の推奨に従ったものです。

TCIの狙いは、日本的な安定株主政策の不合理性を論点としたうえで、特に機関投資家にプレッシャーをかけることにあります。
プレスリリースの中でTCI代表ジョン・ホー氏の次のコメントを紹介しています。
「私たちは、日本生命保険、みずほグループ、三井住友銀行、T&D ホールディング、鹿島建設といった取引先株主又は持ち合い株主がどのようにして深刻な利益相反を回避し、どのような基準に基づいて議決権の行使方法を決めるのか、注意深く見守っていかなければならないと考えています。」
事態はゲゲゲの鬼太郎の妖怪世界戦争のような様相を呈してきました。

【リンク】
2008年5月21日「J パワー第56 回定時株主総会に関する委任状勧誘ならびに持ち合い株主・取引先株主の利益相反に関する問題提起」ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンド
http://www.tcifund.jp/pdf/news_jp27.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-22 08:14 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 21日

ソフトバンク、無議決権優先株の発行を取りやめ

ソフトバンク、優先株の発行を一転取りやめ
ソフトバンクは20日、議決権がない代わりに普通株より配当を多く受け取れる「優先株」の発行準備を取りやめると発表した。同社は8日に優先株の発行準備に入ると発表していた。しかしその後、個人株主から、新株の発行による株価への悪影響などを懸念する声が寄せられ、配慮を余儀なくされたようだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2000K%2020052008&g=S1&d=20080520

【CFOならこう読む】
ソフトバンクの無議決権優先株については、当ブログで5月9日に取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7902931/)。
その後、優先株を使ったエクイティファイナンスに関する取り合わせが相当数に達したとのことで、12日に次のようなコメントを発表していました。
「当社は、平成20年5月8日付プレスリリース「定款の一部変更に関するお知らせ」を発表しました。このリリースにおいて「当社における柔軟な資金調達を可能とするものであり」との記載に関して、株主・投資家より、優先株式を用いたエクイティファイナンスによる資金調達の可能性についての問い合わせを数多く受けております。
 当社においては、現時点でエクイティファイナンスによる資金調達を必要とする事業・投資案件等は一切なく、当面の間エクイティファイナンスを行う意図は全くありません。
 当社はこれまでも、企業価値の向上による株主利益の増大に努め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに対し、適正に利益を還元することを基本方針としてきました。今後も株主の皆様へ様々な形により利益還元を行うように努めるとともに、キャッシュフローの最大化を目標に業績の拡大および株主価値の向上を目指し全力で取り組んでまいります。」
しかしその後も株価は軟調に推移していました。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9984.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

孫社長の「買収したいところが出てくれば、これを使って買収することもある」としていたが、多くの株主がこの部分を強く意識し、希薄化懸念から一部の個人や機関投資家に嫌気されたとのことです。

ソフトバンクのM&A下手(特に上場会社の買収)を見透かされているのかもしれませんね。

個人的には、ソフトバンクの種類株の株価形成がどのようになるかに注目していたので、発行取りやめは残念です。
【リンク】
2008年5月20日「『定款一部変更の件』の株主総会への付議取りやめについて 」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080520_0001.html



by yasukiyoshi | 2008-05-21 10:00 | 資金調達