2009年 01月 16日

2009年度税制改正大綱―REITの導管性要件変更

税改正で再編機運高まる 金融危機下、信用力向上目指す
「高く評価したい」。不動産証券化協会の岩沙弘道理事長(三井不動産社長)は2009年度の政府税制大綱に満足げだ。不動産投資信託(REIT)の合併を阻んできた税制上の障壁が取り払われるからだ。
金融危機下、経営の厳しいREITが市場から退場するには2つの選択肢がある。一つは民事再生の適用や自主的な解散による上場廃止。もう一つは別のREITに吸収合併してもらうことだ。民事再生法は昨年10月にニューシティ・レジデンス投資法人が適用を申請したが、合併はまだ例がない。
なぜか。経営難で吸収される側のREITは、一口当たり純資産を下回る評価で投資口の交換比率が決まると予想され、その差額は「負ののれん」の名目で、吸収する側の利益として計上される。だがこれはあくまで帳簿上の利益で、利益分の現金が入ってくるわけでない。
一方、REITは利益の9割超を投資家に分配すれば法人税が免除される。課税を回避するには負ののれん代で利益が増えた分、分配金も増やさなければならないが、手元にある現金の範囲内で分配すれば利益の9割に届かず、法人税を課税される恐れがある。
2009年度の税制改正では、負ののれん代を利益から控除できるようになり、合併時の課税リスクが解消される。合併への道が開けたことで、生き残りを目指した再編ムードが高まりつつある。

(日本経済新聞2009年1月16日12面 試練のREIT 下)
【CFOならこう読む】
平成20年12月19日に財務省から公表された、「平成21年税制改正の大綱」では、特定目的会社等の課税の特例について、次のとおり見直しを行う旨記載があります。
「支払配当の額が配当可能所得の金額の100分の90相当額を超えていることとする要件を、支払配当の額が配当可能利益の額の100分の90相当額を超えていることとする。
なお、負ののれんがある場合に、その発生事業年度において配当可能利益の額から控除する等所要の調整措置を講ずる。」
変更点は2つです。
1つは、従来、導管性要件の90%の判定を、税務上の配当可能所得に対する支払配当金の割合で行っていたのを、会計上の配当可能利益に対する支払配当金の割合で判断することになったというもの。
もう1つは、負ののれん(の償却額?)を導管性要件の判定の際、分母の利益から控除するというものです。

1つ目の改正により、会計上減損損失が計上することの障害がなくなります。また2つ目の改正により投資口価値が純資産価値(NAV)を大きく下回るREITの吸収合併の道が開かれることになります。

2009年は、
「REITの再編元年となる可能性が高い」(前掲紙)
と私も思います

【リンク】
平成20年12月19日「平成21年度税制改正の大綱」財務省
http://www.mof.go.jp/genan21/zei001.pdf


# by yasukiyoshi | 2009-01-16 09:41 | 税制
2009年 01月 15日

住友化学、退職給付会計における数理計算上の差異の会計処理方法変更を検討

住友化、長期化を検討 利益への影響、平準化狙う
住友化学は企業年金の想定利回りと実際の運用成績との差である「数理計算上の差異」の償却年数を現行の3年から長期化する検討に入った。現状の平均残存勤務年数である15年に、2010年3月期から切り替える案が出ている。年金運用の環境変化に伴い営業利益が大きく変動するため、情報開示面で支障があると判断した。
(日本経済新聞2009年1月14日12面)
【CFOならこう読む】
「数理計算上の差異」の償却年数を長期化する方向に変更した事例としては、セコムのケースを当ブログで昨年5月28日に取り上げています。
http://cfonews.exblog.jp/8022357/

セコムの場合、「数理計算上の差異」を発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用していましたが、2008年度3月期より、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主して10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました

セコムは変更の理由を次のように開示しています。
「当社は、従来退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生連結会計年度に全額損益処理する方法を採用してきました。
この会計処理方法採用の背景には、確定給付型年金制度と確定拠出型年金制度の併用および厚生年金基金の代行部分の国への返上を骨子とする退職給付債務の減額を伴う退職給付制度の抜本改訂を決定したことがあり、長期的に確定給付型年金制度を確定拠出型年金制度へ全面移行する方針を前提としておりました。
確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度へ全面移行する方針については、関係諸法令の規制などもあり、確定拠出型年金制度への移行割合が30%と全面移行(100%)に比べ大きく乖離している状況にあり、関係諸法令の改正も不透明であることから、平成20 年3月開催の取締役会において確定拠出型年金制度への全面移行を断念する決議をいたしました。
確定拠出型年金制度への全面移行を断念したことに伴い、移行を円滑に進める目的であった数理計算上の差異の早期解消も必要性が薄れている現状においては、従来の会計処理方法に従った場合には、数理計算上の差異が発生連結会計年度の営業利益に大きな変動を与える可能性があり、年金資産の運用を含む退職給付制度が中長期的な視点を求めて行われるものであるという本来の性質上、単年度の数理計算上の差異が当該発生連結会計年度の企業業績を直接変動させる従来の会計処理方法が適合しなくなってきております。以上のような状況から、数理計算上の差異の処理方法を発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10 年)による定額法により、発生の翌連結会計年度から損益処理する方法に変更しました。
この変更により、従来の方法によった場合と比較して、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ10,096 百万円増加しております。」
セコムのケースは、会計処理の前提となる経営判断に変更があったため、何とか説明がついていますが、一般的には合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

退職給付会計に関する実務指針の策定に携わった泉本小夜子氏も、著書「退職給付会計の知識」の中で次のように述べています。
「退職給付会計での会計方針の変更は、いずれも多額の費用(または利益)の計上方法が変わることになりますから、合理的な理由が必要です。「合理的」とは、従前の会計処理より新たに採用した会計処理のほうがより適切に財政状態と経営成績を表すことになるということです。どうして変更する必要性があるのか、何がより適切になるのかということを適切に説明することが必要なのです。

退職給付会計では、会計基準変更時差異の処理は激変緩和措置として15年以内の一定年数で処理すればよいと政策的に認めています。企業が適用初年度の期首に決定した5年、10年という年数には意味がありませんから、これを変更したいと考えても、通常は合理的な理由にはならないでしょう。」
多くの会計士が泉本氏と同様の見解であると思われますので、慎重に検討することをお勧めします。

【リンク】

退職給付会計の知識 (日経文庫)
泉本 小夜子

453211098X
日本経済新聞社 2006-03
売り上げランキング : 91225
おすすめ平均 star

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


# by yasukiyoshi | 2009-01-15 09:28 | 会計
2009年 01月 14日

内部留保活用で雇用守れる?

利益の蓄積、手元資金と別
雇用を守るため、企業の「内部留保」を活用すべきだとの意見が政治家や労働組合から出ている。だが内部留保は企業が自由に使える手元資金とは違う。内部留保の考え方の要点をまとめた。
(日本経済新聞2009年1月14日 11面 雇用Q&A)

【CFOならこう読む】
確かに、最近多くの政治家から内部留保を使って雇用を守れ、といった意見が聞かれます。しかしこういうことを言う人は、企業の財務諸表の見方がよくわかっていないように思います。京セラの創業者である稲盛和夫さんが、「稲盛和夫の実学―経営と会計」の中で、”剰余金(準備金)は会社のどこの金庫にあるのか”ということを経理担当者に何度も聞いたけれど、なかなかその意味がわからなかった、というようなことを書かれていますが、同様の誤解が「雇用を守るため内部留保を活用すべきだ」と言う人にあるのだと思います。

今日の新聞記事にもあるように、内部留保(=利益剰余金)とは、純資産の内訳のひとつにすぎません。
純資産とは、資産と負債の差額ですから、その分手元資金として会社が保有しているわけではありません。
これを取り崩せということは、企業に損を出せと言っているに等しいのです。損を出してまで雇用を守れ、ということを政治家は何の権利があって経営者に要求できるのでしょうか?

損を出さないまでも、従業員への配分を厚くしてそこまで利益を出さなくても良い、という意味で、「内部留保活用」という言葉を使っている人もいるようですが、資本コストに見合う利益を生めない会社は、上場を維持することはできないのです。
価値創造のプロフェッショナルである企業経営者に対し、価値を毀損しても従業員への配分を厚くしろと要求するのは間違っています。

どうしてもそれをしたいなら、法人税率を引き上げるしかありません。増税によって企業から富を吸い上げ再配分すればよいのです。しかしそんなことをすれば、多くの企業は日本から出て行ってしまうでしょう。そのとき日本人の雇用はいったい誰が守るのでしょう。

企業と従業員は対立するものではありません。価値創造のために共存するものです。逆に価値創造が出来なくなった企業は、市場から退出するしかありません。時代に合わなくなったスキルしか持ち合わせていない従業員も同様です。しかし死ぬわけではありません。再生するのです。どんなに失敗してもやりなおす、それが次のイノベーションを生んで行くのです。

政治が今行うべきことは、死に行く企業や死に行くスキルを生きながらえさせることではありません。今新たに生まれようとしているものを支援することです。

そういう意味では、今日の日経新聞3面、景気討論会記事中での深尾光洋氏(日本経済研究センター理事長)の発言、「昨年半ばから今年末までにGDPは3%ぐらい落ち込む。そうすると職がなくなる人が200万人規模で出る。ムダな公共投資より職業訓練をすべきだ。一人200万円使っても百万人で2兆円で済む。」は的を射ていると思います。

