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2008年 07月 31日

資本政策詳解-ベンチャーリパブリック

【CFOならこう読む】
ベンチャーリパブリックの株式上場の概要は次の通りです。

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8月は全部で4件IPOがあります。ベンチャーリパブリックの公募価額3000円、2008年12月期予想EPSが129.33円なのでPER23.2倍と最近のIPOの中では比較的高い水準の価額での株式公開となっています。

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ベンチャーリパブリックの主な資本政策は (表2)の通りです。
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2005年6月に連結子会社ベスタグ㈱を8月に連結子会社トラベル・シーオージェーピーを株式交換により完全子会社化しています。

この2社をベンチャーリパブリックは2007年1月1日に吸収合併しています。これにより上場直前期である2007年12月期に抱合株式消滅差益210百万円を計上し、前期までの欠損金を解消しています。

(表3)はベンチャーリパブリックの株主構成です。

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三菱商事、ワークス投資組合(VC)が大株主で、柴田社長は7%の持分を有するにすぎません。

なお、資本政策とは直接関係ありませんが、2005年12月期の財務諸表に後発事象として次の開示があります。
「1 平成17年12月28日、当社の株主より当社に対し、当社と子会社でありますベスタグ株式会社との間の平成17年6月9日付株主総会で株式交換契約の承認を受けた株式交換について、株主総会の招集手続に不備がある等の主張に基づき、株式交換無効確認請求訴訟が提起され、平成18年3月28日に東京地方裁判所にて株式交換無効の判決が出されました。

当社では、本件に関する今後の対応につき、弁護士等の専門家に相談の上協議をしております。

2 平成18年2月10日、当社の株主より当社に対し、当社と子会社でありますトラベル・シーオージェーピー株式会社との間の平成17年7月21日付株主総会で株式交換契約の承認を受けた株式交換について、株式交換の手続に不備がある等の主張に基づき、株式交換無効確認請求訴訟が提起されました。

本件につきましては、弁護士等の専門家と相談の上、平成18年3月22日に東京地方裁判所にて口頭弁論を行いました。第二回口頭弁論が平成18年5月12日に東京地方裁判所にて予定されておりますので、引き続き弁護士等の専門家と相談の上、今後の訴訟対応を検討していく所存であります。」
多少脇が甘い会社なのかもしれません。

【リンク】
株式会社ベンチャーパブリック
http://www.vrg.jp/


by yasukiyoshi | 2008-07-31 08:10 | IPO
2008年 07月 30日

すかいらーくのMBO

すかいらーく業績不振、創業家社長に退任要求 野村系投資会社
外食大手すかいらーくの主要株主である野村グループなどの投資会社2社が、創業一族の横川竟社長に退任を要求したことが29日明らかになった。国内最大規模のMBO(経営陣が参加する買収)で再上場を目指しているが、ガソリン高に伴う外食不振で業績が改善せず、両社が不満を強めた。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080730AT2C2901P29072008.html
【CFOならこう読む】
MBOとは、多くの場合”経営者による買収”と説明されます。
例えば、あずさ監査法人のウェブサイトではMBOを次のように定義しています。
「企業の子会社や事業部門の経営者、従業員がベンチャーキャピタルや金融機関から資金を調達し、その子会社の株式を買い取ったり、新会社を設立し営業を譲り受けることで独立するという形態のM&Aのことを指します。現代版『暖簾分け』とも言われます。」
しかしMBOもM&Aの1つの手法である以上、当然に支配権の移動を伴います。支配権は経営者に移動するのでしょうか? そうではありません。支配権は資金の大部分を提供するバイアウトファンドに移動するのです。MBOとは、経営者による買収ではなく、経営者もごく一部の持分を取得する形で行われる買収形態なのです。

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(2008年7月30日日経新聞より)