ところが日経新聞の39面を見ると、東京都が昨年秋に募集した職業訓練コースは、定員の2.6倍と狭き門であったと報じています。
私は、給食配送の仕事をしながら、会計士の試験勉強をしていた時期があります。配送先は、幼稚園、中学校、職業訓練校でしたが、職業訓練校の学生がもの凄く真剣に勉強をしていたのをとても印象深く覚えています。

今カネを使うべきはここだと私は思います。

【リンク】
稲盛和夫の実学―経営と会計
稲盛 和夫

4532190061
日本経済新聞社 2000-11-07
売り上げランキング : 1283
おすすめ平均 star

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


# by yasukiyoshi | 2009-01-14 10:51 | コーポレートガバナンス
2009年 01月 13日

新規株式公開(IPO) 今年も50社前後の見通し

100年に1度ともいわれる金融危機のさなかにある2009年。株式相場の急回復は見込みにくく、新規株式公開にとっては逆風が続くとみられる。1月は株券電子化の影響で上場はない。2~3月には10社超の上場が予想されるが、経営環境悪化で想定していた上場スケジュールを延期する企業も多いとみられる。
今年1年間の新規上場社数は、歴史的低迷と言われた2008年(49社)と同水準の50社前後にとどまるというのが、もっぱらの見方だ。

(日経ヴェリタス2009年1月11日24面)
【CFOならこう読む】
本日(1月13日)の経済教室で細野薫学習院大学教授が、IPOの停滞による日本経済の生産性低下の恐れについて次のように指摘しています。
「これまでのIPOを産業別にみると、情報サービス、ソフトウェア、ハードウェアなどのIT(情報技術)関連、産業向け財・サービス、金融など、知識資産が重要な経営資源である産業が過半を占め、IPOで得た資金の多くは、研究開発など生産性向上のために使われていたと推測される。それだけに今後もIPOの停滞が続き有望企業が資本市場から成長資金を調達できないと、日本経済の生産性を一層低下させる恐れが強い。」

起業家にとって今が絶好のチャンスであると野口悠紀雄氏は”世界経済危機 日本の罪と罰”の中で強調しています。
「旧秩序が邪魔しないし、起業のコストは低下する。「危機がチャンス」とは、「新しいことを始めるのにチャンス」ということだ。」

「変化はチャンスである。日本経済は戦後若返った。しかしそれから60年間不変にとどまった。高度成長期の輸出立国モデルは、90年代の世界経済の構造変化によって有効性を失ったにもかかわらず、無理なマクロ政策によって、07年の夏までは延命した。しかしそれが限度にきた。」

「市場が激しい株価下落というかたちで要求しているのは、日本経済の構造を根本から転換させることである。」
奇しくも、本日の新聞の1面でソニーが今期営業赤字となることが報じられました。
エレクトロニクス部門の不振が主因の赤字は上場来初めてとなります。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090113AT2D1200112012009.html

野口氏の主張は極めて正しいと私は思います。
そして今必要なのは、細野氏が言うように、「企業の新規参入を促す、いわば数年先から10年先を見据えた前向きの政策」なのです。
「戦後の危機的経済状況のなかで、ソニーやホンダのように多くの新しい企業が生まれたことが、その後の経済発展を支えたのである。」
【リンク】
世界経済危機 日本の罪と罰
野口 悠紀雄

4478007934
ダイヤモンド社 2008-12-12
売り上げランキング : 157
おすすめ平均 star

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


# by yasukiyoshi | 2009-01-13 11:14 | IPO
2009年 01月 10日

事業会社による株式オプションのショートポジションードン・キホーテのケース

ドン・キホーテは9日、2008年12月末で19億円のデリバティブ評価損が発生したと発表した。
(日本経済新聞2009年1月10日14面)
【CFOならこう読む】
本件、会社側からの説明がないので、新聞記事に基づき取引の内容をまとめてみます。
「ドン・キホーテと子会社の長崎屋が昨年10月に大和証券SMBCとの間で、三井住友フィナンシャルグループ株のプットオプションの売買契約を行った。
この契約によりドン・キホーテ側はプットオプションの売り手となった。

行使価格:5990円
行使期日:2011年10月6日
ノックアウト価格:6580円
オプション料:2億円」

e0120653_1046558.gif




SMBCは顧客の保有する三井住友フィナンシャルグループ株式の価格低下リスクをヘッジする必要から、本件取引を仲介したものと推測されますが、ドン・キホーテ側はどのような理由で本件取引を行うことになったのでしょうか?2億円のオプション料に魅かれたということでしょうか?

しかし言うまでもなく当該取引は投機取引です。しかもオプションの売り手になるのは、大きなリスクを伴います。ドン・キホーテの有報にはデリバティブ取引の取組方針として次のような記載があります。
「デリバティブ取引は、将来の金利及び為替の変動によるリスク回避を目的としており、投機的な取引は行わない方針であります。」
この方針を昨年10月に変更したということでしょうか?
そうであるなら、そのことについて開示が必要なのではないでしょうか?ドン・キホーテ側にはこの取引を行う理由が他にあったのかも知れません。しかしそうであったとしても経済合理性について十分な検討がなされたのでしょうか?

いずれにしても、事業会社が金融取引で大きなリスクを取るべきではないことを、CFOとしては肝に銘じましょう。

【リンク】
「第28期 有価証券報告書」株式会社ドン・キホーテ
http://db.donki.com/management/pdf/btob/ja/502_pdf1_7532_0806fr.pdf


# by yasukiyoshi | 2009-01-10 10:47
2009年 01月 09日

アーバンコーポレイション問題-昨日の続き

不透明な取引 ルールづくり後追いに
1月23日、東京地裁でアーバンコーポレイションの株主289人が元役員を相手取って起こした訴訟の1回目の弁論が始まった。
原告は300億円の新株予約権付社債(CB)発行で資金繰りがついたと判断し、株を買った個人投資家たちだ。「資金をBNPパリバ証券に払い戻すスワップ契約の存在を知っていたら買わなかった。これでは株取引などできない」。破綻まで契約は開示されず、多くの投資家が巻き込まれた。
スワップ契約を開示しないように強く働きかけたのはパリバ。問題を検証する外部検討委員会の松尾邦弘委員長は「市場を軽視した極めて不適切な行為。幹部の責任は免れない」と断じた。

(日本経済新聞2009年1月9日4面 外資系証券の虚実 上)
【CFOならこう読む】
より本質的な問題として、”経営者と既存株主”との間のコンフリクトに乗じて経営者に取り入り、一般株主の利益に反する”商品”を売り込むことで利益をあげる投資銀行が少なからず存在する点が挙げられます。

特に会社が生きるか死ぬかの瀬戸際にあるときに、”経営者と既存株主”との間に重大なコンフリクトが生じる可能性があります。生き延びなければ職を失うことになる経営者と希薄化を避けたい株主との間には重大なコンフリクトが存在します(エージェンシー問題と言っても良いかもしれません)。

ファイナンスという学問は、企業が多角化をする必要性を否定します。株主が分散投資すればそれで足りると考えるからです。

しかしこの考え方に私は違和感を覚えます。人間が本来持つはずの生存本能を無視しているからです。ゴーイングコンサーンであり続けるという経営者の強い意志が、強い企業を生み、そういった企業群が、活力ある資本主義経済ベースになければならないと私は思うのです。

どこまでも生き続けたいと考える経営者は、時に既存株主の利益に反するとしても、とにかく生きながらえる方策を模索します。そして投資銀行はそういった経営者の知恵袋となることで大きな利益を獲得するチャンスを窺うのです。

これは野放しに出来ません。

今日の新聞にも書かれているように、「不透明な取引が横行するグレーな市場のままでは、一流の参加者は集まらない(大崎貞和・野村総合研究所主席研究員)」のです。
「金融当局の動きが鈍いのは、今回の取引を違法と判断する明確なルールがないためだ。「これまで見過ごしてきた行為を違法とはいえない」(監視委幹部)。立証の難しい案件への「ためらい」が見え隠れする。自主規制を担う日本証券業協会も今回の取引を規制するすべをもたなかった。「問題だが違法ではない」。東京市場では「グレーな取引」が問題になるたびに、新たな規制を作る、いたちごっこが続いてきた。」
(前掲紙)
事前にルールを書き切ることは不可能です。
”株主価値”という大義を掲げるだけではやっていけないということも明らかです。

やはり何らかの包括的な規制が必要です。

しかしこの役割を従来通り役所に委ねることにも抵抗があります。
私は、英国のパネルをより拡張した形で、M&Aに限らず企業の資本取引全般を、民間団体により入口規制をしていく方向が良いのではないか、と思っています。

英国のパネルについては例えば次の論文を参照してください。
http://www.shinnihon.or.jp/knowledge/library/issue/infosensor/2006_02/2006_02_07.pdf

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2009-01-09 10:35 | コーポレートガバナンス
2009年 01月 08日

アーバンコーポレイション問題

背信の構図 「傭兵」暴走止められず
昨年、経営破綻したアーバンコーポレイションに対して、投資家に重要情報を隠したまま不適切な資金調達を働きかけたBNPパリバ証券。同社は業務改善報告書を提出し、事態の幕引きを図るが、市場の不信はぬぐえないままだ。東京市場を舞台に華々しく事業展開する外資系証券の「虚実」を検証する。
(日本経済新聞2009年1月8日4面 外資系証券の虚実 上)
【CFOならこう読む】
本件、当ブログでは9月12日に取り上げました。
http://cfonews.exblog.jp/8602139

以下、スキームの概要を再掲します。
「7月11日 2010年満期 総額300億円のCBをバリバ向けに発行
転換価格 344円(開示日6月26日の終値)
資金使途 財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定

破綻まで存在が隠されていたスワップ契約の概要
7 月11日 BNP パリバに300 億円を支払う
パリバは手元にあるCBを株式に転換したうえで、市場の売買高の12~18%に相当する株数を市場で売却。
”売却した株数×その日の市場の売買高加重平均株価の90%”に相当する金額を日々アーバンコーポレイションに支払う。
出来高加重平均株価の算定の基礎となる株価に一定の下限を設定」

「実際の調達額は91億円。この契約(スワップ契約)はアーバンコーポが破綻するまで開示されず、300億円の資金を調達できたとみていた一般投資家を含む幅広い市場参加者を欺く行為として批判された。」
(日本経済新聞2009年1月8日4面)
今日の新聞によると、この取引を担当したパリバのK氏は2003年10月に、ドイツ証券時代に、有線ブロードネットワークス(現USEN)に対し同様の取引をまとめている事実があったということです。

記事では、
「利益の追求にひた走る外資系証券会社の社員の給与体系は、単年度に稼いだ収益に連動して年間のボーナスを払うという成功報酬体系に近い。短期間で荒稼ぎし、問題が起きれば次の会社に転職するという働き方をする人も目立つ。パリバはこうした「傭兵」の暴走を止められなかった。」
と指摘しています。

”暴走を煽っていた”の誤りではないかと個人的には思います。

サブプライム後、投資銀行は手数料ビジネスに回帰すべき、との意見をあちこちで見聞きしますが、手数料ビジネスにも問題がないわけではないのです。
「本件CB スワップ組合せ取引により、アーバン社が調達した金額は91 億2559 万8771 円、BNPP グループの収益は11 億7976 万9077 円でした。」
 (”BNP パリバ証券会社東京支店 外部検討委員会の調査結果の公表について”より)
投資銀行業務全般について厳しい規制が必要であると私は思います。

【リンク】
平成20年11月11日「BNP パリバ証券会社東京支店 外部検討委員会の調査結果の公表について」BNP パリバ証券会社東京支店
http://japan.bnpparibas.com/pdf/2008/2008.11.11.j1.pdf


# by yasukiyoshi | 2009-01-08 13:35 | 税制
2009年 01月 07日

対日投資 ファンド経由 非課税に

対日投資、ファンド経由を非課税に 政府、促進へ税制改正
政府は対日投資の促進に向け、ファンドを通じて日本に投資する海外投資家への課税の見直し策を固めた。株式譲渡益を原則非課税とすることが柱。日本に拠点がない既存ファンド経由の投資も対象とし、特定投資家のファンドへの出資比率が25%未満であることなどを条件とする。米国の金融危機を発端とした世界経済の悪化による対日投資の停滞に歯止めをかける狙いがある。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090107AT3S0601C06012009.html
【CFOならこう読む】
対象とするファンドは”投資事業有限責任組合”に限定されます。既設のファンドも対象となりますが、日本企業への一年以上の投資実績を前提とされます。

次の条件をクリアする海外投資家が非課税投資家となります。
①ファンドへの出資比率が25%未満
②ファンドの運営会社への出資比率が50%未満
③投資家自身が日本で事業をしていない
④ファンドの運営者や親族ではない
など

より本質的な問題として、配当に関しては二重課税回避の制度が設けられているのに対し、株式譲渡益についてはこのような手当てがなされていないことが挙げられます。
配当と株式譲渡益は裏表の関係にあり、両者を区別するのは理論的ではありません。

海外投資家に限らず、法人が他法人に投資して獲得する配当金及び株式譲渡益はすべて非課税にしていただきたいと、切にお願いする次第です。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2009-01-07 09:54 | 税制
2009年 01月 06日

子会社株式減損に伴うのれんの償却-第一三共のケース

第一三共 のれん代焼却3540億円 ランバクシー株急落で
第一三共は5日、昨年買収したインド製薬最大手ランバクシー・ラボラトリーズの株価下落を受けて2008年4月-12月期に3595億円の株式評価損(単独決算ベース)を計上すると正式発表した。この結果、連結ベースではのれん代の一時償却として3540億円の特別損失が発生する。
(日本経済新聞2008年1月6日 15面)
【CFOならこう読む】
金融商品会計に関する実務指針91項は、市場価格のある有価証券の減損処理について次のように規定しています。
「売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む)のうち、市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(減損処理)しなければならない。」
 「時価のある有価証券の価額が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化するできるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得価額に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。」
第一三共は単体財務諸表上、ランバクシー株式を上記規定に基づき減損処理したものと思われます。

さらに、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針32項はのれんの会計処理について次のように規定しています。
「親会社の個別財務諸表上、子会社株式の簿価に減損処理が行われたことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額と連結調整勘定未償却残高との合計額を下回った場合、その差額のうち、連結調整勘定未償却残高に達するまでの金額について償却しなければならない」
この規定に基づき第一三共は連結財務諸表上、のれん代3540億円を一括償却することになったものと思います。

CFOとしては、子会社株式及び関連会社株式の減損処理を行う場合、連結財務諸表上のれんの償却も行わざるを得ない場合があることに留意が必要です。

【リンク】
2009年 1月 5日「ランバクシー・ラボラトリーズ・リミテッドに係る関係会社株式評価損の計上、及びのれんの一時償却に関するお知らせ」第一三共株式会社
http://www.daiichisankyo.co.jp/4less/cgi-bin/cs4view_obj.php/b_newsrelease_n1/798/090105v1-j.pdf


# by yasukiyoshi | 2009-01-06 08:30 | 会計
2009年 01月 05日

日本版ESOP

広がるか日本版ESOP(従業員持ち株制度)
上場企業の間で、米国発の新たな従業員持株会制度(日本版ESOP)を採用する動きが出始めている。企業が保有する自社株を従業員に渡し、労働意欲の向上に役立てる仕組みだ。経営者の関心も高く、経済産業省は2008年11月に指針を公表した。ただ。制度で使う信託などの受け皿を独立した株主と見なせるのかなど、法律や会計面での課題も浮き彫りになった。日本で新たな制度は根付くのか検証した。
(日本経済新聞2008年1月5日 25面 法務インサイド)
【CFOならこう読む】
あけましておめでとうございます。
本年もご愛読のほど宜しくお願いします。

ESOPは株価が低迷している最近の状況から、日本でも導入に向けて、今年制度の整備が一気に進む可能性があります。

ESOPについて、経済同友会の「株価対策についての意見」の別添に要領よく説明しているので以下に抜粋します。
「アメリカのESOP とは「従業員が株主となることで、資本の分配を従業員にまで広げて株主と従業員の利害を一致させる長期インセンティブプラン」である。
企業の退職給付制度の一つであり、全員参加で拠出は企業のみが行う。企業の損金参入上限は給与の15~25%であり、自社株に投資される。
従業員は退職時まで現金化できない。従って、所得税は退職時に支払われる。なお、運用時は非課税である。
 さらに、このESOP は信託として設立され借入を行うことができる(レバレッジドESOP)。この仕組を簡単に示すと以下の通りである。
1. ESOP が銀行からローンを得る。
2. ESOP はローンで得た資金を使って自社株を買い付ける。この自社株は仮勘定に入れられる。
3. 企業がESOP に毎年、上限枠の範囲で拠出する。
4. ESOP は企業拠出を使ってローンを返済する。
5. ローンが返済されるのに従い、仮勘定の中の自社株は決められた算定式に則り、従業員の個人口座に配分される。
6. 配当は従業員口座に直接、もしくはESOP を経由する形で各従業員に支払われるか、ローンの返済に充てられる。
7. 従業員の退職時に、給付は自社株または現金で行われる。中途退社で給付を受ける場合は、給付金をIRA(個人退職勘定)に入れればペナルティはない。
 つまり、約10 年のローン元本返済を前提とすると2 年分の給与支払総額に当る自社株を一度に買い付けることが出来るのであり、企業自らが巨大株主を創出するのである。」
つまり、この制度の肝要は、従業員をオーナー化させるインセンティブプランであるというところにあり、これを政府が税制上の優遇措置により後押ししているのです。

ところが日本では安定株主対策としてESOPを捉える経営者が多く、ESOPを会社と切り放して見ることが妥当とは思えません。米国の制度をそのまま持ってきても、買収防衛策の一つとして利用されるだけで、株主全体の利益を害する可能性が高いと私は思っています。

記事には、「一番の問題は会計処理にある」と書かれていますが、それは表層面の問題で、本質は日本のコーポレートガバナンスにあります。経済産業省の指針でもこの点の考察はほとんどなく、技術的な議論に終始しています。

企業価値研究会で別途議論させるつもりでしょうか。

【リンク】
平成20年11月17日「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」新たな自社株式保有スキーム検討会
http://www.meti.go.jp/press/20081117002/20081117002-2.pdf
2001 年1 月16 日「『株価対策』についての意見」社団法人 経済同友会
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2000/pdf/010116.pdf