この点、服部暢達氏は著書「M&A最強の選択」で次のように説明しています。
「実はMBOというのは、買収ファンドが相対的に小額の自己資金を株式に投資して、残りの(大半の)買収資金をノンリコース・ローンで調達するLBOの一形態なのだ。買収ファンドが上場企業を無理やりLBOで買収するというとマネーゲームのイメージが強く社会的に批判を浴びかねない場合に、買収ファンドが経営陣に参加をよびかけるのだ」
だから買い手であるファンドは、実績を出せない経営者をクビにせざるを得ません。問題は、経営者自身がこういったMBOの本質を理解しているかどうかです。経営者が、MBOを”経営者による買収”と誤解しているなら、買い手である自分がクビになることを受け容れられないでしょう。

野村ホールディングスは、すかいらーくへのTOB開始を知らせるプレスリリースのサブタイトルを” すかいらーく経営陣によるマネジメント・バイアウトについて”としています。私はこの表現に少なからずいかがわしさを感じます。

【リンク】
平成18年6月8日「すかいらーく株式の公開買付け開始に関するお知らせ」野村ホールディングス株式会社 野村プリンシパル・ファイナンス株式会社
http://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/holdings/20060608/20060608_c.html


by yasukiyoshi | 2008-07-30 08:42 | MBO
2008年 07月 29日

企業価値研究報告書の位置付け

司法判断に抵触する内容 「ガイドライン」不適切 個別事例の蓄積重視せよ
今年6月30日、企業価値研究会(経済産業省産業政策局長の私的研究会)は、「近年の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」と題する報告書(第三次報告書)を公表した。これは2005年5月の第一次報告書及び2006年3月の第二次報告書に続く、同研究会がまとめた買収防衛策のあり方に関する三番目の報告書である。
(日本経済新聞 2008年7月29日 27面 経済教室 「買収防衛策ー企業価値研究会をめぐって㊤」 太田洋弁護士)
【CFOならこう読む】
6月13日の記事(http://cfonews.exblog.jp/8120482/)で、私は企業価値研究会及び第3次報告書に対する違和感を次のように表現しました。
「ただあえてこのようなものを出さなければいけないというのはどういうことなのか、こんなものがなければ、司法も弁護士もまっとうな判断ができないのか、そうだとするととても情けない話だと私は思います。」
太田弁護士は、企業価値研究報告書の姿勢を「司法の独立性に対する行政の介入」として次のように批判しています。
「最高裁の判断に受け入れ難い部分があるなら、「ガイドライン」に類する形ではなく、立法提言の形や、それに対する(論評としての)「批判」の形で報告書を公表すべきである。建前上は「私的」研究会であるとはいえ、経産省という行政機関の公的権威をバックに、最高裁の判断内容の一部を事実上否定するような内容を、法令との関係や位置付けも不明確な形式で一般的に通用させようとするのは、三権分立の原則からも「ルール違反」といわざるを得ない。これでは企業や株主、投資家の間に無用の混乱を招いてしまう。
あえて批判をおそれずにいえば、わが国は、法的根拠の乏しい、官僚主導のルール形成や裁量行政が幅を利かせる時代を過去のものとしたはずである。実務も「お上」頼みでむやみに行政に「指針」を求めるのは自己責任の放棄である。」
経産省としては、日本の資本主義の健全の発展のために、買収防衛策のあるべき方向性へ誘導することが、自分たちの使命だと考えているようですが、ブルドックソース事件の際の、経産次官の「東京高裁判断は画期的」(http://cfonews.exblog.jp/6090182/)という発言からもわかるように、経産省の描くビジョンも一枚岩ではありません。導きたい方向性があるなら、現政権の政策としてそれを明確にしたうえで、国民に信を問うのが筋だと私は思います。

【リンク】
平成20年6月30日「企業価値研究会報告書-近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方-」経済産業政策局産業組織課
http://www.meti.go.jp/report/data/g80630aj.html


by yasukiyoshi | 2008-07-29 08:57 | 買収防衛策
2008年 07月 28日

資本政策詳解-アスコット

【CFOならこう読む】
アスコットの株式上場の概要は次の通り。

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8月最初のIPOです。公募価額650円、2008年9月期予想EPSが293.52円なのでPER2.21倍と極めて低い水準の価額での株式公開となっています。

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アスコットの主な資本政策は (表2)の通りです。

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(クリックすると拡大表示されます)