# by yasukiyoshi | 2009-01-05 08:39
2008年 12月 30日

子会社株式売却の際の繰延税金資産取崩し-イオンのケース

イオン最終赤字の公算
イオンの2008年3-11月期の連結業績は、最終損益が赤字となった公算が大きい。米衣料販売子会社のタルボットが実施した保有資産の減損処理や、会計処理の変更に伴う繰延税金資産の取崩しなどが響く。消費低迷で国内の衣料品販売も伸び悩む。2009年2月期通期の見通しを下方修正する可能性もある。
(日本経済新聞2008年12月30日 11面)
【CFOならこう読む】
記事には、
「前期までの子会社株式売却の際に計上した繰延税金資産を取り崩す。」

とあります。これは連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第6号)の平成19年3月29日の変更を受けてのものです。

旧委員会報告6号30項では、
「連結グループ内の会社に投資を売却することによる一時差異の解消については、当該売却取引は連結財務諸表上消去されるので、対応する税効果は第三者に投資を売却するまでは、本報告の未実現損益に係る一時差異と同様に処理することになる。」
とされていたのが、新委員会報告6号では、この文章が削除され、新たに30-2項が設けられました。
「30-2 企業集団内の会社が企業集団内の他の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却すると、個別貸借対照表上の投資簿価が購入後の取得原価に置き換わることになり、投資の連結貸借対照表上の簿価との差額、すなわち、連結貸借対照表上の一時差異の全部又は一部が解消することになる。」
イオンは中間財務諸表で次のように会計処理の変更の開示を行っています。
「(連結財務諸表における税効果会計)
当中間連結会計期間より、改正後の「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会 平成10 年5月12 日 最終改正平成19 年3月29 日 会計制度委員会報告第6号)の第30-2項を適用している。
これにより、前連結会計年度まで連結会社間で子会社株式等を売却した際に生じた未実現利益の消去に伴い計上していた繰延税金資産を当中間連結会計期間にて取崩すこととなったため、繰延税金資産取崩しに伴う法人税等調整額156 億40 百万円を計上した結果、従来の方法に比べ中間純損失が151 億1百万円増加している。」
今年はこれで最後です。
新年は1月5日(月)のスタートになります。
来年は激動の年となるような予感がしますが、時代を映す重要なニュースを、わかりやすく、ためになるように読みほぐしてお伝えしていけるよう今年以上に頑張りたいと思っています。
引き続きご愛読のほど、宜しくお願いします。

それでは、良い年をお迎え下さい。

【リンク】
2008年10月8日「2009年2月期 中間決算短信」イオン株式会社
http://www.aeon.info/ICSFiles/afieldfile/2008/10/08/kessan_2009.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-30 11:41 | 会計
2008年 12月 29日

ディール・オブ・ザ・イヤー エクイティ部門

ベスト1位はヤマダ電機が2月に発行を決めた1500億円のCB。調達資金の一部を自社株買いにあてる「リキャップCB」と呼ばれる新戦略を市場は評価した。
(日経ヴェリタス2008年12月28日 2面)
【CFOならこう読む】
「CBはあくまでも負債と位置付けている。転換を前提とせず、手元資金で償還する方針だ。」(ヤマダ電機 岡本潤取締役兼執行役員専務 前掲紙)
負債と位置付けたCB発行がエクイティファイナンス部門のベストと評価されること自体、今年のエクイティファイナンスの低調さを象徴しています。
「山田昇・現会長の指示も希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろというものだった。」(岡本専務 前掲紙)
リキャップというより、”金利ゼロ&希薄化回避”の条件をクリアするための解がリキャップCBであったということだったのですね。
私のブログでは2008年2月27日にこのディールを取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7371460)。

そこで私は次のような指摘をしています。
「それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。」
リキャップというのは資本コスト引き下げのために行われる、資本構成の変更のことですが、そのためには負債で資金調達し、この資金で自己株取得をする必要があります。
このCBは最適資本構成を指向するものではなく、ゼロコストのためのCB発行+CBの希薄化効果を排除するための自己株取得=(結果として)リキャップCBであったということです。

それにしても山田会長の「希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろ」という指示は、単純明快で何とも言えず迫力を感じますね。

【リンク】
2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-29 08:39 | 最適資本構成
2008年 12月 27日

資本政策詳解-リックコーポレーション

【CFOならこう読む】
リックコーポレーションの株式上場の概要は次の通りです。

e0120653_11222992.jpg


リックコーポレーションは、1955年設立岡山地盤に近畿・瀬戸内地方にホームセンター、ペットショップを展開している会社です。

公募価格は330円、2009年2月期見込みEPSが62.58円なのでPER5.2倍という水準での株式公開となりました。初値は公募価格と同じ330円でした。

e0120653_11223985.jpg


リックコーポレーションの主な資本政策は (表2)の通りです。

e0120653_11224768.jpg


自己株式50万株を全て売り出しに回している点が特徴的です。2008年2月期の自己株式の帳簿価額が78,679千円なので、1株当り@157円と比較的高めの価格で自己株取得を行っています。前オーナーの持株を買い取ったのかも知れません。

(表3)は、リックコーポレーションの株主構成です。

e0120653_11225686.jpg


筆頭株主は、社員持株会(持株比率20.9%)となっています。その他ストックオプションを従業員に付与しており、従業員に対するインセンティブは厚いと言えます(ただし25万株相当は行使価格が400円)。

菅原社長の持株比率は8%に過ぎず、役員、従業員持株会、銀行の持株を合わせて50%超となる資本政策となっています。自己資本比率が2008年2月期で9.6%と非常に低いことと相俟って、経営体制は相当に不安定であると言えます。

【リンク】
平成20年11月「新株発行並びに株式売出届出目論見書」株式会社リックコーポレーション
http://eir.eol.co.jp/extra/3147/pdf/mkr00.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-27 11:39 | IPO
2008年 12月 26日

バリュー・アット・リスク(VaR)

統計過信のツケ 漂流するリスク管理
「まさか相関係数が一に近付くとは」。富国生命保険の桜井祐記取締役は今秋の想定外の金融市場の動きに困惑した。これは日本株、外国株、商品などが同じような値動きをし、リスク抑制の基本手段である分散投資の効果が得られなくなったことを意味する。
金融危機で投資家のリスク管理は根本から揺らいだ。金融機関はバリュー・アット・リスク(VaR)と呼ばれる統計的手法で株、債券などの損失可能性を予測し、資産配分している。1978年ー2007年の30年間の日経平均株価の値動きを前提に計算すれば、1日で5%以上動く可能性は1万分の1以下。これを「無視しうる頻度」と判断して、見合った資金を投じていく手法だ。

(日本経済新聞2008年12月26日 13面 株価 金融技術の限界 下)
【CFOならこう読む】
金融機関に限らずバリュー・アット・リスク(VaR)はもっともポピュラーなリスク計量手法のひとつで、ほとんどのビジネススクールで教えられています。

VaRを言葉で表現すると次のようになります。
「①過去のある一定期間のデータをもとに、
 ②将来の特定の期間内に、起こりうる収益率の分布を予測し、
 ③ある一定の確率の範囲内で、
 ポートフォリオの現在価値がどの程度損失を被るかを、理論的に算出された値」
  (「バリュー・アット・リスクの基礎知識」吉田洋一著 シグマベイスキャピタル)
日銀は、VaRのメリットとデメリットを次のように説明しています。
メリット
 為替・債券・株式等、全く異なる金融資産でも、VaRによって統一的にリスクを計量化し、さらに、相関等を考慮した上で合算することもできる。
 デメリット
 ① 過去の一定期間のデータを使ってリスクを計量化するため、使用したデータに含まれないような大きな価格変動やショックが発生した場合のリスクは、十分に把握できない。
 ② 従来リスクとして十分認識されていなかった要素や、新商品のようにデータの蓄積のない取引に関しては、そもそもリスクの計量化自体が困難。
 ③ 予想される損失について一定の確率分布を仮定した上でリスクの計量化を行うため、前提が崩れた場合のリスクは分からない。」
(「統合リスク管理の高度化」日本銀行金融機構局)

「10月16日の日経平均株価の下落率(11.4%)について、発生確率を予測すると、その発生確率は124京年(京は兆の1万倍)に1回という天文学的数字となった。」
(前掲紙)
まさに、今年「使用したデータに含まれないような大きな価格変動やショックが発生した場合のリスクは、十分に把握できない」ような事態が起きたのです。

「定量モデルに依存するだけでなく、定性的な判断を重視する必要性が高まっている」(ボスコン 木島康史氏 前掲紙)という意見はその通りですが、マネジメントにとって依るべき定量モデルが必要であるのもまた事実です。

そういう意味では、リスク評価の第一人者である森平教授の、「リスク管理の抜本的な見直しは、数年以上かかる膨大な作業で、現状は暗中模索の段階だ」(前掲紙)という言葉から、我々は依るべきモデルを失ったという事実を宣告されたような気がして、暗澹とした気持ちになります。

【リンク】
2005年7月「リスク管理高度化と金融機関経営に関するペーパーシリーズ 統合リスク管理の高度化
」日本銀行金融機構局
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/fsk0507a3.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-26 09:55 | 資金調達
2008年 12月 25日