2004年以前に発行された新株予約権付社債の新株予約権行使(分割調整後行使価格41.66円)により、加賀谷社長の上場時シェア50%超(加賀谷インベストメント含む)を確保する資本政策になっています。

(表3)はアスコットの株主構成です。

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従業員持株会、従業員に対するストックオプション共に低水準で、株式による従業員に対するインセンティブはあまり重視していないように見受けられます。

【リンク】
株式会社アスコット
http://www.ascotcorp.co.jp/index.html


by yasukiyoshi | 2008-07-28 11:51 | IPO
2008年 07月 26日

日本の株式市場は効率的か? その2-昭和シェル・東燃のケース

石油元売6月中間 会計処理方法で業績に明暗
石油元売り2社の2008年6月中間期の連結業績は、原油在庫の評価など会計処理方法の違いで明暗が分かれた。25日、昭和シェル石油は上方修正、東燃ゼネラル石油は下方修正をそれぞれで発表。ただ、原油高に伴う価格転嫁が十分に進まず、会計処理方法の影響を考慮した実質ベースの収益は両社とも厳しいのが実態だ。
昭和シェルの中間期の純利益は前年同期比86%増の390億円となり、従来予想を190億円上回った。同社は原油の在庫評価方法として、期初の在庫額と期中の仕入額を合計して平均する「総平均法」を採用。期中に原油価格が上昇すると、期初の割安な在庫による利益のかさ上げ効果(在庫評価益)が発生する。6月末のドバイ原油の実勢価格は昨年12月末に比べ1バレル当たり約40ドル上昇。在庫評価益が約400億円発生し、利益を大きく押し上げた。
一方、東燃ゼネラルの中間期の純利益は前年同期比65%減の59億となり、従来予想を101億円下回った。同社が在庫評価方法として採用する「後入先出法」では、直近に仕入れた在庫から先に出荷したとみなすため、売上原価が時価に近くなり、在庫評価益が発生しにくい。

(日本経済新聞 2008年7月26日 15面)
【CFOならこう読む】
会計上の在庫評価損益は、税金の影響を除くとキャッシュフローに影響しません。ということは、インフレ局面では会計上の利益が小さく出る後入先出法の方が平均法と比べ、課税所得が小さくなる分有利であると言えます。したがって市場が効率的であるなら、次のようなことが言えます。
「FIFO(先入先出法)によれば、先に在庫として積まれた商品の原価を費用控除する。LIFO(後入先出法)によれば、倉庫に最後に到着した商品の原価を費用控除する。インフレ率が高いときには最初に購入した商品のコストは、通常最後に購入した商品のコストよりも低い。したがって先入先出法によって計算された利益は、後入先出法によって計算された利益よりも大きくなるように見える。

さて、これが、プレゼンテーションの問題にすぎないのであれば、後入先出法から先入先出法に変更することは、何ら実害をもたらすものではないだろう。しかし、内国歳入庁、株主への報告に用いられるのと同じ方法を用いて企業の税金が計算されるべきだと主張している。したがって、後入先出法を用いることにより当面の税金支払いが軽減されている場合には、見かけ上の利益も低くなっていることになる。

仮に市場が効率的であるならば、投資家は見かけ上の利益の減少をもたらすものであっても、後入先出法への会計の変更を歓迎するだろう。BiddleとLindahlはこの問題を研究し、このとおりのことが実際に起きており、後入先出法への変更は通常以上の株価の上昇をもたらすと結論付けた。株主は、計数の背後を読み、節約された税金の額に焦点を当てているようであった。」「コーポレートファイナンス」(日経BP社)
つまり日本の株式市場が効率的で、かつ業績予想修正の影響がすでに株価に織り込まれていないのであれば、週明け東燃ゼネラルの株価は上がり、昭和シェルの株価は下がるはずです。

逆にそうならないとすれば、日本の株式市場は効率的でないということになります。

そして日本の株式市場は会計情報の持つ意味を正しく価格に織り込めない、つまりセミストロングフォームのレベルで日本の株式市場は効率的でないことを示す実例は枚挙にいとまがありません。

だから東燃ゼネラルと昭和シェルの株価が週明け、上とは逆の方向に動く可能性も十分にあるのです。

【過去記事】
2008年03月26日「日本の株式市場は効率的か?-出光興産のケース」
http://cfonews.exblog.jp/7602184/


by yasukiyoshi | 2008-07-26 09:30 | 会計
2008年 07月 25日

社外取締役-昨日の続き

【CFOならこう読む】
ヴァージングループ会長リチャード・ブランソンの「僕たちに不可能はない」(中村紀子訳 インデックス・コミュニケーションズ)を読みました。

ヴァージンは1986年に株式を上場したのですが、すぐに非公開化してしまいました。その理由をリチャード・ブランソンは本の中でこう語っています。
「だが、シティのやり方に愛想が尽きるまで、そんなに時間はかからなかった。シティと僕とは結局相容れないのだ。公開したあとは、どのバンドと契約を交わすか話し合うために、それまでのように自宅兼仕事場の船でパートナーたちとリラックスしたミーティングを持つ代わりに、取締役会のご意見を頂戴しなければならなくなった。彼らのほとんどは、音楽ビジネスとは何かをてんで分かっていなかった。一夜にして何百万枚ものセールスを叩き出すレコードの作り方など、知るはずもなかったのだ。おまけに、ライバル会社を出し抜いて人気バンドと契約を交わさないといけないというのに、取締約会が開かれるまで何週間も待たなければならなくなった。いざ取締約会が開かれたときには、時すでに遅し、の状態だ。さもなくば、取締役会の連中がこんなことをほざく。「ローリング・ストーンズと契約するですって? うちの家内が嫌ってるんですよねぇ。ジャネット・ジャクソン? 誰ですかそれ?
僕はそれまで、素早く決断を下し、直感に従って行動してきた。ところが今は「赤テープ」と取締約会にぐるぐる巻きにされ、規則規則の毎日だ。それに、ぴかぴかの大型テーブルの上座に捉えられ、周りをピンストライプの背広に囲まれながら、「ヴァージンとは何か」を説明しなければならないのには反吐が出そうだ。そもそも今までの僕には執務室のようなものがなくて、僕の「机」は船の居間にある座り心地満天の肘掛け椅子、黄色のメモ帳に必要なことを書き込んでいればそれで良かった。だから何より、自分の足で立っている気持ちがしない。利益を倍にしているのに、なぜかヴァージンの株は下降していく。そして、僕は人生で初めて、欝に陥った。」
私はリチャード・ブランソンに何を言うべきでしょう。少なくとも、昨日お話ししたようなことを、したり顔で語ることはできません。リチャード・ブランソンが言っていることは100%正しい。

会社には、”株式公開すべき会社”と”株式公開すべきでない会社”があるのです。ヴァージンは”株式公開すべきでない会社”、そして日本の上場企業の多くも”株式公開すべきでない会社”。

そういう会社は、リチャード・ブランソンのように、直ちに非公開化すべきだと私は思います。

【リンク】
僕たちに不可能はない
中村 起子

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インデックス・コミュニケーションズ 2008-07-22
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by yasukiyoshi | 2008-07-25 08:39 | コーポレートガバナンス
2008年 07月 24日

社外取締役

「仲間内」に投資家厳しく 中立・独立性を疑問視
社外役員の存在意義が問われている。社外から中立な人材を招いて取締役会に外部の声を取り込み、企業価値の向上やコーポレートガバナンスの改善に資するのが本来の機能だ。しかし現実は中立性や独立性に乏しい名ばかりの「社外役員」が多い。形式上の要件を満たしていても期待される役割を果たしているか疑問視する向きもある。
(日本経済新聞 2008年7月24日 16面 社外役員を問う -上-)
【CFOならこう読む】
会社法では、社外取締役を次のように定義しています。
「社外取締役とは、「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがない者をいう」(会社法2条15項)
「監査役設置会社」では社外取締役の設置義務はありませんが、「委員会設置会社」では指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会は、その過半数が社外取締役により構成されなければなりません。