第三者割当増資に規制

東京証券取引所は2009年夏をメドニ、特定の投資家に新株を割り当てる第三者割当増資に規制を導入する。増資額が既存株数に比べて異常に大きいなど、既存の株主の価値を損なう増資が新興企業を中心に相次いでおり、締め出すのが狙い。
(日本経済新聞2008年12月25日 7面)
【CFOならこう読む】
「具体的には、既存株主の1株あたり利益の目減りにつながる大規模な増資について公表し、上場企業やその株主に警告する。東証が今年導入した違約金の対象にも加える。
東証は一律で規制する数値基準は導入しない方向だ。ただ、特別の事情がなく発行済み株式が一気に二倍に増えるような規模の増資が対象となると見られる。」
何とも中途半端な規制です。大規模な増資を発表した企業の株価は希薄化するうえ、企業に対し違約金を課すのでは、一般株主にとって弱り目にたたり目です。

ニューヨーク証券取引所のように20%といった数値基準を明確に設けることが必要でしょう。20%以上の増資でも株主総会の決議により実行可能という規制の仕方にするのならまたぞろ多くの企業が株式持合いを進めるでしょうから、これを規制する必要もあります。

私は、原則株主全員に各自の持分に応じ新株を割り当てる、”株主割当”を増資の場合の原則にするのが良いと思っています。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-12-25 09:18 | M&A
2008年 12月 24日

東洋電機製造副社長インタビュー

日本電産が買収断念「予想外」 東洋電副社長「深まった溝、やり方強引」
日本電産が仕掛けた東洋電機製造買収劇は、TOB提案の期限切れという形で幕を閉じた。90日間の攻防は東洋電機に何をもたらしたか。最前線で交渉にあたった田中啓資副社長がその裏側を語った。
(日経ヴェリタス2008年12月21日 21面)
【CFOならこう読む】
以下上記記事からの抜粋です。
-鉄道事業に強い関心を示した電産の当初の意気込みからすると、あっけない結末だった。
田中
 予想外だった。買収提案の期限だった15日は当然、条件を変えて再提案するか期限延長だろうと思っていた。しかし、電産の発表資料には再提案はしないと書いてある。年末年始、休日返上で臨戦態勢を敷くつもりだったので、安堵したと同時に、正直言って拍子抜けした。

-情報交換の時間は十分あったが理解が深まらなかった。
田中
 逆に溝が深まった。5日の面談では両社長は言葉すら交わさなかった。電産の情報提供は不十分。シナジー効果の根拠を何度も問い合わせたのに明確に示さない。労働条件についても同様で、労働強化は確実だと思った。この業界は技術者の引き抜きも多い。労働強化されたら人材も流出する。取引先も大株主も労働組合も反対だった。」
(前掲紙)
要するに、永守流の効率性を追及する経営に、東洋電機の従業員は耐えられず、人材流出が止まらなくなって企業価値を毀損する、と言っているのです。それが真実なら過去電産が買収した会社が業績を劇的に改善している事実を田中福社長はどう説明するのでしょうか?

TOB価格635円に対し、12月22日終値は245円。本来なら電産による買収を進められなかった経営陣の責任が問われてしかるべき、と私は思います。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-12-24 09:27 | M&A
2008年 12月 22日

資本政策詳解-paperboy&co.

【CFOならこう読む】
paperboy&co.の株式上場の概要は次の通りです。

e0120653_16165531.jpg


paperboy&co.は、2003年設立、個人向けにサーバー貸し出しなどのホスティング事業や(EC)電子商取引支援、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などのコミュニティー事業を展開している会社です。GMOインターネットの子会社です(上場直前時点ほ57.7%保有)。

公募価格は1900円、2008年12月期見込みEPSが179.67円なのでPER10.5倍という水準での株式公開となりました。先日のグリーがPER22.2倍でしたので、それと比べると公開価格は相当に低いと言えます。初値は4000円で、公開価格の倍以上の値がつきましたが、これはIPO市場の回復を示すものではなく、単に公開価格が低かったということなのかも知れません。

e0120653_1617731.jpg


paperboy&co.の主な資本政策は (表2)の通りです。

e0120653_16171642.jpg


2004年3月の第三者割当増資によりGMOインターネットの連結子会社になりました。
家入社長は、2006年5月に社員持株会に2株及び12月にGMO関連の会社に24株株式移動を行っています。逆算すると、家入社長の持株は、第三者割当増資時点で127株であったことになり、第三者割当増資によりきっちりGMOインターネットが発行済株式255株の過半数の持分を保有するに至ったと推定されます。

(表3)は、paperboy&co.の株主構成です。

e0120653_16172862.jpg


上場後もGMOインターネットが過半数の持株を維持する資本政策になっています。

親子上場がコーポレートガバナンスにおける大きな問題となっている中、このIPOに問題はないのでしょうか?

上場時の記者会見で家入氏は次のように答えています。
―親子上場が批判されているなか、あえて上場した理由は。

 家入社長:GMOグループ全体としてホスティングをやっているが、ペーパーボーイは個人向けで完全にすみ分けができている。さらに事業を拡大するために上場した。

―公募増資をした後のGMOの出資比率は。

 家入社長:今は、分からない。」
(「ペパボ」上場、初値は大幅上昇 会見はドタバタより抜粋
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITac000019122008&landing=Next)
目論見書を見る限り、関連会社との取引は少なからず存在し、その中には親会社に対する寄託金3億円(現時点において契約解消済)なんていうのもあるところを見ると、親会社と少数株主との間に重大なコンフリクトが生じる可能性があると思います。そもそもGMOに出資比率を即座に答えられない家入社長には、コーポレートガバナンスへの意識が欠如していると言わざるを得ません。

スピンオフが税制上実行不可能な現状において、親子上場は致し方ない場合もありますが、このIPOは正直私には理解できません。

【リンク】

株式会社paperboy&co.
http://ir.paperboy.co.jp/

# by yasukiyoshi | 2008-12-22 16:18 | IPO
2008年 12月 20日

円高は悪か?

日銀、0.2%利下げ 白川総裁「最大限の貢献行う」
日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を年0.3%から0.1%に引き下げることを決め、即日実施した。長期国債の買い入れ増額やコマーシャルペーパー(CP)の買い取りなど、資金供給策も拡充する。海外経済の後退や円高の進行で景気がさらに落ち込むリスクが高まり、金融政策面で一段の下支えが必要と判断した。日銀の白川方明総裁は記者会見で「中央銀行としてなし得る最大限の貢献を行う」と企業の資金繰り支援策をさらに検討することも強調、景気の底割れ回避に全力で取り組む決意を表明した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1902L%2019122008&g=E3&d=20081219
【CFOならこう読む】
FRBがゼロ金利を決めた影響で、「相対的に金利が高くなった円が買われ、為替市場では約13年ぶりに1ドル=90円を突破する円高・ドル安が進んだ。頼みの輸出産業が大打撃を受けた日本経済にとって、一層の円高はまさに「弱り目にたたり目」である。
(前掲紙)

円高は悪なのでしょうか?

そもそもすべての輸出産業は円高によって本当に大打撃を受けるのでしょうか?
例えば輸入資源価格の高騰を受け、鋼材輸出企業である新日鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼は軒並み決算を上方に修正しています。円高の水準にもよりますが、円高=輸出産業大打撃ということには必ずしもなりません。

輸出産業にとって円高が望ましくないとしても、それが直ちに日本全体にとって望ましくないということにはなりません。この点、昨日に引き続き、野口悠紀雄氏「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)から引用したいと思います。
「円高こそが、経済成長の利益を日本人が享受するための自然なルートなのである。なぜなら、「円高」とは、日本人の労働価値が高く評価されることだからである。
(中略)
消費者の立場から見て望ましい変化が生じたときに、それを打ち消すような圧力が生産者(とくに輸出産業)から生じるのが、日本の経済政策の基本的バイアスである。こうしたバイアスは、最近時点に始まったものではない。
日本の経済論議や経済政策論議は、高度成長期以来一貫して、消費者無視のバイアスを持っていた。ただし、これまでは、それに一定の合理性があった。多くの人は消費者であると同時に生産者でもあるため、企業が発展すれば賃金が上がり、生活水準が向上するからだ。
しかし、いまや企業が成長すれば自動的に消費者の生活が向上するという保障はない。日本人は、企業人としての立場と消費者としての立場を、秤にかけて勘案すべき段階にきている。」
日銀白川総裁の会見要旨を見る限り、日銀としては、円高=悪との判断はないようで、少しだけほっとしています。

【リンク】
世界経済危機 日本の罪と罰
野口 悠紀雄

世界経済危機 日本の罪と罰
ダイヤモンド社 2008-12-12
売り上げランキング : 92


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2008年10月31日「2008年度第2四半期決算及び通期業績見通しについて」株式会社神戸製鋼
http://www.kobelco.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2008/11/07/ir_siryo.pdf

2008年10月24日「JFEグループ2008年度 上期決算 2008年度 業績見通し」JFE
http://www.jfe-holdings.co.jp/investor/zaimu/g-data/jfe/21/21-setumei081024.pdf

「実績と業績予想 2008年3月期連結業績実績」新日本製鐵株式会社
http://www.nsc.co.jp/ir/individual/finance.html

# by yasukiyoshi | 2008-12-20 09:32 | 為替
2008年 12月 19日

ブログへのコメントについて

読者の皆様へ

いつもコメントありがとうございます。

コメント欄は皆様が自由に議論する場としてご利用下さい。私が議論の方向性を示すようなことをしたくないので、原則コメント欄への返事はしないことと致します(但しすべてのコメントには目を通し、本文執筆の際の参考にさせて頂きます)。

また、コメント欄はCFO(及びその予備軍)の真摯な意見交換の場と考えていますので、誹謗・中傷、礼を逸した発言は差し控えるようお願い申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。

# by yasukiyoshi | 2008-12-19 20:06
2008年 12月 19日

ホンダ(下半期)、トヨタ(通期)営業赤字へ

ホンダ、工場稼働延期 減産、国内12社では220万台強に
世界的な自動車需要の縮小を受け、自動車各社が事業計画の見直しを急いでいる。ホンダは17日、国内の新工場・研究所の稼働延期を柱とする事業計画見直し策を発表。2008年度下半期(08年10月―09年3月)は営業赤字に転じる見通しで、戦略的な投資削減に踏み込むことで急場をしのぐ。日産自動車も減産幅を拡大。日本の自動車メーカー12社が世界で取り組んでいる減産規模は今年度、当初計画比で1割弱に当たる220万台強となる見込み。米国発の金融危機が顕在化して以降、業績悪化が急速に進んでいる。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081218AT1D170BR17122008.html
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081219AT2D1802818122008.html
【CFOならこう読む】
2008年11月6日にトヨタは業績の下方修正を発表しました。そこで発表されたのは、営業利益が対前年度で73.6%減少して6000億円になるという驚愕の内容でした。世に言う”トヨタショックです。そしてそれから1ヶ月と少ししか経っていないのに、さらに業績が悪化し、営業利益がマイナスとなる見通しと報道されました。2008年3月期には2兆2703億円であった営業利益が全て吹き飛んだのです。

これは大変なことです。日本における自動車産業の重要性を鑑みると、日本経済全体が危うい状況にあると言ってよいでしょう。しかし何故こんなことになっているのでしょう。今はまず現状を正しく理解することが大切だと私は思います。

野口悠紀雄氏は、最近出版した「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)の中で、今起きていることは、「アメリカ発の金融危機が日本に飛び火している」のではなく、「問題はマクロ経済の歪みであり、日本はその中心に位置している。今後の景気後退は不可避」と指摘しています。

私は野口氏の見解は極めて本質を突いたものだと思っています。野口氏が言っていることを要約すると次の通りです。
「アメリカ人の過剰消費が90年代末からのアメリカの経常赤字の拡大を生んだ。大きな家に住み、自動車を数台所有するという生活が過剰消費を生んでいる。アメリカが経常赤字を持続するには、資本取引によりファイナンスする必要がある。そのためにはドルが減価しないことが大前提となる。ところがサブプライム以降ドルの信認がゆらぎ、この構造を維持することが不可能になっている。であるなら、もはやアメリカの経常赤字は維持できず、過剰消費も改めざるを得ない。

日本は脱工業化が必要であるにも関らず、本当に必要な構造改革を断行せず、低金利・円安政策により、古い産業構造を温存した。これが円安バブルを生み、見せかけの日本の景気回復に繋がったが、決して日本経済が強くなったわけではない。

円安バブルが、円で資金調達し高金利通貨で運用する「円キャリー取引」を増加させ、これがサブプライムローン関連金融商品に回った。2005年以降の企業収益の増加と株価の上昇はこの円安バブルによるものである。現在この「円キャリー取引」の巻き戻しが起きており、円高をもたらした。円ドルレートの調整はまだ終わったとは言えず、さらなる円高もあり得る。

アメリカの経常赤字縮小は、日本の経常黒字縮小を意味する。日本の貿易黒字縮小は不可避だ。GDPの5%のマイナス成長もあり得る。

中長期的に見てより大きな問題を抱えているのはアメリカよりむしろ日本だ。これからの日本は、制御不可能な事態に直面する可能性がある。

必要なのは日本経済の構造大転換。」
そして野口氏はベンチャー企業の起業の重要性を強調しています。

その通りだとは思いますが、今の日本ではグリー程度の会社がもてはやされるに過ぎません。淋しい限りです。

【リンク】
世界経済危機 日本の罪と罰
野口 悠紀雄

世界経済危機 日本の罪と罰
ダイヤモンド社 2008-12-12
売り上げランキング : 92


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


# by yasukiyoshi | 2008-12-19 10:05 | 為替
2008年 12月 18日

資本政策詳解-グリー

【CFOならこう読む】
グリーの株式上場の概要は次の通りです。

e0120653_12105356.jpg


グリーは、2004年設立、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「GREE」を運営。ユーザーのプロフィル、日記、コミュニティー、フォト、メールなどの情報発信をサポートする機能やユーザー間のコミュニケーションの場を提供している会社です。従来はPC向けが中心でしたが、KDDIとの事業提携により2006年11月からモバイル向けのサービスを展開しています。

公募価格は3300円、2009年6月期見込みEPSが148.80円なのでPER22.2倍という水準での株式公開となりました。上場時の売出しにより、創業社長の田中良和氏は33億円の、創業すぐに投資をしたApax Glovis Japan Fundは38億円のキャピタルゲインをそれぞれ獲得しています。

グリーは昨日上場しましたが、上場初値は公募価格を52%上回る5000円でした。時価総額は昨日終値で1070億円とミクシィの880億円を超え、マザーズ首位となりました。

e0120653_1211499.jpg


グリーの主な資本政策は (表2)の通りです。

e0120653_12111822.jpg


2005年2月にグリー(株)(三鷹市 存続会社のグリーとは別会社)を吸収合併しています。目論見書によると2006年7月までは楽天が株主でした。田中氏は楽天出身なのでそれ自体はどうということはないのですが、わざわざ別会社を作って三鷹市のグリー(株)を吸収合併したのは、この辺の過去の経緯を抹消する狙いがあったのかも知れません。ちなみに2006年7月に楽天はグリー株式をリクルートに譲渡しています。リクルートはこれによってKDDIと並ぶ第3位の株主になっています(上場後では第2位)。

(表3)は、グリー(株)の株主構成です。

e0120653_12155859.jpg


田中社長単独で過半数の株式を確保する資本構成になっています。従業員持株会は設立しておらず、役員・従業員へのインセンティブはストックオプションによっています。そのため潜在株式の比率は9.07%(上場直前時点)と比較的高い水準になっています。

【リンク】
平成20年11月「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」グリー株式会社
http://eir.eol.co.jp/extra/3632/pdf/mkr00.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-18 12:16 | IPO
2008年 12月 17日

TBS持株会社化承認 楽天買い取り請求権行使か?

TBS持ち株会社化、承認 楽天の経営掌握、難しく
TBSが16日都内で開いた臨時株主総会で、来年4月1日付で放送法上の認定放送持ち株会社「東京放送ホールディングス」に移行する議案が株主に承認された。1つの株主が議決権を33%までしか保有できない出資制限があり、筆頭株主の楽天が単独でTBSの経営支配権を握る可能性はなくなった。今後の焦点は楽天がTBS株の買い取り請求権を行使するかなどに移る。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081217AT1D160AV16122008.html
【CFOならこう読む】
新聞記事は次の3つのシナリオを想定しています。
シナリオ1 株価低迷で膠着状態続く
「楽天は1株当たり約3100円でTBS株式を取得しており、仮に16日終値の1330円で保有全株を売却すると650億円超の損失が確定してしまうからだ。」

シナリオ2 株価回復 買取請求権行使へ
「仮に株価が2000円まで回復すれば、楽天が権利行使に動くとの観測もある。買取請求権の行使は市場で売却する場合に比べ税務上の扱いが有利になる。TBS側は買取を拒否できないため、和解スキームとしてまとまりやすい面もある。」

シナリオ3 三木谷社長変心 和解へ急転

(2008年12月17日 日本経済新聞 12面)
法人株主にとっては、株式を市場で売却するのではなく、株式買取請求権を行使する方が税務上有利な場合があるので、スクィーズ・アウトの場面で少数株主がスクィーズ・アウトに応じずに、株式買取請求権を行使するインセンティブが働く可能性について、各方面から指摘があるところです(例えば「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要(下)」 谷川達也・水島淳 商事法務
1833)。

株式買取請求権を行使し、会社が株式を買い取ると、自己株取得になります。税務上、自己株取得の場合、取得対価のうち、取得会社の「1株当たり資本等の金額」を上回る金額が「みなし配当」とされ、「1株当たり資本等の金額」と株主の譲渡原価との差額が株式譲渡損益となります。

したがって、
「対象会社の税務上の資本金等の額、内国法人株主の保有する対象会社株式の売買価格やその簿価等にもよるが、公開買付けへの応募や組織再編において受領した対価の売却を行い、その際の売却価格とその簿価の差額との全額につき株式譲渡損益として課税を受けるより、売買価格の一部が配当等の額(その全部または一部は益金不算入となる)とみなされ(法人税法24条参照)、その分、株式譲渡益が減少する(株式譲
渡損が増加する)可能性がある対象会社による現金での株式取得のほうが、内国法人株主にとって税務上のメリットが大きい場合多いであろう」(谷川・水島 前掲)
ということになるのです。