会社法では、親会社関係者・重要な取引先の関係者等であっても社外取締役の要件を満たすので、その独立性に疑義があると指摘されています。
「社外取締役に実質的に求められる資質は、執行役からの「独立性」であるが、その適格性は疑わしい。執行役に支配されていなくても、執行役と利害を共通にする点が多い」(江頭憲治朗「株式会社法」有斐閣496頁)
今年5月に、カルパースなど欧米の有力な年金基金や運用会社7社が、「日本コーポレートガバナンス白書」という提言を公表しています(http://cfonews.exblog.jp/7947236/)。

記事にもあるように、白書は、「独立した立場で経営陣を監督する社外取締役を最低3人指名(中期的には社外取締役が取締役会の3分の1、長期的には2分の1を占めるのが望ましい)」と提言しています。そして社外取締役の適格性を担保するため、「合理的で透明なプロセスを経て、適切な能力を備えた社外取締役を指名し、その独立性と適合性を企業開示文書で株主に伝える」というような手続を要求しています。

社外取締役の要件については、次のように国内でも様々な提言がされています。
「社外取締役は、会社法上の社外取締役の要件を充足するだけでなく、その役割に相応しい実質的な独立性を具有することが求められる。したがって、親会社や主要な取引先等の取締役または使用人が子会社、特に上場会社の社外取締役を兼務すること、取締役の相互派遣等はこれを避けるものとし、社外取締役の就任期間は原則として5年を超えない」(新コーポレート・ガバナンス原則」

「実質的独立性に疑義がある者①大株主又はその利益を代表する者、②経営者又は従業員である(あった)者、③グループ会社の経営者又は従業員である(あった)者、④重要な取引関係がある(近い過去にあった)別の会社の経営者又は従業員である者、⑤当該会社のアドバイザーとして、取締役としての報酬以外に高額の報酬を受け取っている(近い過去に受け取っていた)者、⑥上記のいずれかに該当する近親の親族を有する者、⑦会社間における取締役の相互兼任がある場合の取締役である者、⑧当該会社の取締役に就任してから、すでに長期間が経過している者」(日本取締役協会「独立取締役コード(2005年10月13日)
これらによれば、社外取締役として顧問弁護士を選任することも(学研のケース)、上場子会社の社外取締役を親会社の使用人が勤めることも(富士通・ニフティのケース)も容認されないということになります。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-24 08:04 | コーポレートガバナンス
2008年 07月 23日

解散価値によるTOB−コマ・スタジアムのケース

東宝がコマ・スタジアム買収へ 友好的TOBで
東宝は22日、東京・歌舞伎町の「新宿コマ劇場」を運営するコマ・スタジアムを完全子会社化すると発表した。株式公開買い付け(TOB)を実施し、友好的に買収する。劇場は年内で閉館する予定で、東宝が主導して跡地を再開発する。
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072201000610.html
【CFOならこう読む】
コマの7月22日終値1545円に比し、TOB価格は何とその4.8倍の7400円です。このTOB価格は何のバリューに基づくものなのでしょうか?

新聞記事によると東宝のTOBの目的を次のように説明しています。
「コマは演歌など興業の不振から主力の「新宿コマ劇場」閉鎖を決めたが、建物の解体から新しいビルの完成まで約4年間は事業停止となる。事業の継続が難しくなるため、東宝傘下で再建を図る。東宝はコマ劇場に隣接する自社の不動産と一体で再開発を進める。」(日本経済新聞 2008年7月23日 11面)
東宝は、この点公開買付開始公告の中で次のように書いています。
「当社は、対象者の所有する「新宿コマ劇場」建物の所在地(東京都新宿区歌舞伎町一丁目19 番1)を含む一帯の土地(以下「本件土地」といいます。)を所有しており、対象者は、本件土地5,385.33平方メートルの南側部分3,164.38 平方メートル(以下「本件土地南側部分」といいます。)を当社より賃借し、「新宿コマ劇場」建物の敷地として利用しております。また、当社は、本件土地の北側部分を、自社の所有する「新宿東宝会館」建物(地下4階・地上9階、テナントとして映画館・飲食店・レジャー施設等)の敷地として利用しております。ところが近年になり、演劇公演における観客ニーズの多様化から、特に対象者が得意とした演歌公演の観客動員の減少が続き、対象者は深刻な業績不振に陥りました。そのため、対象者は、平成15 年11 月には「経営再建計画」を策定し、平成17 年3月には「梅田コマ劇場」の資産売却により大阪地区の劇場経営から撤退いたしました。その後、対象者は、「新宿コマ劇場」を唯一の拠点として、話題性のある企画公演、他社との提携・貸館公演の実施等、時代のニーズに合った公演施策への転換を図ってまいりましたが、観客動員の回復には結びつかず、平成20 年3月期決算では2期連続の大幅な営業赤字を計上するに至り、再び抜本的な経営の見直しを迫られました。

また、「新宿コマ劇場」(昭和31 年築)及び「新宿東宝会館」(昭和44 年築)はともに、築後相当の年数が経過し、施設・設備の老朽化が激しくなっております。さらに、歌舞伎町一丁目地区は、演劇劇場2館、映画館計14 スクリーンが集積する一大映画・演劇興行街でありますが、昨今の周辺環境の変化や近隣競合地区へのシネマコンプレックス(複合映画館)の新規出店の影響を受け、映画・演劇興行立地の地盤沈下が急速に進んでいる状況にあります。

このような事態を踏まえ、対象者は、「新宿コマ劇場」建物の敷地を所有する当社に対して全面的な経営支援を要請し、「新宿コマ劇場」を閉館して当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組むことが、最善の選択との判断に至りました。また、当社にとっても、本件土地は、都内の主要繁華街では希少な大型物件でありながら、きわめて収益性・効率性の低い資産と化しており、当社の経営方針に照らして、本件土地の早期の再開発による有効活用が必要と考え、そのためには、何よりも本件土地南側部分の借地権を有する対象者の協力が不可欠と判断いたしました。」
要するに土地再開発のためにコマが有する借地権を取得する必要があり、TOBの目的はそこにあるというわけです。

こういうことですから、コマ・スタジアムの評価をもはや継続価値によって行うことはできません。東宝は時価純資産法に基づきTOB価格の決定を行ったことを開始公告の中で次のように説明しています。
「当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定する際の参考とするため、当社及び対象者から独立した第三者算定機関としての算定人であるアビームM&A コンサルティング株式会社(以下「アビームM&A コンサルティング」といいます。)に対し、対象者の株式価値の評価を依頼しました。アビームM&A コンサルティングは、当社からのかかる依頼に基づき、時価純資産法及び市場株価法により対象者の株式価値の評価を実施し、当社は、アビームM&A コンサルティングから平成20 年7月18 日付で株式価値算定書(以下「アビームM&A コンサルティング算定書」といいます。)を受領しています。それぞれの手法において算定された対象者の株式1株当たりの価値の範囲は、時価純資産法では7,057 円から7,401 円、市場株価法では1,555 円から1,728 円です。なお、アビームM&A コンサルティングは、対象者の株式価値の評価においては、対象者の本件土地南側部分の借地権には相当の含み益が存在しその重要性が高いことから、時価純資産法を採用するとともに、株式会社生駒データサービスシステム(以下「生駒データサービスシステム」といいます。)により実施されたかかる借地権の不動産鑑定に基づき、かかる借地権の適正な時価を対象者の株式価値に反映しております。また、対象者が唯一の事業所であり収益基盤であった「新宿コマ劇場」を閉館して、当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組み、対象者の演劇事業が大幅に縮小されることが予定されていることから、対象者の事業資産から生み出される将来キャッシュフローに基づく株式価値の評価を行うことは難しいため、ディスカウンティッド・キャッシュフロー法は採用しておりません。当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定するに際して、アビームM&A コンサルティング算定書の時価純資産法の評価結果を重視しつつ、対象者に対する事業・法務・会計・税務に係るデュー・ディリジェンスの結果、対象者による本公開買付けへの賛同の可否、対象者株式の市場価格の推移、及び本公開買付けの見通し等を総合的に勘案し、かつ、対象者と協議・交渉した結果等も踏まえ、平成20 年7月22 日の取締役会において本公開買付けにおける買付価格を7,400 円と決定いたしました。なお、本公開買付けにおける買付価格は、対象者株式の株式会社大阪証券取引所(以下「大阪証券取引所」といいます。)市場第二部における平成20 年7月18 日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値1,559 円(小数点以下を四捨五入)に対して約375%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20 年7月18 日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値1,680 円(小数点以下を四捨五入)に対して約341%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20年7月18 日の終値1,545 円に対して約379%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムをそれぞれ加えた価格となります。」
なお、TOBに先立ち、5月28日付で東宝はコマ・スタジアムと「新宿コマ劇場」跡地の再開発に共同して取り組む旨合意したことを公表しています。時価純資産法による評価の前提として、このような合意が必要であると考えたのではないかと推察されます。