楽天のケースで、1330円で市場で売却、1330円でTBSが株式買取、2000円でTBSが株式買取、の3つのシナリオについて損益に与える影響を下の表で計算してみました(あくまで概算です)。

e0120653_1832921.jpg


楽天の連結ベースの第3四半期純利益は134億円。2000円程度まで株価が回復すれば損益へのインパクトを何とか当期純利益の中で吸収できる可能性があります。「株価が2000円まで回復すれば、楽天が権利行使に動くとの観測」というのは、恐らくこういうことを言っているのだと思います。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-12-17 12:11 | M&A
2008年 12月 16日

日本電産、東洋電機買収断念

日本電産、東洋電機製造の買収断念
日本電産は15日、同日に期限を迎えた東洋電機製造に対する買収提案の延長や再提案をしないと発表した。提案内容を検討する前段階の質疑応答で、日本電産が設定した3カ月の検討期間が経過。「企業価値向上に向けた真摯(しんし)な交渉を積み重ねていく共通認識に至る可能性は極めて低い」と判断、買収を断念した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D150A7%2015122008&g=S1&d=20081215
【CFOならこう読む】
「企業価値向上に向けた真摯な交渉を積み重ねていく共通認識に至る可能性は極めて低い」という言葉に永守社長の無念さが滲み出ています。

永守社長は、次のように、敵対的TOBはやらないと言明しており、今回もその信念を曲げることはしませんでした。
-日本電産は2010年に売上高1兆円という目標を掲げています。この目標の達成のためにはチャンスがあったら、敵対的買収も辞さないという感じですか。

永守 私は日本では敵対的買収は難しいということをはっきりと断言しています。私のM&Aに対する考え方は、再生して転売して利ざやを稼ごうとするファンドとは違います。時間がかかっても成功していったほうがいいわけで、慌てて大失敗するよりもいいと思うのですね。M&Aも、一遍にいくつもできるわけではありませんから。
企業を再建して、業績を高める努力をしている間に、M&Aの対象になった別の案件はもう1回浮上してきます。今、60社ぐらいの声をかけていますが、『今のところ興味がない』とか『ちょっと待ってくれ』というのが大体8割です。残りの2割は、かつては『待ってくれ』とか『だめだ』と言っていたのが、『ちょっとは話を聞こうか』というふうに変わっている。そのなかでも、実際にまとまるものは非常に少ないのです。」
(「日本電産 永守イズムの挑戦」 日本経済新聞社編 日経ビジネス文庫)
もう少し粘れば良いと思うのですが、これも永守流の交渉術なのかも知れません。この永守流が好業績を生んでいることは間違いありません。

下表の通り、電子部品大手各社が軒並み大幅な減益を記録・予想している中で、唯一日本電産だけが大幅な増益を予想しているのですから。

e0120653_1371775.jpg


【リンク】
平成20年12月15日「東洋電機製造株式会社に対する資本・業務提携に関する提案の有効期限日の満了に伴う失効のお知らせ」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/1215.pdf

日本電産永守イズムの挑戦 (日経ビジネス人文庫 ブルー に 1-32)
日本経済新聞社

4532194458
日本経済新聞出版社 2008-04
売り上げランキング : 6118
おすすめ平均 star

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


# by yasukiyoshi | 2008-12-16 08:57 | M&A
2008年 12月 15日

本日休載

新聞休刊日のため本日は休載します。

# by yasukiyoshi | 2008-12-15 08:45
2008年 12月 13日

●資本政策詳解-ソーバル

【CFOならこう読む】
ソーバルの株式上場の概要は次の通りです。

e0120653_10292326.jpg


ソーバルは、1983年設立、人材派遣および業務請負による、ファームウエア(組み込みソフト)、ソフトウエア、ハードウエアの開発・評価サービスを展開する会社です。

公募価格は600円、2009年2月期見込みEPSが178.57円なのでPER3.3倍という極めて低水準での株式公開となります。

e0120653_10293983.jpg


ソーバルの主な資本政策は (表2)の通りです。

e0120653_10295343.jpg


2004年12月に持株会社である東海テックを吸収合併している点が特徴的です。

(表3)は、ソーバルの株主構成です。

e0120653_10301316.jpg


筆頭株主の2人は、椎津順一社長のご子息です。持分比率が共に28.43%、どちらかが後継者ということではないようです。現物株は社長及びその妻子と従業員持株会だけが保有し、その他役員のインセンティブは少量のストックオプションのみ、という非常に割り切った資本政策になっています。

従業員持株会の持ち株比率は上場直前時点で5.53%、他にストックオプションを従業員に薄く広く付与しています。

【リンク】
平成20年11月「新株発行並びに株式売買届出目論見書」ソーバル株式会社
http://www.sobal.co.jp/stockholder/mokuromisyo.pdf

# by yasukiyoshi | 2008-12-13 11:15 | IPO
2008年 12月 12日

2009年度与党税制改正大綱最終案

少額の株式投資、総額500万円まで非課税 税制大綱最終案
2009年度与党税制改正大綱の最終案が11日、判明した。年間100万円を上限に最長5年間、総額で500万円までの株式投資について配当と譲渡益を非課税にする制度を12年から導入する。中小企業の法人税の軽減税率は現行の22%を09年度から2年間18%に引き下げる。社会保障費の財源として焦点になっているたばこ税増税については与党は同日、見送りの方針を固めた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=NT000Y583%2011122008&g=MH&d=20081211
【CFOならこう読む】
最終案要旨のうち、重要なところを列挙すると次の通りです。
【中小企業】
・法人税の軽減税率を2009年度から2年間、現行の22%から18%へ引き下げる。
・2009年2月1日以後終了する各事業年度で生じた欠損金について繰戻し還付制度を適用
・エネルギー需給構造改革推進設備などの即時償却制度と資源生産性向上促進税制を創設
・海外子会社から受け取る配当を益金不算入とする制度を導入
【金融証券】
・上場株式の譲渡益と配当の課税軽減措置を2011年まで継続。小額投資の非課税措置を創設
・企業型確定拠出年金に導入されるマッチング拠出の掛け金の全額を所得控除の対象に
・確定拠出年金の拠出限度額を引き上げ
(日本経済新聞2008年12月11日夕刊2面)
繰戻し還付制度を今期から適用できるのは大きいと思います。

欠損金の繰戻し還付制度とは、欠損金の生じた年度において青色確定申告を行い、かつ過去の関係年度において青色確定申告をしていたことを条件として、欠損金を当該事業年度の開始の日前一年以内に開始した事業年度に繰り戻し、これらの事業年度の税額を計算しなおして、その差額の還付を求めることを認める制度です。

制度としてはあるのですが、現在は、租税特別措置法により不適用となっています。

新規投資を検討している会社にとっては、意思決定を後押しする効果がありそうです。投資時のロスをその前年の利益と相殺することができるからです。まあ、できれば3年程度の繰戻し還付を認めてもらいたいところではありますが…。

小額投資優遇税制の創設は個人の金融資産を貯蓄から株式市場に振り向ける狙い。
「年間の新規投資で100万円を上限に、一人あたり一つの非課税口座を持てるようにする。20歳以上が対象で、同口座から投資した上場株式などの配当や譲渡益が非課税になる。非課税期間は10年間。年間一人一口座を5年間にわたって開設できるようにする。毎年の新規投資額合計ベースで最大で500万円が非課税対象になる。」
小額投資という表現、年間100万円合計500万円という非課税枠は、金持ち優遇批判をかわすためのものでしょうが、この程度の非課税枠では大きな効果は期待できないと私は思います。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-12-12 08:44 | 税制
2008年 12月 11日

NTT繰延税金負債700億円近く取崩し

NTTの今期 税負担700億円近く軽減
NTTは連結子会社のNTTドコモが7月に実施した地域会社の再編などに伴って、2009年3月期に会計上の税負担が700億円近く軽減される見通しだ。連結決算で織り込んでいた将来の税負担が少なく済むため。現金の増減は伴わないが、純利益を押し上げる要因となる。
(日本経済新聞2008年12月11日14面)
【CFOならこう読む】
今年7月にドコモがドコモ関西など地域会社8社を吸収合併したことに伴い減少する繰延税金負債が569億円、ドコモの自社株買いに伴い減少する繰延税金負債が110億円ということです。

この点11月7日に行われた記者会見で、小林取締役財務部門長は次のように話しています。
Q.今期の通期の見通しのところで税金についての話があったが、もう少し詳しく教えて欲しい。

A. (小林取締役財務部門長)

 繰延税金負債の取り崩しのところのご質問と思うが、ドコモを分社したときに、税務上の簿価と財務上の簿価は一致していたが、ドコモを上場した際あるいはドコモが公募増資をするとドコモの純資産が増え、財務上の簿価が税務上の簿価に比べて大きくなる。そうすると、将来、仮に持株会社がドコモの株を売却するとなると、その売却益が出るだろうということで、ドコモの上場あるいは公募増資の時点において、繰延税金負債を立てている。ところが、今回、ドコモが地域ドコモを吸収合併して一社化すること及びドコモが自己株式を取得するといった営みを行うことによって、持株会社の持っているドコモ株の財務上の簿価、即ち課税対象となる分が引き下がることになる。したがって、これまで積んでいた繰延税金負債をその分取り崩すことになるが、これは税負担額を引き下げるという税効果の財務上の処理が必要になるということである。


Q. この繰延税金負債の取り崩し分で、今期、税効果で効いてくるプラス分というのは、その部分だけで言うといくらになるのか。

A. それは、569億円になる。

(小林取締役財務部門長)
 補足すると、ドコモの一社化によるものは569億円であるが、ドコモの自己株買いによるものも含めると、第1四半期と第2四半期両方合わせておおよそ700億円ぐらいある。これは決算短信に記載している繰延税額のところに、▲1,000億円程度と出ているが、そのうちの約700億円というふうにご理解頂ければと思う。」
地域子会社8社はすべてドコモの100%子会社ですので、吸収合併したところでドコモの連結FSへの影響はありません。にも関らずNTTのドコモ株式の会計上の簿価が切り下がる理由がよくわかりません。

機会を見つけて後日またフォローしたいと思います。

【リンク】
2008年11月7日「NTT(持株会社)社長会見より」
http://www.ntt.co.jp/kaiken/index.html


# by yasukiyoshi | 2008-12-11 09:48 | 会計
2008年 12月 10日

利益偏重は悪か? その2

経営共創基盤CEO 冨山和彦氏 インタビューより
(日本経済新聞2008年12月10日4面)

【CFOならこう読む】
インタビューの中で、冨山氏は次のように発言しています。
-今回の金融危機で米国型の資本主義モデルは崩壊したのか
「米国は『会社は株主のもの』という規範やROEが高ければ高いほどよいという考え方を推進してきた。ただ利益はそう簡単に増えないので、資本をできるだけ小さくしてしまい、その結果、金融機関のリスクは膨らんでいった。こうした株主・ROE主義は一つの幻想だった」
私には冨山氏が何を言いたいのか全くわかりません。

リスクをとることを否定しているのでしょうか?
そうであるなら株式会社という仕組みも否定されなければなりません。

ファイナンスという学問が教える資産価格理論を否定しているのでしょうか?
そうであるならもっとロジカルに説明する必要があります。

私の敬愛するファイナンスの学者久保田敬一氏が今日の新聞で次のように話しています(14面 中央大学ビジネススクールの広告)。
「先日「世界経営者会議」で、ダートマス大学のタック経営大学院を卒業した経営者が「今の仕事に一番役立っているのはファイナンスだ」と話していた。企業戦略にはファイナンスというツールが欠かせない。例えば資本コストについて、組織で一つのものを使うかどうかとか、組織内の設定の摩擦はどういうものかというのは、まさに組織論である。また収益性と費用を顧客別、設備別、製品別に把握する管理会計の手法も戦略的な意思決定には重要だ。これは企業買収などで、資産を適正に評価する際にも役立つ。」
冨山氏の発言はこのような経営を否定するのでしょうか?
冨山氏はさらに次のように発言しています。
「長い目で見れば、10年ー20年に一度の頻度で起きる危機に備え、資本を手厚く持っておく意味は大きい」
手厚いとはどの程度でしょうか?
何によってその妥当性を測るのでしょうか?
無借金で余剰資金を貯め込む経営を良しとするのでしょうか?

この点、先日紹介した、「金融技術革新と金融機関の経営および規制」という論文の中で、ロバート・マートン氏は次のように論じています。
「リスク管理は伝統的に資本に焦点が絞られてきた。株主資本は、金融機関のリスクを吸収するためのクッションである。それは、あらゆる目的にかなうすばらしいクッションである。なぜだろうか。それは、経営陣が、予期せぬ損失の源が何であるかを知る必要がないからである。彼らは、損失の源を予測する必要は。なぜならば、資本によってあらゆる形のリスクに対し企業は守られるからである。そういう意味において、資本はあらゆる目的にかなうクッションであり、したがってリスク管理にとって大変魅力的である。われわれもよく知っているように、株主資本はまさにそういう理由で、費用が高くついてしまう。」
この後ロバート・マートン氏はデリバティブによるリスク管理の重要性について語っています。

冨山氏は伝統的なリスク管理手法に回帰すべきであると言っているのでしょうか?

【リンク】
金融技術革命

# by yasukiyoshi | 2008-12-10 09:18 | 業績評価
2008年 12月 09日

資本政策詳解-らでぃっしゅぼーや

【CFOならこう読む】
らでぃっしゅぼーやの株式上場の概要は次の通りです。

e0120653_1545390.jpg


らでぃっしゅぼーやは、有機・低農薬野菜、無添加食品などの販売。安全性や環境負荷などを考慮した農産品や畜産品、水産品、加工食品、日用品などを「定期品」「注文品」として会員に対して戸別販売しているほか、百貨店・スーパーなどへも卸売りしている会社です。

キューサイの子会社でしたが、株式会社ジャフコ・エスアイジーNo.7が、MBOを目的とし、2006年3月3日にキューサイ及び大株主であった長谷川和子氏より当社の実質上の存続会社である「らでぃっしゅぼーや株式会社」(旧らでぃっしゅぼーや)の株式の譲渡を受けて、子会社化した後、2006年3月31日にジャフコ・らでぃっしゅMBO株式会社に商号変更し、2006年9月1日を合併期日として子会社であった旧らでぃっしゅぼーや株式会社を吸収合併し、同日にらでぃっしゅぼーや株式会社に商号変更しています。

公募価格は600円、2009年2月期見込みEPSが50.49円なのでPER11.9倍という水準での株式公開となります。

e0120653_15471115.jpg


らでぃっしゅぼーやの主な資本政策は (表2)の通りです。

e0120653_1674073.jpg


2007年2月期に約20億円のれんの一時償却(単体では関係会社株式評価損の計上)を行っており、この欠損金を補填するために、2008年2月期に資本準備金及びその他資本剰余金の取崩しを合計約20億円行っています。何故のれんを一時償却したかについてはよくわかりませんが、プランニングの匂いがしなくもありません。

その他、緒方社長他役員に対し、種類株式(A種株式)を発行しているのが目につきます。

表にはありませんが、2007年12月26日及び2008年2月26日にジャフコのファンドから日本レストランシステム等へ合計1,333,720株の株式移動が行われています。このときの移動価格は1,400円、所有者の取得価格ベースに、当事者間の協議により決定したものです。今回の公募価格が600円なので、この価格には疑問が残ります。


(表3)は、らでぃっしゅぼーやの株主構成です。

e0120653_1675154.jpg


筆頭株主は、ジャフコが運営するファンドですが、同ファンドの運用期間は平成26年12月31日までと限定されており、当該ファンドの所有する株式は、原則同期間内に売却されることになります。したがって今後株主構成が劇的に変化する可能性がある旨、会社はリスク情報に記載しています。

なお、ジャフコの買収価額は64億円(持分比率98.8%)であるのに対し、上場日時点の時価総額が約42億円。このMBOは今のところ成功というにはほど遠い状況です。

しかしその差額約20億円。のれんの一時償却の金額と符合していてビックリ!?

【リンク】
らでぃっしゅぼーや株式会社
http://www.radishbo-ya.co.jp/


# by yasukiyoshi | 2008-12-09 16:07 | IPO
2008年 12月 08日

第三者割当増資 総会決議義務化へ

第三者増資、総会決議を義務化 法務省、会社法改正で検討
法務省は、買収防衛などに活用される第三者割当増資により利益が縮小しかねない既存の少数株主の保護に向け、会社法改正の検討に入った。現行法では事実上、取締役会の判断で新株を発行できるが、株主総会の決議を義務付ける方向。来年秋にも法制審議会(法相の諮問機関)で始める会社法の次期改正論議で論点の1つとし、2011年の通常国会への改正案提出をめざす。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S0600R%2006122008&g=MH&d=20081207
【CFOならこう読む】
「取締役会の決定だけでできる現行の第三者割当増資は「経営者が株主を選べる」という特殊な制度だ。濫用されるケースが目立っており、何らかの弊害防止策が必要になる。
現在の会社法でも、一応の濫用への対応策はある。著しく低い価格なら「有利発行」として例外的に株主総会決議を求め、主に保身目的の増資であれば「不公正発行」として、ライブドア・ニッポン放送事件などのように裁判所で差し止められる。ただ、司法判断を得るには莫大な費用がかかり、少数株主は泣き寝入りすることが多い。また裁判官が経済実態に通じていなければ市場関係者が納得する判断は難し
い。」
(日本経済新聞2008年12月7日3面)
第三者割当増資に何らかの規制が必要なことは、このブログでも何度もお話ししています。ですが、株主総会決議で決めれば良いというのは、本質的な解決策にならず、結局株式持合を促進させるだけのことになると、私は思います。

主要国の第三者割当増資への規制は次のようになっています。
第三者割当増資への各国の規制例

米国
ニューヨーク証券取引所が、議決権の20%超に相当する新株発行について、株主総会決議を義務付け

英国
会社法により、原則として第三者に新株を割り当てる場合には既存株主にほ引受権を割り当て

ドイツ
株主総会が事前に認めていれば、監査役会の承認のもと議決権の10%以下の新株発行は可能」
経営者が株主を選べない、という意味では英国の規制が優れています。ただし、これを未上場会社にまで適用させるべきではありません。したがって、以前からお話しているとおり、上場会社法を我々は必要としているのだと改めて感じます。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-12-08 08:36 | 買収防衛策