【リンク】
「投資家の皆様へ」東宝株式会社
http://www.toho.co.jp/toho_ir/welcome-j.html

開示情報 平成20年7月22日「株式会社コマ・スタジアム株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」


by yasukiyoshi | 2008-07-23 08:42 | TOB
2008年 07月 22日

資本政策詳解-イデアインターナショナル

【CFOならこう読む】
約1ヶ月ぶりのIPOです。引受価額2,530円、平成20年6月期予想EPSが204.84円なのでPER12.3倍の水準です。
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イデアインターナショナルの主な資本政策は (表2)の通りです。
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平成17年に2度第3者割当増資を行っていますが、1度目の時の発行価格は25000円、2度目の時の発行価格は410000円と大きく差をつけています。1度目の増資の割当先には橋本社長も含まれています。平成17年6月期のBPSは162,062円、EPSは74,714円です
から1度目の価格は相当に割安であると言えます。

(表3)はイデアインターナショナルの株主構成です。

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上場時点で、橋本社長の持株比率は52.9%(潜在株式含めず)、また社長・役員・従業員合計で60%超(潜在株式含む)の持株比率となっています。従業員持株会はありませんが、従業員39人に対しストックオプションを中心に全体の4.3%の株式を割り当てています。

【リンク】
ライフスタイル商品の提供 I.D.E.A International
http://www.idea-in.com/


by yasukiyoshi | 2008-07-22 11:23 | IPO
2008年 07月 19日

無議決権株の価格

普通株より割安に評価 日本市場の未熟さ反映?
「日本の株式市場のために、議決権のない優先株は必要だ。我々が実験台になる」。伊藤園の本庄八郎社長は他社に先駆け、昨年9月に同株を上場させた意義をこう強調する。「議決権の拡散を恐れ、資金調達に踏み切れない企業にとって成長の一助になる」と同社長。だが高い理想と裏腹に、伊藤園の無議決権優先株の株価は上場来、低空飛行が続いている。
配当が普通株に連動し25%上乗せされるにもかかわらず、株価は上場来ずっと、普通株より3-4割程度安いまま。伊藤園に続く企業が出ないのは「今、上場させても市場で割安に評価される」(大手食品企業)との警戒感もある。

(日本経済新聞 2008年7月19日 14面 無議決権株を追う㊦)
【CFOならこう読む】
このコラム、日経にしては珍しく(?)面白い記事です。

なぜ伊藤園の種類株の株価は普通株より3割以上も安いのか。記事ではその理由を2つ挙げています。

①無議決権優先株が東証株価指数に採用されていないため流動性が低い
②普通株にあって優先株にない議決権の価値が大きいから、価格差が拡大している

さらに記事は、イタリア、韓国の事例を引いて、
「国の法制度や市場のルールが未整備で、企業経営に対する規律付けが弱いと、株主は自ら議決権を握り、株主の利害に背かないよう経営を監視する必要性が増す。その場合、議決権の価値は増大し、結果として無議決権株と普通株の価格差が広がる。」
という仮説を立てています。

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確かに、安定株主作りに勤しむ日本の上場企業を見ると、議決権の価値は思っている以上に大きいのかもしれませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-19 09:19 | 種類株式